株ウォッチング

すべての株の情報を表示し管理人のアドバイスも一言


久光製薬(4530)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

,

株価

久光製薬とは

久光製薬は貼る鎮痛消炎剤で国内首位の地位を持つ製薬会社であり、医療用貼付剤では約5割という高いシェアを誇る。一般消費者向けでは大衆薬サロンパスで広く知られており、貼付剤分野において圧倒的なブランド力と技術力を持つ専門特化型の企業である。本社は佐賀県鳥栖市と東京都千代田区丸の内に置き、研究開発と生産は主に佐賀県鳥栖市、営業やマーケティング機能は東京本社が担う二本社体制を採っている。

同社の起源は1847年に創業された小松屋にさかのぼり、1934年に発売されたサロンパスが長期にわたるロングセラーとなったことで事業基盤を確立した。1965年に現在の社名へ改称して以降も、貼付剤を中心とした外用消炎鎮痛薬を軸に事業を拡大してきた。2005年にはエスエス製薬の医療用医薬品事業を譲受し、医療機関向けの湿布薬や外用消炎鎮痛薬のラインアップを強化している。

事業の中核は医療用医薬品と一般用医薬品の両輪で構成されているが、いずれも貼付剤を中心とした外用鎮痛消炎薬が主力である。医療用分野ではモーラスやモーラステープなどを中心に、整形外科領域で高い信頼を獲得しており、処方薬として安定した需要を持つ。製剤技術や粘着技術、経皮吸収技術に強みを持ち、貼付剤に特化することで高い参入障壁を築いている。

一般用医薬品分野ではサロンパスを筆頭に、エアーサロンパス、サロンシップ、フェイタスなどの外用鎮痛消炎薬を展開している。貼付薬だけでなく、ローションやスプレーといった塗付薬も取りそろえ、用途や好みに応じた幅広い商品展開を行っている。加えて、水虫やたむし治療薬であるブテナロックシリーズなど、外用薬分野を中心に商品群を拡充している。

生産体制としては鳥栖工場と宇都宮工場を持ち、研究拠点として鳥栖研究所と筑波研究所を擁している。研究開発から製造までを自社で担う体制を整えており、品質管理と安定供給を重視した経営が特徴である。製品開発は貼付剤を中心とした改良型や用途拡張が多く、既存技術を活かしたライフサイクルマネジメントを得意としている。

海外展開にも力を入れており、特に米国と中国を重点市場として位置付けている。サロンパスは海外でも高い認知度を持つブランドであり、北米やアジア市場での一般用医薬品事業が成長分野となっている。国内市場の成熟を補う形で、海外売上比率の引き上げを進めている点も同社の特徴である。

全体として久光製薬は、貼付剤という明確な強みを軸に、医療用と一般用の両市場で安定した収益基盤を持つ製薬会社である。ニッチながら競争力の高い分野に特化し、国内トップシェアと海外展開を組み合わせることで、堅実な成長を目指す専門特化型メーカーと位置付けられる。

久光製薬 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益 EPS(円) 一株当り配当(円)
連21.2 114,510 10,671 11,829 9,250 113.2 83.5
連22.2 120,193 9,337 12,638 9,658 118.9 84
連23.2 128,330 11,599 16,051 11,742 148.0 84.5
連24.2 141,706 13,167 19,649 13,969 181.6 85
連25.2 156,006 18,895 24,010 21,758 295.6 90
連26.2予 165,000 20,000 24,300 22,000 313.9 120
連27.2予 171,000 21,000 25,000 22,500 321.0 120〜126

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023.2 12,727 -23,868 -14,687
2024.2 18,188 -2,512 -16,691
2025.2 18,765 17,563 -15,850

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率(%) ROE(%) ROA(%) PER(倍) PBR(倍)
2023.2 9.0 4.5 3.7
2024.2 9.2 5.2 4.2
2025.2 12.1 7.8 6.3 24.6(高)/17.8(安) 1.15

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の規模と推移を見ると、売上高は2024年2月期で1,417億円、2025年2月期で1,560億円、2026年2月期予想で1,650億円、2027年2月期予想で1,710億円と、毎期着実に増加している。成長率は急ではないが、貼付剤という成熟度の高い分野において、これだけ安定して売上を積み上げている点は評価できる。事業基盤が崩れる兆しはなく、堅実な拡大局面にあると読み取れる。

営業利益は2024年2月期で131億円、2025年2月期で188億円と大きく伸び、2026年予想では200億円、2027年予想では210億円と増益基調が続いている。経常利益も2024年196億円から2025年240億円、2026年243億円、2027年250億円と右肩上がりで、純利益についても2024年139億円、2025年217億円、2026年220億円、2027年225億円と大幅な改善が見られる。売上以上に利益が伸びている点から、コスト構造や収益性が改善していることが数字から明確に分かる。

収益性を見ると、営業利益率は2023年9.0%、2024年9.2%と一桁台前半で推移していたが、2025年には12.1%まで上昇している。これは一時的なブレではなく、利益体質が一段改善したことを示す水準であり、貼付剤分野での価格競争力や海外展開の効果が表れていると考えられる。ROEは2023年4.5%、2024年5.2%、2025年7.8%と着実に上昇しており、ROAも3.7%、4.2%、6.3%と改善が続いている。依然として高ROE企業とは言えないが、資本効率と資産効率が確実に良くなっている点はポジティブである。

株価評価の面では、2025年実績PERは高値平均で24.6倍、安値平均で17.8倍となっている。利益が伸びている局面としては、高値側のPERはやや期待先行の水準であり、安値側であれば成長と安定性を織り込んだ妥当な評価に近い。実績PBRは1.1倍で、ROE水準を考えると割高感は小さく、過度に楽観的な評価が付いているとは言い難い。

