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堺化学工業とは

堺化学工業は、1918年に創立された総合化学メーカーで、亜鉛関連事業を起点として発展してきた企業である。本社は大阪府堺市堺区戎島町に置き、100年以上の歴史を持つ老舗化学会社として知られている。創業当初から無機化学分野に強みを持ち、その流れの中で酸化チタン事業を中核に据え、現在では国内有数の酸化チタンメーカーとしての地位を築いている。
同社の主力製品である酸化チタンは、塗料、インク、プラスチック、化粧品など幅広い分野で使用される基礎素材であり、堺化学工業は長年にわたってこの分野で技術力と生産実績を積み上げてきた。無機材料分野では酸化チタンに加え、バリウム、ストロンチウム、亜鉛といった金属系無機材料にも強みを持ち、これらの技術基盤が電子材料や医薬品関連事業の展開にもつながっている。
電子材料分野では、誘電体材料やセラミックス関連材料などを手掛け、エレクトロニクスや産業用途向けに製品を供給している。近年は高機能化や高付加価値化が求められる分野への対応を進めており、無機化学技術を応用した先端材料の開発にも取り組んでいる。また触媒分野では、光触媒、脱硝触媒、油脂加工触媒、オゾン分解触媒などを展開しており、環境対応や産業プロセスの効率化といったニーズに応える製品群を持つ点も特徴である。
医薬品分野では、かつて感冒薬「改源」で広く知られており、一般消費者向けの医薬品事業を展開していた歴史がある。2013年には医薬品事業を株式会社カイゲンに譲渡し、同社はカイゲンファーマ株式会社へ商号変更されたが、医薬品分野はグループ会社として現在も事業の一角を担っている。無機材料で培った化学技術が、医薬品分野の基礎となってきた点も堺化学工業の特徴といえる。
また、同社はかつてバリウムの原料となる重晶石を確保する目的で、北海道赤井川村に小樽松倉鉱山を保有していた。1935年に買収されたこの鉱山は1971年に閉山しているが、資源確保から製品製造までを一体で考える事業姿勢が、同社の歴史を象徴している。現在は資源開発からは撤退しているものの、原料調達や製造プロセスにおける安定性を重視する姿勢は引き継がれている。
堺化学工業は、みどり会の会員企業であり、三和グループに属している点も特徴である。グループ会社には、堺商事、カイゲンファーマ、大崎工業、レジノカラー工業、片山製薬所などがあり、化学、医薬、関連製造分野で事業の裾野を広げている。総じて、堺化学工業は酸化チタンを中心とした無機化学分野を軸に、電子材料や触媒といった成長分野にも展開し、さらに医薬品分野の系譜も持つバランス型の総合化学メーカーである。派手な成長を追う企業ではないが、長年培ってきた技術力と事業基盤を背景に、安定性と専門性を併せ持つ企業として位置づけられる。
堺化学工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 84,918 | 4,304 | 4,012 | -2,803 | -166.6 | 15 |
| 連22.3 | 80,135 | 7,494 | 8,840 | 6,747 | 407.1 | 70 |
| 連23.3 | 83,861 | 4,407 | 4,854 | 2,344 | 144.9 | 75 |
| 連24.3 | 82,105 | 2,942 | 3,066 | -7,092 | -437.7 | 70 |
| 連25.3 | 84,409 | 6,093 | 6,279 | 5,013 | 309.2 | 135 |
| 連26.3予 | 86,000 | 6,500 | 6,500 | 5,500 | 359.2 | 130〜140 |
| 連27.3予 | 88,000 | 7,500 | 7,500 | 5,550 | 362.5 | 135〜148 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 773 | -2,620 | 3,283 |
| 2024年3月期 | 6,866 | -3,963 | 1,259 |
| 2025年3月期 | 12,005 | -5,714 | -6,879 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 5.2 | 2.9 | 1.8 | ― | ― |
| 2024年3月期 | 3.5 | -9.6 | -5.7 | ― | ― |
| 2025年3月期 | 7.2 | 6.4 | 4.0 |
高値平均 12.1 安値平均 9.0 |
0.60 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績推移を見ると、2024年3月期は売上高821億円、営業利益29億円、経常利益30億円を確保しているものの、純利益はマイナス70億円と大きな赤字を計上している。この年は営業利益率3.5%、ROEマイナス9.6%、ROAマイナス5.7%と、収益性・資本効率ともに大きく悪化しており、明確な業績調整局面にあったと判断できる。
一方、2025年3月期は売上高844億円、営業利益60億円、経常利益62億円、純利益50億円と急回復している。営業利益率は7.2%まで改善し、ROEは6.4%、ROAは4.0%と黒字水準へ戻っている。2024年の赤字から一転して、本業の収益力が正常化したことが数値上はっきりと示されている。2026年3月期予想でも、売上高860億円、営業利益65億円、経常利益65億円、純利益55億円と、回復基調が続く前提となっており、利益水準はさらに安定する見通しとなっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年5.2%から2024年3.5%へ低下した後、2025年には7.2%まで回復しており、利益体質の改善が確認できる。ただし、化学メーカーとしては高水準とは言い切れず、景気や市況の影響を受けやすい構造である点は残る。ROE、ROAも2024年の大幅な悪化から回復しているものの、2025年時点ではまだ中程度の水準にとどまっている。
バリュエーション面では、2025年実績PERは高値平均12.1倍、安値平均9.0倍と低位にあり、PBRは0.6倍と明確な純資産割れ水準にある。これは、2024年の大幅赤字の記憶が市場評価に強く残っていることを示しており、業績回復が十分に信頼されていない状態といえる。一方で、数値上は利益が回復しているにもかかわらずPBRが0.6倍にとどまっている点は、回復が持続するなら割安余地があるとも解釈できる。
以上を踏まえた投資判断としては、堺化学工業は2024年に大きな業績悪化を経験したものの、2025年以降は営業利益・経常利益・純利益ともに明確な回復基調に入りつつある銘柄である。ただし、ROEやROAはまだ高水準とは言えず、安定成長企業というよりは市況回復に左右されやすい素材株の性格が強い。
結論として、提示された数値だけで判断する限り、堺化学工業は「業績回復初期段階にある割安株」と位置づけられる。PBR0.6倍、PER10倍前後という評価は下振れリスクをある程度織り込んでおり、業績回復が継続すれば評価修正余地はある。一方で、収益性や資本効率の水準を考えると、安定成長や高ROEを期待する銘柄ではなく、業績回復と配当を前提にした中長期・ややリスク許容型の投資向けの銘柄といえる。
配当目的とかどうなの?
