株価
理研ビタミンとは

理研ビタミン株式会社は、食品原料・食品改良剤および化成品を主な収益源とする日本の食品・素材メーカーであり、東京都新宿区に本社を置いている。旧理研コンツェルンの流れをくむ企業で、1917年に設立された財団法人理化学研究所を母体とし、ビタミンAの製造部門を引き継ぐ形で発足した歴史を持つ。かつてはビタミンAの国産化で重要な役割を果たしたが、現在はビタミンA製造からは撤退し、医薬品や健康食品向けに各種ビタミンや健康機能素材を提供する事業へと軸足を移している。
同社の事業構造は、BtoBとBtoCの両輪で成り立っている点が大きな特徴である。BtoB分野では、食品メーカー向けの食品原料、食品改良剤、乳化剤、安定剤などを幅広く展開しており、特に食品用乳化剤の分野では日本国内トップシェアを誇る。パン、菓子、惣菜、水産加工品、冷凍食品など、日常的に消費される多くの加工食品に同社の技術が使われており、長年にわたり蓄積してきた界面制御技術や配合技術、品質管理力が競争力の源泉となっている。近年は健康志向の高まりを背景に、機能性表示食品やサプリメント向けの原料開発にも注力しており、機能性食品向け素材を成長分野として位置付けている。
一方、BtoC分野では、家庭用食品として海藻製品や調味料を展開している。「ふえるわかめちゃん」シリーズは同社を代表するロングセラー商品であり、乾燥わかめ市場で高い知名度を持つ。また、「わかめスープ」や「リケンのノンオイル青じそドレッシング」なども広く知られており、健康イメージと手軽さを訴求した商品展開によって、家庭用市場で安定した需要を確保している。家庭用食品事業は急成長を狙うというよりも、ブランド力と定番商品の強さを生かした安定収益源として位置付けられている。
食品事業に加えて、化成品事業も同社の重要な柱である。食品分野で培った化学技術や界面制御技術を応用し、工業用途向けの化学製品を提供しており、食品事業とは異なる顧客層と用途を持つことで、景気変動の影響を分散できる事業構造となっている。食品関連というディフェンシブな分野を軸にしつつ、化成品事業を組み合わせることで、全体として安定感のあるポートフォリオを形成している点が特徴である。
拠点面では、本社のほか、大阪、札幌、仙台、北関東などに支店を構え、全国規模で営業・供給体制を整えている。長年にわたり食品メーカーや流通業者と築いてきた取引関係や信頼性も強みであり、派手さはないものの、技術力と実績に裏打ちされた堅実な企業といえる。
総じて理研ビタミンは、食品原料・改良剤というBtoBの強固な基盤を中核に、海藻やドレッシングなどの家庭用食品、さらに機能性食品素材や化成品を組み合わせた安定型の事業構造を持つ企業である。急成長を追求するタイプではないが、健康志向や機能性食品市場の拡大を背景に、着実に付加価値を高めながら中長期的な成長を目指す企業として位置付けられる。
理研ビタミン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 77,722 | 1,367 | 1,652 | -1,618 | -49.4 | 42 |
| 22.3 | 79,231 | 5,840 | 6,182 | 21,582 | 658.0 | 46 |
| 23.3 | 88,750 | 7,158 | 7,723 | 6,414 | 195.5 | 59 |
| 24.3 | 91,484 | 9,371 | 10,296 | 8,755 | 268.4 | 81 |
| 25.3 | 95,582 | 8,724 | 9,417 | 9,388 | 310.1 | 94 |
| 26.3予 | 100,000 | 8,500 | 9,000 | 8,200 | 278.7 | 110 |
| 27.3予 | 103,000 | 8,800 | 9,300 | 8,400 | 285.4 | 110〜114 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 7,835 | -2,034 | -4,578 |
| 24.3 | 10,451 | -554 | -7,084 |
| 25.3 | 7,892 | 353 | -9,965 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 8.0% | 8.9% | 6.0% | – | – |
| 2024 | 10.2% | 11.4% | 7.3% | – | – |
| 2025 | 9.1% | 11.8% | 8.3% | 7.5〜9.9倍 | 1.08倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績水準を億円ベースで整理すると、連24.3期は売上高914億円、営業利益93億円、経常利益102億円、純利益87億円である。連25.3期は売上高955億円、営業利益87億円、経常利益94億円、純利益93億円と、売上は伸びているものの、営業利益はやや低下している。一方、純利益は増加しており、コスト構造や営業外損益の影響が見て取れる。連26.3期予想では、売上高1,000億円、営業利益85億円、経常利益90億円、純利益82億円とされており、売上は拡大するが、利益は横ばいから微減という見通しである。
収益性を見ると、営業利益率は2023年8.0%、2024年10.2%、2025年9.1%と、10%前後で安定している。食品原料・改良剤を主軸とする企業としては比較的高い水準であり、収益基盤の安定感は評価できる。ROEは8.9%、11.4%、11.8%と改善傾向にあり、株主資本効率は中堅食品メーカーとしては良好な部類に入る。ROAも6.0%、7.3%、8.3%と着実に上昇しており、資産効率も堅調である。
バリュエーション面では、2025年実績ベースのPERは7.5倍から9.9倍と低水準であり、PBRも1.0倍程度にとどまっている。ROEが10%超であることを考えると、市場評価はやや保守的で、割高感は見られない。成長性は高くないものの、安定した利益水準を前提とすれば、妥当からやや割安寄りの評価といえる。
総合すると、この銘柄は急成長を期待するタイプではないが、売上1,000億円規模まで拡大する安定した事業基盤を持ち、営業利益率9〜10%、ROE10%超を維持する堅実な企業である。低PER・PBR水準を踏まえると、成長期待よりも安定収益と下値の堅さを重視する投資と相性が良い。
投資判断としては、高成長株ではないが、業績の安定性と割安感を背景に、中長期でじっくり保有する「安定収益・バリュー寄り」銘柄という位置付けがしっくりくる。景気変動に比較的強い食品関連事業を軸に、安定したリターンを狙う投資家向けの銘柄と評価できる。
配当目的とかどうなの?
