株価
ダイキョーニシカワとは

ダイキョーニシカワ株式会社は、広島県東広島市に本社を置く、自動車用樹脂部品の製造および設計・開発を行うメーカーである。インストルメントパネル(インパネ)、バンパー、バックドアなどの大型樹脂部品をはじめとする自動車内外装部品を主力としており、売上の7割強をマツダ向けが占めるマツダ系中核サプライヤーである。これに加えて、ダイハツ向けの取引比率も高く、近年ではトヨタ自動車や本田技研工業からの受注も増加している。
同社は、自動車部品や住宅機器の内外各所に用いられる樹脂部品を幅広く手がけており、内装部品、外装部品、エンジン周辺部品までを網羅する点が、樹脂部品メーカーとしては特徴的である。特に大型樹脂部品の一体成形技術や、設計段階から量産までを一貫して担う開発力を強みとしており、自動車メーカーの車両開発初期から関与する提案型のビジネスモデルを展開している。
エンジン部品分野では、樹脂製オイルストレーナーにおいて高い技術力を有している。樹脂製オイルストレーナーは、エンジンルームの狭小化が進む中で、形状自由度の高さと軽量化を両立できる点が評価され、マツダ、トヨタ、ダイハツ、スズキなど国内自動車メーカー各社に採用されている。同製品に関しては多数の知的財産権を保有しており、世界シェアは約1%とされ、世界で生産される自動車のおよそ100台に1台に搭載されている計算となる。高度な技術が求められる樹脂製エンジン部品分野において、同社は先駆的な存在といえる。
国内の主な事業所としては、2020年1月に移転した本社および本社工場が広島県東広島市寺家産業団地に所在している。営業拠点としては栃木県宇都宮市に東日本営業所を構え、研究拠点として広島県安佐北区三入南にテクニカル試験センターを有している。生産面では、本社工場を中心に効率的な製造体制を構築している。
関連会社としては、栃木県芳賀郡芳賀台に関東大協株式会社、広島県安佐北区筒瀬に三伸化工株式会社があり、これらのグループ会社と連携しながら、開発・生産・供給体制を強化している。このようにダイキョーニシカワ株式会社は、マツダ系を中心とした自動車メーカーとの強固な取引基盤を持ち、大型樹脂部品や高機能エンジン部品に強みを有する自動車樹脂部品メーカーである。自動車の軽量化や環境対応ニーズの高まりを背景に、樹脂部品の重要性が増す中で、安定した事業基盤を持つ企業として位置づけられる。
ダイキョーニシカワ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益EPS (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 150,234 | 4,456 | 5,386 | 2,536 | 35.8 | 30 |
| 連22.3 | 116,669 | -2,632 | -985 | -2,085 | -29.4 | 30 |
| 連23.3 | 145,744 | 3,453 | 2,864 | 518 | 7.3 | 30 |
| 連24.3 | 159,019 | 8,690 | 8,775 | 5,782 | 81.3 | 32 |
| 連25.3 | 168,561 | 10,004 | 9,688 | 6,498 | 91.4 | 36 |
| 連26.3予 | 162,000 | 7,900 | 8,100 | 6,200 | 90.7 | 38 |
| 連27.3予 | 165,000 | 8,700 | 8,700 | 6,600 | 96.5 | 38〜40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 14,048 | -8,991 | -7,618 |
| 連24.3 | 20,372 | 1,593 | -8,801 |
| 連25.3 | 16,783 | -7,582 | -18,348 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 2.3% | 0.6% | 0.3% | – | – |
| 2024.3 | 5.4% | 7.1% | 3.5% | – | – |
| 2025.3 | 5.9% | 7.4% | 4.2% | 38.8倍(高) / 25.7倍(安) | 0.63倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、ダイキョーニシカワの2024年3月期は売上高1,590億円に対して営業利益86億円、経常利益87億円、純利益57億円となっている。自動車生産の回復を背景に、利益水準は一気に改善しており、2023年の低収益期からは明確に立ち直った年といえる。2025年3月期は売上高1,685億円、営業利益100億円、経常利益96億円、純利益64億円と増収増益が続いており、利益の回復が一過性ではなく、持続的なものになりつつあることが確認できる。
2026年3月期予想では売上高1,620億円とやや減収を見込む一方で、営業利益79億円、経常利益81億円、純利益62億円と高水準を維持する計画となっている。ピークアウト感はあるが、急激な悪化を想定しているわけではなく、利益体質は改善された状態が前提となっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年の2.3%から2024年に5.4%、2025年には5.9%まで上昇しており、構造的な改善がはっきり表れている。ROEも0.6%から7.1%、7.4%へと大きく改善しており、これまで弱点とされてきた資本効率が正常水準に近づいてきた点は評価できる。ROAも0.3%から3.5%、4.2%と着実に改善しており、資産を使って利益を生み出す力は明らかに強まっている。