堺化学工業を配当目的で見ると、配当重視の投資対象としては比較的魅力がある部類と判断できる。まず数値面では、2026年3月期の予想配当利回りが4.29%、2027年3月期でも4.46%と、東証全体の平均を明確に上回る水準にある。高配当株と呼べるゾーンに入っており、インカムゲインを重視する投資家にとっては十分に検討対象となる利回りである。
配当の裏付けとなる利益水準を見ると、2024年3月期は純利益がマイナス70億円と大きな赤字を計上したが、2025年3月期には純利益50億円まで急回復している。さらに2026年3月期予想では純利益55億円と、回復基調が続く前提となっている。赤字期を経た直後ではあるものの、直近と予想の利益水準から見れば、現在の配当水準は利益に見合った範囲にあり、無理に配当を出している印象は強くない。
キャッシュフローの面でも、2025年3月期には営業キャッシュフローが120億円規模まで拡大しており、本業からの資金創出力は大きく改善している。投資キャッシュフローはマイナスが続いているが、設備投資や能力増強を行いながら、財務キャッシュフローはマイナスに転じており、配当や借入返済を進めている構造である。配当原資はキャッシュフロー面でも一定の裏付けがあるといえる。
一方で注意点もある。堺化学工業は素材系企業であり、市況や原材料価格の影響を受けやすい。実際に2024年には大きな赤字を経験しており、業績の振れ幅は小さくない。そのため、将来にわたって配当が安定的に増え続けるタイプの銘柄ではなく、業績次第では減配リスクも内包している点は意識しておく必要がある。
結論として、堺化学工業は配当利回り4%台という水準から見て、配当目的の投資として一定の魅力がある銘柄である。ただし、安定配当を長期にわたり確実に得たい投資家向けというよりは、業績回復局面にある素材株を前提に、比較的高い利回りを享受したい中長期投資家向けの銘柄と位置づけられる。配当を軸にしつつ、業績の上下動を許容できるかどうかが投資判断の分かれ目となる。
今後の値動き予想!!(5年間)
堺化学工業は、酸化チタンを中核とする無機化学分野を主力とした総合化学メーカーであり、1918年創立の老舗企業である。亜鉛関連事業を起点として発展し、現在では酸化チタン、バリウム、ストロンチウム、亜鉛などの無機材料を中心に、電子材料、触媒、医薬品関連まで幅広い事業を展開している。酸化チタンでは国内大手の一角を占め、塗料、インク、プラスチック、化粧品など幅広い用途向けに製品を供給している。また、電子材料分野ではセラミックスや機能性材料、触媒分野では光触媒や脱硝触媒など環境対応製品も手掛けており、事業ポートフォリオは比較的分散されている。3,025.0円を起点に今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、酸化チタンや電子材料分野が堅調に推移し、市況回復とともに利益水準が安定する展開を想定する。営業利益は60〜70億円規模を維持し、営業利益率も7%前後で定着する。ROEやROAも一桁台半ばまで改善し、業績回復への信頼が高まることで市場評価が見直される。PBRは0.8倍前後まで回復し、PERも10倍台前半で安定する。この場合、高配当評価と割安修正が進み、株価は緩やかに上昇し、5年後には4,200円から5,000円程度まで上昇する展開が考えられる。高配当を維持しながら業績が安定する場合の強気シナリオである。
中間のシナリオでは、業績は回復するものの大きな成長はなく、素材市況の影響を受けながら横ばいで推移するケースを想定する。営業利益は50〜60億円程度、営業利益率は6%前後にとどまり、ROEも6%前後で推移する。配当は維持され、高利回りの魅力は継続するが、成長期待は高まらない。この場合、株価は現在値3,000円前後を中心に上下しながら推移し、5年後の水準は3,200円から3,800円程度に収まる可能性が高い。配当を受け取りながら保有する、現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、再び市況悪化や原材料価格上昇の影響を受け、利益水準が低迷するケースを想定する。営業利益は40億円を下回り、営業利益率も5%を下回る。ROEやROAは伸び悩み、配当維持に対する不安が意識されることで市場評価は一段と慎重になる。PBRは0.5倍台まで低下し、PERも一桁台にとどまる。この場合、株価は調整色を強め、現在値3,000円前後から下落し、5年後には2,000円から2,500円程度まで下げる展開も想定される。
総合すると、現在株価3,000円前後を起点とした堺化学工業の5年間の値動きは、良い場合で4,200円から5,000円前後、中間で3,200円から3,800円、悪い場合で2,000円から2,500円といったレンジが想定される。成長株として大きな値上がりを狙う銘柄ではないが、高配当と割安水準を背景に、インカムゲインを重視しつつ業績回復の持続性を見極める中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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