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日本カーバイド工業とは

日本カーバイド工業株式会社は、機能化学品、機能樹脂、電子素材、セラミック基板、フィルム、ステッカー、再帰反射シートなどを幅広く展開する日本の化学メーカーであり、東京都港区に本社を置いている。各種の機能樹脂やセラミックス関連製品に加え、子会社を通じてアルミ建材事業も手掛けており、素材から加工品まで多層的な事業構造を持つ点が特徴である。
同社は1935年に富山県魚津市で創業された。社名の由来となっているカーバイドとは、炭素と金属元素の化合物であり、石灰岩から得られる生石灰とコークスを高温で反応させて製造される。当時の魚津市は、良質な石灰岩を安定的に調達できる立地であることに加え、水力発電による豊富な電力供給が可能であったため、カーバイド製造に適した地域であった。創業当時、カーバイドを原料とするアセチレン誘導工業は化学工業の最先端分野であり、日本カーバイド工業はこの分野を基盤として事業を開始している。
その後、化学工業全体の発展とともに事業領域を拡大し、現在ではセラミックス焼成技術、樹脂重合技術、フィルム・シート技術といったコア技術を軸に、多様な機能性製品を展開している。具体的には、機能化学品や機能性樹脂、半導体向け材料、半導体用金型クリーニング材、セラミック基板、各種フィルム、ステッカー、再帰反射シートなどを製造・販売しており、産業用途からエレクトロニクス分野、社会インフラ関連まで幅広い分野に製品を供給している。フィルム分野では「ハイエス」ブランドを中心に展開しており、長年培った加工技術と品質管理を強みとしている。
事業拠点としては、東京都に本社を構え、大阪市に営業拠点を置くほか、富山県魚津市および滑川市に工場、京都府に製造所、富山県滑川市に研究開発センターを有している。魚津工場には2000年代まで石炭炉が存在しており、地域の象徴的な施設として周辺からもよく見える存在であったとされている。研究開発センターでは、同社の中核となる材料技術を基にした新製品開発や高付加価値化に取り組んでいる。
グループ会社には、三和ケミカル、北陸セラミック、ビニフレーム工業、ダイヤモンドエンジニアリングなどがあり、電子・機能製品事業、フィルム・シート事業、建材関連事業、エンジニアリング事業といった複数の事業分野をグループ全体で展開している。また、過去には医薬品用カプセルの研究開発過程で、人造イクラの製法を偶然発見したというエピソードもあり、材料技術の応用力の広さを示す事例として知られている。
日本カーバイド工業は、1935年の創業以来、顧客の課題に応える製品を提供することで社会に貢献するという姿勢を一貫しており、現在も機能化学品や電子材料、フィルム・建材分野において、長年培ってきた技術力を基盤とした事業展開を続けている。
日本カーバイド工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 42,231 | 2,388 | 2,852 | 2,406 | 283.0 | 40 |
| 連22.3 | 47,003 | 3,192 | 4,055 | 1,930 | 211.5 | 55 |
| 連23.3 | 44,008 | 1,261 | 1,902 | 332 | 35.4 | 65 |
| 連24.3 | 43,231 | 849 | 1,573 | 999 | 106.4 | 80特 |
| 連25.3 | 48,727 | 3,493 | 3,761 | 2,211 | 237.5 | 80 |
| 連26.3予 | 49,500 | 3,600 | 3,700 | 2,500 | 268.1 | 82 |
| 連27.3予 | 51,500 | 3,800 | 3,900 | 2,650 | 284.2 | 82〜86 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 3,606 | -2,147 | -3,215 |
| 2024年3月期 | 5,373 | -2,437 | -1,264 |
| 2025年3月期 | 4,105 | -1,212 | -2,543 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 2.8 | 1.0 | 0.5 | ― | ― |
| 2024年3月期 | 1.9 | 3.0 | 1.6 | ― | ― |
| 2025年3月期 | 7.1 | 6.1 | 3.4 |
高値平均 23.2 安値平均 17.3 |
0.63 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、2024年3月期は売上高432億円に対し、営業利益8.4億円、経常利益15.7億円、純利益9.9億円と、利益水準はかなり低い状態にあったことが分かる。これに対して2025年3月期は売上高487億円、営業利益34.9億円、経常利益37.6億円、純利益22.1億円と大きく改善しており、利益面では明確な回復が確認できる。2026年3月期予想では売上高495億円、営業利益36.0億円、経常利益37.0億円、純利益25.0億円と、回復した水準を維持しつつ緩やかな増益が見込まれている。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年2.8%、2024年1.9%と低迷した後、2025年には7.1%まで改善している。ROEも1.0%、3.0%から6.1%へ、ROAも0.5%、1.6%から3.4%へと回復しており、依然として高水準とは言えないものの、明確に底打ちして改善局面に入っていることが読み取れる。特に営業利益率の改善幅は大きく、収益構造が正常化しつつある点は評価できる。
バリュエーション面では、2025年の実績PERは高値平均23.2倍、安値平均17.3倍と、業績回復局面としては極端な割高感はない水準にある。一方でPBRは0.6倍と1倍を大きく下回っており、資産価値に対する市場評価は依然として低い。ROEが6.1%にとどまっていることを考えると、PBRが低水準に抑えられているのは合理的であるが、今後ROEがさらに改善すれば評価修正余地が生じやすい水準ともいえる。
以上を踏まえた投資判断としては、日本カーバイド工業は2024年の低収益期を底に、2025年以降は利益・収益性ともに明確な回復局面に入ったと判断できる。一方で、ROEやROAはまだ中長期的に高評価される水準には達しておらず、成長株として積極的に買われる段階ではない。現在の評価は、業績回復を織り込みつつも慎重さが残る状態にある。
結論として、提示された数値だけで判断する限り、日本カーバイド工業は短期的な急成長を狙う銘柄ではないが、利益回復トレンドとPBR0.6倍台という割安水準を背景に、中長期での業績安定と緩やかな評価修正を期待する投資には適した銘柄といえる。今後の焦点は、営業利益率の改善が一過性に終わらず、ROEが一段と上昇していくかどうかにある。
配当目的とかどうなの?
