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アイ・ピー・エス(4390)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

アイ・ピー・エスとは

IPSは、フィリピンを中心とした海外通信インフラと、国内の法人向け通信サービスを両輪に事業を展開する情報通信企業である。本社は東京都中央区築地4丁目1番1号 東劇ビル8階に置く。同社の事業は、「フィリピン通信事業」「国際通信事業」「国内通信事業」「メディカル&ヘルスケア事業」の4領域へと広がっている。IPSは、社会に立ちはだかる障壁を打ち破る新事業を創出し続けることを企業理念として掲げ、その理念に沿って事業領域を拡張してきた。

中核となるのは国際通信事業である。フィリピンと香港、シンガポールなどを結ぶ国際通信回線を提供し、フィリピン国内の通信事業者やCATV事業者、法人顧客に向けて高速かつ安定した通信インフラを供給している。特に、フィリピンの通信・CATV事業者に対する国際回線の販売に強みを持ち、動画配信サービスやクラウド利用の拡大に伴うトラフィック増加の需要を取り込んでいる。

IPSは2012年以降、フィリピン国内で個人向けインターネットサービスを提供するCATV事業者に対し、他社から調達した国際通信回線の容量を販売してきた。しかし、動画配信やデータ通信量の急増を背景に、自社で回線を保有する必要性が高まったことから、2020年5月にマニラと香港、マニラとシンガポールを結ぶ国際海底ケーブル、いわゆるC2C回線の使用権の一部を取得した。同年10月から回線提供を開始し、これによりIPSグループは、フィリピン国内で大手通信事業者2社に次ぐ第3番目の国際データ通信キャリアとしての地位を確立した。

このC2C回線の取得により、IPSは単なる回線の再販事業者から、自ら通信容量を生み出せる通信インフラ事業者へと進化した。伝送機器の増設や更新によって通信容量を拡張できるため、将来的な需要増にも柔軟に対応可能な体制を構築している。これにより、高速・大容量・高付加価値のインターネットサービスをフィリピン国内に提供し、同国の通信インフラの底上げに貢献することを目指している。

また、現地子会社であるInfiniVANを通じて、マニラ首都圏を中心に法人向けインターネット接続サービスを展開しており、その国際回線も自社のC2C回線へ切り替えることで、コスト競争力とサービス品質の向上を図っている。さらに、従来のCATV事業者向けに加えて、フィリピン国内の通信事業者にも回線を提供することで、他の通信事業者に回線を貸し出すCarriers’ Carrierとしてのビジネスモデルも確立し、回線取得に伴う投資資金の早期回収を進めている。

国内通信事業では、コールセンターや法人向けを中心とした格安通信サービスに強みを持つ。コスト効率の高い通信回線やネットワークサービスを提供することで、価格に敏感な法人顧客からの需要を取り込み、安定的な収益基盤を形成している。

このほか、通信インフラを基盤とした新規分野として、メディカル&ヘルスケア事業にも取り組んでおり、通信と医療・健康分野を組み合わせた新たなサービス創出を進めている。全体としてIPSは、フィリピンを中心とする国際通信インフラを自社で保有・運営するという強みを活かし、成長性の高い海外通信需要を取り込みながら、国内では法人向け通信で安定収益を確保する構造を持つ企業である。通信インフラという長期的に需要が見込める分野で、成長と安定の両立を目指す事業展開を行っている点が同社の特徴である。

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直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益 EPS(円) 一株配当 DPS(円)
21.3 9,515 1,921 2,187 1,487 120.2 10
22.3 10,728 2,456 2,897 1,888 152.4 25
23.3 12,346 3,311 3,464 2,292 184.5 35
24.3 14,117 3,894 4,427 2,835 225.1 37
25.3 15,264 4,413 4,073 2,544 197.1 40
26.3(予) 18,000 5,250 4,900 3,000 229.7 40
27.3(予) 20,700 6,100 5,750 3,500 267.9 40

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023.3 2,636 -5,506 3,578
2024.3 -574 -4,735 2,315
2025.3 704 -2,542 1,380

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率(%) ROA(%) ROE(%) PER(倍) PBR(倍)
2023.3 26.8 9.1 24.5
2024.3 27.5 8.4 25.0
2025.3 28.9 6.0 16.6 8.8〜14.8 2.69

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の推移を見る。売上高は2024.3期が141億、2025.3期が152億、2026.3期予が180億と、安定した増収基調にある。通信インフラ事業としては成長ペースは緩やかだが、確実に事業規模を拡大していることが確認できる。

営業利益は2024.3期38億、2025.3期44億、2026.3期予52億と着実に増加している。経常利益も2024.3期44億、2025.3期40億、2026.3期予49億と高水準を維持しており、国際通信回線を軸とした本業の収益力が非常に強い。純利益は2024.3期28億、2025.3期25億、2026.3期予30億と一時的な減益を挟みつつも、再び成長軌道に戻る見通しとなっている。

収益性を見ると、営業利益率は2023.3期26.8%、2024.3期27.5%、2025.3期28.9%と3年連続で上昇しており、30%に迫る極めて高い水準にある。通信インフラ事業としては例外的な高収益体質であり、価格競争に陥りにくい事業構造を持っていることが数字から明確に読み取れる。

資本効率では、ROEが2023.3期24.5%、2024.3期25.0%、2025.3期16.6%と、2025.3期にやや低下したものの、依然として非常に高い水準にある。ROAは2023.3期9.1%、2024.3期8.4%、2025.3期6.0%と低下傾向にあり、これは国際回線などへの大型投資によって資産が先行して増加している影響と考えられる。収益力そのものが低下しているというより、成長投資フェーズにあることを示す動きである。

