株価
高圧ガス工業とは

高圧ガス工業株式会社(こうあつガスこうぎょう、KOATSU GAS KOGYO CO., LTD.)は、大阪市に本社を置く産業ガスおよび化成品メーカーであり、国内の産業インフラを長年支えてきた老舗企業である。主力製品である溶解アセチレンにおいては国内最大手の地位を占めており、同分野では事実上の首位企業として高いシェアと知名度を持つ。
同社は溶解アセチレンを筆頭に、酸素、窒素、アルゴン、水素、炭酸ガスなど各種工業用高圧ガスを製造・仕入販売している。これらのガスは建設、橋梁、造船、機械、自動車、金属加工などの重工業分野を中心に使用されており、溶接・切断用途を中心とした安定需要が事業基盤となっている。全国各地に製造拠点や充填所、営業網を持ち、地域密着型の供給体制を構築している点も特徴である。
高圧ガス事業に加えて、ガス関連機器の販売や設備の賃貸事業も展開しており、単なるガス供給にとどまらず、顧客の作業現場全体を支えるトータルサービスを提供している。これにより中小規模の事業者とも長期的な取引関係を築きやすく、安定した収益構造につながっている。
化成品事業では、合成樹脂系接着剤を主力とし、瞬間接着剤や工業用接着剤、塗料などの製造・仕入販売を行っている。ガス事業で培った化学技術や顧客ネットワークを活かし、産業用途向けの機能性製品を展開している点が特徴である。近年ではベトナムに現地工場を設立し、気候や使用環境の違いに対応した接着剤の開発・生産を進めるなど、海外市場を視野に入れた事業拡大にも取り組んでいる。
また、高圧ガス工業はガス・化成品事業にとどまらず、新分野への挑戦にも積極的である。情報システム事業では、過去にLSIカードの開発に世界で初めて成功した実績があり、技術開発型企業としての側面も持つ。こうした取り組みは事業の多角化と将来の成長機会の確保を目的としたものであり、安定志向一辺倒ではない経営姿勢を示している。
グループ全体では、子会社42社、関連会社16社を擁し、高圧ガス工業グループとして事業を展開している。各地域に根差した子会社を通じて、ガス供給、化成品販売、機材サービスをきめ細かく行う体制を構築しており、全国規模での安定供給力を強みとしている。
経営面では、過度な設備投資や財務リスクを抑えた堅実な経営を基本方針としており、財務体質が良好な企業としても知られている。景気変動の影響を比較的受けにくい産業向け需要を中心に事業を展開していることから、業績は安定的に推移しやすく、長期的に持続可能なビジネスモデルを持つ企業といえる。
高圧ガス工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 76,907 | 4,189 | 4,771 | 3,519 | 63.7 | 16 |
| 連22.3 | 82,483 | 4,720 | 5,403 | 4,149 | 75.2 | 16 |
| 連23.3 | 91,469 | 5,116 | 5,809 | 3,941 | 71.4 | 18(記) |
| 連24.3 | 93,275 | 5,737 | 6,657 | 4,503 | 81.6 | 20 |
| 連25.3 | 98,983 | 5,969 | 6,642 | 4,784 | 86.7 | 20 |
| 連26.3予 | 102,000 | 6,300 | 7,100 | 4,500 | 81.5 | 40 |
| 連27.3予 | 105,000 | 6,500 | 7,300 | 4,700 | 85.1 | 40〜44 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 5,652 | -6,672 | 3,232 |
| 連24.3 | 8,103 | -5,787 | 391 |
| 連25.3 | 6,421 | -5,086 | -1,093 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均) | PER(安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.5% | 5.7% | 3.6% | — | — | — |
| 2024 | 6.1% | 5.9% | 3.7% | — | — | — |
| 2025 | 6.0% | 6.0% | 3.8% | 11.3倍 | 8.4倍 | 0.69倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、高圧ガス工業の売上高は2024年3月期で約932億、2025年3月期で約989億、2026年3月期予想で約1,020億と、緩やかではあるが一貫した増収基調にある。営業利益も2024年の約57億から2025年は約59億、2026年予想では約63億へと着実に増加しており、本業の収益力は安定しているといえる。経常利益は2024年が約66億、2025年も約66億、2026年予想で約71億と、横ばいから緩やかな増加で推移している。一方、純利益は2024年が約45億、2025年が約47億と増加した後、2026年予想では約45億とやや減少する見通しとなっており、利益成長が加速する局面ではないことが読み取れる。
収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年が5.5%、2024年が6.1%、2025年が6.0%と、改善後にほぼ横ばいで推移している。6%前後という水準は高収益企業とまでは言えないが、安定型の事業としては一定の水準を維持しており、収益構造が悪化していない点は評価できる。ROEは2023年の5.7%から2025年には6.0%まで徐々に上昇しており、ROAも3.6%から3.8%へと緩やかに改善している。ただし、いずれも水準自体は低めであり、資本効率の高さを強みとする企業ではなく、堅実経営型であることを示している。
