株価
大倉工業とは

大倉工業株式会社は、香川県丸亀市に本社を置く合成樹脂フィルムを中心とした加工メーカーである。合成樹脂フィルム分野では国内大手の一角を占める存在となっている。包装用途を中心に事業を拡大してきたが、近年は液晶向け光学フィルムなどを手がける新規材料部門が成長の柱となっており、建材部門の強化も進めている点が特徴である。
同社は1947年に設立され、各種ポリエチレン・ポリプロピレン製品の製造販売を主力として事業基盤を築いてきた。現在では、食品や日用品向けの包装用合成樹脂フィルムに加え、光学機能性フィルムなどの高付加価値材料、さらにはパーティクルボードや加工ボード、加工合板といった建材製品の製造販売まで事業領域を広げている。素材から加工までを一貫して手がける体制を強みとし、用途別・顧客別のニーズに応じた製品開発を行っている。
事業は主に合成樹脂事業、新規材料事業、建材事業の三つで構成されている。合成樹脂事業では、ポリエチレンやポリプロピレンを原料とした各種フィルムを製造し、食品包装、工業用途、生活関連分野など幅広い市場に供給している。香川県丸亀市に合成樹脂事業部を置き、丸亀第四工場、丸亀第五工場、仲南工場など複数の生産拠点を有するほか、東京、名古屋、大阪、広島、四国に営業拠点を配置し、全国規模での販売体制を整えている。
新規材料事業では、液晶ディスプレイ向けの光学フィルムなど、機能性の高いフィルム製品を展開している。従来の包装用途とは異なり、精密性や高度な品質管理が求められる分野であり、同社にとっては高付加価値・高収益を狙う成長領域と位置づけられている。新規材料事業部は香川県丸亀市に置かれ、技術開発力を背景に次世代材料の創出にも取り組んでいる。
建材事業では、パーティクルボードや加工合板などの木質系建材を製造しており、住宅や建築分野向けに製品を供給している。建材事業部は香川県丸亀市に拠点を持ち、詫間工場や高瀬工場を通じて生産を行っている。また、R&Dセンターを設け、建材分野における新製品開発や品質向上にも注力している。
大倉工業はグループ経営も行っており、連結子会社として株式会社KSオークラ、株式会社九州オークラ、株式会社埼玉オークラ、株式会社オークラプロダクツなどを有している。これらの子会社はいずれも合成樹脂事業を中心に展開しており、地域ごとの生産・供給体制を補完する役割を担っている。加えて、グループとしては製造業以外にも、ホテル業、宅地造成や建物の建築販売、プレカット事業、不動産賃貸などの事業も展開しており、収益源の多角化を図っている。
このように大倉工業は、合成樹脂フィルムという安定した基盤事業を持ちながら、液晶向け光学フィルムなどの新規材料分野を成長の柱として育成し、建材分野や非製造分野にも事業を広げている。素材加工技術を核に、安定性と成長性の両立を目指す企業である。
大倉工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 77,260 | 3,771 | 4,275 | 3,788 | 317.5 | 85 |
| 連23.12 | 78,863 | 4,956 | 5,417 | 4,315 | 359.3 | 110 |
| 連24.12 | 81,192 | 4,564 | 5,111 | 4,359 | 364.0 | 160 |
| 連25.12予 | 86,300 | 6,180 | 6,360 | 4,960 | 439.1 | 195(特) |
| 連26.12予 | 87,100 | 6,090 | 6,390 | 4,800 | 424.9 | 195(特) |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 3,702 | -3,310 | -1,773 |
| 2023.12 | 8,403 | -7,897 | -1,194 |
| 2024.12 | 5,833 | -5,708 | 948 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 6.2% | 7.0% | 4.3% | – | – |
| 2024.12 | 5.6% | 7.0% | 4.2% | 8.0倍(高) / 5.5倍(安) | 0.88倍 |
| 2025.12 | 7.1% | 7.9% | 4.8% | 12.2倍(予) | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、大倉工業の2023年12月期は営業利益が49億円、経常利益が54億円、純利益が43億円となっている。2024年12月期は営業利益が45億円と一時的に減少したものの、経常利益は51億円、純利益は43億円とほぼ横ばいを維持しており、利益水準そのものは大きく崩れていない。2025年12月期予想では営業利益61億円、経常利益63億円、純利益49億円と大きく回復・拡大する見込みで、2026年12月期予想でも営業利益60億円、経常利益63億円、純利益48億円と高水準を維持する想定となっている。短期的なブレはあるものの、利益水準は一段切り上がった状態にあるといえる。
収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年の6.2%から2024年に5.6%へ一時的に低下した後、2025年には7.1%まで回復する見通しとなっている。足元ではやや弱含んだものの、中期的には改善方向にあり、大倉工業の利益構造は比較的安定していると評価できる。ROEは2023年と2024年がともに7.0%で、2025年には7.9%まで上昇しており、資本効率は緩やかながら改善傾向にある。ROAも4.3%から4.2%、4.8%と推移しており、大きな変動はないが、収益力は徐々に底上げされている。
