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ぴあ(4337)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

ぴあとは

ぴあは、日本国内におけるチケット流通の最大手企業であり、音楽、演劇、スポーツ、映画、各種イベントのチケット販売を中核に、ライブ・エンタテインメント領域で幅広い事業を展開している。出版事業を祖業としながら、現在ではチケット販売を起点に、イベント主催、施設運営、コンテンツ創出までを一体的に手がける総合エンタテインメント企業へと進化している。

同社は「コンテンツ創出」「チケット販売」「ヴェニューネットワーク」「コミュニティ」「人材・文化の育成」という5つの領域を連携させ、興行主やコンテンツホルダーとエンドユーザーを一気通貫で結ぶビジネスモデルを構築している。エンタテインメントの作り手と受け手、生み出す側と楽しむ側をつなぐ役割を「感動のライフライン」と位置づけ、企画・制作からプロモーション、チケット流通、ホール・劇場運営までを一貫して担っている点が大きな特徴である。

歴史的には、1972年に中央大学在学中だった矢内廣が学生起業として映画やコンサート情報をまとめた雑誌『ぴあ』を創刊したことに始まる。1974年にぴあ株式会社を設立し、1984年には電話予約によるチケット販売サービス「チケットぴあ」を開始、日本におけるオンラインチケット流通の先駆けとなった。その後、1999年にはチケット販売専用のWebサイトを立ち上げ、インターネット時代への移行にも対応してきた。2002年に東証二部、2003年に東証一部へ上場し、現在は東京証券取引所プライム市場に上場している。

チケット流通事業では、日本初のコンピュータオンラインチケット販売システムとしてスタートした「チケットぴあ」を中心に、常時約2万件のイベントを取り扱い、年間発券枚数は約8,000万枚に達する国内最大級の規模を誇る。会員数は2024年時点で2,000万人を超え、セブン-イレブンやファミリーマートなどのコンビニエンスストアと連携した全国約38,000カ所以上の店舗ネットワークを通じて、購入・支払い・発券までを可能にしている。かつてインターネット販売に慎重だった興行分野においても、独自システムを構築することで対応を進め、他社に比べて取り扱い件数の多さを維持してきた。

また、チケット販売にとどまらず、イベントの主催・企画・制作・運営にも積極的に取り組んでいる。2007年から継続開催している音楽イベント「PIA MUSIC COMPLEX(ぴあフェス)」をはじめ、各種興行事業を自ら手がけることで、収益機会の拡大とコンテンツ創出力の強化を図っている。2018年には雑誌に代わるメディアとして「アプリ版ぴあ」をリリースし、ITを活用した情報提供とチケット流通の融合を進めている。

さらに、ヴェニューネットワーク戦略の一環として、2020年には横浜みなとみらい地区に収容人数1万人規模の音楽専用施設「ぴあアリーナMM」を開業した。自社で大型アリーナを運営することで、興行主催、チケット販売、施設運営を一体化させたビジネスモデルを構築し、ライブ・エンタテインメント分野における存在感を一段と高めている。このように、ぴあは出版を起点に、チケット流通を軸としながら、イベント主催、施設運営、デジタルサービスまで事業領域を広げてきた企業であり、国内エンタテインメント業界において不可欠なインフラ的存在として位置づけられる。

ぴあ 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益 EPS(円) 一株配当 DPS(円)
21.3期 67,355 -6,231 -6,008 -6,664 -479.0 0
22.3期 25,829 -833 -845 -1,122 -74.2 0
23.3期 32,763 820 600 1,415 92.8 0
24.3期 39,587 1,209 922 1,118 73.2 0
25.3期 45,362 2,636 2,378 1,591 104.0 0
26.3期(予) 50,000 4,200 4,200 2,700 176.1 20
27.3期(予) 48,000 3,800 3,600 2,300 150.0 20

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
23.3期 9,355 -3,564 -3,797
24.3期 12,375 -2,216 -2,596
25.3期 15,336 -1,932 -1,022

