株価
ペプチドリームとは

プチドリームは、東京大学発の創薬バイオベンチャーとして誕生した、日本を代表するペプチド創薬企業である。産学連携を基盤に、従来の低分子医薬品や抗体医薬品とは異なるアプローチで新しい医薬品を生み出すことを強みとしており、現在は海外の大手製薬企業との多数の提携を通じて、グローバルに事業を展開している。
同社の中核は、特殊ペプチドを用いた独自の創薬基盤技術である。人工RNA触媒であるフレキシザイム技術により、通常の生体反応では不可能な特殊アミノ酸やアミノ酸誘導体を自在にtRNAに結合させることができ、これを無細胞翻訳系に組み込んだFITシステムによって、膨大な種類の特殊ペプチドを一度に合成できる。さらに、RAPIDディスプレイという独自のスクリーニング技術を組み合わせることで、数千億規模の特殊ペプチドライブラリーの中から標的分子に強く結合する候補物質を高速で選別することが可能となっている。これら3つの技術を統合したものがPDPS(Peptide Discovery Platform System)であり、同社はこの分野で広範な特許ポートフォリオを構築している。
特殊ペプチドは、低分子医薬品に比べて副作用の原因となる非特異的結合を抑えやすく、抗体医薬品に比べて分子量が小さく設計自由度が高いという特徴を持ち、第3の医薬品として位置付けられている。従来は体内で分解されやすい、細胞膜を通過しにくいといった課題があったが、ペプチドリームの技術により、医薬品としての実用性が大きく高められている。
事業モデルとしては、自社で大規模に医薬品を販売する形ではなく、創薬プラットフォームを武器に国内外の製薬大手と共同研究開発契約を結ぶライセンス型ビジネスが中心である。契約時に一時金を受領し、研究開発の進捗に応じたマイルストーン収入、さらに上市後には売上ロイヤルティを受け取る多段階収益モデルを構築している。提携先には、アストラゼネカ、アムジェン、イーライリリー、イプセン、グラクソ・スミスクラインなど、世界有数の製薬企業が名を連ねている。
近年は、従来のペプチド創薬に加え、事業領域の拡張にも積極的である。子会社であるPDRファーマを通じて放射性医薬品分野に本格参入し、日本国内で放射性医薬品の製造・販売を行うとともに、PDPS技術を活用した放射性治療薬や診断薬の創製にも取り組んでいる。加えて、培地成分代替ペプチドを手掛けるぺプチグロース、医薬品の研究開発・製造販売を行うぺプチエイドなど、周辺分野への展開も進めている。
このようにペプチドリームは、独自の創薬基盤技術を軸に、グローバル製薬企業との広範なネットワークと、放射性医薬品を含む新領域への展開を組み合わせることで、研究開発力そのものを価値源泉とするビジネスを展開している企業であり、短期的な製品売上よりも、中長期の創薬成果と提携の広がりが企業価値を左右する構造となっている。
ペプチドリーム 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益EPS (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.12 | 26,852 | 8,980 | 6,653 | 7,554 | 58.2 | 0 |
| 2023.12 | 28,712 | 6,773 | 4,353 | 3,035 | 23.4 | 0 |
| 2024.12 | 46,676 | 21,113 | 20,888 | 15,014 | 115.9 | 0 |
| 2025.12予 | 18,000 | -5,400 | -5,800 | -4,000 | -31.0 | 0 |
| 2026.12予 | 48,000 | 18,500 | 18,000 | 13,000 | 100.6 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | -82 | -27,377 | 20,789 |
| 2023.12 | 12,420 | 1,302 | 264 |
| 2024.12 | 23,844 | 8,370 | -2,994 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROE (%) |
ROA (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 23.5 | 7.5 | 4.3 | – | – |
| 2024.12 | 45.2 | 26.4 | 16.1 | 27.5〜67.6 | 4.03 |
| 2025.12予 | -30.0 | -7.1 | -4.4 | – | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、2023年は売上約287億円、営業利益約67億円で営業利益率は23.5%と、創薬ベンチャーとしてはかなり高い水準にある。ROEは7.5%、ROAは4.3%と、資本効率は高収益年としてはやや控えめだが、黒字基調の年としては妥当な水準と言える。
2024年は売上が約466億円に急拡大し、営業利益は約211億円、営業利益率は45.2%と異常値とも言える水準まで跳ね上がっている。ROEは26.4%、ROAは16.1%と、収益性・効率性ともに極めて高く、単年で見れば製薬・バイオ業界の中でもトップクラスの数字である。一方で、この年のPERは27.5倍から67.6倍とレンジが広く、PBRは4.0倍と高水準で、市場はすでにかなりの成長期待を織り込んでいる状態にあったことが分かる。
