株価
ハリマ化成グループとは

ハリマ化成グループ株式会社は、ロジン(松やに)原料化学品の草分け的存在として知られる日本の化学メーカーであり、ロジンおよびトール油を主力原料に、樹脂・化成品、製紙用薬品、電子材料事業をグローバルに展開している。本店および本社は東京都中央区日本橋に置き、関西では大阪市中央区今橋にも本社機能を有する。2012年10月に純粋持株会社体制へ移行し、ハリマ化成グループ株式会社がグループ全体の経営戦略策定と事業会社の経営管理を担っている。
同社は、松を原料とした粗トール油の精留プラントを国内で唯一、兵庫県加古川市の加古川製造所に保有しており、トールロジン、トール油脂肪酸およびその誘導体製品を中心に製造・販売している点が大きな特徴である。ロジン製品は、製紙用薬品、印刷インキ用樹脂、粘接着剤用樹脂、合成ゴム用乳化剤、はんだなどの電子材料に加え、化粧品や医薬品原料としても幅広く使用されている。脂肪酸製品はアルキド樹脂、界面活性剤、ダイマー酸などに加工され、塗料や工業用途を中心に多様な産業を支えている。
事業面では、樹脂・化成品事業において印刷インキ用樹脂、塗料用樹脂、粘接着剤用樹脂、合成ゴム用乳化剤、機能性コーティング剤、トール油製品などを展開している。製紙用薬品事業では、サイズ剤、紙力増強剤、塗工剤・バリアコート剤、工程改善薬剤やピッチコントロール剤などを手掛け、国内外の製紙メーカー向けに高いシェアを持つ基盤事業となっている。電子材料事業では、はんだ付け材料、プリント配線基板関連材料、熱交換器用ろう付け材料などを提供し、エレクトロニクス分野の高度化に対応している。
海外展開としては、2011年に米国モメンティブ社からロジン系印刷インキ用樹脂、粘接着剤用樹脂、合成ゴム用乳化剤などの事業を取得し、オランダにLAWTER B.V.を設立した。これにより、米国子会社を含むグローバルなロジン製品供給体制を構築している。
国内では、事業会社であるハリマ化成株式会社が中核を担い、東京・大阪本社のほか、仙台営業所、富士営業所を展開している。研究開発拠点としては兵庫県加古川市の中央研究所、茨城県つくば市の筑波研究所を有し、製造拠点として加古川製造所、仙台工場、茨城工場を構えている。
ハリマ化成グループは、再生可能資源である松由来原料を基盤とし、製紙薬品やトール油製品で高い市場シェアを持つ一方、電子材料などの高付加価値分野にも展開することで、安定性と専門性を両立した事業ポートフォリオを構築している。急成長型ではないが、ニッチ分野での技術力と原料優位性を背景に、環境対応と持続的成長を志向するファインケミカル企業と位置づけられる。
ハリマ化成グループ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 62,850 | 1,576 | 1,093 | 1,091 | 43.4 | 38 |
| 連22.3 | 76,093 | 3,250 | 3,433 | 1,746 | 69.4 | 38 |
| 連23.3 | 94,510 | 1,706 | 2,541 | 885 | 35.8 | 42 |
| 連24.3 | 92,330 | -211 | -275 | -1,161 | -48.0 | 42 |
| 連25.3 | 101,006 | 2,083 | 1,330 | 763 | 31.5 | 42 |
| 連26.3予 | 106,000 | 3,300 | 2,500 | 1,500 | 61.7 | 42 |
| 連27.3予 | 111,000 | 4,000 | 3,200 | 1,900 | 78.2 | 42 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | -466 | -6,649 | 7,657 |
| 2024.3 | 353 | -3,197 | 2,895 |
| 2025.3 | 6,145 | -4,980 | -3,669 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 1.8 | 2.3 | 0.9 | — | — |
| 2024.3 | -0.3 | -3.2 | -1.2 | — | — |
| 2025.3 | 2.0 | 2.0 | 0.7 | 29.0(高) / 22.8(安) | 0.58 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ハリマ化成グループは、直近数年で業績の振れが大きく、安定成長型というよりも回復局面にある素材系メーカーと位置づけられる。まず利益水準を見ると、2024年3月期は売上高923.3億円に対し、営業利益-2.1億円、経常利益-2.8億円、純利益-11.6億円と赤字に転落している。営業利益率は-0.3%、ROEは-3.2%、ROAは-1.2%と、収益性・資本効率ともに低迷しており、事業環境やコスト面の悪化がそのまま数値に表れた年であった。
2025年3月期は売上高1,010.1億円、営業利益20.8億円、経常利益13.3億円、純利益7.6億円と黒字へ回復している。営業利益率は2.0%、ROEは2.0%、ROAは0.7%とプラスに転じたが、水準自体は依然として低く、本業の収益力が十分に戻ったとは言い難い。
2026年3月期予想では、売上高1,060.0億円、営業利益33.0億円、経常利益25.0億円、純利益15.0億円と、利益回復が続く前提となっている。営業利益率は2%台前半を想定しており、改善基調ではあるものの、高収益企業と評価できる水準にはまだ達していない。
バリュエーション面では、2025年実績PERは高値平均29.0倍、安値平均22.8倍と、現在の利益水準に対しては高めであり、業績回復を先取りした評価となっている。一方で、PBRは0.6倍と1倍を大きく下回っており、資産価値や将来回復余地に対して市場が慎重な姿勢を崩していないことがうかがえる。
