株価
Appier Groupとは

Appier Group株式会社は、販促・マーケティング分野においてAIを活用したソフトウェアサービスを開発・提供する企業であり、台湾発のテクノロジー企業である。2012年に創業し、「AIをもっとシンプルに、ソフトウェアはよりスマートに」というビジョンのもと、誰もが簡単に使えるAIの普及を目指して事業を展開してきた。現在は日本市場を中核としながら、アジア太平洋地域を中心にグローバル展開を積極的に進めている。
Appierの事業の中核は、AIとデータ解析技術を活用し、企業のセールスおよびマーケティングファネル全体を支援するソリューションである。広告配信、顧客獲得、エンゲージメント向上、再購買促進といったカスタマージャーニー全体を一貫してカバーし、企業がより高いビジネス成果を上げられるよう設計されている点が特徴である。
同社のテクノロジーの屋台骨は、高度なマシンラーニングおよびディープラーニングである。AIを用いてユーザー行動や広告インタラクション、リテンションデータを分析し、将来の行動を予測することで、企業は最も価値の高いユーザーを特定し、パーソナライズされたレコメンデーションやプロモーションを実施することが可能となる。
特にROASを重視したセグメンテーションとリターゲティングはAppierの強みであり、高価値ユーザーや離脱リスクの高いユーザーをAIが識別することで、広告費をコンバージョン最大化に集中投下できる。興味・関心を示しながらもコンバージョンに至らないユーザーに対しても再アプローチを行い、広告効果の最大化を図る仕組みを提供している。
また、広告インベントリの最適化においては、透明性を確保しながら購買意欲の高いプレミアム広告枠に対して予算を動的に配分する。AIが入札価格を継続的に調整し、効率最大化と費用対効果の向上、長期的なユーザー維持を実現している点も特徴である。近年では生成AIの活用にも注力しており、グループに加わったAdCreative.aiを通じて、広告クリエイティブの自動生成・最適化を強化している。これにより、広告パフォーマンスの向上やキャンペーン拡大が容易になり、より高いROASとスマートな自動化、ダイナミックな広告体験の提供を可能としている。
企業文化としては、顧客中心主義、革新性、卓越した実行力、成長性、持続可能性を重視し、勝ち取る精神を持ちながらも思いやりのあるチームづくりを大切にしている。総合すると、AppierはAIを中核に、マーケティングとセールス領域の高度化を支援するSaaS型企業であり、日本を軸にアジア太平洋からグローバル市場へと展開を進める成長志向のテクノロジー企業として位置づけられる。
Appier Group 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ◇22.12 | 19,427 | 50 | 110 | 21 | 0.2 | 0 |
| ◇23.12 | 26,418 | 800 | 1,062 | 1,001 | 9.9 | 0 |
| ◇24.12 | 34,057 | 1,981 | 2,062 | 2,927 | 28.7 | 2 |
| ◇25.12予 | 45,000 | 4,000 | 3,750 | 3,500 | 34.4 | 2.25 |
| ◇26.12予 | 58,000 | 6,000 | 5,750 | 5,400 | 53.0 | 2.25〜3 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 996 | -3,772 | -520 |
| 2023.12 | 2,224 | 1,971 | -2,250 |
| 2024.12 | 1,929 | -2,241 | -792 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 3.0 | 3.4 | 2.6 | ― | ― |
| 2024.12 | 5.8 | 8.5 | 6.5 | 117.5〜220.8 | 3.22 |
| 2025.12予 | 8.8 | 10.1 | 7.8 | 31.64 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
Appierの業績推移を見ると、まず成長スピードの強さが際立っている。売上高は2023年12月期で約264億、2024年12月期で約340億、2025年12月期予想で約450億、2026年12月期予想では約580億と、年率で高い成長を続けている。SaaS型ビジネスとしては理想的な拡大ペースであり、市場拡大とプロダクト浸透が同時に進んでいることが読み取れる。
利益面では、2023年の営業利益は約8億にとどまっていたが、2024年には約19億、2025年予想で約40億、2026年予想では約60億まで拡大する見通しとなっている。経常利益も2023年の約10億から、2024年約20億、2025年予想で約37億、2026年予想で約57億と同様の成長軌道を描いている。純利益についても、2023年は約10億、2024年は約29億と大きく跳ね上がり、2025年予想で約35億、2026年予想で約54億と急拡大が続く。単なる売上成長ではなく、利益成長が伴っている点は非常に評価が高い。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年が3.0%、2024年が5.8%、2025年が8.8%と急速に改善している。SaaS企業としてスケール効果が本格的に出始めている段階であり、固定費吸収が進んでいることが明確である。ROEも3.4%から8.5%、10.1%へと急上昇しており、資本効率は短期間で大きく改善している。ROAも2.6%から6.5%、7.8%と同様に上昇しており、収益力の質が高まっていることが分かる。
一方で株価指標を見ると、2024年実績PERは高値平均で220.8倍、安値平均でも117.5倍と、極めて高い評価が付いていた。これは利益水準に対して成長期待が先行していた状態であり、割高感は否定できない。ただし、2025年予想PERは31.6倍まで低下する見通しで、利益成長によって評価を消化し始めている段階に入っている。PBRは2024年時点で3.2倍と高めであり、依然として成長企業としてのプレミアム評価が織り込まれている。
これらを総合すると、Appierは典型的な「高成長・高評価」銘柄であり、現時点では安定株や割安株とは明確に性格が異なる。営業利益率、ROE、ROAが短期間で大きく改善している点から、事業モデルの完成度は急速に高まっており、成長が続く限りは高い評価が正当化される余地がある。一方で、PERやPBRの水準は依然として高く、成長が鈍化した場合の株価調整リスクも大きい。
提示された数値だけで判断するなら、Appierは短期的な値動きの安定性を求める投資には向かず、業績成長が続くことを前提に中長期でリスクを取れる投資家向けの銘柄といえる。成長が計画通り進めば評価はさらに消化されるが、成長の失速があれば株価の変動は大きくなる。その意味で、「高成長を信じて持つ成長株」という位置づけが最もしっくりくる投資対象である。
配当目的とかどうなの?
