株価
エア・ウォーターとは

エア・ウォーター株式会社は、大阪市に本社を置く日本有数の産業ガスメーカーであり、産業ガス業界では大陽日酸、日本エア・リキードと並ぶ国内3強の一角を占めている。2000年4月に大同ほくさんと共同酸素が合併して誕生した企業で、産業ガスを祖業としながら、医療、エネルギー、農業・食品、ケミカル、物流などへ事業領域を大きく拡張してきた多角化企業である。産業ガスでは国内2位の規模を持ち、特に医療用酸素分野では国内首位の地位を確立している。
同社の成長戦略の最大の特徴は、積極的なM&Aを通じた事業ポートフォリオの拡充である。産業ガスというBtoB色の強い事業を基盤にしつつ、医療や農業・食品といった最終消費者に近い分野へ事業を広げ、景気変動への耐性を高めてきた。大同ほくさんはエアプロダクツ・グループや住友系金融機関、北海道・関西の地場金融機関などが関与する混合色の強い企業であり、一方の共同酸素は旧住友金属工業系という背景を持つ。こうした異なる系譜を持つ企業の統合を起点に、エア・ウォーターは独自の企業グループを形成してきた。
事業内容は極めて多岐にわたる。産業ガス関連事業では、酸素、窒素、アルゴンなどの産業ガスに加え、ガス発生装置やガスアプリケーション機器を提供し、鉄鋼、化学、半導体、電子部品など幅広い製造業の現場を支えている。売上構成比では約2割を占め、同社の基盤事業となっている。
医療関連事業は同社の中核分野の一つであり、売上構成比は2割強に達する。医療用酸素や医療ガスの供給に加え、病院設備工事、医療機器、受託滅菌、SPD(院内物流管理)など、医療現場の運営を支える周辺サービスまで事業領域を広げている。高齢化の進展を背景に、安定成長が期待される分野であり、医療用酸素では国内トップシェアを誇る。
農業・食品関連事業では、ハム・ソーセージなどの加工食品、冷凍食品、農産物、飲料、菓子などを手掛けており、農業から加工、流通までを一体で担う体制を構築している。液化窒素を活用した冷凍技術を起点に事業を拡大してきた歴史があり、現在では「食」を支えるインフラ的事業として重要な位置づけとなっている。
このほか、LPガスや灯油、天然ガスを扱うエネルギー関連事業、物流・流通倉庫・車体架装などの物流関連事業、業務用塩や人工海水を扱う海水関連事業、さらには防災・減災、マグネシア、エアゾール、Oリング事業など、多様な事業を展開している。これらはM&Aを通じて拡充されてきた分野であり、エア・ウォーターグループの多角化を象徴している。
エア・ウォーターグループでは、これらの事業を「デジタル&インダストリー」「エネルギーソリューション」「ヘルス&セーフティー」「アグリ&フーズ」という4つの事業領域に再編し、それぞれの分野で専門性とシナジーの最大化を図っている。産業ガスの供給を原点としながら、ものづくりの現場、人々の生命と健康、くらしを支えるエネルギーと食、さらには防災・環境分野までをカバーする、社会インフラ型の総合企業としての色合いを強めている。
総合すると、エア・ウォーターは産業ガスを基盤に、M&Aを武器として医療、食品、エネルギーなど生活に密着した分野へ事業を広げてきた国内有数の多角化企業である。安定性と成長性を併せ持ち、インフラ色の強い事業構造を特徴とする企業と位置づけられる。
エア・ウォーター 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株当り配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 1,004,914 | 62,181 | 60,978 | 40,137 | 176.8 | 60記 |
| 24.3 | 1,024,540 | 68,272 | 66,712 | 44,360 | 194.7 | 64 |
| 25.3 | 1,075,929 | 75,246 | 73,975 | 49,074 | 214.6 | 75 |
| 26.3予 | 1,200,000 | 80,000 | 78,000 | 51,000 | 222.5 | 75 |
| 27.3予 | 1,270,000 | 85,000 | 83,000 | 54,200 | 236.5 | 77〜81 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 56,953 | -71,135 | 19,257 |
| 24.3 | 79,625 | -97,966 | 14,723 |
| 25.3 | 93,236 | -62,166 | -27,335 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.1% | 9.3% | 3.6% | – | – |
| 2024 | 6.6% | 9.0% | 3.6% | – | – |
| 2025 | 6.9% | 9.4% | 3.9% | 11.4倍(高)/8.3倍(安) | 0.97倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
エア・ウォーターは売上規模が1兆円を超える国内有数のインフラ型企業であり、直近3年間を見ると業績は緩やかながら着実に拡大している。2024年3月期の営業利益は約682億円、経常利益は約667億円、純利益は約443億円であったが、2025年3月期には営業利益が約752億円、経常利益が約739億円、純利益が約490億円まで増加している。2026年3月期予想でも営業利益は約800億円、経常利益は約780億円、純利益は約510億円と、増益基調が続く前提となっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年の6.1%から2024年6.6%、2025年には6.9%まで緩やかに改善しており、大規模事業を抱える企業としては安定感のある水準にある。ROEは9.3%、9.0%、9.4%とおおむね9%台で推移しており、資本効率は高成長企業と比べれば控えめだが、インフラ型・多角化企業としては妥当な水準といえる。ROAも3.6%、3.6%、3.9%と安定しており、総資産を活用した利益創出力は堅調である。
バリュエーション面では、2025年時点の実績PERは高値平均で11.4倍、安値平均で8.3倍と低位に位置しており、PBRも0.9倍台と1倍を下回っている。利益が拡大しているにもかかわらず、市場評価は依然として割安圏にとどまっており、成長期待よりも安定性を重視した評価にとどまっていることが読み取れる。
総合すると、エア・ウォーターは営業利益・経常利益・純利益が段階的に積み上がり、営業利益率やROEも大きく悪化することなく安定して推移している。一方でPER・PBRはいずれも低水準にあり、成長株としてのプレミアムはほとんど織り込まれていない。高成長による株価急騰を狙う銘柄ではないが、業績の安定成長と割安なバリュエーションを背景に、中長期での緩やかな株価上昇とインカムゲインを狙う投資には適した銘柄と判断できる。
配当目的とかどうなの?