バリュエーションを見ると、2025.3期の実績PERは高値平均14.8倍、安値平均8.8倍、実績PBRは2.6倍である。営業利益率28.9%、ROE16.6%という高水準を踏まえると、PER・PBRともに過度な割高感はなく、むしろ収益力に対して市場評価は抑えめとも言える。以上を総合すると、IPSは売上成長は緩やかなものの、営業利益率・ROEが非常に高く、安定したキャッシュ創出力を持つ高収益インフラ企業と評価できる。一方で、国際通信回線への投資によりROAが低下しており、短期的には資産効率が重く見える局面でもある。

結論として、この銘柄は急成長株ではないが、「高収益・高ROEを安定的に維持する通信インフラ企業」としての性格が強い。PER・PBR水準を踏まえると、成長性を過度に織り込んだ割高株ではなく、収益力を評価して中長期で保有する投資と相性の良い銘柄と判断できる。設備投資の回収が進み、ROAが再び改善してくれば、市場評価が一段階引き上がる余地もある、という位置づけになる。

配当目的とかどうなの?

配当目的という観点でIPSを見ると、結論から言えば配当を主目的に保有する銘柄ではないが、完全に不向きとも言い切れない中間的な位置づけになる。予想配当利回りは連26.3期、連27.3期ともに1.31%と低水準であり、一般的に配当目的として評価されやすい2.5〜3.0%以上と比べると、インカム狙いとしての魅力は明確に弱い。高配当株や安定配当株を求める投資家にとっては、物足りない水準である。

一方で、業績面を見ると純利益は2024.3期28億、2025.3期25億、2026.3期予30億と安定して黒字を確保しており、EPSも200円前後と高い水準にある。配当性向は2割前後にとどまっており、利益に対して無理のない配当水準であることから、配当の安全性自体は高い。減配リスクが高い状況ではなく、業績が大きく崩れない限り、現行配当は維持されやすいと考えられる。

また、営業利益率は25〜30%近い非常に高い水準を維持しており、ROEも16%台と高収益・高効率な企業である点は評価できる。にもかかわらず配当利回りが低いのは、同社が通信インフラへの投資を継続し、成長余地を確保することを優先しているためであり、株主還元を強く前面に出すフェーズではないことを示している。

評価面ではPERが10倍前後から15倍程度、PBRも2倍台と、極端に割高ではない。そのため、配当を「主目的」にするには不足だが、高収益企業に投資しつつ、最低限の配当も受け取るというスタンスであれば一定の意味はある。結論として、IPSは配当を取りにいく銘柄ではなく、高収益インフラ企業としての安定性と将来の成長を評価し、配当は補助的に受け取る銘柄であり、配当目的単独で選ぶ対象ではない、という判断になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

アイ・ピー・エスは、現在株価3,050.0円を基準に見ると、急成長株というよりも、国際通信インフラというニッチで参入障壁の高い分野に強みを持つ、高収益・インフラ型の通信企業と位置づけられる。営業利益率は25%超と非常に高く、ROEも15%台から20%近辺を維持しており、通信事業としては例外的に稼ぐ力が強い。一方で配当利回りは1%台にとどまり、インカムよりも事業の安定性と将来的な価値向上を重視する中長期向きの銘柄である。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、フィリピンを中心とした国際通信需要が底堅く拡大し、既存の海底ケーブル回線の稼働率上昇と追加的な通信容量の販売が順調に進む展開を想定する。BPOやデータ通信需要の拡大を背景に売上・利益は安定的に成長し、営業利益率は25〜30%前後の高水準を維持する。設備投資の回収が進むことでROAも改善し、ROEは18%前後で安定する。この場合、市場では「高収益インフラ企業」としての評価が強まり、PERは15〜18倍程度、PBRも3倍前後が許容されやすくなる。5年後の株価水準は4,500円から5,800円程度が目安となり、配当を受け取りつつ緩やかな値上がりも狙える強気寄りのシナリオとなる。

中間のシナリオでは、通信需要は堅調に推移するものの、成長ペースはやや落ち着き、売上は緩やかな増加にとどまるケースを想定する。営業利益率は25%前後、ROEは15〜17%程度で安定し、収益構造に大きな変化はない。市場評価も現状水準を大きく超えることはなく、PERは12〜15倍、PBRは2.5倍前後で落ち着く。この場合、5年後の株価は3,200円から3,800円程度と、現在値近辺から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。値上がり益よりも、事業の安定性と配当を補助的に受け取る投資と相性が良い。

悪い場合のシナリオでは、フィリピン経済の減速や通信投資の鈍化、競争環境の変化などにより国際通信回線の需要が想定ほど伸びない展開を想定する。売上成長は停滞し、営業利益率は20%前後まで低下、ROEも一時的に10%台前半に落ち込む。市場の評価は慎重となり、PERは10倍前後、PBRも2倍を下回る水準まで調整される可能性がある。この場合、5年後の株価は2,200円から2,800円程度まで下押しされるリスクがあり、値動きの厳しい弱気シナリオとなる。

総合すると、現在株価3,050.0円を起点としたアイ・ピー・エスの5年間の値動きは、良い場合で4,500円から5,800円前後、中間で3,200円から3,800円、悪い場合で2,200円から2,800円といったレンジが想定される。大きな成長を狙う銘柄ではないが、国際通信インフラという高収益・高参入障壁の事業基盤を背景に、安定性と中長期的な価値向上を重視して保有する投資と相性の良い銘柄と評価できる。

この記事の最終更新日:2025年12月22日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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