株価
四国化成ホールディングスとは

四国化成ホールディングス株式会社は、化学品事業と建材事業を中核とする四国化成グループの持株会社であり、本社を香川県丸亀市に置く。2023年1月、持株会社制への移行に伴い、従来の四国化成工業株式会社から商号変更して現在の体制となった。
四国化成グループの事業の柱は化学品事業であり、特にラジアルタイヤ向けの不溶性硫黄において高い競争力を持つ。タイヤ用途向けを中心に輸出比率が高く、海外市場の需要動向が業績に影響を与える構造となっている。このほか、プリント配線板向けの水溶性防錆剤、プールや浄化槽向けの殺菌・消毒剤、排水処理向けの微生物・酵素剤など、産業用途から生活環境分野まで幅広い化学品を開発・製造・販売している。
化学品事業は四国化成工業株式会社が担っており、本社を香川県丸亀市に置くほか、東京支社、大阪支社、研究開発拠点としてR&Dセンターを香川県宇多津町に構えている。生産拠点としては丸亀工場、徳島工場北島事業所などを有し、基礎化学品から機能性化学品までを一貫して手掛ける体制を整えている。
もう一つの柱である建材事業では、四国化成建材株式会社を中心に、住宅・建築分野向けの製品を展開している。壁材や舗装材といった建築資材に加え、門扉、フェンス、カーポートなどの住宅・景観エクステリア製品を開発・製造・販売しており、デザイン性と機能性を重視した商品展開を特徴としている。全国に営業拠点を持ち、住宅市場や公共空間向けを中心に安定した需要を確保している。
主な製品には、不溶性硫黄、二硫化炭素、イミダゾール、中性無水芒硝、プリント配線板用防錆剤、プール・浴槽・浄化槽向けの殺菌消毒剤、排水処理用微生物製剤のほか、湿式内装材・外装材・舗装材、門扉やカーポートなどのエクステリア製品が含まれる。産業用途と生活環境用途の双方をカバーしている点がグループの特徴である。
グループ内には、化学品の製造・加工を担うシコク興産、硫黄化学関連を手掛けるシコク硫炭工業、海外での販売・マーケティングを担う米国子会社など、化学品分野を支える関連会社が多数存在する。建材分野でも、エクステリア製品の設計・製造を行うシコク景材やシコク工機などの関連会社を擁し、開発から製造までを内製化した体制を構築している。
さらに、ソフトウェア開発を行うシコク・システム工房や、モスバーガーのフランチャイズ運営、保険代理業などの関連事業も展開しており、事業ポートフォリオは多岐にわたる。全体として、四国化成ホールディングスは、不溶性硫黄を中心とする輸出比率の高い化学品事業と、国内需要に根差した建材事業を両立させた事業構造を持つ。市況変動の影響を受けやすい側面はあるものの、用途分散と事業分散によって安定性を確保しており、地方発の中堅化学グループとして堅実な経営を続けている。
四国化成ホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12変 | 46,566 | 6,462 | 7,270 | 4,997 | 93.8 | 26(記) |
| 連23.12 | 63,117 | 8,019 | 9,280 | 7,853 | 152.1 | 28 |
| 連24.12 | 69,493 | 9,741 | 10,779 | 8,813 | 191.4 | 50 |
| 連25.12予 | 70,000 | 10,500 | 11,000 | 7,200 | 166.5 | 50〜52 |
| 連26.12予 | 82,000 | 11,000 | 11,500 | 7,500 | 173.4 | 50〜54 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 連22.12 | 2,919 | -3,669 | 1,423 |
| 連23.12 | 12,950 | -3,559 | -2,810 |
| 連24.12 | 9,021 | -15,550 | -3,717 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 12.7% | 9.1% | 5.9% | — | — |
| 2024 | 14.0% | 10.5% | 6.4% | 12.1倍/8.6倍 | 1.34倍 |
| 2025 | 15.0% | 8.6% | 5.3% | 17.20倍 | — |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、営業利益は2023年12月期で約80億、2024年12月期で約97億と大きく伸びており、2025年12月期予想では約105億、2026年12月期予想では約110億と、増益基調が続く見通しとなっている。経常利益も2023年の約92億から2024年には約107億へ拡大し、2026年予想では約115億と、全体として高水準で安定した推移が見られる。一方で純利益は2023年が約78億、2024年が約88億と増加した後、2025年予想では約72億といったん減少し、2026年予想で約75億へ回復する見通しとなっており、利益成長が一服する局面に入っていることが読み取れる。
収益性の面では、営業利益率が2023年の12.7%から2024年に14.0%、2025年には15.0%まで上昇しており、製造業としてはかなり高い水準にある。これは事業の競争力が強く、価格決定力や付加価値の高い製品構成を持っていることを示している。一方、ROEは2023年が9.1%、2024年が10.5%と改善したものの、2025年には8.6%まで低下しており、資本効率はピークを過ぎつつある。ROAも同様に、2024年の6.4%をピークに2025年は5.3%へ低下しており、利益水準は高いが、伸びの勢いはやや鈍化している印象を受ける。
株価指標を見ると、2024年実績ベースでPERは高値平均が12.1倍、安値平均が8.6倍、PBRは1.3倍となっている。PBRが1倍を超えている点から、すでに資産価値以上の評価を市場から受けており、割安株という位置づけではない。また、2025年予想PERは17.2倍と、利益成長をある程度先取りした水準にまで評価が進んでいることが分かる。
