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クレハ(4023)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

クレハとは

株式会社クレハは、塩素化学を起点とする工業薬品・肥料分野を発祥とした日本の化学メーカーであり、現在は機能性化学品から家庭用品まで幅広い分野を手掛ける企業である。旧社名は呉羽化学工業株式会社で、2005年に現在の社名へ変更された。社名は、かつての母体であった呉羽紡績の創業地である富山県西呉羽村に由来している。芙蓉グループに属し、安定した企業基盤を持つ点も特徴の一つである。

創業当初は、か性ソーダや塩酸などの塩素化学を中心とした工業薬品や肥料を主力として事業を展開していたが、その後、有機合成技術や高分子技術を取り込みながら事業領域を拡大してきた。現在では、家庭用品、工業化学品、合成樹脂、医薬品、農薬といった複数の事業を併せ持つ総合化学メーカーとして位置づけられている。コーポレートスローガンは「どこにも無ければ、創ればいい。ナケレバ、ツクレバ。」であり、ニッチ分野でも独自技術を磨き上げる企業姿勢を示している。

生産面では、福島県いわき市に主力工場を有しており、同地はいわばクレハの中核拠点となっている。2011年の東日本大震災では、いわき事業所が甚大な被害を受け、「クレラップ」など主力製品の供給が一時的に滞る事態となった。しかし、その後は設備の復旧と生産体制の再構築を進めるとともに、東北3県の農業や食生活の再生を支援する復興支援プロジェクトを実施するなど、地域に根差した企業活動も行ってきた。

現在のクレハの事業を俯瞰すると、大きく成長分野と安定分野に分かれている。成長の柱となっているのが、機能製品分野、とりわけ車載電池向けを中心としたPVDF、すなわちポリフッ化ビニリデンである。PVDFはリチウムイオン電池の電極バインダーなどに使用され、電気自動車や蓄電池市場の拡大とともに需要が伸びている分野であり、クレハはこの分野を将来の中核事業として位置づけている。PVDF以外にも、PPS樹脂のフォートロンKPS、PGA、熱膨張性マイクロカプセル、炭素繊維や球状活性炭などの炭素製品といった高機能材料を展開しており、高付加価値で技術的な参入障壁が高い製品群を強みとしている。

一方で、創業の流れをくむ化学製品分野では、無機薬品としてか性ソーダ、塩酸、次亜塩素酸ソーダ、有機薬品としてモノクロルベンゼンやパラジクロルベンゼンなどを製造・販売している。これらは工業用途を中心に安定した需要があり、景気変動の影響を受けにくい基礎化学品として、クレハの収益を下支えする役割を担っている。

さらに、樹脂製品および家庭用品分野もクレハの大きな特徴である。食品包装材向けの塩化ビニリデンフィルムや多層フィルム、多層ボトルなどの樹脂製品を展開する一方で、家庭用品では「NEWクレラップ」をはじめとするラップフィルムや「キチントさん」シリーズが高い知名度を持つ。これらは生活必需品として需要が安定しており、景気の良し悪しに左右されにくい事業となっている。工業向けの高機能素材と、家庭向けの生活用品という異なる性格の事業を併せ持つ点が、クレハの事業構造の大きな強みである。

医薬品・農薬分野では、抗悪性腫瘍剤クレスチンや慢性腎不全用剤クレメジンなどの実績を持ち、現在も医薬品原薬や農薬関連製品を手掛けている。事業規模は他分野と比べると大きくはないものの、技術的なハードルが高く、安定した収益を生みやすい分野として位置づけられている。

グループ体制としては、クレハ合繊、クレハエクストロン、クレハ運輸、クレハ建設、クレハエンジニアリング、クレハ環境、クレハ分析センター、クレハトレーディングなどの国内関連会社を擁し、製造から物流、エンジニアリング、環境対応までをグループ内でカバーする体制を構築している。全体としてクレハは、塩素化学を起点とした基礎化学品の安定収益、「クレラップ」に代表される生活必需品の強さ、そして車載電池向けPVDFなど成長分野への展開を併せ持つ化学メーカーである。成長性と安定性の両立を志向した事業ポートフォリオを構築しており、派手な成長よりも、技術と用途を絞った堅実な積み上げ型の企業として位置づけられる。