株価指標を見ると、2024年の実績PERは高値平均で8.0倍、安値平均で5.5倍と低水準にとどまっている。PBRも0.9倍と1倍を下回っており、資産価値の観点では割安感が強い水準にあった。一方、2025年12月期の予想PERは12.2倍となっており、利益回復を織り込む形で評価が切り上がる想定ではあるが、それでも市場平均と比べれば特段に高い水準ではない。
これらを総合すると、大倉工業は営業利益率やROEが突出して高い企業ではないものの、安定した収益力を持ち、利益水準を中期的に引き上げている点が評価できる。2024年に一時的な減益があったものの、2025年以降は回復基調が明確であり、事業の基礎体力が損なわれたとは言いにくい。それにもかかわらず、2024年時点ではPER一桁、PBR1倍割れという水準にあり、指標面では慎重すぎる評価が続いていたと考えられる。
結論として、上記数値だけで判断する限り、大倉工業は高成長株ではないが、業績の安定性と回復力に対して市場評価が低めに抑えられてきた銘柄と位置づけられる。2025年以降はPERが上昇する想定ではあるものの、割高感は乏しく、利益回復とともに評価が徐々に正常化していく余地がある。大きな値上がりを狙うタイプではないが、業績の安定と株主還元を土台にした中長期向けの、やや中立から前向き寄りの投資判断が妥当と考えられる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で大倉工業を見ると、今回示されている予想配当利回りは2025年12月期、2026年12月期ともに3.99%と、かなり魅力的な水準にある。まず利回りの水準そのものが、国内株式の中では明確に高配当ゾーンに入っている。4%近い利回りは、インカムゲインを主目的とする投資家にとって十分に検討価値があり、株価が大きく上昇しなくても、配当収入だけで一定のリターンを確保できる水準といえる。
次に配当の裏付けとなる業績を見ると、営業利益・経常利益・純利益はいずれも高水準で推移しており、2025年12月期以降は利益回復が見込まれている。営業利益率も中期的には改善方向にあり、ROEやROAも安定して推移していることから、現行の配当水準は無理をして捻出している印象は強くない。特別配当を含むとはいえ、利益規模と照らせば、配当原資の安定性は比較的高いと判断できる。
一方で注意点としては、今回の195円配当は特別配当を含んでいる点である。今後も同水準の特別配当が恒常的に続くかどうかは不透明であり、将来的には配当額が調整される可能性は意識しておく必要がある。ただし、仮に特別配当が縮小したとしても、基礎的な収益力を踏まえれば、一定水準の配当は維持される余地があると考えられる。
総合すると、大倉工業は「配当目的として十分に魅力のある銘柄」と評価できる。高成長を狙うタイプではないが、安定した業績と約4%の配当利回りを背景に、インカムゲインを重視する中長期投資に適した位置づけである。キャピタルゲインは控えめでも、配当を軸に落ち着いて保有する戦略との相性は良いと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価4,885円を基準に見ると、大倉工業は高成長株というよりも、安定した利益水準と高めの配当利回りを背景に評価されるインカム寄りの銘柄である。営業利益率は6〜7%台、ROEは7〜8%台と突出した水準ではないが、業績の安定性と回復力に対して市場評価が比較的落ち着いている点が特徴となっている。現在の価格から今後5年間の良い場合、中間の場合、悪い場合の価格予想をしていきます。
良い場合のシナリオでは、新規材料部門、とくに光学フィルム分野が安定成長を続け、建材事業も底堅く推移することで、営業利益率が7%台で定着する展開を想定する。ROEも8%前後を維持できれば、収益の質が評価され、市場の見方はやや前向きに変化する。この場合、PERは13〜15倍程度まで評価され、PBRも1.1〜1.2倍程度へ切り上がる可能性がある。配当利回り4%前後を維持しながら株価が上昇する形となり、5年後の株価水準は6,200円から7,000円程度が目安となる。配当込みのトータルリターンは比較的良好な強気シナリオである。
中間のシナリオでは、業績は会社計画どおりに推移し、営業利益率は6〜7%台、ROEも7%台で安定する。大きな成長はないものの、利益水準は維持され、高配当が株価の下支えとなる。市場評価はPER10〜12倍、PBR1倍前後に落ち着き、株価は緩やかなレンジ推移となる。この場合、5年後の株価は4,800円から5,600円程度となり、値上がり益は限定的だが、配当を含めた安定的なリターンが期待できる。
悪い場合のシナリオでは、光学フィルム需要の鈍化や原材料コスト上昇の影響で利益率が低下し、営業利益率が5%台まで後退する展開を想定する。ROEも6%前後に低下すると、市場の評価は慎重になり、PERは8〜9倍、PBRも0.8〜0.9倍程度まで切り下がる可能性がある。配当は維持されるものの、特別配当の剥落が意識され、株価の上値は重くなる。この場合、5年後の株価は3,600円から4,200円程度まで下落するリスクがある。
総合すると、現在株価4,885円を起点とした大倉工業の5年間の値動きは、良い場合で6,200円から7,000円前後、中間で4,800円から5,600円、悪い場合で3,600円から4,200円といったレンジが想定される。大きな値上がりを狙う銘柄ではないが、約4%の配当利回りを軸に、インカムゲインを重視しながら中長期で保有する戦略と相性の良い銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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