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住友ベークライトとは

住友ベークライトは、住友グループに属する樹脂加工大手であり、半導体向け封止材料で世界首位のシェアを持つ高機能材料メーカーである。本店は東京都品川区東品川に所在し、白水会および住友グループ広報委員会に参加している。JPX日経インデックス400の構成銘柄でもあり、エレクトロニクス、自動車、医療といった分野を中心に事業を展開している。
同社は1911年に日本で初めてフェノール樹脂、いわゆるベークライトの生産を開始した、日本のプラスチック工業の草分け的存在である。創業以来、熱硬化性樹脂を中核に技術を磨き続け、現在では半導体用封止材料で世界シェア約3割を占める業界トップ企業となっている。また、自動車部品の金属代替用途などで需要が拡大しているフェノール樹脂分野でも世界トップシェアを持ち、グローバルニッチ分野で極めて強い競争力を有している。
事業の中心は半導体関連分野であり、半導体用封止材、半導体用レジン、半導体組立用接着テープ、キャリアテープ、フレキシブルプリント回路、銅張積層板など、半導体の高集積化・高信頼化に不可欠な材料を幅広く提供している。これらの製品は、スマートフォン、データセンター、自動車向け半導体など多様な用途に使われており、同社の収益の中核を担っている。
産業用途では、積層板、積層棒、積層品用素材、工業用レジン、塗料、精密成形品などを展開し、電機、自動車、住宅設備など幅広い分野で採用されている。また、高圧メラミン化粧板として知られるデコラは同社が開発した製品であり、建材分野においても長年にわたる実績を持つ。
医療・ライフサイエンス分野では、医療機器、理化学器具、鮮度保持フィルム、糖鎖解析製品などを手がけており、材料技術を応用した高付加価値製品によって事業の安定化を図っている。半導体や自動車といった景気変動の影響を受けやすい分野に対し、医療関連事業は比較的安定した収益源として位置づけられている。
拠点面では、本社のほか大阪、名古屋に事務所を構え、神戸事業所にはコーポレートR&Dセンターを設置している。研究開発体制を重視し、次世代半導体材料や高機能樹脂の開発を継続している。グループ全体では、国内外に多数の子会社・関連会社を抱え、製造、販売、情報サービスなどを分業する体制を構築している。
総じて住友ベークライトは、半導体封止材料という世界首位分野を軸に、フェノール樹脂や高機能樹脂、医療関連製品まで事業を広げる高付加価値型の材料メーカーである。高い技術力とシェアを背景に、景気循環の影響を受けつつも、中長期的には安定した競争力を維持できる企業として位置づけられる。
住友ベークライト 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ◇21.3 | 209,002 | 19,914 | 16,139 | 13,198 | 140.2 | 37.5 |
| ◇22.3 | 263,114 | 24,887 | 25,880 | 18,299 | 194.4 | 55 |
| ◇23.3 | 284,939 | 24,823 | 26,736 | 20,289 | 215.6 | 65 |
| ◇24.3 | 287,267 | 27,200 | 31,489 | 21,831 | 233.7 | 75 |
| ◇25.3 | 304,773 | 24,792 | 28,614 | 19,281 | 208.9 | 95 |
| ◇26.3予 | 310,000 | 31,000 | 34,000 | 23,500 | 267.8 | 105 |
| ◇27.3予 | 330,000 | 35,000 | 38,000 | 25,500 | 290.6 | 105〜115 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 23,618 | -15,648 | -22,954 |
| 2024 | 40,217 | -21,118 | -6,276 |
| 2025 | 43,711 | -15,601 | -44,879 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 8.7% | 5.3% | 7.9% | ― | ― |
| 2024 | 9.4% | 4.9% | 7.2% | ― | ― |
| 2025 | 8.1% | 4.6% | 6.6% |
18.4倍(高値平均) 11.2倍(安値平均) |
1.48倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模を見ると、2024年は売上高2,872億、営業利益272億、経常利益314億、純利益218億である。2025年では売上高が3,047億に増加した一方、営業利益は247億、経常利益286億、純利益192億といずれも減少している。2026年予では売上高3,100億、営業利益310億、経常利益340億、純利益235億と再び増益が見込まれており、利益水準は一時的に落ち込んだものの、200億円超の純利益を安定して確保できる企業であることが分かる。売上は緩やかに拡大しているが、利益は年によって振れがあり、安定成長というよりは循環色を帯びた推移となっている。
次に収益性を見ると、営業利益率は2023年8.7%、2024年9.4%、2025年8.1%と、9%前後で推移している。素材・化学メーカーとしては極端に低い水準ではないが、明確な改善トレンドは見られず、25年はやや悪化している。ROEは7.9%、7.2%、6.6%と年々低下しており、資本効率は緩やかに悪化している。ROAも5.3%、4.9%、4.6%と同様に低下傾向にあり、資産を使って利益を生み出す力は徐々に弱まっていることが読み取れる。これらの指標からは、高収益・高効率企業というよりも、安定はしているが効率面では伸び悩んでいる企業像が浮かび上がる。
