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ソースネクストとは

ソースネクストは、PC用ソフトウェアとIoT機器を中心に企画・開発・販売を行う企業であり、低価格で分かりやすい製品を大量に展開することで個人ユーザー市場に強い基盤を持っている。もともとはWindows向けソフトウェアの販売で成長してきた会社で、「驚速」シリーズやタイピング練習ソフト「特打」などのヒット商品によって知名度を高めてきた。
特に強みとなっているのが、セキュリティソフトや年賀状・宛名作成ソフトといった分野での圧倒的な商品数とシェアである。更新料0円を特徴とする「ZERO」シリーズのウイルス対策ソフトをはじめ、「筆王」「筆まめ」「宛名職人」などの年賀状・毛筆ソフト、「いきなりPDF」に代表される文書管理ソフト、トレーニング系ソフトなど、日常的に使われやすい分野で長年にわたり国内シェア上位を維持している。取り扱いソフトは900本を超え、登録ユーザー数は1,800万人以上に達しており、個人向けソフト市場では非常に大きなユーザーベースを持つ企業である。
ビジネスモデルとしては、すべてを自社開発するのではなく、国内外の優良なソフトウェアや技術を発掘し、日本市場向けに企画・最適化して販売するスタイルを採っている。ウイルス対策ソフトでも、海外ベンダーのエンジンを活用しつつ、価格を抑えた商品設計を行うなど、コストパフォーマンスを重視した商品戦略が特徴となっている。また、「Qualityイチキュッパシリーズ」に代表される低価格路線や、パッケージサイズを大幅に縮小したスリムパッケージなど、販売方法や流通面での工夫も同社の個性といえる。
2017年以降は、従来のPCソフト事業に加えて、IoT・ハードウェア分野へと大きく舵を切っている。その象徴が自動通訳機「ポケトーク」であり、訪日外国人対応、海外旅行、ビジネス用途などを背景に急速に普及した。翻訳機市場では非常に高いシェアを獲得しており、ソフトウェア会社という枠を超えて、ハードウェアと通信・サービスを組み合わせたビジネスに本格的に取り組んでいる点が、近年のソースネクストの大きな特徴である。
このほか、スマートフォン向けアプリ、クラウド型セキュリティ、英語学習教材や写真素材集などの教材・素材分野にも事業を広げており、買い切り型ソフト販売だけに依存しない収益構造を目指している。ただし、ポケトークを中心としたIoT事業は成長余地が大きい一方で、開発・マーケティング投資も重く、業績は投資フェーズの影響を受けやすい構造になっている。
全体として見ると、ソースネクストは、長年積み上げてきたPCソフト分野の安定した顧客基盤とブランド力を土台にしつつ、ポケトークを軸とした新しい成長分野に積極投資を行っている企業である。安定事業と成長事業が同居している点が特徴であり、今後はIoT分野への投資がどこまで収益として結実するかが、中長期的な評価を大きく左右する会社だといえる。
ソースネクスト 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20.3期 | 17,282 | 474 | 537 | 224 | 1.7 | 0.25 |
| 21.3期 | 12,851 | 540 | 452 | 191 | 1.4 | 0.21 |
| 22.3期 | 10,307 | -2,259 | -2,128 | -3,502 | -25.8 | 0 |
| 23.3期 | 10,347 | -2,574 | -2,537 | -2,303 | -17.0 | 0 |
| 24.3期 | 11,334 | -2,271 | -2,239 | -2,169 | -16.0 | 0 |
| 25.3期 | 11,455 | -3,480 | -3,925 | -3,896 | -28.7 | 0 |
| 25.12期(予・修正) | 11,300 | -1,200 | -1,400 | -1,100 | -8.0 | 0 |
| 26.12期(予) | 18,000 | 1,000 | 1,000 | 500 | 3.6 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3期 | 170 | -999 | 1,609 |
| 24.3期 | -765 | -1,501 | -1,163 |
| 25.3期 | -1,857 | -1,215 | 5,778 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3期 | -24.9 | -25.1 | -11.8 | ― | ― |
| 24.3期 | -20.1 | -26.9 | -13.0 |
―(高値平均) ―(安値平均) |
3.16 |
| 25.12期(変則) | -10.7 | -14.8 | -6.4 | ―(予想) | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模と推移を見る。売上高は23.3期が103億、24.3期が113億、25.3期が114億と小幅な増加にとどまっている。その後、決算期変更に伴う25.12期予変では113億と横ばいで、26.12期予では180億と大きな増収計画が示されている。ただし、ここには事業構造の変化や回復期待が強く織り込まれており、過去実績との連続性は弱い。
利益面を見ると、営業利益は23.3期が-25億、24.3期が-22億、25.3期が-34億と赤字が続き、25.12期予変でも-12億と依然マイナスである。26.12期予でようやく10億の黒字計画となっているが、あくまで予想段階であり、過去3年の実績は一貫して赤字である。経常利益も同様に、23.3期-25億、24.3期-22億、25.3期-39億と悪化し、25.12期予変でも-14億にとどまる。純利益は23.3期-23億、24.3期-21億、25.3期-38億と赤字が拡大し、25.12期予変でも-11億であり、26.12期予の5億黒字は大きな反転を前提とした数字である。
