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第一稀元素化学工業(4082)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

第一稀元素化学工業とは

第一稀元素化学工業は、ジルコニウム化合物を主力とする希元素専門の化学メーカーであり、自動車排ガス浄化触媒分野では国内首位クラスの地位を持つ企業である。本社は大阪府大阪市中央区北浜に置き、東京証券取引所プライム市場に上場している。希元素というニッチな分野に特化しながら、自動車産業を中心に高い存在感を示している点が特徴である。

同社の中核事業はジルコニウム化合物の製造・販売であり、これらは自動車排気ガス浄化用の三元触媒、酸素センサー、ブレーキ部材などに使用されている。特に自動車排ガス浄化三元触媒向けでは、国内自動車メーカーに対してほぼ独占的に供給しているとされており、非常に高いシェアと信頼性を有している。環境規制の強化を背景に、排ガス浄化触媒向け材料は安定した需要基盤を持っている。

近年は次世代分野への展開にも注力しており、燃料電池車向け材料の開発を重要な成長テーマとして掲げている。燃料電池関連用途においても、ジルコニウム化合物の特性を生かした材料開発を進めており、水素社会の進展を見据えた中長期的な事業拡大を狙っている。また、電気自動車に使用されるリチウムイオン電池向け材料についても研究開発を行っていることが株主向け説明会などで明らかにされており、EVシフトへの対応も進めている。

さらに、同社はペロブスカイト関連化合物の研究にも取り組んでおり、この分野が注目された際にはノーベル賞関連銘柄として株価が大きく動いた経緯もある。基礎研究から応用研究まで幅広く手掛ける研究開発力は、第一稀元素化学工業の重要な競争力の一つといえる。

事業所については、本社を大阪市中央区北浜に置くほか、大阪、島根県江津市、福井県に工場を持ち、生産体制を分散している。営業所は大阪と東京に構え、顧客対応を行っている。また、大阪市住之江区には研究開発センターを設置し、新材料や新用途の開発を担っている。海外にも複数の事業所を持ち、グローバルに事業を展開している。

総合すると、第一稀元素化学工業は、自動車排ガス浄化触媒向けジルコニウム化合物で圧倒的な競争力を持つ一方、燃料電池、EV電池材料、先端材料研究といった次世代分野にも積極的に取り組む専門性の高い化学メーカーである。安定した既存事業と将来成長を見据えた研究開発の両立を図る企業として位置づけられる。

第一稀元素化学工業 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(円) 一株配当(円)
2021年3月期 23,465 2,015 2,131 1,235 50.9 18
2022年3月期 29,365 3,768 6,000 1,849 76.2 23
2023年3月期 35,748 5,391 5,969 4,020 165.4 34
2024年3月期 35,220 2,422 2,942 1,140 46.9 26
2025年3月期 33,641 2,282 632 792 32.6 26
2026年3月期(予) 34,000 2,400 1,200 1,000 41.2 28
2027年3月期(予) 35,000 2,600 2,200 1,500 61.8 28〜29

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023年3月期 3,893 -4,423 2,454
2024年3月期 5,310 -3,447 -2,444
2025年3月期 3,498 -551 -3,525

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率(%) ROA(%) ROE(%) PER(倍) PBR(倍)
2023年3月期 15.0 6.0 11.3
2024年3月期 6.8 1.7 3.1
2025年3月期 6.7 1.2 2.0 12.1~15.3 0.72

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の水準を見ると、2024年3月期は売上高352億円、営業利益24億円、経常利益29億円、純利益11億円で着地している。営業利益率は6.8%と、過去の高水準からは低下しており、ROEは3.1%、ROAは1.7%と資本効率はかなり低い水準にとどまっている。利益は出ているものの、稼ぐ力や効率性の面では物足りない状態である。

2025年3月期は売上高336億円、営業利益22億円、経常利益6億円、純利益7億円と、利益水準がさらに低下している。営業利益率は6.7%とほぼ横ばいだが、ROEは2.0%、ROAは1.2%まで下がっており、収益性・資本効率ともに弱含んでいることがはっきりしている。特に経常利益の落ち込みが大きく、事業環境の厳しさが数字に表れている。

一方、2026年3月期予想では売上高340億円、営業利益24億円、経常利益12億円、純利益10億円と、利益面は持ち直す前提となっている。営業利益は再び20億円台半ばを回復する見通しであり、底打ち感は出てきている。ただし、過去のピーク水準と比べると、依然として回復途上にある。

収益性と効率性をまとめて見ると、営業利益率は2023年の15.0%から2024年に6.8%、2025年に6.7%へと大きく低下しており、高収益局面はすでに過ぎている。ROEは11.3%から3.1%、2.0%へ、ROAも6.0%から1.7%、1.2%へと急低下しており、資本を効率よく使えている状態とは言いにくい。

一方で、市場評価はすでに調整が進んでいる。2025年実績ベースのPERは12.1倍から15.3倍程度、PBRは0.7倍と純資産割れ水準にある。利益水準が落ちているにもかかわらず、PERが過度に高いわけではなく、PBRも低位に抑えられていることから、市場は業績悪化をある程度織り込んでいると考えられる。

以上を踏まえた投資判断として、第一稀元素化学工業は、過去の高収益局面からは明確に調整局面に入っており、直近の数値だけを見る限り、成長力や資本効率を評価して積極的に買われる段階ではない。一方で、営業利益20億円台を安定的に確保できる体力はあり、PBR0.7倍という評価水準は下値余地を限定的にしている。

結論として、提示された数値のみで判断するならば、第一稀元素化学工業は「高成長株」ではなく、「業績ピーク後の調整局面にある割安気味の素材株」と位置づけられる。積極的な値上がりを狙う局面ではないが、業績の底打ちと安定回復を前提に、慎重に中長期で保有する選択肢が検討される銘柄といえる。

配当目的とかどうなの?

