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日本触媒(4114)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

日本触媒とは

株式会社日本触媒は、触媒技術を起点に発展してきた日本を代表する大手化学メーカーであり、現在ではアクリル酸と高吸水性樹脂を中核とする世界有数の化学企業である。本社は大阪市中央区高麗橋および東京都千代田区内幸町に置き、1941年に創業した。

同社の起源は1926年に設立されたヲサメ硫酸工業事務所にさかのぼる。1930年代には当時まだ一般的でなかったバナジウム触媒に着目するなど、創業当初から先進的な技術志向を持つ企業であった。戦後、1949年に日本触媒化学工業株式会社へ社名を変更し、石油化学産業の拡大を見据えて酸化エチレンやアクリル樹脂、ポリエステルなどの事業を育成した。これらの分野は現在に至るまで同社の事業の根幹を支えている。

現在の日本触媒は、アクリル酸で世界トップクラスの地位を持ち、製品シェアは単体で約15%と世界上位に位置する。さらに、同社がライセンス供与している技術を含めた世界全体の製造能力では、約55%に相当するとされており、アクリル酸分野における技術的影響力は極めて大きい。また、高吸水性樹脂(SAP)では世界シェア約25%を占め、世界首位のメーカーとして、紙おむつや衛生用品など生活必需分野を支えている。

事業内容は、アクリル酸およびその誘導体、高吸水性樹脂、酸化エチレンとその誘導体を中心とする基幹化学品に加え、電子材料、電池電解質などの先端分野にも広がっている。さらに、社名の由来でもある触媒技術を活かし、ダイオキシン分解触媒や自動車排ガス処理用触媒など、環境対応型製品も展開している。触媒そのものを製造することに特化しており、触媒が組み込まれるフィルターや装置自体は製造しない点が特徴である。

研究開発拠点としては吹田、姫路に研究所を持ち、製造拠点は川崎、姫路を中心に展開している。海外にもアメリカ、シンガポール、インドネシア、ベルギー、中国、韓国などに拠点を構え、グローバルに事業を展開している。高吸水性樹脂やアクリル酸といった製品は世界市場で展開されており、海外売上比率も高い。

企業理念としては「TechnoAmenity」を掲げ、技術によって人々の生活の快適さや社会的価値を高めることを目指している。旧大和銀行系の企業で構成される大輪会の会員企業でもあり、財界との結びつきも深い。総じて日本触媒は、基礎化学品で圧倒的な世界シェアを持つ一方で、電子材料や電池関連材料といった成長分野にも展開する、規模・技術・市場支配力を兼ね備えたグローバル化学メーカーとして位置づけられる。

日本触媒 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益 EPS(円) 一株配当 DPS(円)
◇21.3* 273,163 -15,921 -12,926 -10,899 -68.3 22.5
◇22.3* 369,293 29,062 33,675 23,720 148.7 45
◇23.3* 419,568 23,528 26,175 19,392 122.1 45
◇24.3* 392,009 16,562 15,744 11,008 70.5 45
◇25.3 409,346 19,062 23,203 17,394 113.9 114
◇26.3予 405,000 18,000 21,000 15,000 101.5 100〜102
◇27.3予 410,000 19,000 22,000 16,400 111.0 110〜111

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
連23.3 41,447 -25,976 -17,321
連24.3 57,880 -15,684 -28,364
連25.3 46,974 -30,506 -16,780

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

営業利益率 ROE ROA PER(高値/安値平均) PBR
2023 5.6% 5.3% 3.7%
2024 4.2% 2.8% 2.0%
2025 4.6% 4.5% 3.1% 17.0倍/13.6倍 0.74倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の推移を見ると、売上高は2024年3月期で約3,920億、2025年3月期で約4,093億と回復しており、2026年3月期予想では約4,050億とほぼ横ばい圏で推移する見通しとなっている。世界首位級の高吸水性樹脂やアクリル酸という強力な事業基盤を持つ企業としては、足元は市況回復による持ち直し局面にあり、急成長というより循環的な戻りの段階にあるといえる。

営業利益は2024年が約165億、2025年が約190億と改善した後、2026年予想では約180億とやや減少する見通しである。経常利益も2024年の約157億から2025年は約232億へと大きく回復したが、2026年予想では約210億と減少が見込まれている。純利益も2024年が約110億、2025年が約173億と回復した後、2026年予想では約150億と減少する見通しであり、利益水準は2025年をピークに一服する形となっている。

収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年が5.6%、2024年は4.2%まで低下し、2025年に4.6%まで持ち直している。ただし、依然として5%前後の水準であり、高収益体質と評価できる水準ではない。ROEは2023年の5.3%から2024年に2.8%まで落ち込み、2025年には4.5%まで回復しているが、資本効率は低めである。ROAも同様に2023年3.7%、2024年2.0%、2025年3.1%と推移しており、改善傾向はあるものの高いとは言えない。

株価指標については、2025年実績ベースでPERは高値平均17.0倍、安値平均13.6倍となっており、成熟した大手化学メーカーとしては中立からやや高めの評価レンジに位置する。一方でPBRは0.7倍台と1倍を下回っており、資産価値に対しては低評価が続いている。これは、市場が同社の事業基盤の強さを認識しつつも、収益性の低さや市況変動の大きさを慎重に見ていることを示している。

