株価
KHネオケムとは

KHネオケム株式会社は、旧協和発酵を発祥とする日本の化学品メーカーである。協和発酵工業の化学品事業を源流とし、長年にわたり石油化学を基盤とした技術と顧客基盤を積み重ねてきた。現在は基礎化学品事業を土台としつつ、グローバルニッチ分野で競争力を持つ機能性材料事業、ならびに高度な品質管理が求められる電子材料事業を中核に事業を展開している。東京証券取引所に上場しており、JPX日経中小型株指数の構成銘柄にも採用されている。
同社の事業の原点は基礎化学品事業にあり、溶剤、可塑剤原料、洗浄剤原料など、さまざまな産業分野で使用される化学品を製造・販売している。これらは直接消費者の目に触れる製品ではないものの、化学産業や製造業を支える基盤材料として幅広く利用されており、安定した需要を背景に同社の事業基盤を形成している。
一方で、KHネオケムの最大の特徴は、機能性材料事業における高い競争力にある。特にエアコンや冷凍機などに使用される冷凍機油原料分野では、冷媒と共存できる特殊な化学特性を持つ製品を展開しており、世界的にも高いシェアを有している。この分野は高い技術力と長年の実績が求められるため、新規参入が難しく、同社の収益の柱となっている。冷凍機油原料は省エネルギー性能や環境対応とも密接に関わっており、世界的な空調需要の拡大を背景に中長期的な成長が期待される分野である。
機能性材料事業ではこのほか、化粧品原料や洗剤原料なども手掛けている。化粧品原料分野では、品質の安定性や安全性が重視される中で、国内外の化粧品メーカー向けに原料供給を行っており、付加価値の高いビジネスを展開している。大量生産型の汎用品ではなく、顧客ニーズに応じた製品設計や長期取引を前提としたビジネスモデルが特徴である。
電子材料事業では、半導体およびフラットパネルディスプレイ向けの高純度溶剤などを提供している。これらの分野では極めて高い純度管理と品質保証体制が求められるが、同社は長年培ってきた精製技術や製造ノウハウを強みに、先端エレクトロニクス分野を支える材料供給を行っている。半導体市場の変動の影響を受ける側面はあるものの、技術力を背景に一定のポジションを確保している。
事業拠点としては、本社を東京都中央区日本橋室町に置き、大阪支店のほか、千葉工場、四日市工場・技術開発センターを有している。特に四日市工場・技術開発センターは、製造と研究開発の中核拠点として重要な役割を担っている。また、グループ会社として、三菱ケミカルとの合弁会社であるジェイ・プラスをはじめ、黒金化成、黒金ファインズなどを擁しており、事業領域や技術の補完を図っている。
KHネオケムは、汎用品中心の化学メーカーとは異なり、ニッチ分野での高シェア製品と長期的な顧客関係を重視した事業構造を特徴としている。景気変動の影響を受けつつも、基礎化学品による安定性と、機能性材料・電子材料による収益性を組み合わせたバランスの取れた事業ポートフォリオを構築している点が同社の強みである。
KHネオケム 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益EPS (円) |
一株配当DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 114,880 | 12,456 | 12,709 | 8,073 | 217.7 | 85 |
| 連23.12 | 115,217 | 9,946 | 9,725 | 6,826 | 184.2 | 90 |
| 連24.12 | 119,758 | 12,195 | 12,055 | 8,360 | 225.8 | 90 |
| 連25.12予 | 125,000 | 14,000 | 13,900 | 10,000 | 285.6 | 105 |
| 連26.12予 | 130,000 | 14,400 | 14,300 | 10,300 | 294.2 | 117〜120 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー (百万円) |
投資キャッシュフロー (百万円) |
財務キャッシュフロー (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連22.12 | 5,131 | -10,082 | -1,076 |
| 連23.12 | 13,201 | -4,937 | -9,501 |
| 連24.12 | 6,982 | -8,897 | -645 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 8.6 | 5.4 | 10.7 | ― | ― |
| 2024 | 10.1 | 6.3 | 12.1 | 10.1~13.7 | 1.31 |
| 2025予 | 11.2 | 7.6 | 14.4 | 9.27 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
KHネオケムを、営業利益、経常利益、純利益、PER、PBR、営業利益率、ROE、ROAの数値だけで見ていくと、まず一番はっきりしているのは「利益の伸びが売上の伸びを上回っている」という点である。
売上高は2023年から2026年予想にかけて、1150億円台から1300億円程度へと緩やかに増加しており、成長率としては決して高いわけではない。ただし、営業利益は2023年の約100億円から2024年に120億円超へと一段伸び、2025年予想では140億円、2026年予想でも144億円と、売上以上のペースで増加している。経常利益や純利益もほぼ同じ軌道を描いており、利益構造が年々改善していることが読み取れる。
この利益成長を裏付けているのが、営業利益率、ROE、ROAの推移である。営業利益率は2023年の8.6%から2024年に10.1%、2025年には11.2%まで上昇しており、単なる市況頼みではなく、採算性が着実に改善している。ROEも10.7%から12.1%、14.4%と右肩上がりで、資本効率は明確に良くなっている。ROAも5.4%から7.6%まで上昇しており、総資産を使った稼ぐ力も強まっている。
次に株価バリュエーションを見ると、2024年の実績PERは安値平均で10倍程度、高値平均でも13倍台にとどまっている。PBRも1.3倍程度で、ROEが12%前後の企業としては特段高い水準ではない。さらに2025年予想ではPERが9倍台まで低下しており、利益が増える前提にもかかわらず、評価はむしろ割安方向に寄っている。
ここがこの銘柄の一番分かりやすいポイントで、利益率、ROE、ROAといった中身は年々良くなっているのに、PERは低下している。つまり、数値だけを見る限り、業績の改善スピードに株価評価が追いついていない状態と考えられる。もちろん、売上成長率が高いわけではないため、グロース株として高いPERが付くタイプではない。しかし、営業利益率が11%台、ROEが14%台まで上がる企業が、予想PER9倍台、PBR1倍台前半にとどまっているのであれば、割高感は感じにくい。
以上を踏まえると、この銘柄は短期間で大きく跳ねるタイプではないが、利益体質が改善し続ける中で、評価が徐々に切り上がっていく余地はある。少なくとも、数値だけを見た場合、「高値圏で警戒すべき水準」ではなく、「業績が順調に伸びている割に評価が抑えられている状態」と言える。結論としては、この数値だけで判断するなら、強気一辺倒ではないものの、売る理由は乏しく、中期目線であれば買い寄りの判断になる。特に利益率とROEの改善が続く限り、大きく評価が崩れるリスクは限定的と考えられる。
配当目的とかどうなの?
