株価
日本新薬とは

日本新薬株式会社は、京都市南区吉祥院西ノ庄門口町に本社を置く日本の製薬会社であり、医家向け医薬品を中核事業としつつ、機能食品事業の育成にも取り組む中堅の研究開発型製薬企業である。医療用医薬品では、自社創薬を強みとし、泌尿器科、血液内科、難病・希少疾患といった専門性の高い領域に経営資源を集中させている点が大きな特徴となっている。
同社は、泌尿器系疾患および血液腫瘍領域を主力分野としており、前立腺肥大症、前立腺がん、頻尿、勃起不全などの泌尿器科領域、ならびに白血病や悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群などの血液内科領域で多くの実績を有している。また、近年はドラベ症候群やデュシェンヌ型筋ジストロフィー、肺動脈性肺高血圧症など、治療選択肢が限られる難病・希少疾患分野にも注力しており、核酸医薬を含む先端技術を活用した創薬研究開発を積極的に進めている。
経営理念として「人々の健康と豊かな生活創りに貢献する」を掲げ、高品質で特長のある製品やサービスの提供、社会からの信頼獲得、社員一人ひとりの成長を重視する経営方針を採っている。研究開発体制としては、京都を中心に創薬研究所を擁し、基礎研究から臨床開発、製造、販売までを一貫して手がける体制を構築している。
主要製品には、泌尿器科領域では前立腺肥大症治療剤ザルティア、勃起不全治療剤シアリス、前立腺がん治療剤エストラサイト、頻尿治療剤ブラダロン、エビプロスタットなどがある。血液内科領域では、再発・難治性リンパ腫や白血病向けのジャイパーカ、ビキセオス、ビダーザ、トリセノックス、キロサイドなどを展開している。難病・希少疾患領域では、てんかん発作治療剤フィンテプラ、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤ビルテプソ、肺動脈性肺高血圧症治療剤ウプトラビやオプスミットなどが主力製品となっている。加えて、婦人科、耳鼻科、疼痛治療、アルコール依存症などのプライマリー領域にも製品ラインアップを持つ。
医薬品事業に加え、機能食品事業も展開しており、医薬品開発で培った技術や知見を活かした健康関連分野の育成を進めている。関連会社としては、医薬品製造を担うシオエ製薬株式会社や食品分野のタジマ食品工業株式会社などを有し、グループとしての事業基盤を形成している。総じて日本新薬は、医家向け医薬品を収益の柱としながら、専門性の高い治療領域に集中した自社創薬と、難病・希少疾患への取り組みを強みとする製薬会社であり、安定した事業基盤と中長期的な成長を両立させる戦略を採る企業と位置付けられる。
日本新薬 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 121,885 | 26,134 | 26,760 | 20,702 | 307.4 | 99 |
| 22.3 | 137,547 | 28,299 | 29,773 | 23,044 | 342.1 | 110 |
| 23.3 | 144,175 | 30,049 | 30,489 | 22,812 | 338.7 | 114 |
| 24.3 | 148,255 | 33,295 | 33,616 | 25,851 | 383.8 | 124 |
| 25.3 | 160,232 | 35,450 | 36,135 | 32,558 | 483.4 | 124 |
| 26.3予 | 168,000 | 33,000 | 33,700 | 26,300 | 390.2 | 124 |
| 27.3予 | 185,000 | 30,000 | 30,700 | 24,000 | 356.1 | 124 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 26,170 | -17,631 | -9,605 |
| 2024 | 16,289 | -9,921 | -9,719 |
| 2025 | 36,126 | -28,877 | -9,902 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 20.8 | 11.6 | 9.6 | – | – |
| 2024 | 22.4 | 11.7 | 9.8 | – | – |
| 2025 | 22.1 | 13.1 | 11.4 | 18.0(高)/10.8(安) | 1.50 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
売上高は24.3期で1,482億円、25.3期で1,602億円、26.3期予想で1,680億円と、緩やかながら安定した成長を続けている。大型医薬品の安定寄与と、難病・希少疾患領域の積み上がりにより、事業基盤は比較的堅調といえる。
営業利益は24.3期332億円、25.3期354億円と増加した後、26.3期予想では330億円とやや減益見通しとなっている。経常利益も同様に25.3期361億円から26.3期予想337億円へと一服感がある。一方、営業利益率は20.8%→22.4%→22.1%と高水準を維持しており、製薬会社としての収益性は非常に高い。純利益は24.3期258億円、25.3期325億円と大きく伸びた後、26.3期予想では263億円と反動減が見込まれている。これは業績の急悪化というより、25期の利益水準がやや出来過ぎであったことによる調整と見るのが自然である。
