株価
大阪ソーダとは

株式会社大阪ソーダは、エポキシ樹脂原料などの基礎化学品と機能性化学品を主力とする化学メーカーで、特に医薬品精製材料分野では世界トップクラスの競争力を持つ企業である。本社は大阪市西区にあり、電解技術を中核とした高い技術力を強みとしている。
1913年に帝国人造絹糸(現・帝人)など関西財界を中心に設立され、日本で初めて電解ソーダの工業的連続製造法を確立し、高純度の苛性ソーダを生産した歴史を持つ。こうした電解技術を基盤に、基礎化学品から高付加価値の機能化学品へと事業領域を広げてきた。みどり会の会員企業であり、三和グループに属している点も同社の特徴である。
現在の事業は、基礎化学品、機能性化学品、次世代事業、その他事業の4領域で構成されている。基礎化学品事業では、苛性ソーダ、塩素、アリルクロライド、エピクロルヒドリンなどを製造しており、エポキシ樹脂原料をはじめ、化学、電子材料、建材など幅広い分野に供給している。
機能性化学品事業では、アリルエーテル類、エピクロルヒドリンゴム、ジアリルフタレート樹脂(DAP樹脂)、液体クロマトグラフィー用シリカゲル、シランカップリング剤などを展開している。とりわけ医薬品精製用シリカゲルは世界トップクラスのシェアを持つ主力製品であり、同社の高い収益性と競争力を支えている。
次世代事業では、医薬品原薬や中間体、電極関連製品を手掛け、医薬・エネルギー分野といった成長領域への展開を進めている。その他の事業として、建材、生活用品、資源リサイクル、βグルカン関連製品なども展開し、事業の多角化を図っている。1988年には事業拡大に伴い社名をダイソー株式会社に変更したが、創業100周年を迎えた2015年に株式会社大阪ソーダへ社名を戻し、創業の原点を明確にした。
関連会社にはダイソーケミカル、ダイソーエンジニアリング、DSロジスティクス、DSウェルフーズなどがあり、製造からエンジニアリング、物流までを含めた一貫した事業体制を構築している。全体として大阪ソーダは、電解技術を基盤とする基礎化学品による安定収益と、医薬品精製材料を中心とした高付加価値の機能性化学品による成長性を併せ持つ、専門性の高い化学メーカーと位置づけられる。
直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 97,266 | 8,341 | 8,838 | 6,050 | 51.5 | 13 |
| 連22.3 | 88,084 | 12,401 | 13,435 | 9,442 | 80.9 | 16 |
| 連23.3 | 104,208 | 15,557 | 17,164 | 10,570 | 85.7 | 18 |
| 連24.3 | 94,557 | 10,492 | 12,008 | 7,650 | 60.2 | 18 |
| 連25.3 | 96,434 | 13,246 | 14,154 | 10,332 | 81.5 | 19 |
| 連26.3予 | 102,000 | 17,300 | 18,700 | 13,500 | 108.7 | 25 |
| 連27.3予 | 110,000 | 18,600 | 20,000 | 13,500 | 108.7 | 25〜26 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 9,354 | -5,380 | -4,596 |
| 2024年3月期 | 8,597 | -4,263 | -3,199 |
| 2025年3月期 | 17,049 | -8,135 | -4,221 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 14.9 | 10.6 | 7.6 | – | – |
| 2024年3月期 | 11.0 | 6.9 | 5.0 | – | – |
| 2025年3月期 | 13.7 | 8.9 | 6.7 | 12.0〜27.0 | 2.24 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績水準を見ると、営業利益は2024年3月期で104億、2025年3月期で132億、2026年3月期予想では173億と、明確な増益トレンドにある。経常利益も同様に120億、141億、187億と順調に伸びており、事業環境が悪化している企業とは言い難い。純利益も76億から103億、さらに2026年予想では135億まで拡大しており、利益成長の勢いははっきりしている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年14.9%、2024年11.0%、2025年13.7%と、一時的な低下はあったものの、再び高水準に戻している。化学メーカーとしてはかなり高い部類であり、付加価値の高い製品構成であることが数値からも読み取れる。ROEは2023年10.6%、2024年6.9%、2025年8.9%と振れはあるが、直近では再び高水準に回復しており、資本効率は同業の中でも優秀な部類に入る。ROAも7.6%、5.0%、6.7%と、総資産に対してしっかり利益を生み出している。
一方で株式市場での評価を見ると、2025年の実績PERは安値平均で12.0倍、高値平均で27.0倍と振れ幅が大きい。これは業績変動よりも、将来成長に対する期待と警戒が混在していることを示している。PBRは2.2倍と明確に1倍を超えており、資産価値に対してはすでに高い評価が付いている状態だと言える。
