株価
FIGとは

FIG株式会社は、大分県大分市に本社を置く日本の持株会社であり、物流・タクシー業など向けの無線・管理システムと、半導体・自動車関連の製造装置や搬送ロボットを両輪とする事業グループである。FIGは、タクシー向け無線機器や業務システムを主力としてきたモバイルクリエイト株式会社と、半導体製造後工程装置を中心とする製造装置メーカーである株式会社石井工作研究所が、2018年7月2日に共同株式移転方式によって設立した持株会社であり、設立と同時に両社はFIGの完全子会社となった。
モバイルクリエイトは2002年設立で、タクシー無線や配車システム、業務用通信機器の製造・販売を通じて全国の交通事業者に顧客基盤を築いてきたほか、沖縄本島内の路線バス総合案内サイトであるバスなび沖縄の運営など、地域交通に密着したサービス展開を行ってきた企業である。2016年には、半導体製造後工程向け装置を手掛ける石井工作研究所を連結子会社化し、ITと製造技術を融合させた事業構造を強化した。
FIGグループは現在、モバイルクリエイト株式会社、株式会社石井工作研究所、株式会社トラン、ciRobotics株式会社、株式会社M.R.L、沖縄モバイルクリエイト株式会社などを傘下に持ち、持株会社であるFIGがグループ全体の経営戦略、資本政策、新規事業開発を担っている。事業内容は大きくITソリューション領域と製造・ロボティクス領域に分かれる。
ITソリューション領域では、物流業やタクシー業向けの無線・業務管理システムを中核として事業を展開している。IP無線分野では、IP無線システムのパイオニアとして、全国どこでも通信可能な業務用IP無線システムiMESHを提供している。タクシー分野では、クラウド型配車システム新視令forクラウドを展開し、配車、車両管理、業務効率化を一体で支援している。バス分野では、バス利用者にリアルタイムで正確な運行情報を提供するポータル型バスロケーションシステムであるモバステーションを展開し、公共交通の利便性向上に寄与している。
また、公共交通事業者や自治体などを対象に、ICカードやキャッシュレス決済に対応した決済デバイスの開発や決済代行サービスを提供するペイメント事業も手掛けており、交通インフラと親和性の高いストック型ビジネスの拡大を進めている。加えて、ホテル向けには、開発から導入、保守までをワンストップで提供するホテルスマートシステムを展開し、自社およびグループ企業のIT技術を活用した柔軟なカスタマイズにも対応している。
製造・ロボティクス領域では、石井工作研究所を中心に、半導体製造後工程装置、精密金型、自動車関連部品組立用の自動化装置や検査装置の設計・製造・販売を行っている。設備投資動向の影響を受けやすい事業である一方、高い技術力と付加価値を有する点が強みとなっている。
さらに、自社オリジナルの搬送ロボットの開発や、既存の工場・倉庫環境にシームレスに導入できるロボット制御システムの構築にも取り組んでおり、製造業や物流現場における省人化・自動化ニーズに対応している。加えて、オリジナルの産業用ドローンを開発し、点検、監視、防災などを中心としたドローンの社会実装を進めるなど、新技術分野への展開も図っている。
FIGは、交通・物流・宿泊といった社会インフラ分野に根差したITソリューションと、半導体・自動車関連を中心とする製造装置・ロボット事業を併せ持つ点に特徴があり、安定収益が見込めるIT・サービス系事業と、景気循環の影響を受けやすいが成長余地のある製造・装置系事業を組み合わせた事業ポートフォリオによって、中長期的な成長と事業基盤の強化を目指している。
FIG 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 12,914 | 932 | 964 | 685 | 23.4 | 10 |
| 連23.12 | 13,534 | 723 | 715 | 210 | 7.0 | 5 |
| 連24.12 | 12,016 | 363 | 393 | -1,412 | -46.7 | 5 |
| 連25.12予 | 13,800 | 800 | 800 | 780 | 25.7 | 10 |
| 連26.12予 | 15,000 | 1,000 | 1,000 | 680 | 22.4 | 10 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 359 | -1,848 | 1,291 |
