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参天製薬とは

参天製薬は、緑内障、加齢黄斑変性、ドライアイ治療薬などの眼科用医薬品で国内外トップクラスの地位を持つ、眼科領域に特化した製薬会社である。一般用目薬では「サンテ」ブランドで広く知られており、医療用・大衆用の両面で眼科市場に強い存在感を持つ。東京証券取引所プライム市場に上場しており、コーポレートスローガンは「Imagine Your Happiness(あなたのあしたを思う)」としている。
1890年の創業当初は風邪薬を主力としていたが、戦後は事業の軸足を眼科領域に移し、「ひと・ひとみ・すこやか。」を掲げて一貫して目薬や点眼薬、眼科用医薬品の開発・製造・販売に注力してきた。現在では、日本国内において医療用目薬でシェア首位、一般用目薬でもロート製薬に次ぐ高いシェアを有しており、眼科領域では事実上のトップメーカーといえる。
事業内容の中核は医療用眼科医薬品であり、緑内障治療薬、加齢黄斑変性治療薬、ドライアイ治療薬、アレルギー性結膜炎治療薬など、慢性疾患から加齢性疾患まで幅広い製品群を展開している。特に緑内障領域では長年の研究開発実績を背景に、国内外で高い評価を受けている。2015年には抗リウマチ薬事業をあゆみ製薬へ譲渡し、非眼科領域から撤退したことで、現在は眼科領域に完全特化した製薬会社となっている。
一般用医薬品では「サンテ」ブランドを中心に、多数の目薬製品を展開している。サンテメディカルアクティブやサンテ40シリーズなどは、ビタミンや代謝促進成分を組み合わせた処方で、疲れ目や加齢による目の不調を訴求し、長年にわたり定番商品として支持されている。清涼感や成分配合の違いによる細かなラインアップ展開も特徴で、幅広い消費者ニーズを取り込んでいる。
製造・研究開発体制も眼科特化型で、本社は大阪市に置き、能登工場、滋賀工場、奈良研究開発センターなどを通じて、研究から生産まで一貫した体制を構築している。品質管理と安全性が極めて重要な点眼薬分野において、長年培ってきた製造ノウハウは参天製薬の大きな強みとなっている。
また、海外展開にも積極的で、欧州やアジアを中心にグローバルで事業を展開しており、日本市場に依存しすぎない事業構造を志向している。眼科という専門領域に集中することで、大手総合製薬会社とは異なる競争軸を確立している点が同社の特徴である。総合すると、参天製薬は眼科用医薬品に完全特化し、医療用・一般用の両面で強いブランド力と市場シェアを持つ専門メーカーである。多角化による成長を狙う企業ではなく、眼科領域の深掘りとグローバル展開を通じて、安定性と専門性を両立させている企業と位置付けられる。
参天製薬 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ◇21.3 | 249,605 | 12,917 | 12,418 | 6,830 | 17.1 | 28 |
| ◇22.3 | 266,257 | 35,886 | 35,616 | 27,218 | 68.1 | 32 |
| ◇23.3 | 279,037 | -3,090 | -5,799 | -14,948 | -38.6 | 32 |
| ◇24.3 | 301,965 | 38,541 | 29,874 | 26,642 | 72.6 | 33 |
| ◇25.3 | 300,004 | 46,880 | 47,481 | 36,256 | 104.0 | 36 |
| ◇26.3予 | 294,000 | 44,000 | 43,900 | 34,000 | 105.6 | 38 |
| ◇27.3予 | 310,000 | 48,000 | 48,500 | 37,000 | 115.0 | 38〜44 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 37,147 | -26,777 | -37,220 |
| 2024.3 | 72,649 | -6,145 | -34,031 |
| 2025.3 | 60,928 | -8,223 | -53,307 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | -1.2 | -5.1 | -3.6 | ― | ― |
| 2024.3 | 12.7 | 8.7 | 6.1 | ― | ― |
| 2025.3 | 15.6 | 12.6 | 8.8 | 20.0(高)/13.8(安) | 1.9 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模を見ると、売上高は2024年3月期で3,019億円、2025年3月期で3,000億円、2026年3月期予想で2,940億円と、ここ数年は横ばいからやや減少傾向にある。売上面では成長企業とは言い難いが、眼科用医薬品専業としては依然として大きな事業規模を維持しており、基盤そのものが崩れているわけではない。
一方で利益水準は大きく改善している。営業利益は2024年3月期で385億円、2025年3月期で468億円と急回復し、2026年3月期予想でも440億円と高水準を維持する見通しである。経常利益は2024年298億円から2025年474億円へと伸び、2026年予想でも439億円と安定している。純利益も2024年266億円、2025年362億円、2026年予想340億円と、売上が伸びない中でも利益はしっかり積み上がっている。数量成長よりも収益性改善が業績を押し上げている構図がはっきりしている。
収益性を見ると、2023年には営業利益率がマイナス1.2%と赤字だったが、2024年には12.7%、2025年には15.6%まで一気に改善している。これは一時的な戻りというより、コスト構造や事業運営の見直しが効いてきた結果と考えられる水準であり、眼科専業メーカーとしては比較的高い利益率である。ROEも2023年のマイナス5.1%から、2024年8.7%、2025年12.6%へと改善しており、株主資本を使った稼ぐ力は明確に回復している。ROAもマイナス3.6%から6.1%、8.8%へと改善しており、資産効率の面でも回復基調が鮮明である。
株価評価の面では、2025年実績PERは高値平均20.0倍、安値平均13.8倍となっている。利益が急回復している局面を踏まえれば、極端な割高感はないが、決して割安とも言い切れない水準である。実績PBRは1.9倍と、すでに赤字期からの回復を市場がある程度織り込んでいる状態にある。資産価値よりも、今後も高い利益水準を維持できるかどうかが株価を左右する段階に入っている。
総合すると、参天製薬は2023年の赤字を底に、2024年以降は利益率、ROE、ROAが急速に改善し、事業の質が大きく変わった企業といえる。売上成長は乏しいものの、収益性は明確に向上しており、眼科専業メーカーとしての強みが再び発揮されている局面にある。一方で、PBRはすでに2倍近くまで評価されており、今後は利益のさらなる成長よりも、現在の高収益体質をどこまで持続できるかが問われる段階にある。
投資判断としては、回復初期の割安株という位置付けではなくなりつつあるが、構造改革と収益性改善が定着する前提であれば、中期的に評価が維持される可能性は高い。大きな成長を期待する銘柄ではないものの、眼科という専門領域で高い利益率を確保できる体質に戻りつつある点を評価し、業績の持続性を重視して向き合うタイプの銘柄、という位置付けになる。
配当目的とかどうなの?