これらを総合すると、四国化成ホールディングスは営業利益率15%という高い収益力を背景に、ここ数年で市場評価が大きく切り上がった企業である。一方で、ROEやROAが2025年にかけて低下している点や、純利益が一時的に減少する見通しとなっている点を踏まえると、成長の加速局面から安定局面へ移行しつつある可能性がある。その中でPERやPBRはすでに低水準とは言えず、評価面の余地は以前より小さくなっている。
提示された数値だけで判断するなら、この銘柄は業績自体は非常に良好だが、株価はその好業績をある程度織り込んだ水準にあると考えられる。短期的には業績の上振れがなければ大きな株価上昇は期待しにくく、逆に利益率の低下や純利益の伸び悩みが続けば、PER調整による株価の下押しリスクも意識される。
結論として、四国化成ホールディングスは高収益企業であることは間違いないものの、現時点では割安感を重視して新規に積極的に買い向かう局面ではなく、投資判断としては中立からやや慎重寄りが妥当と考えられる。すでに保有している場合は業績の持続性を確認しながらの継続保有、新規投資では評価が落ち着く局面を待つ姿勢が合っている銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で四国化成ホールディングスを見ると、結論はかなり分かりやすい。まず数字だけを見ると、連25年12月期、連26年12月期ともに予想配当利回りは1.81%となっており、東証全体の平均や高配当株と比べると明確に低い水準である。インカムゲインを主目的に投資する場合、この利回りだけを見ると物足りなさは否定できない。
業績面を見ると、営業利益率は15%まで上昇し、営業利益・経常利益ともに高水準で推移しており、企業としての収益力は非常に高い。一方で、ROEやROAは2025年にかけてやや低下しており、成長の勢いはピークアウトしつつある可能性がある。そうした中で、配当利回りが1.8%程度にとどまっていることから、会社の利益配分は株主還元よりも、内部留保や成長投資を重視している姿勢がうかがえる。
また、PBRは1.3倍とすでに1倍を超えており、株価水準自体も割安とは言えない。配当利回りが低い理由は、単に配当が少ないというよりも、株価が業績評価を織り込んで上昇してきた結果と見ることもできる。このため、今後も大幅な増配がなければ、利回りが大きく改善する可能性は高くない。
以上を踏まえると、四国化成ホールディングスは配当を主目的に保有する銘柄には向いていない。安定配当や高配当を期待する投資スタンスとは相性が悪く、インカム狙いであれば他により適した銘柄が多数存在する。一方で、配当を「おまけ」と割り切り、事業の収益力や中長期的な成長、株価の値上がりを重視する投資であれば話は別になる。四国化成ホールディングスは高い営業利益率と競争力のある事業を持つ企業であり、キャピタルゲイン重視の投資や、成長企業への投資という位置づけであれば納得感はある。
今後の値動き予想!!(5年間)
四国化成ホールディングスは、ラジアルタイヤ向け不溶性硫黄を主力とする化学品事業と、住宅・景観分野向け建材事業を展開する化学グループの持株会社である。化学品分野ではタイヤ用途を中心に高い競争力を持ち、海外向け比率も高い。一方、建材事業では国内市場を中心に、外構・景観エクステリアや舗装材など安定需要を取り込んでいる。高い営業利益率を背景に収益力は強く、近年は業績拡大とともに市場評価も切り上がってきた。現在の株価2,762円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、世界的な自動車生産が底堅く推移し、タイヤ向け不溶性硫黄の需要が安定的に拡大する展開を想定する。化学品事業の高付加価値製品が収益を牽引し、営業利益率は15%前後を維持、営業利益・経常利益ともに高水準で推移する。ROEも10%前後で安定し、高収益企業としての評価が定着することで市場の見方は一段と前向きになる。PBRは1.5倍前後まで切り上がり、PERも11〜13倍程度で安定する。この場合、配当利回りは低いままでも成長性と収益力が評価され、株価は緩やかに上昇し、5年後には3,500円から4,200円程度まで上昇する展開が考えられる。収益力の高さが素直に株価に反映される強気シナリオである。
中間のシナリオでは、自動車・産業向け需要は大きく崩れず、化学品・建材の両事業とも現状水準を概ね維持するケースを想定する。営業利益率は13〜15%程度で安定し、ROEは8〜9%台で推移する。市場評価は現在水準に近いPBR1.2〜1.4倍、PER9〜11倍程度に落ち着き、株価は大きなトレンドを描かずに推移する。この場合、5年後の株価水準は2,500円から3,000円程度に収まり、値上がり益は限定的だが、業績の安定性を背景に大きく下落しにくい堅実なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、世界的な景気後退や自動車生産の減速が長期化し、タイヤ向け需要が鈍化する展開を想定する。営業利益率は13%を下回り、営業利益・純利益ともに伸び悩む。ROE・ROAも低下し、成長性に対する評価が慎重になることで市場の評価倍率は切り下がる。PBRは1倍前後、PERは7〜8倍程度まで低下し、この場合、株価は調整色を強め、5年後には1,800円から2,200円程度まで下落する可能性がある。配当利回りが低いため、下落局面ではインカムによる下支えは弱いシナリオである。
総合すると、現在株価2,762円を起点とした四国化成ホールディングスの5年間の値動きは、良い場合で3,500円から4,200円前後、中間で2,500円から3,000円、悪い場合で1,800円から2,200円といったレンジが想定される。高成長株というよりも高収益体質を評価されてきた銘柄であり、今後は成長の持続性が株価の方向性を左右する。高配当目的には向かないが、事業の競争力と利益率の高さを評価し、中長期での値上がりを狙う投資向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月19日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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