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

決算期 営業利益率(%) ROE(%) ROA(%) PER(倍) PBR(倍)
23.3期 2.5 32.5 1.8
24.3期 3.0 20.1 1.2
25.3期 5.8 21.9 1.5 31.5(高値平均)
23.9(安値平均)
4.34

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の規模と伸びを見る。売上高は24.3期が395億、25.3期が453億、26.3期予が500億と、イベント需要の回復を背景に明確な増収トレンドにある。コロナ禍からの反動という側面はあるが、2年連続で二桁に近い伸びを示しており、事業環境が大きく改善していることは数字からもはっきり分かる。

利益面では回復の勢いがさらに強い。営業利益は24.3期が12億、25.3期が26億、26.3期予が42億と急拡大している。経常利益も9億、23億、42億と同様の推移で、純利益も11億、15億、27億と大きく伸びている。売上の回復に対して利益の伸びがそれ以上になっており、固定費負担が軽くなったことで収益レバレッジが強く効いている状態といえる。

収益性を見ると、営業利益率は23.3期が2.5%、24.3期が3.0%、25.3期が5.8%と明確な改善傾向にある。まだ高収益企業と呼べる水準ではないが、構造的に赤字体質だった時期を脱し、利益を出せる体質に移行しつつある段階と評価できる。

一方で資本効率を見ると、ROEは23.3期32.5%、24.3期20.1%、25.3期21.9%と非常に高い水準にある。ただし、この高さは自己資本がまだ十分に積み上がっていない回復初期特有の数字であり、安定的に20%超を稼げる企業と即断するのは早い。ROAは23.3期1.8%、24.3期1.2%、25.3期1.5%と低く、資産規模に対する利益水準はまだ十分とは言えない。ここはこの企業の構造的な弱点が残っている部分である。

市場評価を見ると、25.3期の実績PERは高値平均31.5倍、安値平均23.9倍、PBRは4.3倍とかなり高い。営業利益率がまだ5%台であること、ROAが低いことを考えると、現時点の評価はすでに「回復シナリオのかなりの部分を織り込んでいる」と言える。成長期待が少しでも裏切られた場合、バリュエーション調整が起きやすい水準でもある。

以上を踏まえると、この銘柄は現在、業績面では回復と成長が非常に分かりやすく、数字の勢いも強い。一方で、PERとPBRはすでに高く、割安感は全くない。投資判断としては、回復局面の初動で買う銘柄ではなく、「回復が本物かどうか」を市場が試しにいくフェーズにある銘柄と位置づけられる。

結論としては、業績の改善トレンド自体は非常に良好で、数字だけを見れば強いが、その分評価もかなり先行している。中長期で見る場合、営業利益率が6%台以上で定着し、ROAが改善してくるかが次の判断材料になる。現時点では強気一辺倒で飛びつく局面ではなく、成長は認めつつも、株価水準には慎重になりたい、やや強気寄りの中立という判断が妥当である。

配当目的とかどうなの?

配当目的としてこの銘柄をどう見るかを、提示された数値だけを前提につらつら書く。連26.3期、連27.3期ともに予想配当利回りは0.76%で、この水準は配当目的としてはかなり低い。日本株全体の平均配当利回りと比べても明確に見劣りし、高配当どころかインカム狙いの対象としては最初から土俵が違う銘柄であることが分かる。

利益の伸び自体は非常に強い。売上は395億から453億、500億へと拡大し、営業利益も12億、26億、42億と急回復している。純利益も11億から15億、27億へと大きく伸びており、稼ぐ力は明らかに改善している。ただし、こうした利益成長がそのまま配当に回っているわけではなく、配当額は連26.3期、連27.3期ともに年20円にとどまっている。この結果、利益成長に対して配当の伸びは極めて抑制的で、還元姿勢はかなり慎重だと言える。

資本効率を見ると、ROEは20%超と非常に高い一方で、ROAは1%台と低く、事業構造としてはまだ資産効率が高いとは言えない段階にある。こうした状況では、会社側が内部留保を優先し、事業基盤の安定や投資余力の確保を重視するのは自然であり、短期的に高配当路線へ転換する可能性は低いと考えられる。