これらを総合すると、日本触媒は世界的なシェアを持つ主力製品を有し、規模や事業基盤の面では非常に安定しているものの、収益性と資本効率が高くないため、評価が大きく切り上がる状況には至っていない。業績は底打ちから回復途上にあるが、2026年以降の力強い成長が見込める段階ではなく、市況循環の影響を強く受ける構造は変わっていない。

提示された数値だけで判断するなら、日本触媒は割安感が強いわけでも、成長期待が大きいわけでもなく、安定した事業基盤を背景に市況回復を待ちながら保有する銘柄と位置づけられる。短期的な値上がりを狙う投資よりも、業界環境の回復局面を意識した中立的なスタンスで向き合うのが妥当な銘柄といえる。

配当目的とかどうなの?

日本触媒を配当目的で見ると、結論から言えば「配当利回りの水準だけを見れば十分に魅力はあるが、安定配当株というより市況連動型の高配当株」という評価になる。まず水準面を見ると、予想配当利回りは2026年3月期で約5.22%、2027年3月期で約5.75%と、東証全体で見てもかなり高い部類に入る。一般的な化学メーカーやインフラ系を含めても5%超は少なく、インカムゲイン目的で目を引く水準であることは間違いない。

一方で、過去の業績と配当の動きを踏まえると注意点もはっきりしている。日本触媒は21年に大赤字を計上した後、22〜23年に急回復し、24年に再び減益、25年以降は回復基調というように、業績の振れが大きい市況循環型の企業である。配当も業績に強く連動する傾向があり、利益水準が高い局面では増配や高配当を打ち出す一方、市況悪化時には抑制される可能性がある。

現在の高配当利回りは、業績回復局面と積極的な株主還元姿勢が重なった結果であり、「どの景気局面でも同じ水準の配当が続く」と期待するのはやや危険である。営業利益率やROEが5%前後と高くないことを考えると、配当の余力は主力事業の市況次第で大きく左右される。

そのため、配当目的としての向き不向きを整理すると、日本触媒は「安定配当株」ではなく、「市況が比較的良い局面で高い利回りを享受するタイプの配当株」と言える。高圧ガス工業や電力・ガスといったインフラ型企業のように、毎年ほぼ同水準の配当を期待する投資とは性格が異なる。

結論として、日本触媒は配当利回りの高さそのものは非常に魅力的だが、配当の安定性を最重視する投資家向けではない。業績循環を理解したうえで、市況が底から回復する局面で利回りを取りに行く、あるいは高配当を享受しつつ中期で保有する、といった付き合い方が最もしっくりくる銘柄と言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

日本触媒の株価について、現在値1,913円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。前提として、日本触媒は高吸水性樹脂で世界首位級、アクリル酸でも大きな影響力を持つグローバル化学メーカーであり、業績は化学市況に強く連動する構造を持つ。営業利益率やROE、ROAは高水準とは言えないものの、安定した稼ぐ力をベースに配当利回りが5%台と高い水準にある。

良い場合のシナリオでは、化学製品・材料市況が構造的に改善し、高吸水性樹脂やアクリル酸の需要が持続的に拡大する展開を想定する。営業利益率は5%台前後を維持しつつ、事業基盤の安定性と原料価格の改善が収益を押し上げる。さらにROEやROAが改善し、市場評価も見直されることでPERは15倍近辺、PBRは1倍前後まで上昇する。この場合、配当利回りを維持しながら評価倍率が切り上がり、株価は5年後に2,500円から3,000円程度まで上昇する可能性がある。これは、業績改善と評価是正が同時に進む強気シナリオである。

中間のシナリオでは、化学・素材市況が緩やかに推移し、売上高・利益は大きな成長を見せないものの安定的に推移するケースを想定する。営業利益率は4%台後半から5%台前半で横ばい、ROEは4〜5%前後で推移し、PERは10〜13倍、PBRは0.6〜0.8倍程度で落ち着く。この場合、株価は現在値1,913円を中心に上下し、5年後の水準は1,700円から2,200円程度になる可能性が高い。業績の安定性と高配当が株価下支えの材料になる一方で、大きな評価アップは期待しにくい中庸な展開となる。

悪い場合のシナリオでは、世界的な景気後退や化学品需要の低迷が長期化し、高吸水性樹脂やアクリル酸といった主力製品の需要が弱含む展開を想定する。営業利益率が4%未満に低下し、ROEやROAも低迷、PERは7〜9倍、PBRは0.5倍台前半まで低下する可能性がある。この場合、株価は調整色を強め、5年後には1,200円から1,500円程度まで下落するリスクがある。配当利回りは相対的に高く見えても、株価下落リスクが意識される局面となる。

総合すると、現在株価1,913円を起点とした日本触媒の5年間の値動きは、良い場合で2,500円から3,000円前後、中間で1,700円から2,200円、悪い場合で1,200円から1,500円といったレンジが想定される。高配当利回りという魅力はあるものの、業績が市況に影響されやすい構造であるため、値上がり期待は市況動向と評価倍率の変動に大きく左右される銘柄である。

この記事の最終更新日:2025年12月19日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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