株価
アイカ工業とは

アイカ工業は、メラミン化粧板を中心とした建築材料と接着剤・化成品を主力とする化学メーカーである。本社は愛知県名古屋市中村区に所在し、建築内装材分野では国内トップクラスの地位を確立している。特にメラミン化粧板では国内首位のシェアを持ち、不燃機能を付与した壁面材やキッチンパネル分野に強みを持つ。近年は海外接着剤メーカーの買収を通じてアジアを中心とした海外展開を加速しており、国内建築材メーカーの枠を超えた事業構造へと進化している。
アイカ工業は1936年に愛知化学工業として設立され、愛知時計電機から航空機用点火栓、航空機用安全硝子・強化硝子、接着剤事業を引き継ぐ形でスタートした。1939年には国内初となるユリア樹脂系接着剤「愛知無敵糊」を発売し、戦後の建築・木工需要の拡大とともに成長してきた。1960年に参入したメラミン化粧板事業では急速にシェアを拡大し、現在では国内トップメーカーとしての地位を確立している。
メラミン化粧板を応用した建材分野では、カウンター、家具材、壁材などへ用途を広げ、意匠性と耐久性を両立した製品を強みとしている。1975年に発売した壁面仕上げ用塗材「ジョリパット」は、塗り壁材の大手ブランドとして住宅外壁や商業施設、教育・文化施設など幅広い分野で採用されている。また1989年に発売したメラミン不燃化粧板「アイカセラール」は、キッチンパネル市場でシェアNo.1を獲得し、不燃・高耐久という機能性を武器に同社の中核製品となっている。
事業は大きく建装建材分野と化成品分野で構成されている。建装建材分野では、メラミン化粧板、不燃化粧板、内装・外装用壁材、カウンター材、塗り壁材などを展開し、住宅から非住宅建築まで幅広い需要を取り込んでいる。化成品分野では、接着剤、樹脂、塗り床材などを中心に、建築用途だけでなく産業用途向けにも製品を供給している。
2000年代以降はM&Aを活用した海外展開を本格化させており、アジアを中心に接着剤事業を拡大している。化成品セグメントの海外統括会社としてシンガポールにアイカ・アジア・パシフィック・ホールディング社を設置し、海外売上高比率は2022年3月期時点で約5割に達している。国内依存度の高い建築材料メーカーとは異なり、海外比率の高い点も同社の特徴である。
生産拠点としては、名古屋工場、甚目寺工場、福島工場などを有し、国内外の関連会社としてアイカインテリア工業、アイカハリマ工業、西東京ケミックス、アイカテック建材などを展開している。
総合すると、アイカ工業はメラミン化粧板で国内首位という圧倒的な競争力を持ち、不燃壁材や塗り壁材といった高付加価値建材で安定した収益基盤を築いている企業である。さらに接着剤・化成品分野を軸に海外展開を進めることで、建築市況に左右されにくい事業構造へと転換を進めており、内装建材と化学製品を融合させた独自ポジションを持つメーカーとして位置づけられる。
アイカ工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 174,628 | 17,991 | 18,438 | 10,759 | 164.8 | 107 |
| 連22.3 | 214,514 | 20,348 | 21,840 | 13,117 | 200.9 | 108 |
| 連23.3 | 242,055 | 20,557 | 22,088 | 10,059 | 157.3 | 109 |
| 連24.3 | 236,625 | 25,286 | 26,135 | 15,135 | 236.6 | 112 |
| 連25.3 | 248,696 | 27,408 | 28,668 | 16,896 | 266.4 | 126 |
| 連26.3予 | 265,000 | 29,000 | 30,000 | 18,300 | 292.3 | 136 |
| 連27.3予 | 280,000 | 30,000 | 31,000 | 19,000 | 303.5 | 136〜145 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 19,852 | -9,061 | -9,355 |
| 2024 | 28,482 | -7,574 | -11,167 |
| 2025 | 26,751 | -11,121 | -16,790 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 8.4% | 6.9% | 4.0% | ― | ― |
| 2024 | 10.6% | 9.3% | 5.5% | ― | ― |
| 2025 | 11.0% | 9.7% | 5.8% | 13.8~17.2倍 | 1.25倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると、連24.3では営業利益が約252億円、経常利益が約261億円、純利益が約151億円である。連25.3には営業利益が約274億円、経常利益が約286億円、純利益が約168億円へと増加しており、連26.3予では営業利益約290億円、経常利益約300億円、純利益約183億円と、着実な増益が続く見通しになっている。売上の伸びは大きくないが、利益は積み上がっており、事業の収益構造が改善していることが分かる。
収益性の面では、営業利益率が2023年の8.4%から2024年に10.6%、2025年には11.0%まで上昇している点が目立つ。建材・化学系の企業としては比較的高い水準であり、価格転嫁や高付加価値製品の比率上昇が進んでいることを示唆している。ROEも6.9%から9.3%、9.7%へと改善しており、資本効率は明確に上向いている。ROAも4.0%から5.5%、5.8%へと段階的に上昇しており、資産を使った稼ぐ力も着実に強くなっている。
一方で評価指標を見ると、2025年時点のPERは安値平均で13.8倍、高値平均で17.2倍となっており、成長性を考慮すると割安とは言えないが、割高と断じる水準でもない。PBRは1.25倍で、ROEが約9.7%という点を踏まえると、おおむね妥当から中立的な評価水準にあると考えられる。市場が急成長を織り込んでいるわけではないが、安定した収益改善は一定程度評価されている状態と言える。
これらを総合すると、アイカ工業は売上成長が急拡大するタイプの企業ではないものの、営業利益率、ROE、ROAがそろって改善しており、事業の質は確実に向上している。利益水準も年々切り上がっており、経営の安定感は高い。一方でROEはまだ10%前後にとどまり、PERも中立水準であるため、強い成長期待を前提にした株価上昇余地は限定的と考えられる。
結論としては、アイカ工業は高成長株として積極的に攻める銘柄ではなく、収益性の改善と安定した利益成長を評価して中長期で保有するタイプの銘柄である。現在の数値だけを見る限り、割安感は強くないが、事業の安定性と利益の質を考えれば妥当な評価水準にあり、投資判断としては中立からやや前向き、堅実運用向きの銘柄と位置づけられる。
配当目的とかどうなの?