以上を総合すると、久光製薬は売上、営業利益、純利益がそろって安定的に成長しており、営業利益率、ROE、ROAも明確な改善トレンドにある。貼付剤という得意分野に特化した戦略が数字として成果を上げている段階であり、事業の質は着実に高まっていると判断できる。一方で、ROEはまだ一桁台後半であり、高PERを正当化するほどの急成長企業ではない。

投資判断としては、業績の安定性と改善の確度は高く、下値リスクは比較的限定的だが、PER高値水準ではやや先行評価となる。評価が安値レンジに近い水準であれば、安定成長と配当の積み上がりを期待して中長期で保有するには適した銘柄といえる。結論として、久光製薬は派手さはないものの、数字に裏付けられた堅実な成長が続いている企業であり、割高感のない水準で拾っていく中長期向けの安定成長株、という位置付けになる。

配当目的とかどうなの?

配当目的としてどうかを、提示された利回りの数字と直近の業績推移だけを前提に考える。予想配当利回りは2026年2月期、2027年2月期ともに2.77%となっており、日本株全体で見ると中程度の水準に位置する。高配当株と呼べるほどではないが、インカムをまったく期待できない水準でもなく、安定配当株としては現実的なラインにある。

業績を見ると、売上、営業利益、純利益はいずれも安定して増加しており、営業利益率も9%台から12%台へ改善している。ROE、ROAも上昇基調にあり、収益性と効率性は確実に良くなっている。キャッシュフロー面でも営業CFは安定しており、財務CFが継続的にマイナスで推移していることから、配当や株主還元に資金を回している構造が読み取れる。

このため、久光製薬の配当は無理に背伸びした水準ではなく、現在の利益成長と財務余力の範囲で維持されている配当と評価できる。利回りが2.7%台で横ばいという点からも、急激な増配を狙う企業ではなく、業績の伸びに合わせて段階的に配当を積み上げていくタイプであることが分かる。

一方で、ROEはまだ1桁台後半にとどまっており、配当利回りだけを目的に買うほどのインカム妙味が強い銘柄ではない。高配当を最優先する投資であれば、他に利回り4%前後の選択肢は存在する。その意味では、久光製薬は「配当だけを取りに行く銘柄」ではなく、「業績の安定成長を前提に、2%台後半の配当を着実にもらう銘柄」と位置付けるのが適切である。

結論として、久光製薬は配当目的として可もなく不可もなく、やや堅実寄りの評価になる。高配当株ではないが、業績悪化による減配リスクは比較的低く、安定したインカムを得ながら中長期で保有する投資とは相性が良い。一方、利回り重視のインカム投資を主目的とする場合には、優先順位は中位程度にとどまる、という判断になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

久光製薬は貼付剤を中心に安定した売上と利益の成長を続けている企業である。営業利益率やROE、ROAは直近で改善傾向にあり、製品ポートフォリオの堅実さと海外展開の強化が中期的な評価ポイントになる。配当利回りは予想で2.7%前後と、高配当株とまでは言えないが安定感のある水準にある。この前提を踏まえ、現在の価格(4323円)から今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、国内外で貼付剤市場が堅調に推移し、特に米国や中国での販路拡大やブランド浸透が進む展開を想定する。主力ブランドであるサロンパスやフェイタスの市場シェアが維持・拡大し、研究開発や販売戦略も奏功して営業利益率がさらに改善することで、ROEやROAも引き続き上昇する。この場合、市場は久光製薬を安定的な収益成長株として評価し、PERは過去の高値圏に近い20〜25倍程度が許容される可能性がある。利益成長が続く前提で5年後のEPSが現在値比で上昇すると、株価は5年後に6,500円から7,500円程度まで上昇する強気シナリオとなり、配当を含めたトータルリターンも魅力的になる。

中間のシナリオでは、国内売上は堅調だが海外市場での浸透が緩やかで、利益率の改善は限定的にとどまるケースを想定する。営業利益率は直近の改善トレンドを維持するものの大幅な伸びは見られず、ROE・ROAも横ばいか緩やかな改善にとどまる。この場合、市場は久光製薬を安定成長株として評価するものの過度な期待はせず、PERは15〜20倍の範囲に収まる可能性が高い。この前提では5年後の株価は4,800円から5,500円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。配当利回りは安定して2〜3%台を維持し、値上がり益と配当の両方を享受できるが大きなブレはない。

悪い場合のシナリオでは、国内外の貼付剤市場の競争激化や特許切れ、原材料費の高騰などにより利益率が低下し、ROE・ROAが鈍化する展開を想定する。新製品開発や海外戦略が期待通りに進まず、成長期待が後退した結果、市場評価は保守的になり、PERが10〜15倍程度まで縮小するとする。この場合、EPSが大きく伸びない前提では5年後の株価は3,200円から3,800円程度にとどまり、現在値を下回る可能性もある弱気シナリオとなる。配当利回りは相対的に高く見えるものの、値下がりリスクが先行する。

総合すると、現在株価4,323.0円を起点とした久光製薬の5年間の値動きは、良い場合で6,500円から7,500円程度、中間で4,800円から5,500円程度、悪い場合で3,200円から3,800円程度というレンジが想定される。配当は安定して期待できるとはいえ、値動きは業績改善と市場評価の変化に大きく左右されるため、インカムと値上がりのバランスを見ながら中長期で保有を検討する投資スタイルと相性が良い。

この記事の最終更新日:2025年12月24日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP