株価
マネーフォワードとは

株式会社マネーフォワードは、東京都港区に本社を置くフィンテック企業であり、個人向けおよび中小企業・個人事業主向けに金融・業務系のクラウドサービスを提供している。東証プライム市場に上場しており、中小企業向け業務ソフトのSaaSと決済などのフィンテック分野を中核事業として成長してきた企業である。
同社は「お金の見える化」をコンセプトに、金融データを自動連携・分析する技術を強みとしている。銀行口座、クレジットカード、証券口座などのデータを安全に取得し、個人や企業の資金状況や業務状況を可視化することで、意思決定や業務効率化を支援している。ビジネスモデルはサブスクリプション型を中心としたストック型で、継続課金による収益の積み上げを重視している。
個人向けサービスでは、資産管理・家計管理アプリ「マネーフォワード ME」を主力とし、個人の資産状況や支出管理を一元的に把握できるサービスを提供している。また、個人向けの経済・金融情報を発信するメディア「MONEY PLUS」も運営しており、金融リテラシー向上を目的とした情報提供を行っている。
法人・個人事業主向けには、「マネーフォワード クラウドシリーズ」として、クラウド会計、クラウド請求書、クラウド給与、クラウド勤怠、クラウド経費など、バックオフィス業務を統合的に管理できるSaaS型プラットフォームを提供している。中小企業やスタートアップを主な顧客とし、業務効率化やDX推進を支援することで利用範囲を拡大している。各サービスはモジュール型で提供され、利用サービス数の増加に伴い課金額が拡大する仕組みとなっている。
さらに、金融機関向けにはFintechプラットフォームを展開し、金融データ連携や業務支援機能を提供している。決済、保証、与信管理などの分野にも事業領域を広げており、グループ会社を通じて幅広い金融関連サービスを展開している。関連会社には、マネーフォワードケッサイ、マネーフォワードホショウ、スマートキャンプ、ナレッジラボ、海外拠点であるMoney Forward Vietnamなどがあり、国内外での事業拡張を進めている。
総じてマネーフォワードは、個人向け資産管理アプリで培ったデータ連携技術とユーザー基盤を、中小企業向け業務SaaSおよびフィンテック領域へ展開することで成長してきた企業であり、短期的な利益よりも事業規模の拡大とプラットフォーム構築を重視する成長志向の企業である。
マネーフォワード 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20.11期 | 11,318 | -2,804 | -2,538 | -2,423 | -52.1 | 0 |
| 21.11期 | 15,632 | -1,062 | -1,432 | -1,482 | -30.0 | 0 |
| 22.11期 | 21,477 | -8,469 | -9,581 | -9,449 | -176.4 | 0 |
| 23.11期 | 30,380 | -6,329 | -6,738 | -6,315 | -117.0 | 0 |
| 24.11期 | 40,363 | -4,735 | -5,353 | -6,330 | -116.3 | 0 |
| 25.11期(予) | 52,000 | -3,000 | -3,700 | -5,100 | -92.2 | 0 |
| 26.11期(予) | 63,000 | 1,500 | 1,000 | 500 | 9.0 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022年11月期 | -4,124 | -14,780 | 9,074 |
| 2023年11月期 | 2,460 | -7,448 | 17,462 |
| 2024年11月期 | -4,761 | -9,505 | 20,346 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | -20.9 | -22.7 | -7.2 | ― | ― |
| 2024年 | -11.8 | -17.9 | -6.0 | ― | 6.55 |
| 2025年 | -6.4 | 0.2 | 0.0 | 2,323.8 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず売上高を見ると、23.11期の303億円から24.11期に403億円、25.11期予想で520億円、26.11期予想では630億円と、かなり速いペースで拡大している。事業規模は着実に大きくなっており、SaaS企業として顧客数や利用額が積み上がっていることは数値からも読み取れる。この点だけを見れば、成長力は非常に強い。
一方で利益面は長期にわたり厳しい状態が続いている。営業利益は23.11期で-63億円、24.11期でも-47億円、25.11期予想で-30億円と赤字が継続しており、黒字化は26.11期予想の15億円が初めてとなる。営業利益率も-20.9%から-6.4%まで改善しているが、依然として赤字圏であり、利益体質が完成した段階とは言えない。
資本効率を見ると、ROEは-22.7%から0.2%まで改善し、ROAも-7.2%から0.0%まで回復している。改善の流れ自体ははっきりしているものの、現時点ではようやく損益分岐点に近づいた段階で、投下資本を効率よく利益に変えられているとは言い難い。
株価評価面ではかなり厳しい数字が出ている。24.11期時点のPBRは6.5倍と高く、赤字企業としてはかなり強気な評価が付いている。さらに25.11期予想のPERは2,323.8倍となっており、実質的にはPERが機能しない水準で、市場が将来の黒字定着とその先の成長を相当先まで織り込んでいる状態だと分かる。