また、市場評価はPERが24〜31倍、PBRが4.3倍とすでに高く、株価は完全に業績回復と成長期待を織り込んでいる状態にある。この水準で配当利回りが0.76%しかないということは、株価の魅力はほぼすべてキャピタルゲイン期待に依存しているということでもある。配当が株価の下支えになる構造ではなく、業績や成長期待が崩れた場合には、配当面からの防御力はほとんどない。

結論として、この銘柄は配当目的とは相性が非常に悪い。業績回復と成長を評価して値上がりを狙う銘柄であり、インカム狙いで保有する理由は見当たらない。配当はあくまで象徴的な水準で、配当を主目的にする投資家にとっては、選択肢から外すのが妥当である。配当目的で見るなら不適、キャピタルゲイン前提でのみ検討余地がある銘柄、という評価になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

ぴあは、現在株価2,623.0円を基準に見ると、高配当株やディフェンシブ株というよりも、エンタテインメント市場の回復と成長を背景に評価される回復・成長寄りの循環型銘柄と位置づけられる。出版を祖業としながら、日本最大級のチケット流通事業を中核に、イベント主催、アリーナ運営まで事業領域を広げてきた企業であり、業績は景気動向や人流、消費マインドの影響を強く受ける一方、回復局面では利益が一気に伸びやすい体質を持っている。

直近では売上・利益ともにコロナ禍から力強く回復し、営業利益率も2%台から5%台後半まで改善している。ただし、ROAは1%台と低く、事業構造としては依然として資産効率が高いとは言えず、市場評価は成長期待込みで先行している段階にある。今後5年間の良い場合、中間の場合、悪い場合の値動き予想を書いていく。

良い場合のシナリオでは、ライブ・音楽・スポーツイベント市場が安定的に拡大し、チケット流通量の増加に加えて、イベント主催やアリーナ運営の収益性も高まる展開を想定する。固定費負担が軽くなった状態で稼働率が上がり、営業利益率が6%前後で定着すれば、利益成長は売上以上のペースで続きやすい。ROEも20%前後を維持し、成長企業としての評価が継続すれば、高いPER水準が許容されやすくなる。この場合、市場は成長ストーリーを評価し続け、5年後の株価水準は3,800円から4,200円程度が目安となる。配当利回りは低いままだが、値上がり益を狙う投資としては強気寄りのシナリオとなる。

中間のシナリオでは、イベント需要は堅調ながらも成長は徐々に落ち着き、業績は会社計画に沿ったペースで推移するケースを想定する。営業利益率は5%前後で頭打ちとなり、利益成長率も鈍化する。市場評価は冷静化し、PERは20倍前後に収れんしていく。この場合、株価は大きな上昇トレンドを描きにくく、配当利回りも低いため、株価の下支えは限定的となる。5年後の株価は2,600円から3,000円程度と、現在値からは緩やかな上昇か横ばいに近い水準にとどまる中立的なシナリオとなる。

悪い場合のシナリオでは、景気後退や消費マインドの悪化によりイベント需要が伸び悩み、主催事業やアリーナの稼働率が低下する展開を想定する。営業利益率は再び4%台前半まで低下し、利益成長への期待が後退すると、市場は高い評価を維持できなくなる。PERは15倍前後まで切り下がり、株価は調整局面に入る。この場合、5年後の株価は1,800円から2,200円程度まで下落するリスクがあり、配当利回りが低いことからインカム面での防御力も弱い弱気シナリオとなる。

総合すると、現在株価2,623.0円を起点としたぴあの5年間の値動きは、良い場合で3,800円から4,200円前後、中間で2,600円から3,000円、悪い場合で1,800円から2,200円といったレンジが想定される。安定配当を狙う銘柄ではなく、エンタテインメント市場の回復と成長が続くことを前提に値上がり益を狙う中長期投資向けの銘柄であり、現在の株価水準はすでに成長期待をかなり織り込んでいる点を理解したうえで向き合う必要がある。

この記事の最終更新日:2025年12月21日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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