| 2023.12 | -578 | -838 | 1,430 |
| 2024.12 | 3,160 | 2,918 | -5,674 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 5.3 | 2.2 | 0.9 | — | — |
| 2024.12 | 3.0 | -17.6 | -8.9 | 38.1(高) / 25.1(安) | 1.07 |
| 2025.12予 | 5.7 | 9.6 | 4.9 | 12.18 | — |
出典元:四季報オンライン
投資判断
FIGは、2023年から2024年にかけて収益性と資本効率が大きく悪化し、2025年以降に回復を見込む局面にある銘柄である。まず利益面を見ると、2023年12月期は売上高135.3億円、営業利益7.2億円、経常利益7.1億円、純利益2.1億円と、規模は大きくないものの黒字を確保していた。営業利益率は5.3%と中小IT・製造混在型企業としては標準的な水準であり、ROE2.2%、ROA0.9%と資本効率は低いながらも一応プラスを維持していた。
しかし2024年12月期は、売上高120.1億円、営業利益3.6億円、経常利益3.9億円まで縮小し、純利益は-14.1億円と大幅な赤字に転落している。この結果、営業利益率は3.0%まで低下し、ROEは-17.6%、ROAは-8.9%と深刻なマイナスに陥った。収益力の低下に加え、資本を大きく毀損した年であり、実績ベースでは明確に評価が悪化した局面である。にもかかわらず、2024年の実績PERは高値平均38.1倍、安値平均25.1倍と高水準で、PBRも1.0倍と、業績悪化に対して株価の調整は限定的だったことが読み取れる。
一方、2025年12月期予想では、売上高138.0億円、営業利益8.0億円、経常利益8.0億円、純利益7.8億円と、利益水準は2023年を上回る回復が見込まれている。営業利益率は5.7%まで戻り、ROE9.6%、ROA4.9%と、資本効率も実用的な水準に改善する想定である。この前提が達成される場合、2025年予想PERは12.2倍となり、2024年実績時と比べて評価水準は大きく切り下がる。
さらに2026年12月期予想では、売上高150.0億円、営業利益10.0億円、経常利益10.0億円、純利益6.8億円と、利益の持続的な回復が見込まれている。ただし純利益は2025年予想より減少しており、回復の勢いが直線的に続くかどうかには一定の注意が必要である。
以上を踏まえた投資判断として、FIGは安定成長型や高ROEを長期的に維持する銘柄ではなく、2024年の大幅赤字を経て、業績回復が本物かどうかを見極める局面にある銘柄と評価できる。実績ベースではリスクが高く、過去の数字だけを重視する投資には向かない。一方で、2025年・2026年予想どおりに利益回復が進めば、PER12倍前後という水準は割安感が意識されやすく、業績正常化に伴う評価修正余地は存在する。
結論としてFIGは、「直近実績は弱く、業績の谷を越えた後の回復を前提にした中期的なリターン狙い向け銘柄」であり、低リスク志向の投資よりも、回復シナリオの進捗を確認しながら投資する中リスク型の判断が妥当と考えられる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、FIGは純粋な配当目的にはやや不向きだが、業績回復を前提にした「準インカム型」なら成立するという評価になる。まず配当利回りを見ると、連25.12予・連26.12予ともに3.32%と、水準そのものは東証全体で見れば中位からやや高めに位置する。この点だけを見ると、一見すると配当目的としても検討余地があるように見える。
しかし、過去実績との整合性を見ると注意が必要である。FIGは2024年12月期に純利益-14.1億円と大幅な赤字を計上しており、この年のROEは-17.6%、ROAは-8.9%と資本効率は大きく毀損している。つまり、直近実績ベースでは配当の安定性を裏付ける収益力は弱い。実際、2023年から2024年にかけて配当水準も低下しており、業績悪化時には配当が調整される企業体質であることが数値から読み取れる。
一方で、2025年12月期予想では純利益7.8億円、ROE9.6%、営業利益率5.7%まで回復する想定となっており、この前提が達成されれば、配当10円、利回り3.32%は利益水準から見て無理のない水準である。2026年12月期も同水準の配当利回りが想定されており、業績回復が定着すれば配当は「出せる」状態にはある。
