株価
日本化学工業とは

日本化学工業株式会社は、工業薬品分野の老舗化学メーカーであり、無機化学を中核とした機能材料メーカーとして事業を展開している。東京都江東区に本社を置き、日本の無機化学分野では首位級の地位を持つ企業である。企業の起源は、日本の十大発明家に選ばれた棚橋寅五郎に端を発する日本製錬と、渋沢栄一および大倉喜八郎が設立に関与した旧日本化学工業にあり、両社の統合を経て現在の体制が築かれた。この歴史的背景から、旧大倉財閥系企業としての側面も持ち、電子情報技術産業協会の会員企業でもある。
事業の柱は、リン化合物を中心とする無機工業薬品および機能性材料である。主力製品には、リン酸、ホスフィン誘導体、リン酸エステルなどのリン化合物のほか、ケイ酸ナトリウム、無水クロム酸、工業用バリウム化合物などがある。リン酸製造においては、日本燐酸やセントラル硝子、東洋燐酸、東ソーなどが採用する湿式法とは異なり、黄リンを原料とする乾式法をラサ工業とともに採用している点が特徴で、高純度用途への対応力を強みとしている。2012年には日本電工からクロム塩事業を譲り受け、表面処理や電子材料分野での製品ラインアップを拡充した。
近年では、MLCC向けチタン酸バリウムをはじめとする電子部品向け機能材料が事業の成長ドライバーとなっている。電子部品、半導体、電池といった分野では、高性能化・小型化が進む中で材料の高純度化や品質安定性が重要となっており、同社は長年培ってきた無機合成技術を生かしてこれらのニーズに応えている。また、ホスフィン遷移金属錯体を用いた抗癌剤の研究など、医薬品分野への技術応用にも取り組んでいる。
生産拠点は福島、愛知、山口など国内各地に配置され、福島第一工場、福島第二工場、愛知工場、徳山工場を通じて安定供給体制を構築している。大量生産型の総合化学メーカーとは異なり、比較的ニッチで専門性の高い分野に強みを持ち、特定用途向けの高付加価値製品を中心に事業を展開している点が特徴である。
財務・株主還元面では、総還元性向40%を目安とした株主還元方針を掲げており、DOEは2%を超える水準を維持している。安定したキャッシュフローを背景に、配当を重視した経営姿勢を持つ点も特徴で、成長性と安定性を併せ持つ無機化学メーカーとしてのポジションを確立している。
日本化学工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 34,642 | 2,783 | 2,315 | 2,182 | 248.1 | 70 |
| 連22.3 | 37,275 | 3,921 | 3,864 | 3,735 | 424.5 | 85 |
| 連23.3 | 38,075 | 1,292 | 1,412 | 855 | 97.1 | 70 |
| 連24.3 | 38,538 | 2,264 | 2,383 | 1,590 | 180.4 | 70 |
| 連25.3 | 38,843 | 3,342 | 3,199 | 2,559 | 290.6 | 92 |
| 連26.3予 | 40,000 | 3,100 | 3,100 | 2,600 | 296.9 | 120 |
| 連27.3予 | 41,500 | 3,450 | 3,450 | 2,300 | 262.7 | 120 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 1,494 | -2,817 | 102 |
| 2024.3 | 6,152 | -4,414 | -870 |
| 2025.3 | 6,367 | -5,070 | -2,419 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 3.3% | 2.0% | 1.1% | – | – |
| 2024 | 5.8% | 3.5% | 2.0% | – | – |
| 2025 | 8.6% | 5.5% | 3.4% |
高16.4倍 安11.1倍 |
0.48倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
日本化学工業は、売上規模が年間380〜400億円程度の無機化学メーカーであり、直近では利益水準の回復がはっきりと確認できる局面にある。2024年3月期の売上高は約385億、営業利益は約22億、経常利益は約23億、純利益は約15億だったが、2025年3月期には売上高約388億に対して営業利益は約33億、経常利益は約31億、純利益は約25億へと大きく改善している。2026年3月期予想でも売上高は約400億、営業利益と経常利益はいずれも約31億、純利益は約26億と、利益水準の維持が見込まれている。
収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年の3.3%から2024年に5.8%、2025年には8.6%まで上昇しており、明確な改善トレンドにある。ROEも2.0%から3.5%、5.5%へと段階的に上昇しており、依然として高水準とは言えないものの、資本効率は着実に改善している。ROAも1.1%、2.0%、3.4%と同様に回復基調にあり、事業の収益力そのものが底上げされていることが読み取れる。
