株価
東邦アセチレンとは

同社は、溶接・切断用ガスの製造を起源とするガスメーカーであり、現在は高圧ガス、石油ガス、産業機材、メディカル、コンシューマーといった複数分野を併営する事業構造を持っている。東ソーおよび日本酸素ホールディングス系に属し、産業ガス分野において安定した供給体制と技術基盤を背景に事業を展開している。
主力となる高圧ガス関連事業では、溶解アセチレンをはじめ、酸素、窒素、アルゴンなどの各種産業用ガスを製造・販売しており、鉄鋼、金属、機械、半導体、化学、研究開発分野といった幅広い産業で使用されている。さらに食品や医療といった生活に近い分野でも利用されており、社会インフラを支える基礎素材としての役割が大きい。品質管理や安定供給が特に重視される分野であることから、同社は安全性と信頼性を重視した事業運営を行っている。
石油ガス関連事業では、液化石油ガス(LPG)を中心に、家庭用・業務用エネルギーの供給を行っている。LPGは安定供給が可能で、CO2排出量が比較的少ないことから、低炭素社会に適したエネルギーとして位置づけられている。また可搬性に優れ、災害時の復旧が早い分散型エネルギーである点も特徴で、地域密着型のエネルギー供給事業として重要な役割を担っている。
産業機材関連事業では、溶接材料や溶接・切断器具、ガス容器などを取り扱い、製造現場の安全性と生産性向上を支えている。溶接材料に加え、ロボットやレーザー加工機といった先端設備の提案も行っており、単なるガス供給にとどまらず、モノづくり現場全体を支援するソリューション型の事業展開を進めている。
メディカル関連事業では、医療用ガスの製造・販売を中心に、医療機器の提供や医療ガス配管工事まで幅広く対応している。病院や医療施設だけでなく、在宅医療や福祉分野にも関与しており、高齢化社会の進展に伴って重要性が増す医療インフラをガスの側面から支えている点が特徴である。
コンシューマー分野では、食品用ガスや理美容用途、エスプーマなど、ガスの特性を生かした製品・サービスを展開している。対象物を傷つけずに処理できる装置や、食品の急速凍結、廃棄物の有効活用といった分野にも応用が広がっており、産業用途にとどまらないガス利用の可能性を追求している。総じて同社は、産業ガスを軸にエネルギー、機材、医療、生活関連分野まで事業領域を広げた多角化型のガスメーカーであり、景気変動の影響を受けにくい安定的な事業構造を特徴としている。社会インフラを支える基盤産業として、安定供給と安全性を重視しながら、ガスの新たな活用分野の開拓にも取り組んでいる企業である。
東邦アセチレン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3* | 29,826 | 1,189 | 1,290 | 738 | 21.1 | 9 |
| 連22.3* | 31,285 | 1,228 | 1,354 | 823 | 23.7 | 10 |
| 連23.3* | 34,087 | 1,522 | 1,684 | 988 | 28.5 | 12 |
| 連24.3* | 35,423 | 2,116 | 2,441 | 1,415 | 40.7 | 14 |
| 連25.3 | 34,804 | 1,914 | 2,170 | 1,287 | 37.0 | 14 |
| 連26.3予 | 34,300 | 1,520 | 1,650 | 990 | 28.5 | 14 |
| 連27.3予 | 34,500 | 1,550 | 1,640 | 980 | 28.2 | 14 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,105 | -443 | -454 |
| 2024 | 2,406 | -1,463 | -492 |
| 2025 | 2,231 | -993 | -730 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.4% | 5.9% | 3.1% | ― | ― |
| 2024 | 5.9% | 8.0% | 4.2% | ― | ― |
| 2025 | 5.4% | 7.0% | 3.8% | 7.1〜10.2倍 | 0.67倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
業績を見ると、営業利益は2024年3月期が約21億円、2025年3月期が約19億円、2026年3月期予想が約15億円と、明確に減益基調に入っている。経常利益も24年約24億円から25年約21億円、26年予想では約16億円まで低下しており、純利益も24年約14億円から26年予想では約9億円と縮小している。売上規模自体は大きく崩れていないものの、利益水準はピークアウトしており、足元では守りの局面に入っている印象が強い。
収益性を見ると、営業利益率は2023年4.4%、2024年5.9%、2025年5.4%と低位ながらも比較的安定しており、極端な悪化は見られない。ROEは5.9%、8.0%、7.0%、ROAは3.1%、4.2%、3.8%と、資本効率・資産効率はいずれも中程度で、成長企業というより堅実型の水準にとどまっている。