以上を踏まえた投資判断として、ハリマ化成グループは2024年の赤字から2025年以降は回復基調に入っているものの、営業利益率2%前後、ROE2%前後という数値は依然として低く、事業の収益力は弱い段階にある。PERは高めで、利益成長が前提条件となる一方、PBRは低く、評価の方向性が定まっていない状態といえる。
結論として、ハリマ化成グループは、「業績回復が進めば評価修正の余地はあるが、現時点では収益力が低く、投資は回復の持続性を見極める段階にある銘柄」という位置づけになる。安定成長や高収益を前提とした投資よりも、業績改善の進捗を確認しながら判断する回復期待型の投資対象といえる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、ハリマ化成グループは「高配当利回りは魅力的だが、配当の安定性という点では注意が必要な回復途上型の配当銘柄」と位置づけるのが妥当である。予想配当利回りは連26.3、連27.3ともに4.72%と、市場全体で見れば明確に高配当水準にある。この数字だけを見ると、配当目的としての魅力は非常に高く、インカム投資の対象として目に留まりやすい。
しかし、配当の裏付けとなる収益力を見ると注意が必要である。2024年3月期は営業赤字・最終赤字であり、2025年3月期に黒字回復したとはいえ、営業利益率は2.0%、ROEは2.0%、ROAは0.7%と、収益性・資本効率はいずれも低水準にとどまっている。現時点では、高い収益力が安定して配当を支えている状態とは言い難い。
2026年3月期以降は利益回復が続く前提となっており、その想定通りに営業利益や純利益が拡大すれば、配当の持続性は高まる。ただし、事業の収益力そのものがまだ弱く、過去には赤字局面も経験していることから、業績次第では将来的な減配や配当方針の見直しが起きる可能性も否定できない。
したがって、安定配当を最優先するディフェンシブな配当投資や、減配リスクを極力避けたいインカム投資には向かない。一方で、業績回復が続くことを前提に高利回りを取りにいく、回復局面で配当を受け取りながら様子を見るといったスタンスであれば、利回り4.7%台は十分に意味を持つ。
総合すると、ハリマ化成グループの配当目的としての評価は、「安定高配当株ではないが、業績回復が続くなら高利回りを享受できる回復期待型の高配当銘柄」という位置づけになる。純粋な配当株として構えるよりも、業績改善を確認しつつインカムを取りに行く投資と相性の良い銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ハリマ化成グループは、現在株価889.0円を基準に見ると、急成長株というよりも、ロジン(松やに)・トール油を主原料とするニッチな化学分野に強みを持つ、回復途上型の素材メーカーと位置づけられる。製紙用薬品やトール油製品で高いシェアを持つ一方、直近では業績の振れが大きく、営業利益率は2%前後、ROEも2%前後と収益力はまだ低水準にとどまっている。ただしPBRは0.6倍前後と低く、市場評価はかなり慎重であり、業績回復が定着すれば評価修正の余地を残している銘柄である。配当利回りは4%台後半と高水準で、インカム要素を持つ点も特徴である。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、ロジン・トール油製品を中心とした主力事業の市況が安定し、2026年3月期以降の増益見通しが継続的に実現する展開を想定する。営業利益率は2%台から3%台へと緩やかに改善し、ROEも5%前後まで回復する。この場合、市場では「業績回復が定着した素材メーカー」としての評価が進み、PBRは0.9〜1.0倍程度まで是正されやすくなる。5年後の株価水準は1,200円から1,400円程度が目安となり、高配当を受け取りつつ評価修正を狙える強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、業績は回復基調を維持するものの利益率の改善は限定的で、営業利益率は2%前後、ROEも2〜3%程度にとどまるケースを想定する。市場の評価も慎重姿勢が続き、PBRは0.6〜0.7倍程度で横ばいとなる。この場合、株価は800円から1,000円程度のレンジで推移し、5年後の水準は900円から1,050円程度と、値上がり益は限定的だが高配当を含めたトータルリターンを積み上げる中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、原材料市況の悪化や需要低迷により業績回復が一過性に終わり、再び利益が不安定になる展開を想定する。営業利益率は1%前後にとどまり、ROEも低迷したままとなる。この場合、市場の評価は一段と厳しくなり、PBRは0.4〜0.5倍水準まで低下する可能性がある。5年後の株価は600円から750円程度まで下押しされ、値動きの厳しい弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価889.0円を起点としたハリマ化成グループの5年間の値動きは、良い場合で1,200円から1,400円前後、中間で900円から1,050円、悪い場合で600円から750円といったレンジが想定される。急成長を狙う銘柄ではないが、低PBRと高配当という特徴を持つ一方、収益力はまだ回復途上にあるため、安定成長株としてではなく、業績回復の持続性を確認しながら中長期で評価修正とインカムの両方を狙う投資と相性の良い銘柄と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月22日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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