クレハ 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) EPS(一株益・円) 配当金(一株・円)
21.3期 144,575 17,263 17,748 13,493 230.4 56.7
22.3期 168,341 20,142 20,398 14,164 241.9 70
23.3期 191,277 22,350 22,992 16,868 288.1 90
24.3期 177,973 12,800 13,913 9,734 173.0 86.7
25.3期 162,015 9,428 10,218 7,800 149.7 86.7
26.3期予 165,000 14,000 14,000 10,000 261.6 219
27.3期予 172,000 16,000 16,000 11,500 300.9 219〜220

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023年3月期 22,744 -11,100 -10,484
2024年3月期 11,601 -34,288 12,135
2025年3月期 29,525 -39,436 8,437

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER PBR
2023年3月期 11.6% 7.8% 5.6%
2024年3月期 7.1% 4.3% 2.9%
2025年3月期 5.8% 3.7% 2.2% 13.6~16.9倍 0.84倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の推移を見ると、24.3期は売上高1779億円、営業利益128億円、経常利益139億円、純利益97億円だった。25.3期になると売上高は1620億円まで減少し、営業利益は94億円、経常利益102億円、純利益78億円と、すべての利益段階で明確な減益となっている。26.3期予では売上高1650億円、営業利益140億円、経常利益140億円、純利益100億円と回復が見込まれているが、これは直前期の落ち込みからの戻りであり、連続的な成長トレンドというよりは循環的な回復局面にあると見える。

次に営業利益率を見ると、2023年は11.6%と高水準だったが、2024年に7.1%、2025年には5.8%まで低下している。3年連続で利益率が下がっており、収益構造が悪化している流れははっきりしている。化学メーカーとして5%台の営業利益率は決して低すぎるわけではないが、かつて2桁近くあった水準から落ちている点は評価を下げる要因になる。

ROEは2023年7.8%、2024年4.3%、2025年3.7%と大きく低下している。株主資本を使った稼ぐ力は明らかに弱まっており、3%台のROEは資本効率としては低い部類に入る。ROAも5.6%から2.9%、2.2%へと下がっており、資産全体を使った収益力も同様に悪化している。これらの指標を見る限り、直近は企業全体の稼ぐ力が縮小している局面と判断できる。

次に株価評価を見ると、2025年時点のPERは13.6~16.9倍、PBRは0.8倍となっている。PBRが1倍を割っている点だけを見ると一見割安に見えるが、ROEが3%台まで低下していることを考えると、PBR1倍割れは必ずしも割安とは言えず、むしろ現在の収益性を反映した妥当な評価とも受け取れる。PERについても、利益が回復途上である企業に対して13~16倍は、強い割安感がある水準とは言いにくい。

以上を総合すると、24年から25年にかけて業績と収益性は明確に悪化し、26年には回復予想が出ているものの、営業利益率、ROE、ROAといった指標は依然として低下基調にある。市場評価も、PBRは低いが資本効率を考えると妥当、PERも割安と断言できる水準ではない。

提示された数値だけで判断するなら、この銘柄は現時点で明確に割安だから買う局面ではなく、業績回復が本当に定着するかを見極める段階にあるといえる。安定性や配当を前提とした保有は成り立つが、成長や評価修正を積極的に狙う投資としては慎重に見る必要があり、投資判断としては中立からやや慎重寄りが妥当だと考えられる。

配当目的とかどうなの?