日本カーバイド工業を配当目的で見ると、「条件付きで十分検討対象になる銘柄」と判断できる。まず数値面では、2026年3月期、2027年3月期ともに予想配当利回りは3.34%と、東証プライム全体で見ても平均以上の水準にある。極端な高配当ではないものの、安定配当株としては十分に魅力がある利回りといえる。
配当の裏付けとなる利益水準を見ると、2024年3月期は純利益9.9億円と低迷していたが、2025年3月期には22.1億円へ大きく回復している。2026年3月期予想では純利益25.0億円と、さらに増益が見込まれており、足元では配当原資に対する不安は小さい。営業利益や経常利益も30億円台後半まで回復しており、利益面から見た配当維持余力は十分にある。
キャッシュフローの面でも、営業キャッシュフローは安定して黒字を確保しており、投資キャッシュフローや財務キャッシュフローを考慮しても、配当を継続するだけの現金創出力は確認できる。特に近年は財務キャッシュフローがマイナスで推移しており、借入返済や配当など株主還元を意識した資金使途が続いている点は、配当目的の投資家にとって安心材料となる。
一方で注意点もある。ROEは6.1%、ROAは3.4%と、資本効率は依然として低水準にとどまっており、企業としての成長力や収益性は高いとは言えない。そのため、配当を大きく増やしていく余地は限定的であり、将来的に利回りが急上昇するタイプの銘柄ではない。また、事業特性上、市況悪化時には利益が落ち込みやすく、業績次第では増配よりも維持が優先される可能性が高い。
以上を踏まえると、日本カーバイド工業は「配当を主目的に長期保有し、業績の回復と安定を前提に3%台前半の利回りを取りに行く」タイプの銘柄といえる。高成長や大幅な増配を期待する銘柄ではないが、PBR0.6倍台という割安水準と、回復した利益水準を背景に、インカムゲインを重視する中長期投資には十分適した位置づけである。結論として、配当目的では「積極的に買いではないが、保有・検討価値は高い」。特に、業績が安定して推移する局面では、価格変動を抑えつつ配当を受け取りたい投資家向けの銘柄と評価できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本カーバイド工業は、機能化学品、機能性樹脂、電子素材、セラミック基板、フィルム、ステッカー、再帰反射シートなどを展開する中堅化学メーカーである。創業は1935年と歴史が長く、カーバイド製造を起点に、現在ではセラミックス焼成技術、樹脂重合技術、フィルム・シート加工技術をコアとした多角的な事業構造を持つ。子会社を通じてアルミ建材事業も手掛けており、素材から加工品まで幅広い分野に事業を展開している点が特徴である。
現在の株価は2,450円前後で、予想配当利回りは2026年、2027年ともに3.3%程度と、安定配当株として一定の魅力がある水準にある。この価格帯を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、収益回復が一過性に終わらず、営業利益率が7%前後で安定推移する展開を想定する。電子・機能製品や機能樹脂分野が底堅く推移し、ROEも一桁後半まで改善することで、市場の評価が見直される。この場合、PBRは1倍近辺まで回復し、PERも18〜22倍程度で安定する。配当利回り3%台を維持しながら評価修正が進み、株価は緩やかに上昇し、5年後には4,000円から4,800円程度まで上昇する展開が考えられる。配当と割安修正の両立が進んだ場合の強気シナリオである。
中間のシナリオでは、利益回復は維持されるものの大きな成長には至らず、営業利益は30億円台前半から中盤で推移するケースを想定する。営業利益率は6〜7%台、ROEは5〜6%前後にとどまり、市場評価は現状から大きく変わらない。この場合、株価は現在値2,450円を中心に上下しながら推移し、5年後の水準は2,800円から3,200円程度に収まる可能性が高い。配当を受け取りながら長期保有する、現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、業績回復が一時的に終わり、原材料価格の上昇や市況悪化により利益率が再び低下するケースを想定する。営業利益は20億円前後まで落ち込み、ROEやROAも低迷が続く。配当維持に対する不安が意識され、市場評価は一段と慎重になる。この場合、PBRは0.5倍前後まで低下し、株価は調整色を強め、5年後には1,800円から2,200円程度まで下げる展開も想定される。
総合すると、現在株価2,450円前後を起点とした日本カーバイド工業の5年間の値動きは、良い場合で4,000円から4,800円前後、中間で2,800円から3,200円、悪い場合で1,800円から2,200円といったレンジが想定される。成長株として大きな値上がりを狙う銘柄ではないが、割安なPBR水準と3%台の配当利回りを背景に、業績の回復と安定を前提としたインカムゲイン重視の中長期投資向け銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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