Appierを配当目的で見ると、率直に言って配当投資にはほとんど向かない銘柄である。予想配当利回りは2025年12月期、2026年12月期ともに0.20%と非常に低く、インカムゲインを重視する投資スタイルでは実質的に意味のある水準とは言えない。
同社は売上、営業利益、純利益がいずれも高い成長率で拡大しており、現在は明確に成長フェーズの真っただ中にある。こうした段階では、稼いだ利益を株主還元よりも、開発投資、人材採用、マーケティング、M&Aなど将来の成長に再投資する方が企業価値の拡大につながりやすい。営業利益率やROE、ROAが短期間で大きく改善していることからも、内部投資の効率が高い局面にあることが分かる。
配当を出しているとはいえ、その水準は象徴的なものであり、実質的には無配に近いと考えて差し支えない。市場もこの企業に対して配当を期待しておらず、PERやPBRが高い水準にあるのは、将来の成長による利益拡大と株価上昇を織り込んでいるためである。仮に配当を増やしたとしても、短期的に評価が大きく変わる可能性は低い。
そのため、Appierは「配当をもらいながら長く保有する銘柄」ではなく、「成長が続くかどうかを見極めながら株価の上昇を狙う銘柄」という性格が極めて強い。配当利回りを軸に投資先を選ぶのであれば、他の成熟企業や高配当株を選ぶ方が合理的であり、Appierは明確に投資目的が異なる。結論として、Appierは配当目的ではなく、業績成長と事業拡大を信じてキャピタルゲインを狙う投資家向けの銘柄である。配当はあくまで付加的な要素に過ぎず、投資判断の中心に置くべきではない。
今後の値動き予想!!(5年間)
Appier Groupの株価について、現在値1,079円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。AppierはAIを活用したマーケティング/広告最適化ソリューションを提供する成長企業であり、売上・利益ともに急速に拡大している。営業利益率やROE、ROAも短期間で大きく改善しており、事業の収益性と資本効率が高まる過程にある。一方、依然として配当利回りは極めて低く、成長期待が株価に大きく織り込まれている。
良い場合のシナリオでは、デジタルマーケティング市場の拡大とAI投資の加速を背景に、Appierのソリューション需要が世界的に拡大する展開を想定する。売上・利益が計画を上回る成長を続け、営業利益率は一段の改善、ROE・ROAも高水準で推移する。市場評価は成長期待の高さからPERが30倍台前半を維持、PBRも2倍前後まで上昇する。この場合、成長と評価倍率の両方が押し上げ要因となり、株価は5年後に2,000円から2,500円程度まで上昇する可能性がある。生成AIや新規機能の採用拡大が評価される強気シナリオである。
中間のシナリオでは、AIマーケティング需要は緩やかに拡大するものの、競争激化や顧客獲得コストの上昇が利益率の大幅な改善を抑制するケースを想定する。売上・利益ともに堅調に伸びるが加速は限定的で、PERは25〜30倍前後、PBRは1.5倍台で推移する。この場合、株価は現在値周辺を基準として上下し、5年後の水準は1,200円から1,800円程度になる可能性が高い。成長は続くが、安定した評価に留まる中庸な展開である。
悪い場合のシナリオでは、海外展開や新規プロダクトの採用が期待ほど進まず、競合環境やコスト増が収益圧迫要因になる展開を想定する。営業利益率の改善が停滞し、ROE・ROAの伸び悩みが意識される。投資家の成長期待の後退によりPERが15倍〜20倍程度まで低下、PBRは1倍前後に下落する。この場合、株価は調整色を強め、5年後には700円から900円程度まで下落する可能性がある。成長鈍化が嫌気される弱気シナリオである。
総合すると、現在株価1,079円を起点としたAppier Groupの5年間の値動きは、良い場合で2,000円から2,500円前後、中間で1,200円から1,800円、悪い場合で700円から900円といったレンジが想定される。配当利回りはほぼ考慮されず、成長と評価倍率の変動が株価動向の主要因となる銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す