資本効率を見ると、ROEは11.6%→11.7%→13.1%、ROAは9.6%→9.8%→11.4%と着実に改善しており、製薬企業としては十分に高い水準にある。高収益体質と安定した資産効率を両立している点は評価できる。バリュエーション面では、2025年実績PERは高値平均18.0倍、安値平均10.8倍、PBRは1.5倍であり、医薬品セクターとしては割高感はなく、むしろ業績安定性を考慮すれば妥当からやや割安寄りの水準といえる。
以上を総合すると、この銘柄は売上・利益ともに安定性が高く、営業利益率20%超という強い収益力を持ちながら、PER・PBRは過度に高くない。26.3期は一時的な減益予想が出ているものの、構造的な収益力低下は見られず、ROE・ROAも改善傾向にある。そのため、短期的な急成長を狙うグロース株ではないが、高収益・安定成長・適正バリュエーションを兼ね備えたディフェンシブ寄りの高収益株として、中長期で安心して保有しやすい銘柄という投資判断になる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、この銘柄は配当目的でも十分に検討対象になる。26.3期、27.3期ともに予想配当利回りは2.13%と、医薬品セクターの中では平均的からやや良好な水準にある。高配当株と呼べるほどではないが、業績の安定性を考えると、インカム狙いとして一定の魅力はある。
日本新薬は営業利益率20%超を安定して確保しており、キャッシュフローも堅調で、配当原資に不安は小さい。配当額も急激に増減するタイプではなく、業績に応じて安定配当を維持する姿勢が見て取れる。そのため、配当の継続性という点では安心感が高い。
一方で、配当利回りは2%台前半にとどまるため、配当だけを最大化したい高配当株投資にはやや物足りない。あくまで主役は事業の安定性と収益力であり、配当はその成果を穏やかに還元する位置付けといえる。まとめると、この銘柄は高配当を狙うインカム株ではないが、業績の安定した製薬企業に中長期で投資し、配当を受け取りながら株価の安定と緩やかな成長を狙う投資には相性が良い。配当は主役ではないが、安心材料としては十分に機能する水準、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本新薬は、現在株価5,810.0円を基準に見ると、安定した医薬品ポートフォリオと専門性の高い創薬領域を強みとする銘柄であり、急成長株というよりも堅実な収益性と安定配当を背景にした中長期型投資に向いた企業と位置づけられる。営業利益率は20%台、ROE・ROAも高く、収益力と資本効率の両立ができている。一方でPER・PBRは決して割安ではなく、将来の利益予想と安定性が株価評価に織り込まれている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで整理すると以下のようになる。
良い場合のシナリオでは、日本新薬の主力領域である泌尿器科、血液内科、難病・希少疾患などの医薬品が市場でより高い評価を受け、売上が想定以上に拡大する展開を想定する。創薬パイプラインが順調に進捗し、新薬の上市や適用拡大が進むことで利益成長が加速し、営業利益率やROEが高水準を維持・改善する。このような好材料が積み上がると、市場評価もPERの高値平均18倍前後で安定し、株価は6,800円から8,000円程度まで上昇する可能性がある。配当利回りは2%台を維持しながら、投資家にとって収益と安定性を両立できるシナリオとなる。
中間のシナリオでは、医薬品事業は堅調に推移するものの、研究開発の成果が段階的な進捗にとどまり、新薬の収益化は緩やかに進むといった展開を想定する。売上・利益は緩やかに成長し、PERは10倍台後半から15倍程度、PBRは1.5倍前後で安定する。この場合、株価は現在値からやや上昇して、5年後に6,200円から7,000円程度のレンジで推移する中立的なシナリオとなる。配当を受け取りつつ、株価は業績に応じて緩やかに上昇する見通しになる。
悪い場合のシナリオでは、創薬パイプラインからの成果が想定より遅れたり、主要薬剤の競合が激化したりすることで、利益成長が鈍化する展開を想定する。この場合、PERはセクター平均付近の10倍前後に低下し、PBRも1倍前後まで圧縮される可能性がある。売上・利益の伸び悩みから株価は現在値から下方修正され、5年後に4,000円から4,800円程度にとどまる弱気シナリオとなる。配当利回りは相対的に高く感じられるものの、株価の下落でトータルリターンの抑制要因となる。
総合すると、現在株価5,810.0円を起点とした日本新薬の5年間の値動きは、良い場合で6,800円から8,000円前後、中間で6,200円から7,000円、悪い場合で4,000円から4,800円といったレンジが想定される。安定した収益性と配当を背景に、中長期の安心感を重視しつつ、業績拡大を取り込む投資と相性の良い銘柄という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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