第一稀元素化学工業を配当目的で見ると、配当だけを主目的にするにはやや弱いという評価になる。まず利回り水準を見ると、2026年3月期・2027年3月期ともに予想配当利回りは2.60%とされており、東証全体の平均水準と比べるとやや低めから中程度に位置する。高配当株と呼べる4%前後の水準には達しておらず、純粋にインカムゲインを重視する投資家にとっては、他により魅力的な選択肢が存在する利回りである。

配当の裏付けとなる利益水準を見ると、2025年3月期は純利益7億円と低水準にとどまり、ROEは2.0%、ROAは1.2%と資本効率もかなり低い。2026年3月期は純利益10億円までの回復が見込まれているものの、過去の高収益期と比べると依然として弱い水準であり、配当余力が潤沢とは言い切れない。配当は維持されているが、利益成長によって自然に利回りが高まっていく局面ではない。

キャッシュフローの面では、営業キャッシュフローは安定してプラスを維持しており、配当の原資自体は確保できている。一方で、これまで設備投資を積極的に行ってきた経緯があり、利益水準が低迷する中では、配当よりも将来に向けた投資や財務バランスを優先する判断が出てくる可能性もある。現時点では配当維持に無理がある状態ではないが、配当を大きく増やせる環境でもない。

以上を踏まえると、第一稀元素化学工業は、配当目的“だけ”で選ぶ銘柄ではない。2.6%前後の配当利回りを評価しつつ、業績の底打ちや将来の回復余地、希元素というニッチ分野での競争力を併せて期待する中長期投資向けの銘柄といえる。安定した高配当を継続的に得たい投資家よりも、事業の回復や将来テーマを重視しながら配当も受け取るスタンスの投資家に向いた銘柄である。

今後の値動き予想!!(5年間)

第一稀元素化学工業は、ジルコニウム化合物を主力とする希元素専門の化学メーカーであり、自動車排ガス浄化触媒向け材料では国内トップクラスのシェアを持つ企業である。自動車排気ガス浄化三元触媒、酸素センサー、ブレーキ関連部材などに使用されるジルコニウム化合物を供給しており、国内自動車メーカーに対しては極めて高い供給比率を持つ。近年は既存の自動車分野に加え、燃料電池車向け材料や次世代電池材料などへの展開にも注力している。ニッチ分野に特化した高い技術力を背景に、安定した事業基盤を築いてきた点が特徴である。この現在値1,073円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、自動車排ガス浄化触媒向け需要が底堅く推移しつつ、燃料電池車や次世代電池材料向けの取り組みが徐々に収益貢献する展開を想定する。営業利益は20億円台後半から30億円規模まで回復し、営業利益率も8%前後まで改善する。ROEやROAも持ち直し、業績の底打ちが明確になることで市場評価が見直される。PBRは1倍近辺まで回復し、PERも15倍前後で安定する。この場合、評価修正が進み、株価は現在の1,073円から上昇し、5年後には1,600円から2,000円程度まで上昇する展開が考えられる。

中間のシナリオでは、既存事業は安定するものの、新分野の立ち上がりは限定的で、利益水準は20億円台前半から半ばで横ばい推移するケースを想定する。営業利益率は6〜7%程度、ROEは2〜4%前後にとどまり、市場評価も大きくは変わらない。この場合、株価は現在値1,073円を中心に推移し、5年後の水準は1,100円から1,400円程度に収まる可能性が高い。配当を受け取りながら中長期で保有する現実的なシナリオといえる。

悪い場合のシナリオでは、自動車関連需要の減速やコスト増加の影響を受け、利益回復が進まないケースを想定する。営業利益は20億円を下回り、営業利益率も6%を下回る。ROEやROAは低迷が続き、市場評価は一段と慎重になる。PBRは0.6倍前後まで低下し、PERも一桁台に近づく。この場合、株価は現在の1,073円から下落し、5年後には700円から900円程度まで下げる展開も想定される。

総合すると、現在株価1,073円を起点とした第一稀元素化学工業の5年間の値動きは、良い場合で1,600円から2,000円前後、中間で1,100円から1,400円、悪い場合で700円から900円といったレンジが想定される。成長株として大きな値上がりを狙う銘柄ではないが、ニッチ分野での競争力と一定の配当を背景に、業績の底打ちと緩やかな回復を待つ中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。

この記事の最終更新日:2025年12月18日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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