ただし重要なのは、FIGの配当は「業績連動色が強い」という点である。安定的に高ROE・高利益率を維持して配当を積み上げるタイプではなく、業績が崩れた局面では配当も素直に抑制される。したがって、配当を最優先するディフェンシブな配当投資や、減配リスクを極力避けたいインカム投資には向かない。
一方で、業績回復局面で配当を受け取りつつ様子を見る、あるいはPER低下と利益回復の両方を狙うインカム+キャピタル型というスタンスであれば、利回り3.3%は十分に意味を持つ水準であり、配当をおまけとして受け取りながら中期での評価修正を狙う戦略とは相性が良い。総合すると、FIGの配当目的としての評価は、「安定配当銘柄ではないが、業績回復が続く前提なら3%台利回りを取りに行く価値はある」という位置づけになる。純粋な配当株として構えるよりも、回復確認後の準インカム銘柄として扱うのが現実的だろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
FIGは、現在株価301.0円を基準に見ると、急成長株というよりも、交通・物流・製造分野向けのITソリューションと装置・ロボット事業を併せ持つ、業績回復局面にある中小型のインフラ・BtoB企業と位置づけられる。2024年12月期に大幅赤字を計上したことで評価は大きく低下したが、2025年以降は利益の回復が見込まれており、営業利益率も5%台、ROEも一桁後半まで戻る想定となっている。一方で事業の成長性は緩やかで、配当利回りは3%台と一定の水準はあるものの、安定配当株というよりは回復確認後の中期向き銘柄である。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、交通・物流向けITソリューションの受注が安定的に積み上がり、製造装置・ロボット事業も回復基調を維持する展開を想定する。2025年、2026年の業績回復が計画どおり進み、営業利益は10億円前後、営業利益率は5〜6%台で安定、ROEも8〜10%程度を維持する。この場合、市場では「一過性の赤字を脱した業績正常化銘柄」として評価が見直され、PERは15〜18倍程度まで切り上がる可能性がある。EPS20円台前半を前提とすると、株価は400円台に定着し、5年後には500円前後までの上昇が視野に入る。配当利回り3%台を維持しつつ、キャピタルゲインも狙える強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、業績は回復するものの伸びは限定的で、利益水準は安定と停滞を繰り返す展開を想定する。営業利益率は5%前後、ROEは一桁台前半にとどまり、市場の評価も慎重なまま推移する。この場合、PERは12〜14倍程度で落ち着き、株価は330円から380円程度のレンジで推移することが多くなる。5年後の水準は350円から420円程度が中心となり、大きな値上がりは期待しにくいが、配当を受け取りながら中期保有するには現実的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、ITソリューションや装置事業の受注が不安定化し、業績回復が一時的に終わる、もしくは再び利益が伸び悩む展開を想定する。営業利益率は4%を下回り、ROEも低水準にとどまることで、市場は構造的に成長力の乏しい銘柄と判断する。この場合、PERは10倍前後まで低下し、株価は250円前後まで調整、状況次第では200円台前半で長期停滞する可能性もある。5年後の株価水準は220円から280円程度となり、値動きの厳しい弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価301.0円を起点としたFIGの5年間の値動きは、良い場合で450円から550円前後、中間で350円から420円、悪い場合で220円から280円といったレンジが想定される。高成長を期待する銘柄ではないが、業績回復が定着すれば下値リスクは限定されやすく、配当を受け取りながら中期で評価修正を待つ投資と相性の良い銘柄と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月22日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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