配当目的としてどうかを、提示されている利回りと直近の業績水準だけを前提に整理する。予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに2.33%となっており、日本株全体の中では中程度の水準に位置する。高配当株と呼べる水準ではなく、インカム収入を最優先に考える投資家にとっては、やや物足りない利回りである。
一方で、参天製薬は2023年の赤字局面を脱し、2024年以降は営業利益率、ROE、ROAが大きく改善しており、収益力そのものは明確に回復している。営業CFも安定して黒字であり、配当原資となるキャッシュ創出力には余裕がある。財務CFが大きくマイナスで推移している点からも、配当や株主還元を意識した資金配分を行っていることがうかがえる。
ただし、配当利回りが2.3%台で横ばいという点を踏まえると、参天製薬の配当政策は積極的な増配でインカムを高めるタイプではなく、業績回復後の安定配当を重視するスタンスといえる。今後、利益がさらに拡大すれば増配余地はあるものの、現時点では配当を大きな成長ドライバーと見るのは難しい。
結論として、参天製薬は配当目的だけで買う銘柄ではない。高配当を狙うインカム投資には不向きだが、業績回復による安定した配当を受け取りつつ、株価の安定性や中期的な評価維持を期待する投資とは相性が良い。配当はあくまで補助的なリターンであり、主軸は収益性回復が続くかどうかを見極める投資になる、という位置付けになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
参天製薬は眼科用医薬品に特化した専門メーカーであり、2023年の赤字から2024年以降は営業利益率、ROE、ROAが急速に改善して利益水準を回復してきた銘柄である。売上成長は横ばい傾向ではあるものの、利益改善は明確であり、収益性の高い事業体質へと回帰している。この前提を踏まえて、現在の価格(1,628.5円)から今後5年間の株価の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、参天製薬の収益性改善がさらに進み、営業利益率が15%台以上で安定、ROE・ROAも引き続き高水準で推移する展開を想定する。眼科領域は市場自体が高齢化と共に堅調に推移することが見込まれ、既存薬の安定処方と新製品の適用拡大、海外展開の成果が結実することで、利益成長が続く。この場合、市場は収益性と安定性を高く評価し、PERが20〜25倍程度、PBRも2倍前後で推移すると仮定できる。こうした評価と利益成長を勘案した5年後の株価は2,600円から3,000円程度が目安となり、現在値1,628.5円からは堅調な上昇が期待できる強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、利益改善は維持されるものの、利益率やROE・ROAは現状水準で横ばい、売上は微増にとどまるケースを想定する。この場合、収益性と市場評価は安定した水準に落ち着き、PERは15〜20倍程度、PBRは1.8倍前後で推移すると考えられる。5年後の株価は2,000円から2,400円程度が想定され、現在値からは穏やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。配当利回りは2%台で安定しており、配当収入を含めたトータルリターンは堅実なリターンが見込める。
悪い場合のシナリオでは、眼科市場の競争激化や薬価改定など外部要因で収益改善が鈍化し、営業利益率やROEが低下基調に戻る展開を想定する。また、売上が横ばいから微減に転じる可能性も考えられる。この場合、市場評価は慎重になり、PERが12〜15倍程度、PBRが1.5倍前後まで低下する可能性がある。こうした評価と利益鈍化を前提にした5年後の株価は1,200円から1,500円程度にとどまり、現在値を下回るか横ばい圏で推移する弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,628.5円を起点とした参天製薬の5年間の値動きは、良い場合で2,600円から3,000円前後、中間で2,000円から2,400円程度、悪い場合で1,200円から1,500円程度というレンジが想定される。配当は2%台前半で安定しているが、値動きは業績の収益性改善と市場評価の変化に大きく左右されるため、中長期では収益性の維持・成長を重視する投資スタンスと相性の良い銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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