エア・ウォーターの予想配当利回りは、2026年3月期で3.41%、2027年3月期で3.50%と、東証プライム上場企業の中でも比較的高めの水準にある。極端に高配当というほどではないが、インフラ色の強い事業内容と業績の安定性を考慮すると、安心感のある利回りといえる。
業績面では、2024年から2026年にかけて営業利益が約682億円から800億円へ、純利益も約443億円から510億円へと着実に増加する見通しとなっており、配当の原資となる利益は拡大基調にある。営業利益率も6.1%から6.9%へと緩やかに改善しており、利益体質はむしろ強化されている。この点から見て、現在の配当水準は無理をしたものではなく、業績に裏付けられた配当と判断できる。
ROEは9%台、ROAは3%台で安定して推移しており、資本効率は高成長企業ほどではないものの、インフラ・多角化企業としては標準的かつ安定的である。過度な成長投資によって配当が犠牲になる局面は想定しにくく、配当の継続性という観点では評価しやすい。
バリュエーション面でも、2025年時点のPERは8.3倍から11.4倍、PBRは0.9倍台と低位に抑えられている。株価が割高でない水準にあるため、仮に業績が横ばいになったとしても、配当利回りが急低下するリスクは比較的小さい。株価の下支えとしても配当が機能しやすい状況にある。
総合すると、エア・ウォーターは「高配当株」というよりも、「安定配当を中長期で受け取り続けるインカム型銘柄」と位置づけるのが適切である。3.4〜3.5%前後の利回りを、業績の安定性と割安な株価水準を背景に享受できる点は、配当目的の投資先として十分に魅力がある。一方で、配当利回りの急上昇や大幅な増配を期待するタイプの銘柄ではなく、値上がり益よりも安定収入を重視する投資家向けの銘柄と判断できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
エア・ウォーターは、産業ガスを祖業とし、医療、エネルギー、農業・食品、ケミカル、物流などへ事業を広げてきた総合インフラ企業である。国内産業ガス業界では大陽日酸、日本エア・リキードと並ぶ大手の一角を占め、特に医療用酸素分野では国内首位の地位を確立している。近年は積極的なM&Aを通じて事業の多角化を進め、最終消費者に近い分野の比重を高めることで、景気変動への耐性を強めてきた。
現在の株価は2,194円で、予想配当利回りは2026年3月期で3.41%、2027年3月期で3.50%と、インフラ企業としては比較的高い水準にある。この価格帯を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、産業ガスと医療分野の安定需要を軸に、エネルギー、農業・食品分野の収益拡大が着実に進み、営業利益が800億円規模からさらに積み上がる展開を想定する。営業利益率は7%前後で安定し、ROEも9%台後半へと改善する。業績の安定成長が評価され、市場の見方が引き上げられることで、PERは12倍前後、PBRは1倍近辺まで回復する。この場合、配当評価と割安修正が同時に進み、株価は緩やかに上昇し、5年後には3,000円から3,800円程度まで上昇する展開が考えられる。安定配当を維持しながら評価が見直される強気シナリオである。
中間のシナリオでは、各事業は安定的に推移するものの、大きな成長加速は見られず、営業利益は750〜850億円程度で推移するケースを想定する。営業利益率は6%台後半、ROEは9%前後で横ばいとなり、市場評価もPER9〜11倍、PBR0.9倍前後で大きくは変化しない。この場合、株価は現在値2,194円を中心に緩やかに上下しながら推移し、5年後の水準は2,300円から2,800円程度に収まる可能性が高い。配当を受け取りながら長期保有する、現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、製造業向け需要の停滞やコスト上昇により利益の伸びが鈍化し、営業利益率が6%を下回る展開を想定する。ROEやROAも低下基調となり、市場評価はより慎重になる。PERは8倍台、PBRは0.8倍前後まで低下し、株価は調整色を強める。この場合、現在値2,194円から下落し、5年後には1,600円から2,000円程度まで下げる展開も想定される。
総合すると、現在株価2,194円を起点としたエア・ウォーターの5年間の値動きは、良い場合で3,000円から3,800円前後、中間で2,300円から2,800円、悪い場合で1,600円から2,000円といったレンジが想定される。成長株として急騰を狙う銘柄ではないが、業績の安定性、割安な評価水準、3%台半ばの配当利回りを背景に、インカムゲインを重視しつつ緩やかな値上がりを狙う中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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