一方、株価指標を見ると、2025年の実績PERは安値平均で25.7倍、高値平均では38.8倍とかなり高い水準にある。これは利益回復局面にあるため、分母となる利益がまだ十分に安定していないことが要因であり、現時点では割安とは言いにくい。一方でPBRは0.6倍と1倍を大きく下回っており、資産価値の面では依然として低い評価にとどまっている。
これらを総合すると、ダイキョーニシカワは業績面では明確な回復基調にあり、営業利益率・ROE・ROAはいずれも改善している点が最大の強みである。ただし、その改善が株価に先行して織り込まれているため、PERだけを見ると割高感が強い。一方でPBRは低く、過去の低収益体質を引きずった評価が完全には解消されていない状態ともいえる。
結論として、提示された数値だけで判断する限り、ダイキョーニシカワは「業績回復は本物だが、短期的には評価が先行しやすい局面」にある銘柄と位置づけられる。今後も利益率とROEが7%前後で安定して定着するなら、PBRの見直し余地はあるが、PER水準を考えると短期的な上値余地は限定的になりやすい。投資判断としては、急いで買いに行く局面というより、業績の安定継続を確認しながら中期視点で評価する中立からやや慎重寄りが妥当と考えられる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点でダイキョーニシカワを見ると、予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに4.81%と、明確に高配当水準に位置している。まず利回り水準そのものは、東証プライム全体と比べてもかなり高く、インカムゲイン狙いの投資家にとっては強い魅力がある数字である。しかも直近の業績を見ると、営業利益・純利益はいずれも高水準を維持しており、赤字や極端な利益変動を前提にした無理な配当には見えにくい。
キャッシュフロー面でも、営業CFは安定してプラスを確保しており、配当原資となる現金創出力は十分にある。一方で財務CFは大きなマイナスが続いており、借入返済や株主還元を積極的に行っている姿勢が読み取れる。これは「成長投資よりも、まず財務健全性と株主還元を重視するフェーズ」に入っている企業行動といえる。
注意点としては、業績が自動車生産動向に左右されやすい点である。今回の高配当利回りは、業績回復局面と株価水準の組み合わせによって実現している側面があり、今後自動車市況が大きく悪化した場合には、配当水準の維持が難しくなる可能性は否定できない。ただし、会社予想ベースで2期連続4.81%を見込んでいることから、短期的に減配を織り込む必要性は低いと考えられる。
総合すると、ダイキョーニシカワは「配当目的としてはかなり魅力的な水準」にある銘柄であり、インカムゲイン重視の投資には十分適している。一方で、配当の持続性は自動車業界の循環に依存するため、永続的な高配当株というよりは、業績が安定している局面で配当を享受するタイプの銘柄と捉えるのが現実的である。配当目的としての評価は、やや強気寄りといえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価789円を基準に見ると、ダイキョーニシカワは高成長株というよりも、自動車生産に連動した業績回復と高い配当利回りを背景に評価される、インカム寄りの循環株である。営業利益率は足元で5%台後半まで改善し、ROEも7%台に回復してきており、長らく続いた低収益体質からは脱しつつある。ただし、顧客依存度が高く、自動車市況の影響を受けやすい点から、市場評価はなお慎重で、PBRは1倍を大きく下回る水準にとどまっている。現在の株価から今後5年間の良い場合、中間の場合、悪い場合の価格予想をしていく。
良い場合のシナリオでは、国内外の自動車生産が安定的に推移し、主力であるマツダ向けを中心に受注環境が堅調に続く展開を想定する。大型樹脂部品の採算改善や生産効率向上が進み、営業利益率は6%前後で定着、ROEも7〜8%台を維持できると、収益体質の改善が市場に評価されやすくなる。この場合、現在0.6倍前後にあるPBRは0.9〜1.0倍程度まで見直され、配当利回り4%台を維持しながら株価が上昇する展開となる。5年後の株価水準は1,200円から1,500円程度が目安となり、配当込みのトータルリターンは比較的良好な強気シナリオである。
中間のシナリオでは、自動車生産は大きな増減なく推移し、業績は会社計画どおりの水準で安定するケースを想定する。営業利益率は5%前後、ROEも6〜7%程度で横ばいとなり、高配当が株価の下支えとなる。一方で成長期待は限定的で、市場評価はPBR0.6〜0.7倍程度にとどまる。この場合、5年後の株価は800円から1,000円程度となり、値上がり益は小さいが、配当を積み上げながら保有するインカム重視の中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、世界的な自動車需要の減速や、特定顧客への依存度の高さが逆風となり、受注や稼働率が低下する展開を想定する。営業利益率は4%台まで低下し、ROEも5%前後にとどまると、市場の評価は一段と慎重になる。配当は維持されるものの、将来的な減配懸念が意識され、PBRは0.5倍を割り込む可能性がある。この場合、5年後の株価は600円から700円程度まで下落するリスクがあり、高配当の魅力は残るものの株価面では厳しい弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価789円を起点としたダイキョーニシカワの5年間の値動きは、良い場合で1,200円から1,500円前後、中間で800円から1,000円、悪い場合で600円から700円といったレンジが想定される。大きな成長を狙う銘柄ではないが、4%台後半の配当利回りを軸に、インカムゲインを重視しながら自動車市況の回復局面を取り込む中長期投資と相性の良い銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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