これらを総合すると、大阪ソーダは利益成長力、営業利益率、ROE・ROAといった「企業の稼ぐ力」は非常に高く、事業内容の質も数字上は優秀である。一方で、その分だけ株価評価はすでに進んでおり、PBR2倍超という水準は、今後も成長が続くことを前提とした価格になっている。
したがって投資判断としては、企業の中身は良いが、価格面では慎重さが必要という結論になる。業績が計画通りに伸び続ければ株価は正当化されるが、成長が鈍化した場合には評価調整が起こりやすい。割安株として拾う局面ではなく、業績の伸びを確認しながら付き合うタイプの銘柄で、押し目や評価低下局面でこそ妙味が出やすい。上記数値だけで判断するなら、大阪ソーダは「高収益・高効率だが割安ではない企業」であり、成長を信じて持つか、価格調整を待ってから入るかが分かれ目になる銘柄と位置づけられる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点だけで見ると、大阪ソーダは正直かなり相性が悪い。まず利回りだが、連26.3、連27.3ともに予想配当利回りは1.14%にとどまっている。この水準は化学セクター全体で見ても低く、インカム目的で株を保有するには物足りない数字だ。預金や債券と比較しても、価格変動リスクを取ってまで保有するメリットは小さい。
利益水準は拡大しており、2026年3月期予想では純利益135億と高水準に達しているが、それに対する一株配当は25円前後で、配当性向はかなり低い。稼いだ利益を株主還元よりも、成長投資や内部留保に回す姿勢が強いことが数字からも読み取れる。
キャッシュフローを見ても営業キャッシュフローは十分に出ており、配当を増やせない事情があるわけではない。それでも配当利回りが1%強にとどまっている点からは、経営側が配当を主要な株主還元手段とは考えていないことが明確だ。
このため、配当目的で大阪ソーダを選ぶ理由はほぼない。安定配当を重視する投資家にとっては、同じ化学セクターでも他にもっと利回りの高い選択肢がある。一方で、大阪ソーダは配当をもらいながら持つ銘柄ではなく、あくまで業績成長や事業価値の拡大を評価して保有する成長寄りの銘柄だ。結論として、配当目的では不向き。インカム狙いなら候補から外れ、成長性や将来の利益拡大を信じる場合にのみ検討対象になる、という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
大阪ソーダは、エポキシ樹脂原料をはじめとする基礎化学品と、高付加価値の機能性化学品を主力とする化学メーカーである。電解技術を中核に事業を展開しており、苛性ソーダやエピクロルヒドリンなどの基礎化学品で安定した事業基盤を持つ一方、医薬品精製材料向けのシリカゲルでは世界トップクラスのシェアを誇るなど、機能性化学品分野で強い競争力を有している。近年は医薬・半導体・電池関連といった先端分野向け製品の比重が高まっており、化学メーカーの中では比較的高収益な事業構造となっている。現在の株価2,184円を起点に、今後5年間の値動きをシナリオ別に考える。
良い場合のシナリオでは、医薬品精製材料を中心とした機能性化学品の需要が拡大し、半導体や電池関連向けも堅調に推移することで、高い営業利益率が維持される展開を想定する。営業利益は170億円超の水準で安定し、ROEも9〜10%前後を維持することで、市場からの成長評価が一段と高まる。PERは20倍台前半から後半で評価され、PBRも2倍台半ばまで容認されるようになれば、株価は段階的に切り上がり、5年後には3,000円から3,500円程度まで上昇する可能性がある。成長力がそのまま株価に反映される強気のシナリオである。
中間のシナリオでは、機能性化学品は堅調に推移するものの、大きな成長加速はなく、全体としては現在の延長線上での業績推移となるケースを想定する。営業利益率は12〜14%程度、ROEは8%前後にとどまり、評価水準も大きく変わらない。PERは15〜20倍、PBRは2倍前後で推移し、株価は現在水準を中心に上下しながら推移する。この場合、5年後の株価は1,800円から2,700円程度に収まる可能性が高く、値上がり益は限定的だが、業績の安定感を評価して保有される現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、医薬品や半導体向け需要が想定ほど伸びず、価格競争やコスト上昇の影響で利益率が低下するケースを想定する。営業利益率は10%前後まで低下し、ROEも6〜7%程度にとどまることで、成長期待が後退する。市場評価は慎重になり、PERは10〜15倍、PBRは1.5倍前後まで低下する可能性がある。この場合、株価は現在値を下回る水準で推移し、5年後には900円から2,000円程度まで調整する展開も考えられる。
総合すると、現在株価2,184円を起点とした大阪ソーダの5年間の値動きは、良い場合で3,000円から3,500円前後、中間で1,800円から2,700円、悪い場合で900円から2,000円といったレンジが想定される。高い利益率と成長性を持つ一方で、すでに高めの評価が付いているため、配当を目的とした投資には向かない。業績成長が続くことを前提に、評価の維持・拡大を狙う中長期の成長投資向け銘柄として位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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