バリュエーション面では、2025年実績PERが7.1倍から10.2倍、PBRが0.6倍台と、株価は明確に割安水準に置かれている。市場は将来の高成長を織り込んでおらず、すでに業績鈍化を前提とした評価になっているといえる。
以上を総合すると、この銘柄は利益成長を期待して買うタイプではなく、業績が大きく崩れないことを前提に、低PER・低PBRという割安感と配当を評価する銘柄である。利益は減少傾向にあるものの、営業利益率やROE、ROAが一定水準を保っているため、下値リスクは比較的限定的と考えられる。一方で、利益回復や資本効率の大幅な改善が見えない限り、株価が大きく上方向へ評価される可能性も低く、値上がり益狙いには向かない。投資判断としては中立からやや保守的に買いで、安定配当と割安水準を前提に長期で保有する投資家向けの銘柄と位置づけられる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点では、かなり相性は良い部類に入る。予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに約3.9%と、東証全体で見ても明確に高利回りゾーンに位置している。しかも直近の業績を見る限り、売上は横ばい水準を維持しており、営業利益や純利益は減少傾向にあるものの、急激な悪化ではなく、事業自体が不安定化している印象は強くない。
ROEは7%前後、ROAも4%弱と突出して高いわけではないが、PBRは0.6倍台と純資産に対してかなり低く評価されており、株主還元を続けやすい財務余地はある。PERも一桁台から10倍前後と低水準で、配当が市場評価の中心になりやすい構造といえる。
利益が今後も緩やかに減少していく場合には、将来的な増配は期待しにくいが、現状の水準であれば減配リスクはそれほど高くなく、配当の維持を前提としたインカムゲイン投資には適している。値上がり益を狙う銘柄ではないが、価格変動をある程度許容しつつ、毎年約4%の配当を安定的に受け取る目的であれば、十分に検討余地のある銘柄といえる。総合すると、この銘柄は配当目的で保有する分には「合格点以上」、成長や株価上昇を期待する投資には不向き、という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
東邦アセチレンは、溶接・切断用ガスの製造を祖業とする高圧ガスメーカーであり、現在では産業用ガス、家庭用LPガス、溶接材料・器具、医療用ガスなど幅広い分野に事業を展開している。事業構成は高圧ガス関連、石油ガス関連、産業機材関連、メディカル関連、コンシューマー分野と多岐にわたり、製造業から医療・生活分野まで裾野の広い安定型ビジネスを特徴としている。東ソーおよび日本酸素ホールディングス系に位置づけられ、地域密着型のガス供給と堅実な経営が強みである。現在の株価は357円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、産業用ガスや医療用ガスの需要が安定的に推移し、原材料コストの落ち着きなどにより利益率が改善する展開を想定する。営業利益率は5%台後半で安定し、ROEも8%前後まで改善する。割安感の見直しが進み、PERは10倍前後、PBRは0.7倍程度まで評価が戻る。この場合、配当を維持しながら株価は緩やかに切り上がり、5年後には500円から650円程度まで上昇する可能性がある。インカムゲインに加えて一定のキャピタルゲインも期待できるシナリオである。
中間のシナリオでは、業績は大きく伸びないものの安定的に推移し、営業利益は15〜20億円程度、営業利益率は5%前後を維持する。ROEやROAも現在水準で横ばいとなり、市場評価も大きく変化しない。この場合、株価は現在値357円を中心に上下しながら推移し、5年後の水準は380円から450円程度に収まる可能性が高い。配当を受け取りながら長期保有する、現実的で無理のないシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、国内産業需要の鈍化やコスト上昇の影響により利益水準が低下するケースを想定する。営業利益は15億円を下回り、営業利益率も4%台前半まで低下する。ROEやROAも低迷し、市場評価はさらに慎重になる。PBRは0.5倍前後、PERも6倍台まで低下し、この場合、株価は調整色を強め、現在値357円から下落して、5年後には260円から320円程度まで下げる展開も想定される。
総合すると、現在株価357円を起点とした東邦アセチレンの5年間の値動きは、良い場合で500円から650円前後、中間で380円から450円、悪い場合で260円から320円といったレンジが想定される。成長株として大きな値上がりを狙う銘柄ではないが、低PBRと安定配当を背景に、配当収入を重視しつつ長期で保有するインカム重視型の中長期投資向け銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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