株価
日本曹達とは

日本曹達は、農薬を中心とするアグリビジネスを最大の収益源としつつ、化学品や医薬品、電子材料まで幅広く展開する高付加価値型の総合化学メーカーである。東京都千代田区に本社を置き、略称は日曹と呼ばれる。かつては日曹コンツェルンの中核企業であり、現在も独立系として独自技術を軸に事業を展開している。
事業の柱は農業化学品で、殺菌剤、殺虫・殺ダニ剤、除草剤などの農薬を国内外で展開している。特に自社開発品を多く持ち、海外売上比率も高いことから、業績は下期に偏りやすいものの、収益性の高い分野となっている。農薬は天候や作付け状況の影響を受ける一方、世界的な食料需要を背景に中長期では安定した需要が見込まれる分野であり、日本曹達の中核事業として位置付けられている。
化学品分野では、クロールアルカリ事業を基盤に、苛性ソーダ、塩素、塩酸、カリ製品、青化製品などを手掛けている。これらは基礎化学品として安定した需要があり、事業全体の土台となっている。また、環境化学品として水処理剤、殺菌消毒剤、光触媒、PCB無害化処理なども展開しており、環境対応分野にも一定の存在感を持つ。
機能性化学品分野では、半導体向けフォトレジスト材料や特殊樹脂、染料製品などを展開しており、エレクトロニクス分野という成長市場に関与している。特に半導体関連材料は景気変動の影響を受けやすい一方で、高付加価値分野として中長期的な成長余地を持つ事業である。
医薬品分野では、医薬中間体や製剤用添加剤を手掛けており、なかでも医薬品添加剤であるHPCは国内トップクラスのシェアを持つ。医薬品分野は景気変動の影響を受けにくく、農薬や化学品とは異なる安定収益源として機能している。
生産拠点は二本木、高岡、水島、千葉など国内各地に配置され、研究所も小田原や千葉、各工場内に設置されている。海外にもニューヨーク、デュッセルドルフ、サンパウロ、上海などに拠点を持ち、グローバルに事業を展開している。子会社・関連会社も多く、商社、物流、建設、金属化学、農薬関連など、事業を支える体制が整っている。
総合すると、日本曹達は農薬を収益の柱としながら、基礎化学品による安定性、医薬品添加剤による堅実な収益、半導体材料などの成長分野を組み合わせた事業構造を持つ企業である。業績は下期偏重という特徴を持つものの、高付加価値分野への展開を進めることで、安定性と成長性を両立させようとするバランス型の化学メーカーといえる。
日本曹達 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株当り配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 139,363 | 9,980 | 12,743 | 7,360 | 127.6 | 55 |
| 連22.3 | 152,536 | 11,930 | 16,512 | 12,683 | 227.2 | 90 |
| 連23.3 | 172,811 | 16,893 | 26,456 | 16,692 | 299.4 | 120 |
| 連24.3 | 154,429 | 13,872 | 23,297 | 16,612 | 298.7 | 120 |
| 連25.3 | 155,199 | 16,063 | 19,529 | 15,011 | 272.6 | 140 |
| 連26.3予 | 150,000 | 14,200 | 18,000 | 14,200 | 263.3 | 140〜146 |
| 連27.3予 | 155,000 | 15,200 | 18,800 | 14,600 | 270.7 | 140〜152 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 15,590 | -4,863 | -10,441 |
| 2024.3 | 5,729 | -9,594 | 6,694 |
| 2025.3 | 22,636 | -17,557 | -5,389 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 9.7% | 9.8% | 6.6% | — | — |
| 2024.3 | 8.9% | 8.8% | 5.7% | — | — |
| 2025.3 | 10.3% | 8.0% | 5.2% | 7.1~10.0倍 | 1.00倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず24年3月期を見ると、売上高は約1,544億円、営業利益は約138億円、経常利益は約232億円、純利益は約166億円という水準だった。売上規模は安定しており、その中で営業利益率が8.9%と高く、本業の稼ぐ力はかなり強い。化学メーカーの中では利益率が高い部類で、農薬や高付加価値化学品がしっかり利益を出していることが数字からも分かる年だった。
25年3月期になると、売上高はほぼ横ばいの約1,551億円だが、営業利益は約160億円まで増えている。営業利益率は10.3%と二桁に乗っており、本業の効率はさらに改善した。一方で、経常利益は約195億円、純利益は約150億円と、24年からはやや減っている。営業段階では強いが、最終利益ではピーク感が出てきた年と見ることもできる。
26年3月期の予想では、売上高は約1,500億円、営業利益は約142億円、経常利益と純利益はいずれも約180億円、142億円と、25年よりは少し落ち着く前提になっている。大きく崩れるわけではないが、成長が続くというよりは、ここ数年の高水準を維持しながら横ばいに近づく局面という印象が強い。
収益性を見ると、営業利益率は3年間で9.7%、8.9%、10.3%と、非常に安定して高い。これは日本曹達の大きな強みで、事業構造そのものが利益を出しやすいことを示している。ROEは9.8%、8.8%、8.0%とやや低下傾向だが、それでも8%台を維持しており、資本効率は決して悪くない。ROAも6.6%、5.7%、5.2%と少しずつ下がっているものの、5%を超えている点は評価できる。