市場評価を見ると、2025年の実績PERは高値平均18.4倍、安値平均11.2倍とレンジが広い。実績PBRは1.4倍である。ROEが6.6%まで低下している状況を踏まえると、PBR1.4倍はやや高めの評価水準であり、市場は同社の技術力や事業基盤を一定程度評価しているものの、数値面だけを見ると割安とは言い難い。PERも安値水準では妥当感があるが、高値水準では成長期待が先行している印象を受ける。
これらの数値を総合すると、住友ベークライトは売上規模が拡大し、毎期200億円前後の純利益を稼ぐ安定した事業基盤を持つ一方で、営業利益率、ROE、ROAはいずれも低下傾向にあり、収益性や資本効率が改善している局面にはない。市場評価はPER・PBRともに中程度からやや高めで、明確な割安感は見当たらない。
以上から、この数値だけで判断するなら、住友ベークライトは高成長株ではなく、安定収益型だが評価面では慎重に見るべき銘柄と位置づけられる。PERが安値水準に近い局面であれば検討余地は出てくるものの、PER高値圏やPBR1.4倍前後では積極的に上値を追う局面ではない。投資判断としては、中立からやや慎重が妥当であり、割安感が出るタイミングを待つスタンスが合理的と考える。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、住友ベークライトは配当目的としてはやや物足りない銘柄である。2026年、2027年ともに予想配当利回りは2.0%程度にとどまっており、インカムゲインを主目的とする投資としては高い水準とは言えない。利益水準を見ると、2026年予で純利益は235億と十分な規模があり、配当を支払う余力自体はある。ただし、営業利益率は8%前後、ROEは6%台まで低下しており、資本効率は決して高いとは言えない。このため、会社としては高配当を前面に出すよりも、内部留保や事業基盤の維持・強化を重視している姿勢が数値から読み取れる。
また、市場評価を見るとPBRは1.4倍と、すでに資産価値に対して一定のプレミアムが付いた状態である。その一方で配当利回りが2%程度にとどまっているため、「評価はそこそこ高いが、配当は低め」という構図になっている。これは配当目的の投資家にとっては魅力が弱く、同じ化学セクター内でも利回り3〜4%台の銘柄と比べると見劣りする。
PERも11〜18倍とレンジが広く、業績や市況次第で株価が振れやすい点も、配当目的投資としてはやや不安定要素となる。配当利回りが高ければ株価下落時のクッションになるが、2%台では下支え効果は限定的である。
以上から、この数値だけで判断すると、住友ベークライトは配当を主目的とした投資には向かず、あくまで事業の安定性や半導体材料という事業基盤を評価する投資家向けの銘柄と位置づけられる。配当を重視するなら、より高い利回りを安定的に提供している銘柄を選ぶ方が合理的であり、住友ベークライトは配当よりも中長期での事業価値や業績動向を見ながら保有を検討するタイプの銘柄と考えるのが妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
住友ベークライトは、住友系の樹脂加工大手であり、半導体向け封止材料で世界首位のシェアを持つ高機能材料メーカーである。日本で最初にフェノール樹脂を工業化した企業として長い歴史を持ち、現在では半導体封止材を中核に、車載向け高機能樹脂、電子材料、医療関連製品など幅広い分野に事業を展開している。半導体材料という成長分野に強みを持つ一方、売上成長は緩やかで、利益率や資本効率は低下傾向にあり、性格としては高成長株というより安定収益型に近い。現在の株価5,214円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、データセンター、自動車の電動化、先端半導体需要の拡大を背景に、主力の半導体封止材料が安定的に成長する展開を想定する。世界首位のシェアを持つ分野で価格競争力と技術優位性を維持できれば、売上は緩やかに拡大し、営業利益率は8〜9%台で安定する。ROEの低下も下げ止まり、7%前後で推移することで、市場からは「成長性は高くないが、事業の質が高い企業」として再評価される。この場合、PERは現在の安値水準である11倍前後から15倍程度まで切り上がり、PBRも1.5倍台から1.8倍前後に上昇する可能性がある。業績の安定と評価修正が重なれば、5年後の株価は7,000円から8,500円程度まで上昇する展開が考えられる。半導体材料の安定需要が評価される強気シナリオである。
中間のシナリオでは、半導体や自動車向け需要は概ね安定するものの、大きな成長ドライバーは現れず、業績は会社計画どおりに推移するケースを想定する。営業利益率は8%前後、ROEは6〜7%台で横ばいとなり、収益性の改善は見られない。市場評価はPER10〜12倍、PBR1.4〜1.6倍程度で落ち着き、株価は配当利回り2%前後を意識しながら緩やかに推移する。この場合、5年後の株価水準は5,500円から6,200円程度となり、値上がり益は限定的だが、安定した事業を背景に保有を続ける中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、半導体市況の調整が長期化し、設備投資抑制の影響で封止材料の需要が伸び悩む展開を想定する。売上・利益は横ばいから微減となり、営業利益率は8%を割り込み、ROE・ROAもさらに低下する。この場合、市場評価は慎重となり、PERは8倍前後、PBRも1倍前後まで低下する可能性がある。配当利回りは一定の下支えになるものの、高配当株とは言えないため防御力は限定的で、5年後の株価は3,800円から4,400円程度まで下落する展開も考えられる。事業の安定性はあるが、評価面では守りに入る弱気シナリオである。
総合すると、現在株価5,214円を起点とした住友ベークライトの5年間の値動きは、良い場合で7,000円から8,500円前後、中間で5,500円から6,200円、悪い場合で3,800円から4,400円といったレンジが想定される。高成長株ではないものの、半導体封止材料という世界首位分野を持つ強みを背景に、安定性を重視しつつ評価変化を狙う中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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