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東邦システムサイエンスとは

東邦システムサイエンスは、旧東邦生命系の流れを汲むSI企業としてスタートし、創設以来一貫して金融分野に特化して発展してきた独立系システムインテグレーターである。銀行・証券・保険といった金融機関向けシステムを中核に事業を展開しており、長年にわたり金融業務に深く入り込んできた実績から、業務理解力と品質面で高い評価を受けている。業界内では「金融システムならTSS」という評価が定着しており、ミッションクリティカルな領域を任される存在として確固たるポジションを築いている。
事業の柱は、金融系・通信系を中心とした受注ソフトウェア開発と、情報システムサービス、すなわちシステム運用管理や保守業務である。単なるプログラム開発にとどまらず、要件定義や基本設計といった上流工程から、開発、テスト、導入、運用までを一貫して担う体制を強みとしている。汎用系からオープン系まで幅広い技術に対応しており、バックヤード業務からフロント業務まで、システム全体を俯瞰したトータルソリューションの提供が可能である。
銀行向けシステムでは、顧客管理データベース、営業支援、収益管理などの情報系システムに強みを持つほか、市場系システムとしてデリバティブ取引やリスク管理システムの開発にも精通している。金融機関の再編やシステム統合に伴う大型案件にも数多く関与しており、データベース基盤の選定、データ移行計画の策定、移行作業の実行まで含めた高度な支援を行ってきた点は同社の大きな特徴である。こうした領域は障害発生時の影響が極めて大きく、高度な信頼性と安定性が求められるため、長年の実績がある企業に仕事が集まりやすい分野でもある。
通信分野では、携帯電話の料金案内システムや料金シミュレーションシステムの上流工程に長年参画してきた実績を有している。制度変更や料金プラン改定への対応が頻繁に求められる分野であり、業務知識とシステム理解の両立が不可欠となるが、同社はその両面で評価されてきた。また、業務系システムに加えて、ネットワークやデータベースといった基盤構築案件にも参画し、単なるアプリケーション開発会社にとどまらない総合力を持っている。
基盤構築分野では、大手通信会社、銀行、新聞社などの社内システムを対象に、基盤の設計・構築・維持管理を手掛けている。CiscoやF5製品を用いたネットワーク設計・構築、Oracle製品によるデータベースサーバ構築、JP1などの運用管理基盤の設計・構築を得意領域としており、これらに対応できる技術者を多数擁している点が強みである。アプリケーションと基盤の両方を理解していることにより、システム全体の最適化を前提とした提案が可能となっている。
同社のもう一つの特徴は、人材育成を重視する企業文化にある。基礎ができていなければ一流のプロにはなれないという考えのもと、教育は基礎作りからスタートし、その上に専門的な技術や知識を積み重ねていく方針を採っている。単に技術を身に付けるだけでなく、自ら考え行動できるシステムエンジニアの育成を目指しており、この教育方針が品質の安定や顧客からの信頼につながっている。
また、最先端技術に対する向上心や探究心を重視しており、新技術の習得を通じて技術力の底上げを図っている。金融分野という保守的になりやすい領域においても、品質を担保しながら新技術を取り入れる姿勢を維持している点は、同社の競争力の源泉の一つといえる。
経営面では、2026年4月にランドコンピュータと共同で持株会社を設立する予定であり、これに伴い2026年3月末をもって上場廃止となる見込みである。今後は持株会社体制のもとで、グループとしての事業基盤強化やシナジー創出を図っていくことが想定される。上場企業としてのフェーズを終え、グループ経営へ移行する転換点にある企業と位置付けられる。
東邦システムサイエンス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 19.3期 | 12,802 | 1,030 | 1,038 | 651 | 35.8 | 16.7 |
| 20.3期 | 11,686 | 915 | 923 | 631 | 34.8 | 16.7 |
| 21.3期 | 12,189 | 1,076 | 1,085 | 748 | 41.2 | 23.3 |