株価指標については、2025年時点でPBRが0.6倍と明確に1倍を下回っており、高圧ガス工業は資産価値に対して市場評価が低い水準にある。PERは高値平均で11.3倍、安値平均で8.4倍と、利益水準に対しても割安感のある水準にとどまっている。成長性が高くないことを考慮しても、過度に買われている状況ではなく、むしろ慎重に評価されている状態といえる。
以上を総合すると、高圧ガス工業は急成長を期待する銘柄ではなく、業績は安定しているが成長スピードは緩やかで、資本効率も高くはない。一方で、PBR0.6倍、PER8倍から11倍という評価水準から見て、下値リスクは相対的に限定的であり、割安感は意識しやすい。
提示された数値だけで判断する限り、高圧ガス工業は短期的な値上がり益を狙う投資には向かないが、業績の安定性と割安な評価を前提に中長期で保有する銘柄としては妥当な位置づけにある。強気に積極購入する局面ではないものの、割安是正を期待しつつ保有するというスタンスであれば、納得感のある投資対象といえる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という視点で高圧ガス工業を見ると、この銘柄の立ち位置は比較的はっきりしている。連26年3月期、連27年3月期ともに予想配当利回りは3.88%とされており、市場全体と比べるとやや高めの水準にある。いわゆる高配当株と呼ばれる水準には一歩届かないものの、安定したインカム収入を期待する投資家にとっては十分に検討対象となる利回りである。
業績との関係で見ると、売上高や営業利益は緩やかな増加基調にあり、営業利益率も6%前後で安定して推移している。純利益は今後やや減少する予想となっているが、大きく崩れる兆しは見られず、現在の配当水準が無理に支払われている印象はない。収益力の水準から見て、配当の維持余力は一定程度あると考えられる。
また、株価指標としてPBRが0.6倍と低い水準にあることから、株価が割安な分だけ配当利回りが高く見えやすい構造になっている点も、配当目的の投資ではプラスに働く。株価が大きく上昇しなくても、一定の配当収入を安定的に受け取りやすいという意味では、インカム狙いとの相性は良い。
一方で注意すべき点として、高圧ガス工業は高い成長性や資本効率を武器に配当を大きく増やしていくタイプの企業ではない。ROEは6%前後にとどまっており、配当は増配よりも維持を重視する性格が強いと見られる。そのため、毎年の大幅な増配や急激な利回り上昇を期待すると、物足りなさを感じる可能性がある。
総合すると、高圧ガス工業は短期的な値上がり益を狙うよりも、3.8%前後の配当利回りを安定的に受け取りながら長期保有することを前提とした銘柄である。配当を主目的に、業績の安定性と割安感を重視する投資スタンスであれば、十分に納得感のある投資対象と言える。一方で、成長性や積極的な増配を重視する投資家にとっては、やや地味な存在に映る可能性がある。
今後の値動き予想!!(5年間)
高圧ガス工業は、溶解アセチレンを主力とする産業ガスメーカーであり、建設、造船、橋梁、機械などのインフラ・製造業向けを中心に、安定した需要基盤を持つ企業である。ガス事業に加えて化成品事業や機材関連事業も展開しており、全国に張り巡らせた供給網と地域密着型の営業体制を強みとしている。業績は急成長こそしないものの、売上・利益ともに緩やかな増加基調を維持しており、配当利回りも3.88%と比較的高い水準にある。現在の株価1,030円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、国内の建設・設備投資需要が底堅く推移し、産業ガス需要が安定的に拡大する展開を想定する。価格転嫁が一定程度進み、営業利益率は6%台前半を維持、営業利益は60億円台後半から70億円規模へと緩やかに伸びる。ROEも6%台後半まで改善し、安定収益企業としての評価が徐々に高まる。これにより市場の見方がやや前向きになり、PBRは0.9倍前後まで回復、PERも10〜11倍程度で安定する。この場合、配当を維持しながら評価の見直しが進み、株価は時間をかけて切り上がり、5年後には1,400円から1,600円程度まで上昇する展開が考えられる。値上がりは緩やかだが、配当込みでの総合リターンが積み上がる強気寄りのシナリオである。
中間のシナリオでは、産業ガス需要は現状維持に近い形で推移し、売上高・利益ともに大きな成長は見込めないものの、業績は安定的に推移するケースを想定する。営業利益率は6%前後、ROEは6%程度で横ばいとなり、配当も現行水準が維持される。市場評価は現在と大きく変わらず、PBRは0.6〜0.7倍、PERは9〜10倍前後にとどまる。この場合、株価は現在値1,030円を中心に上下し、5年後の水準は1,000円から1,200円程度に収まる可能性が高い。値上がり益は限定的だが、配当を受け取りながら保有する安定型のシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、建設投資や製造業の設備投資が低迷し、産業ガス需要が弱含む展開を想定する。コスト上昇の影響を十分に吸収できず、営業利益率は5%台前半まで低下、営業利益・純利益も減少傾向に入る。ROEは5%前後まで低下し、市場の評価は一段と慎重になる。PBRは0.5倍前後、PERも8倍前後まで切り下げられ、この場合、株価は調整色を強め、5年後には750円から900円程度まで下落する可能性がある。ただし、配当は急減配されにくいと見られ、下値は一定程度配当利回りによって支えられる展開となる。
総合すると、現在株価1,030円を起点とした高圧ガス工業の5年間の値動きは、良い場合で1,400円から1,600円前後、中間で1,000円から1,200円、悪い場合で750円から900円といったレンジが想定される。高成長株ではないが、安定した業績と4%前後の配当利回りを背景に、値上がり益よりもインカムゲインを重視しながら中長期で保有する投資に向いた銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月19日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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