理研ビタミンを配当目的の観点から見ると、「配当目的として十分に検討対象になる銘柄」と評価できる。予想配当利回りは連26.3期、連27.3期ともに3.72%と、東証プライム上場の食品関連銘柄の中では比較的高い水準にある。食品原料・改良剤というディフェンシブ性の高い事業を中核としており、業績の振れが比較的小さい点は、安定的な配当を期待する投資家にとって安心材料となる。
業績面では、売上高は拡大基調にあるものの、営業利益は横ばいからやや減少傾向にあり、急激な成長局面ではない。一方でROEは10%を超える水準を維持しており、収益性そのものは安定している。高成長による大幅な増配を狙うタイプの銘柄ではないが、現在の利益水準を前提とすれば、配当の維持可能性は高いと考えられる。
総合すると、この銘柄は、配当だけを目的に買うインカム株としても十分成立し、業績の安定性を背景に、比較的高めの配当利回りを長期で受け取る投資と相性が良い。一方で、増配スピードや株価の大きな上昇を強く期待する銘柄ではなく、値動きよりも配当収入を重視する中長期保有向けの銘柄、という位置付けがしっくりくる。まとめると、高配当を主目的とした投資にも向いており、業績の安定性を重視しながら、配当を着実に受け取るインカム投資として有力な選択肢になる、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
理研ビタミンは、現在株価2,950.0円を基準に見ると、急成長を狙うグロース株というよりも、食品原料・改良剤を中核とした安定収益型の企業であり、配当も含めた中長期保有向きの銘柄と位置付けられる。売上は1,000億円規模まで拡大しつつあり、営業利益率は9~10%前後、ROEも10%超と、食品関連企業としては堅実な収益力を維持している。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、食品原料・改良剤や機能性食品向け素材の需要が堅調に拡大し、売上成長が続く展開を想定する。原価管理や付加価値商品の比率向上により、営業利益率は10%台前半で安定し、ROEも12%前後を維持する。高配当と安定収益が評価され、PERは12~14倍、PBRは1.2倍程度まで切り上がる。この場合、5年後の株価水準は3,600円から4,200円程度が目安となり、配当を受け取りながら緩やかな株価上昇も期待できる強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、売上は緩やかに拡大するものの、利益成長は限定的で、営業利益率は9%前後で横ばい推移となるケースを想定する。市場評価は現在と大きく変わらず、PERは10~12倍、PBRは1倍前後に落ち着く。この場合、5年後の株価は2,900円から3,300円程度と、現在値近辺でのレンジ推移が中心となる。リターンの大半は配当によるインカムゲインとなる中立的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、原材料価格の上昇や競争激化により利益率が低下し、売上成長も鈍化する展開を想定する。営業利益率は7%台まで低下し、ROEも一桁台にとどまる。市場評価は慎重となり、PERは8~9倍、PBRは1倍を割り込む可能性がある。この場合、5年後の株価は2,200円から2,600円程度にとどまり、配当は維持されても株価面でのリターンは限定的となる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価2,950.0円を起点とした理研ビタミンの5年間の値動きは、良い場合で3,600円から4,200円前後、中間で2,900円から3,300円、悪い場合で2,200円から2,600円といったレンジが想定される。爆発的な成長を狙う銘柄ではないが、業績の安定性と比較的高い配当利回りを背景に、インカムを重視しつつ中長期で緩やかなリターンを狙う投資と相性の良い銘柄と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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