| 22.3期 | 14,211 | 1,327 | 1,337 | 942 | 52.0 | 20.0 |
| 23.3期 | 15,446 | 1,514 | 1,522 | 1,116 | 61.4 | 26.7 |
| 24.3期 | 16,280 | 1,574 | 1,583 | 1,082 | 59.3 | 40.0 |
| 25.3期 | 17,342 | 1,658 | 1,627 | 1,194 | 65.4 | 45.0 |
| 26.3期(予) | 19,000 | 1,710 | 1,720 | 1,200 | 69.2 | 45.0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3期 | 1,189 | -68 | -424 |
| 24.3期 | 1,252 | -17 | -615 |
| 25.3期 | 1,361 | -23 | -1,918 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3期 | 9.8 | 12.7 | 8.7 | ||
| 24.3期 | 9.6 | 11.5 | 8.0 | ||
| 25.3期 | 9.5 | 13.5 | 9.2 |
21.6(高値平均) 13.0(安値平均) |
2.22 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の規模と推移を見る。売上高は24.3期が162億、25.3期が173億、26.3期予が190億と、年を追って着実に伸びている。急成長ではないが、減速感もなく、事業基盤が安定したまま拡大している形である。SI企業としては理想的に近い増収パターンといえる。
利益面を見ると、営業利益は24.3期15億、25.3期16億、26.3期予17億、経常利益もほぼ同水準で推移しており、売上増に沿って利益も素直に増えている。純利益は24.3期10億、25.3期11億、26.3期予12億で、こちらも右肩上がりである。利益の伸び率自体は大きくないが、減益リスクを感じさせる数字ではなく、成熟した安定企業という印象が強い。
収益性を見ると、営業利益率は23.3期9.8%、24.3期9.6%、25.3期9.5%と、わずかに低下している。ただし9%台後半を安定して維持しており、SI業界全体の中では依然として高い水準にある。コスト増や単価下落で急激に利益率が崩れているわけではなく、成熟局面での微調整と見るのが自然である。
次に資本効率を見る。ROEは23.3期12.7%、24.3期11.5%、25.3期13.5%で、25.3期には明確に改善している。ROAも23.3期8.7%、24.3期8.0%、25.3期9.2%と、こちらも回復基調である。ROE13%台、ROA9%台という水準は、安定型のITサービス企業としてはかなり優秀で、資本と資産を効率よく使って稼げている会社と評価できる。
市場評価を見ると、25.3期の実績PERは高値平均21.6倍、安値平均13.0倍とレンジが広い。PBRは2.2倍である。ROEが13.5%あることを考えると、PBR2倍超自体は理屈に合っており、数字上は割高とは言い切れない。ただし、PER21倍はこの成長率を考えるとやや期待先行で、PER13倍は明確に割安感がある水準になる。
以上の数値だけで判断すると、この銘柄は高成長株ではない一方で、収益性と効率性が非常に高く、業績のブレも小さい「質で評価される企業」である。利益率が高く、ROE・ROAも良好なため、事業内容に大きな変化がなくても安定して利益を積み上げていく力がある。一方で、成長率は緩やかであるため、高いPERを正当化し続けるタイプではない。
投資判断としては、株価がPER20倍を超える水準では、業績の安定性は評価できるものの、リターン期待はやや低下する。一方で、PER15倍前後、あるいはそれ以下の水準まで評価が落ちる局面があれば、ROE・ROAの高さと業績の安定性を考えると、中期的には十分に妙味が出てくる。結論として、この銘柄は強気で追いかける対象ではないが、悲観的に売られる理由も見当たらない。割安ではないが質は高く、価格帯を選べば安心して持てるタイプの銘柄であり、投資判断としては中立からやや買い寄り、という位置づけが妥当だと考える。
配当目的とかどうなの?