バリュエーション面では、2025年実績ベースのPERは高値平均で16.4倍、安値平均で11.1倍と、成長性を織り込むほどの水準ではない。PBRは0.48倍と1倍を大きく下回っており、資産価値に対して市場評価は依然として低位に抑えられている。利益回復が進んでいるにもかかわらず、評価面ではまだ慎重な水準にとどまっている点が特徴である。
以上を踏まえると、日本化学工業は、急成長株ではないものの、営業利益率・ROE・ROAが揃って改善している回復局面にあり、かつPBR0.5倍前後という明確な割安水準に位置している。利益が一時的な反発に終わらず、30億円前後の営業利益を安定的に維持できるかが今後の評価の分かれ目となるが、少なくとも現時点では「業績は改善しているが評価はまだ追いついていない」段階といえる。成長期待よりも、回復局面での是正余地と下値の堅さを重視する中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、日本化学工業は配当目的としてかなり相性が良い部類です。日本化学工業の予想配当利回りは、2026年3月期、2027年3月期ともに4.54%と、東証全体の平均を明確に上回る水準にある。化学セクターの中でも、4%台半ばの利回りは高配当株として十分に意識される水準である。
業績面を見ると、2026年3月期予想の純利益は約26億と、直近実績と同水準を維持する見通しとなっており、配当水準を支えるだけの利益体力は確保されている。営業利益率は2025年に8.6%まで改善しており、収益構造は以前より安定度を増している。ROEは5.5%と高水準ではないものの、回復局面にあり、無理な増配ではなく利益改善に沿った配当水準といえる。
バリュエーション面ではPBRが0.48倍と大きく1倍を下回っており、株価にはすでに保守的な評価が織り込まれている。仮に業績が横ばいにとどまった場合でも、配当利回り4.5%前後が下値の支えとして機能しやすい。減配リスクがゼロとは言えないものの、少なくとも現状の利益水準が維持される限り、配当継続性に対する不安は小さい。
一方で、ROEや成長性が高い銘柄ではないため、配当を再投資しながら株価上昇も同時に狙うタイプではない。値上がり益よりも、安定したインカムゲインを重視する投資スタンス向きであり、特にPBRが低位に抑えられている現状では、配当を受け取りながら業績の安定を待つ戦略と相性が良い。総合すると、日本化学工業は「高成長ではないが、回復基調の利益と4.5%前後の高配当を享受できる銘柄」であり、キャピタルゲインよりもインカムゲインを重視する配当目的の中長期保有には十分検討に値する銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本化学工業は、リン化合物やバリウム化合物などの無機化学製品を主力とする工業薬品の老舗メーカーであり、近年はMLCC向けチタン酸バリウムを中心とした電子部品向け機能材料への依存度が高まっている構造となっている。日本の無機化学分野では首位級のポジションを持ち、黄リンを原料とする乾式法によるリン酸製造など、独自性の高い製造技術を強みとしている。電子部品、半導体、電池といった分野向けの素材供給が収益の柱であり、量よりも品質や機能性を重視する事業モデルが特徴である。現在の株価は2,639円で、配当利回りは4.5%前後と高水準にある。この価格帯を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、MLCCや電子部品向け機能材料の需要が堅調に推移し、営業利益率が8%台後半から9%程度まで定着する展開を想定する。ROEやROAも緩やかに改善し、利益の安定性が評価されることで市場の見方が変化する。PBRは0.6〜0.7倍程度まで見直され、PERも15倍前後で安定する。この場合、割安修正と高配当評価が進み、株価は緩やかに上昇し、5年後には3,600円から4,400円程度まで上昇する展開が考えられる。配当を受け取りながら株価の見直しを待つ、比較的堅実な強気シナリオである。
中間のシナリオでは、電子材料分野の需要は底堅いものの、大きな成長は見られず、利益水準は30億円前後で安定するケースを想定する。営業利益率は7〜8%程度、ROEは5%前後にとどまり、市場評価は大きく変わらない。この場合、株価は現在値2,639円を中心に上下しながら推移し、5年後の水準は2,800円から3,300円程度に収まる可能性が高い。高配当を受け取りつつ保有する、現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、電子部品市況の悪化や価格競争の激化により利益率が低下するケースを想定する。営業利益は20億円台まで落ち込み、営業利益率も6%前後に低下する。ROEやROAは再び低迷し、市場評価は一段と慎重になる。PBRは0.3〜0.4倍程度まで下落し、PERも10倍を下回る水準にとどまる。この場合、株価は現在値2,639円から下落し、5年後には1,900円から2,300円程度まで下げる展開も想定される。
総合すると、現在株価2,639円を起点とした日本化学工業の5年間の値動きは、良い場合で3,600円から4,400円前後、中間で2,800円から3,300円、悪い場合で1,900円から2,300円といったレンジが想定される。急成長を狙う銘柄ではないが、利益回復とPBR0.5倍前後という割安水準、4.5%前後の高配当を背景に、インカムゲインを重視しつつ評価是正を待つ中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す