配当目的でKHネオケムを見ると、かなり現実的で取り組みやすい銘柄に見える。まず数字そのものを見ると、2025年予想の配当利回りが4.20%、2026年予想では4.68%と、いずれも日本株全体の中では明確に高配当の部類に入る。しかもこれは業績が落ち込む前提で無理に利回りが高く見えているわけではなく、営業利益や純利益が増益基調の中で示されている利回りである点が重要だと思う。
純利益は2023年の約68億円から2024年に83億円、2025年予想で100億円、2026年予想でも103億円と着実に増えており、それに合わせて配当も2024年90円、2025年105円、2026年は117〜120円と段階的に引き上げられている。利益以上に無理して配当を出している感じはなく、むしろ利益成長に素直に連動した配当政策に見える。
EPSは2025年で285円、2026年で294円ある中で、配当が100円台前半という水準は、配当性向としても極端に高くなく、将来の余力を残した状態だと言える。さらに、営業利益率は11%台まで改善し、ROEも14%台に入る見通しで、企業としての稼ぐ力そのものが強くなっている。その状態で配当利回りが4%台後半まで見えているのは、配当目的としては安心感がかなり大きい。
短期で株価が大きく上がらなくても、毎年4%台の配当を受け取りながら業績改善を待てる構図であり、逆に言えば業績が大きく崩れない限り、配当面から見た下値は比較的堅いと考えやすい。超高配当株のように6%や7%を狙うタイプではないが、その分、減配リスクが高い銘柄にありがちな不安も小さい。結論として、KHネオケムは値上がり益を強く狙うよりも、配当を受け取りながら中期で保有する目的にはかなり相性が良く、配当目的だけで見ても十分に検討対象になる水準にあると言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
KHネオケムは、旧協和発酵を発祥とする化学メーカーで、基礎化学品を土台に、冷凍機油原料を中心とした機能性材料、電子材料を展開する企業である。特にエアコンや冷凍機で使用される冷媒と共存可能な冷凍機油原料では世界的に高いシェアを持ち、グローバルニッチ分野で確固たる地位を築いている。売上成長は緩やかだが、利益率改善と資本効率向上が続いており、配当水準も高いことから、安定成長・高配当型の性格が強い。現在の株価2,498円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、世界的な空調需要の拡大や省エネ・環境対応の流れを背景に、冷凍機油原料の需要が安定的に拡大する展開を想定する。機能性材料の比率上昇により営業利益率は11%台から12%前後で安定し、純利益は100億円規模を維持する。ROEも14%前後を継続し、収益性の高さが市場に再評価されることで、PERは現在の9〜10倍水準から12〜14倍程度まで切り上がる。この場合、増配を伴いながら評価修正が進み、5年後の株価は3,500円から4,200円程度まで上昇する展開が考えられる。高配当を維持しつつ、緩やかな成長と評価見直しが重なる強気シナリオである。
中間のシナリオでは、空調・産業用途向け需要は概ね安定し、業績は会社計画どおりに推移するものの、大きな上振れも下振れも起きないケースを想定する。営業利益率は10〜11%台、ROEは12〜13%台で安定し、配当も段階的な増配が継続される。市場評価はPER10〜11倍、PBR1倍台前半で落ち着き、株価は緩やかに切り上がる。この場合、5年後の株価水準は2,800円から3,200円程度となり、値上がり益は限定的ながら、配当を受け取りながら保有する安定型のシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、世界的な景気減速や設備投資抑制の影響で、冷凍機油原料や電子材料の需要が一時的に鈍化する展開を想定する。原材料コストの上昇なども重なり、営業利益率は再び1桁台後半に低下、ROEも10%前後まで落ち込む。この場合、市場の評価は慎重になり、PERは8〜9倍程度まで低下する可能性がある。株価は配当利回りの高さに一定の下支えを受けるものの、5年後の株価は1,800円から2,200円程度まで下落する展開も考えられる。高配当ではあるが、評価面では守りの局面となる弱気シナリオである。
総合すると、現在株価2,498円を起点としたKHネオケムの5年間の値動きは、良い場合で3,500円から4,200円前後、中間で2,800円から3,200円、悪い場合で1,800円から2,200円といったレンジが想定される。高成長株ではないものの、グローバルニッチ分野での競争力と高い配当水準を背景に、インカムゲインを重視しつつ、緩やかな評価修正を狙う中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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