株価評価の面では、25年時点のPERが7.1倍から10.0倍と一桁台中心で、明らかな割高感はない。PBRも1.0倍と、純資産とほぼ同水準の評価にとどまっている。営業利益率やROEの水準を考えると、もう少し評価されても不思議ではないが、市場は成長性が高くない点を織り込んで、慎重な評価をしているように見える。
これらを総合すると、日本曹達は、業績の安定性と収益性は非常に高いが、今後数年で大きく伸びていく姿は数値上はあまり見えない企業だといえる。成長株として強気に買われるタイプではないが、利益が大きく崩れにくく、PERも低めに抑えられているため、下値リスクは比較的限定的と考えられる。提示された数値だけで判断するなら、日本曹達は、派手さはないが稼ぐ力のある会社で、評価も過度に高くない。大きな値上がりを狙うよりも、安定した収益基盤を評価しながら中長期で構える、守り寄りの投資スタンスに合った銘柄という印象になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という視点で日本曹達を見ると、かなり分かりやすく「向いている部類」に入る銘柄だと思う。まず予想配当利回りを見ると、26年3月期で3.93%、27年3月期でも3.93%と、4%近い水準が見込まれている。日本株全体で見ても、この水準は明確に高配当ゾーンで、インカムゲインを重視する投資家にとっては十分に魅力的な数字である。
この配当が無理をして出されているかという点を、業績面から見ると、そういう印象はあまりない。営業利益率は9〜10%と非常に高く、営業利益自体も140〜160億円規模を安定して確保できている。ROEも8%前後を維持しており、企業としての稼ぐ力はしっかりしている。その中で配当を維持しているため、配当の持続性は比較的高いと考えられる。
また、PERが7〜10倍程度、PBRが1倍前後という評価水準にあるため、株価自体が割安〜妥当な水準にあり、その結果として配当利回りが高く見えている面もある。ただし、これは業績が弱いから利回りが高いというタイプではなく、利益水準が高いのに評価が抑えめという構図であり、いわゆる「見かけ倒しの高配当」ではない。
一方で、日本曹達は急成長企業ではなく、業績は下期偏重で年度ごとのブレも出やすい。そのため、毎年大幅な増配を続けていくタイプというよりは、利益水準に応じて配当を調整しつつ、基本的には高めの配当を安定的に出すスタンスに近いと考えられる。大きな増配期待を持つよりも、現行水準を長く維持できるかどうかを見る銘柄である。配当目的で見るなら、日本曹達は十分に検討対象になる銘柄で、値上がり益よりも、安定したインカムゲインを中長期で受け取りたい投資家に向いた、堅実な高配当株だといえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本曹達は、農薬を中核事業とする高付加価値型の化学メーカーであり、農業化学品を最大の収益源としながら、化学品、医薬品添加剤、半導体材料といった複数の分野で事業を展開している。農薬分野では殺菌剤、殺虫・殺ダニ剤、除草剤などを国内外で販売しており、自社開発品を多く持つ点が強みで、業績は下期に偏りやすいものの、利益率は高い。化学品分野ではクロールアルカリを基盤に、苛性ソーダや塩素誘導品などの工業薬品を手掛け、安定した需要を確保している。
医薬品分野では製剤用添加剤HPCで国内首位級の地位を持ち、景気変動を受けにくい安定収益源となっている。さらに、半導体向けフォトレジスト材料などの機能性化学品も展開しており、成長分野への関与も持つ。売上高は1,500億円前後で推移し、営業利益率は9〜10%台と化学メーカーとしては非常に高い水準にある。配当水準も高く、現在株価3,560円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、農薬事業が海外を中心に堅調に推移し、下期偏重ながらも安定した利益創出が続く環境を想定する。医薬品添加剤や半導体材料といった高付加価値分野も底堅く推移し、営業利益率は10%前後を維持、ROEも8%台後半で安定する。高収益体質と約4%の配当利回りが市場に再評価され、PERは10倍台後半、PBRも1倍台に乗る水準まで評価是正が進む。この場合、現在株価3,560円から株価は段階的に見直され、5年後には5,400円から6,000円程度まで上昇する展開が考えられる。高配当と安定収益を評価した場合の強気シナリオである。
中間のシナリオでは、事業環境に大きな変化はなく、売上高・利益ともに現状水準を中心に推移するケースを想定する。営業利益率は9%前後、ROEは8%前後で安定し、収益力は高いものの成長期待は限定的となる。配当は維持され、利回りの魅力は継続するが、市場評価は大きく変わらず、PERは7〜10倍、PBRは1倍前後で推移する。この場合、株価は現在水準を中心に緩やかに上下しながら推移し、5年後の水準は3,900円から4,200円程度に収まる可能性が高い。配当を受け取りながら長期保有する、最も現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、農薬市場の競争激化や原材料価格の上昇により、収益性がやや低下するケースを想定する。営業利益率は8%を下回り、ROEも7%前後まで低下する。業績の伸び悩みが意識されることで市場評価は慎重になり、PERは6倍台、PBRも1倍割れが定着する。この場合、配当は維持される可能性が高いものの、株価は調整局面に入り、現在株価3,560円から下落して、5年後には2,600円から2,900円程度まで下げる展開も想定される。
総合すると、現在株価3,560円を起点とした日本曹達の5年間の値動きは、良い場合で5,400円から6,000円前後、中間で3,900円から4,200円、悪い場合で2,600円から2,900円といったレンジが想定される。急成長を狙うタイプの銘柄ではないが、高い収益性と約4%の安定配当を背景に、値動きの安定性とインカムゲインを重視する中長期投資家向けの銘柄だといえる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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