これらを数値だけで総合すると、マネーフォワードは売上成長力は非常に高いが、収益性と資本効率はまだ未完成で、株価は将来期待を先取りしすぎている銘柄と言える。26.11期の黒字化が計画通り進めば評価は維持されやすいが、少しでも遅れたり利益が想定を下回った場合には、PBRの高さが重荷となり、株価が大きく調整するリスクがある。
結論として、この銘柄は安定投資や割安投資には向かず、黒字定着までの時間と値動きの荒さを受け入れられる投資家向けの成長期待銘柄である。数値だけを見る限り、安全域は小さく、リスクを取って将来の成長に賭けるかどうかが判断の分かれ目になる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、マネーフォワードは配当目的ではまったく向いていない。示されている通り、25.11期・26.11期ともに予想配当利回りは0.00%で、現時点でも近い将来でも配当を出す前提にはなっていない。つまり、マネーフォワードはインカムゲインを狙う投資家を想定した銘柄ではない。
これまでの数値を見ると、売上高は大きく伸びているものの、営業利益・純利益は長期間にわたって-の状態が続いており、黒字化は26.11期予想がようやくスタートラインという位置づけになる。この段階で配当を出す余力はなく、仮に黒字化しても、まずは赤字期間で積み上がった投資回収や事業基盤の安定化が優先されると考えるのが自然だ。
また、PBRが6.5倍と高く、PERも事実上参考にならない水準であることから、市場はマネーフォワードを将来の成長期待で評価している。こうした評価フェーズにある企業が配当を出し始めると、成長余地が縮小したと受け取られることも多く、経営方針としても配当は後回しになりやすい。
数値だけで判断すると、マネーフォワードは配当目的には不適、値上がり益狙い専用、黒字定着と事業拡大を優先する成長株という位置づけになる。配当を重視する投資スタイルであれば、最初から別の銘柄を選ぶべきで、マネーフォワードはあくまで将来の成長に賭ける投資家向けだと割り切る必要がある。
今後の値動き予想!!(5年間)
マネーフォワードは、中小企業・個人事業主向けの業務ソフトを中心に、会計、請求書、経費、給与、勤怠などをクラウドで提供するSaaS企業であり、あわせて決済や保証などのフィンテック分野にも注力している。個人向けには資産管理・家計管理アプリ「マネーフォワード ME」を展開しており、個人と法人の両面で金融データを扱うプラットフォーム型のビジネスモデルを構築している。収益源はサブスクリプションを中心としたストック型で、売上は急拡大している一方、成長投資を優先してきたため長年赤字が続いてきた。直近では赤字幅が縮小し、黒字化が視野に入りつつある段階にある。現在株価4,183円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、中小企業向けSaaSの契約数増加と利用単価の上昇が続き、クラウドシリーズが安定的な収益基盤として定着するケースを想定する。26.11期に黒字化を達成した後、営業利益が着実に積み上がり、営業利益率もプラス圏で徐々に改善する。赤字企業という評価が外れ、SaaS企業としての収益モデルが完成形に近づくことで、市場の見方は安定成長企業へと変化する。高水準のPBRは維持されつつ、PERでの評価が可能となり、将来利益を織り込む形で株価が上昇する。この場合、現在株価4,183円から株価は段階的に上昇し、5年後には6,000円から8,000円程度まで上昇する展開が考えられる。黒字定着と成長継続が両立した場合の強気なシナリオである。
中間のシナリオでは、黒字化は達成するものの、その後の利益成長は緩やかにとどまり、営業利益率は低い一桁台で安定するケースを想定する。売上成長は続くが、競争激化や人件費・開発費の増加により、利益の伸びは限定的となる。市場の評価は落ち着き、現在の高い期待はやや調整されるが、成長企業としての位置づけは維持される。この場合、株価は急騰せず、現在株価4,183円を中心に上下しながら推移し、5年後の水準は4,500円から5,500円程度に収まる可能性が高い。成長期待と割高感が拮抗する、最も現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、黒字化が遅れる、もしくは一時的な黒字にとどまり、その後の利益が安定しないケースを想定する。売上成長は続いても利益が伴わず、営業利益率はゼロ近辺、あるいは再びマイナス圏に戻る。市場は成長ストーリーに疑問を持ち、これまで先行していた高い評価が修正される。この場合、PBRの高さが重荷となり、株価は調整局面に入る可能性が高い。現在株価4,183円から下落し、5年後には2,500円から3,500円程度まで下げる展開も想定される。
総合すると、現在株価4,183円を起点としたマネーフォワードの5年間の値動きは、良い場合で6,000円から8,000円前後、中間で4,500円から5,500円、悪い場合で2,500円から3,500円といったレンジが想定される。高配当を狙う銘柄ではなく、あくまで黒字定着とその後の成長を前提に値上がり益を狙うタイプの銘柄であり、成長ストーリーが続くかどうかが株価を大きく左右する中長期向けの投資対象だといえる。
この記事の最終更新日:2025年12月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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