配当目的としてこの銘柄をどう見るかを、提示された数値だけを前提につらつら書く。26.3期の予想配当利回りは3.86%で、日本株全体の平均と比べるとやや高めだが、いわゆる高配当株と呼ばれる5%以上の水準には届かない。この時点で、この銘柄は配当最優先で利回りだけを取りに行くタイプではないことが分かる。
一方で、利益の安定性を見ると印象はかなり良い。純利益は24.3期が10億、25.3期が11億、26.3期予が12億と着実に増えており、配当原資は年々厚くなっている。営業利益率も9%台を維持しており、ROEは25.3期で13.5%、ROAも9.2%と高水準で、稼ぐ力そのものが弱っている兆しは見られない。無理に配当性向を引き上げて利回りを作っている企業ではなく、利益の裏付けを持った配当である点は、配当目的では大きな安心材料になる。
配当利回り3.86%という数字をどう評価するかだが、これは短期的なインパクトを狙う水準ではなく、安定したインカムを継続的に受け取るための水準といえる。業績のブレが小さく、利益が安定している企業でこの利回りが確保できるのであれば、減配リスクを抑えつつ配当を受け取りたい投資家にとっては現実的なラインである。特に、ROEが高いにもかかわらず配当を極端に絞っているわけではなく、段階的に増配してきている点を考えると、将来にわたって配当が維持される可能性は比較的高い。
ただし、この銘柄を配当目的で選ぶ場合の注意点もある。それは、株価水準次第で利回りの魅力が簡単に薄れるという点である。PERが高い局面では利回りは自然と低下し、配当目的としての妙味は後退する。逆に、株価が調整して利回りが4%前後まで見える水準であれば、業績の安定性と合わせて、配当狙いとしてのバランスはかなり良くなる。
結論として、この銘柄は高配当株の代名詞のような存在ではないが、業績が安定しており、減配リスクが小さい中で3%台後半の利回りを狙える銘柄である。配当だけで一気にリターンを取りに行く人には物足りないが、値動きに振り回されず、安定した配当を中長期で受け取りたい投資家にとっては、十分に検討に値する配当銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
東邦システムサイエンスは、現在株価1,163.0円を基準に見ると、高成長株というよりも、金融分野に特化した安定した収益力と比較的堅実な配当を背景に評価される中堅の安定型SI銘柄と位置づけられる。旧東邦生命系の流れを汲み、銀行・金融機関向けシステムを中核に長年事業を展開してきた企業であり、業績は景気循環の影響を受けにくい一方、急激な成長も起こりにくい性格を持つ。直近では営業利益率が9%台後半から9%台半ばで安定し、ROEも13%台まで回復しており、収益性と資本効率の両面でSI業界の中では高い水準にある。ただし、成長率は緩やかで、市場評価もPERレンジの中で上下しやすい銘柄といえる。今後5年間の良い場合、中間の場合、悪い場合の値動き予想を書いていく。
良い場合のシナリオでは、金融機関向けシステム開発・運用案件が安定的に積み上がり、通信・基盤構築分野も堅調に推移する展開を想定する。人件費上昇を吸収しつつ、営業利益率は9%台後半を維持し、ROEも10%台前半から中盤で安定する。配当も減配なく推移し、インカム狙いの資金が継続的に流入することで、市場からは「安定して高効率で稼げる金融系SI」としての評価が進みやすくなる。この場合、PERは18〜20倍程度まで許容され、PBRも2倍前後を維持する。5年後の株価水準は1,500円から1,700円程度が目安となり、配当利回り3%台後半を維持しながら、緩やかな値上がりも期待できる強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、主力の金融系システムは堅調に推移するものの、成長は会社計画並みにとどまり、利益率も現状水準で横ばいとなるケースを想定する。営業利益率は9%前後、ROEは10%台前半で安定し、業績に大きな不安はないが、成長期待が高まる局面もない。この場合、市場評価はPER14〜16倍、PBRは1.7〜2.0倍程度で落ち着き、株価は大きなトレンドを作りにくい。5年後の株価は1,200円から1,350円程度と、現在値からは緩やかな上昇か横ばいに近い水準にとどまる。値上がり益は限定的だが、配当を積み上げながら保有する投資とは相性が良い中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、金融機関のIT投資抑制や人件費上昇の影響で利益率が徐々に低下し、営業利益率が8%台前半まで下がる展開を想定する。ROEも10%を下回る水準まで低下すると、市場の評価は慎重になりやすい。業績自体は黒字を維持し、配当も大きくは崩れない可能性が高いものの、成長期待の後退からPERは12〜13倍程度まで切り下がる。この場合、株価は一時的に1,000円を割り込み、5年後でも1,000円から1,100円程度にとどまる可能性がある。配当は支えになるものの、株価面ではやや厳しい弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,163.0円を起点とした東邦システムサイエンスの5年間の値動きは、良い場合で1,500円から1,700円前後、中間で1,200円から1,350円、悪い場合で1,000円から1,100円といったレンジが想定される。大きな成長を狙う銘柄ではないが、金融系に強い事業基盤と高い収益性を背景に、安定配当を受け取りながら穏やかな値動きを許容する中長期投資と相性の良い銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月21日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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