まず配当利回りを見ると、連26.3、連27.3ともに予想配当利回りは3.90%と、東証プライム上場企業の中では比較的高めの水準にある。4%近い利回りは、配当目的で投資する際には十分に魅力のある数字であり、銀行預金や債券と比べても明確な優位性がある。
配当の裏付けとなる収益力を見ると、営業利益は連24.3で約252億円、連25.3で約274億円、連26.3予で約290億円と増加基調にあり、純利益も約151億円から約183億円へと着実に拡大している。利益水準が安定して積み上がっているため、現在の配当水準は無理のあるものではなく、業績面から見て持続性は高いと考えられる。
収益性の面でも、営業利益率は8.4%から11.0%へ改善し、ROEは約9.7%、ROAは約5.8%まで上昇している。爆発的に高い資本効率ではないものの、安定した改善トレンドにある点は、配当を継続・維持する上でプラス要因である。PBRが1.25倍と極端に高くないことも、配当を重視する投資家にとっては安心材料と言える。
一方で注意点として、ROEが10%前後にとどまっているため、大幅な増配が毎年続くような成長型配当株ではない可能性が高い。配当は増やす余地はあるものの、急激な増配よりも、業績に応じて緩やかに引き上げていくタイプと見るのが現実的である。
以上を踏まえると、アイカ工業は高配当株というよりも「安定配当・やや高利回り型」の銘柄であり、値上がり益を大きく狙うより、3%台後半の利回りを安定的に受け取りたい投資家に向いた銘柄と言える。配当目的としては十分に検討価値があり、特に中長期で配当を積み上げていくインカム重視の投資スタイルには相性が良い。
今後の値動き予想!!(5年間)
アイカ工業は、メラミン化粧板で国内首位のシェアを持つ建装建材メーカーであり、不燃機能を付加した壁面材やキッチンパネル、塗り壁材など高付加価値の内装材を強みとする企業である。建築材料に加えて接着剤や化成品事業も展開しており、建設市況に左右されにくい比較的安定した事業構造を持つ。近年は海外接着剤メーカーの買収などを通じてアジアを中心に海外展開を強化しており、海外売上比率も高まりつつある。売上成長は緩やかだが、利益率改善と収益性向上が進んでおり、配当利回りも約4%と高水準であることから、安定成長・安定配当型の性格が強い。現在の株価3,482円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、国内外での非住宅建築需要が底堅く推移し、不燃化粧板や高意匠内装材の採用が拡大する展開を想定する。加えて、接着剤・化成品分野の海外事業が順調に成長し、全社ベースでの付加価値率が上昇する。この結果、営業利益率は現在の11%前後を維持、もしくは12%近辺まで改善し、純利益は180億円台を安定的に確保する。ROEは10%前後で定着し、収益性の高さが市場に評価されることで、PERは現在の安値平均13倍台から15〜17倍程度まで切り上がる可能性がある。この場合、安定配当を維持しながら評価修正が進み、5年後の株価は5,000円から6,000円程度まで上昇する展開が考えられる。高付加価値建材と海外成長が評価される強気シナリオである。
中間のシナリオでは、建設・内装需要は大きな伸びも落ち込みもなく推移し、業績は会社計画どおりの安定成長にとどまるケースを想定する。営業利益率は10〜11%台、ROEは9〜10%前後で安定し、配当も現行水準を維持しつつ緩やかな増配が続く。市場評価はPER12〜14倍、PBR1.2倍前後で落ち着き、株価は大きくは動かないが緩やかに切り上がる。この場合、5年後の株価水準は3,800円から4,500円程度となり、値上がり益は限定的ながら、配当を受け取りつつ保有する安定型のシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、国内外の景気減速や建設投資の停滞により、建装建材・化成品の需要が弱含む展開を想定する。価格競争の激化や原材料コストの上昇が重なり、営業利益率は10%を割り込み、ROEも8%前後まで低下する。この場合、市場の評価は慎重となり、PERは10〜11倍程度まで低下する可能性がある。配当利回りの高さが一定の下支えにはなるものの、評価面では保守的になり、5年後の株価は2,500円から3,000円程度まで下落する展開も考えられる。高配当ではあるが、成長期待が後退する弱気シナリオである。
総合すると、現在株価3,482円を起点としたアイカ工業の5年間の値動きは、良い場合で5,000円から6,000円前後、中間で3,800円から4,500円、悪い場合で2,500円から3,000円といったレンジが想定される。高成長株ではないものの、メラミン化粧板での圧倒的な競争力と高付加価値製品、約4%の配当利回りを背景に、インカムゲインを重視しつつ安定した評価修正を狙う中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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