配当目的という視点でクレハを見ると、かなりはっきりとした特徴を持つ銘柄だといえる。予想配当利回りは26.3期、27.3期ともに5.55%と、日本株の中でも高配当の部類に入る水準であり、数字だけを見ればインカムゲインを重視する投資家にとって非常に目を引く存在である。

この利回り水準であれば、株価の値上がりを大きく期待しなくても、配当だけで一定のリターンが見込める。一方で、その配当がどの程度安定して続くかという点は、しっかり見ておく必要がある。直近の数値を見ると、営業利益率は11.6%から7.1%、5.8%と低下が続いており、ROEも7.8%から4.3%、3.7%へと落ち込んでいる。企業の稼ぐ力そのものは弱くなっている局面であり、その中で5.5%を超える高配当が提示されているという構図になる。

26.3期予では純利益100億円までの回復が見込まれており、配当219円は現時点の予想利益ベースでは一応カバーできる水準にある。ただし、利益がこの水準で安定しなかった場合や、再び減益局面に入った場合には、配当性向が高くなりやすく、将来的な減配リスクは意識せざるを得ない。増配を積み上げていくタイプの配当銘柄というよりは、今の高水準を維持できるかどうかが焦点になる。

一方で、株価水準そのものはPBR0.8倍と低く、市場はすでに慎重な評価を与えている。そのため、業績が大きく崩れない限り、株価の下落余地はある程度限定され、配当を受け取りながら保有しやすい面もある。高配当が評価される局面では、株価が下支えされる可能性もある。

総合すると、この銘柄は、配当利回りの高さを最優先に考える投資家にとっては魅力が大きい一方で、長期にわたって増配を期待するタイプの配当投資とは相性が良いとは言いにくい。業績の安定度合いを定期的に確認しながら、利回りを取りに行くという割り切ったスタンスで向き合う銘柄だといえる。

今後の値動き予想!!(5年間)

クレハは、塩素化学を起点とした工業薬品を発祥とする化学メーカーであり、現在は車載電池向けのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの機能性樹脂と、「クレラップ」に代表される家庭用品・樹脂製品を両輪とする事業構造を持っている。基礎化学品から高機能素材、生活必需品まで幅広い領域を手掛けている点が特徴で、売上高は1,600~1,700億円規模で推移している。

近年は、電池材料関連への投資を進める一方、原材料価格の影響などもあり、営業利益率やROEは低下傾向にある。ただし配当水準は高く、現在値3,945円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、車載電池向けPVDFの需要が安定的に拡大し、家庭用品や包装材などの安定分野が下支えとなる状況を想定する。営業利益は26.3期予の水準である140億円前後を維持し、営業利益率は6~7%台で下げ止まる。ROEも5~6%程度まで回復し、高配当銘柄としての評価が市場に定着する。PBRは現在の0.8倍前後から1倍近辺まで是正され、PERも15倍前後で落ち着く。この場合、現在値3,945円から株価は緩やかに見直され、5年後には5,500円から6,200円程度まで上昇する展開が考えられる。高配当と業績安定を評価した場合の強気シナリオである。

中間のシナリオでは、電池材料の成長は限定的で、家庭用品・基礎化学品が安定収益を支えるものの、大きな成長もないケースを想定する。営業利益は120~140億円規模で横ばい、営業利益率は5~6%台、ROEは4%前後にとどまる。配当は維持され、利回りの高さは引き続き評価されるが、成長期待が乏しいため市場評価は大きく変わらない。この場合、株価は現在値3,945円を中心に推移し、5年後の水準は4,200円から4,800円程度に収まる可能性が高い。配当を受け取りながら長期保有する、最も現実的なシナリオといえる。

悪い場合のシナリオでは、電池材料の需要が伸び悩み、原材料価格の上昇などで利益率がさらに圧迫されるケースを想定する。営業利益は100億円を下回り、営業利益率は5%を割り込む。ROEも3%台に低迷し、高配当の持続性に対する不安が意識されると、市場評価は一段と慎重になる。PBRは0.7倍前後まで低下し、株価は調整局面に入る。この場合、配当は維持される可能性があるものの、株価は現在値3,945円から下落し、5年後には2,800円から3,300円程度まで下げる展開も想定される。

総合すると、現在値3,945円を起点としたクレハの5年間の値動きは、良い場合で5,500円から6,200円前後、中間で4,200円から4,800円、悪い場合で2,800円から3,300円といったレンジが想定される。急成長を狙う銘柄ではないが、高い配当利回りと事業の安定性を背景に、値動きの大きさよりもインカムゲインを重視する中長期投資家向けの銘柄だといえる。

この記事の最終更新日:2025年12月17日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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