収益性を見ると、営業利益率は23.3期-24.9%、24.3期-20.1%、25.12期ベースで-10.7%と赤字幅は縮小しているものの、依然としてマイナス圏にある。構造的な黒字体質に転換したとは言えず、コスト削減や売上拡大が少しでも崩れると再び悪化しやすい状態である。
資本効率を見ると、ROEは23.3期-25.1%、24.3期-26.9%、25.12期で-14.8%と依然マイナスで、ROAも23.3期-11.8%、24.3期-13.0%、25.12期で-6.4%と低迷している。赤字が続いている以上、資本効率の改善は限定的であり、企業価値を安定的に積み上げられる段階にはない。
次に市場評価を見る。24.3期時点の実績PBRは3.1倍と高く、利益が出ていない企業としてはかなり強気な評価水準である。PERは赤字のため算出不可であり、利益指標による割安・割高判断ができない状況にある。つまり、現在の評価は「将来黒字化する」という期待のみで支えられている状態である。
以上を踏まえると、この銘柄は長期の赤字局面から脱却しようとする転換点にあるが、実績ベースではまだ黒字化を確認できていない。営業利益率、ROE、ROAはいずれも改善傾向にはあるもののマイナスであり、事業の収益力は未完成である。一方でPBRは3倍超と高く、市場はすでに回復シナリオの相当部分を織り込んでいる。
結論としては、現時点では「黒字転換期待先行型」の銘柄であり、業績の安定性や安全余地を重視する投資には向かない。26.12期に計画どおり営業黒字が定着し、利益率がさらに改善することを確認できて初めて、評価の正当性を検証できる段階に入る。提示された数値だけで判断するなら、積極的に買いに行く局面ではなく、リスクの高い様子見、もしくはかなり強い期待を許容できる投資家向けの銘柄という判断になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で見ると、この銘柄は現時点では全く向かないと言える。連25.12期、連26.12期ともに予想配当利回りは0.00%であり、株主に対する現金配当は想定されていない。インカムゲインを目的とした投資では、そもそも検討対象に入らない水準である。
背景として、直近数年は営業赤字・最終赤字が続いており、25.12期予変でも赤字見通しとなっている点が大きい。利益剰余金を積み上げる段階に入っておらず、営業キャッシュフローも安定してプラスを確保できていないため、配当に回せる余力がない構造にある。26.12期に黒字転換予想は出ているものの、これはあくまで計画段階であり、単年度で黒字になったからといってすぐに配当を再開できる状況ではない。会社としても当面は配当より事業立て直しや成長投資、財務体質の改善を優先せざるを得ない。
整理すると、この銘柄は安定配当や高配当を狙うインカム投資とは明確に相性が悪く、あくまで黒字転換や業績回復による株価上昇を狙うキャピタルゲイン型、しかもリスク許容度の高い投資家向けの銘柄である。配当目的で選ぶなら、少なくとも黒字が定着し、配当方針が明確に示される段階まで待つべきだと判断できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ソースネクストは、現在株価155.0円を基準に見ると、安定成長株や配当株というよりも、事業再構築と黒字転換が実現するかどうかに賭ける再生・期待先行型の銘柄と位置づけられる。直近数年は営業赤字・最終赤字が続き、決算期変更を挟んだ25.12期も赤字見通しである一方、26.12期には営業黒字への転換計画が示されている。この計画が実現するかどうかが、今後5年間の株価を大きく左右する。
良い場合のシナリオでは、ポケトーク事業の採算が改善し、売上拡大とコストコントロールが同時に進むことで、26.12期以降に営業黒字が定着する展開を想定する。赤字幅の縮小が一過性に終わらず、営業利益率がプラス圏で安定し始めれば、市場は「再生完了」に近い評価を与えやすくなる。この場合、現在155円という低位株水準からの見直しが進み、PBRも過度な期待一辺倒から実績裏付けの評価へ移行する。5年後の株価水準は300円から450円程度が目安となり、業績回復を確認しながら段階的に評価が切り上がる強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、売上は拡大するものの利益改善は緩やかで、黒字化と赤字が行き来する不安定な状態が続くケースを想定する。ポケトーク事業は一定の需要を維持するが、価格競争や固定費負担の重さから利益率の改善が進まず、黒字は一時的にとどまる。この場合、市場評価は大きく変わらず、「再生途中」の位置づけにとどまる。株価は現在値近辺を中心に上下し、5年後の水準は130円から200円程度と、上昇余地は限定的な中立シナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、ポケトーク事業の成長が鈍化し、コスト削減も十分に進まず、26.12期以降も赤字が続く展開を想定する。事業の立て直しが長期化すれば、増資や資金調達への警戒感が強まり、株主価値の希薄化リスクが意識されやすくなる。この場合、市場の期待は剥落し、低位株としての不安定さが前面に出る。5年後の株価は50円から100円程度まで下落するリスクがある弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価155.0円を起点としたソースネクストの5年間の値動きは、良い場合で300円から450円前後、中間で130円から200円、悪い場合で50円から100円といったレンジが想定される。安定的なリターンを狙う銘柄ではなく、黒字転換が本当に定着するかを見極めながら、ハイリスク・ハイリターンを許容できる投資家向けの銘柄だと位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月21日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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