2025年は売上約180億円、営業利益は-54億円と赤字に転落し、営業利益率は-30.0%、ROEは-7.1%、ROAは-4.4%と一気に悪化する予想になっている。これは事業の競争力低下というより、マイルストーン収入や契約金の計上タイミングに左右されるビジネスモデルの特性がそのまま数字に出た形と見るのが自然で、業績の振れ幅が極端に大きい点が最大の特徴である。
2026年予想では再び売上約480億円、営業利益約185億円と大幅な黒字回復が見込まれており、構造的に「良い年と悪い年の落差が非常に大きい」企業であることが、数字からはっきり読み取れる。
以上を踏まえると、ペプチドリームは安定成長企業やディフェンシブ銘柄として評価すべき会社ではない。営業利益率やROE、ROAは良い年には非常に魅力的だが、それが毎年継続する前提では成り立っていない。PERやPBRも、好業績年を基準にすると割安に見える局面がある一方、平均的な収益力で見ると評価は決して低くない。
このため投資判断としては、配当や毎期の安定利益を期待する投資には不向きで、価値の源泉はあくまで創薬パイプラインと大型提携・マイルストーン獲得による一時的な収益ジャンプにある。業績の谷の年にリスクを取って仕込み、次の大型収益年で評価が跳ねることを狙う、ハイリスク・ハイリターン型の成長・テーマ投資向け銘柄という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、ペプチドリームは配当目的の投資には向かない銘柄である。2025年、2026年ともに予想配当利回りは0.00%で、実質的に無配が前提の企業と考えるのが自然だ。同社の利益構造は、医薬品の安定販売によって毎期一定の利益を積み上げるタイプではなく、創薬提携に伴う契約一時金やマイルストーン収入の有無によって業績が大きく変動する。
2024年のように営業利益率が45%を超え、ROEも20%台後半まで跳ね上がる年がある一方で、2025年のように営業赤字・ROEマイナスが想定される年もある。このような業績の振れ幅の大きさは、安定的に配当を出し続ける経営と根本的に相性が悪い。
また、市場からの評価も配当を前提としたものではない。PBRは4倍前後と高く、株価は資産価値やインカムではなく、将来の創薬成果や大型提携による収益ジャンプへの期待によって形成されている。会社側も、得られたキャッシュを株主還元に回すより、研究開発や次のパイプライン創出に再投資する姿勢が明確であり、無配を続けること自体が経営方針と整合している。
そのため、配当利回りを重視するインカム投資や、安定収益を目的とした長期保有には不適切である。一方で、業績の谷の年に株価が調整した局面で仕込み、次の大型マイルストーン獲得や提携発表による業績急回復と評価上昇を狙う、値上がり益重視の投資とは相性が良い。総合すると、ペプチドリームは安定配当株でも高配当株でもなく、配当目的で保有する理由は乏しい。その代わり、創薬テーマと業績変動を取りに行く中長期の成長・イベントドリブン型投資向けの銘柄、という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ペプチドリームについて、現在株価1,644円前後を基準に見ると、安定配当や業績の平準化を重視する一般的な医薬品株とは性格が大きく異なり、独自の創薬プラットフォームを武器に大型提携やマイルストーン収入を積み上げる、典型的な研究開発主導型のバイオベンチャーと位置づけられる。
PDPSという特殊ペプチド創薬基盤を背景に、海外製薬大手との提携数は非常に多く、単年で見れば2024年のように営業利益率40%超、ROE20%台後半といった極めて高い収益性を示す年がある一方、2025年のように営業赤字・ROEマイナスが織り込まれる年もあり、稼ぐ力の振れ幅が極端に大きい構造になっている。配当は無配が続いており、投資リターンは完全に株価水準の変化に依存するタイプの銘柄である。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、既存の共同研究案件が順調に進展し、複数の大型マイルストーン収入が数年にわたって発生する展開を想定する。加えて、放射性医薬品領域を含む新分野での成果が可視化され、創薬プラットフォームの価値が再評価される局面を迎える。この場合、業績の谷の年を挟みながらも中長期では高収益年が繰り返されるとの期待が強まり、市場は再び成長性を前面に評価する。PERは好業績年ベースで30倍前後が許容され、PBRも高水準を維持しやすくなる。評価の切り上がりと業績回復が重なれば、株価は段階的に上昇し、5年後には2,500円から3,200円程度を目指す展開が考えられる。これは創薬テーマ株として再び強気評価が定着した場合のシナリオになる。
中間のシナリオでは、提携案件は継続するものの、業績を大きく押し上げるほどのマイルストーン収入は限定的で、利益は好不調を繰り返しながら平均的には横ばいに近い推移となるケースを想定する。営業利益率やROE、ROAは年によって大きく振れるが、長期平均ではプラス圏を維持する。一方で、無配であることからインカム投資の資金流入は見込みにくく、市場評価は成長期待と不確実性のバランスを取った水準に落ち着きやすい。この場合、PERは20倍前後、PBRは3倍前後で推移し、株価は大きなトレンドを描かず、5年後の水準は1,800円から2,200円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、主要パートナー案件の進捗遅延や中止が重なり、想定されていたマイルストーン収入が後ろ倒しになる状況を想定する。赤字年が続くことで収益の不安定さが強く意識され、市場は創薬プラットフォームの価値を保守的に評価するようになる。この場合、PERは算定困難または10倍台前半相当まで切り下げられ、PBRも2倍台まで低下する可能性がある。評価調整が長期化すれば、株価は上値の重い展開が続き、5年後には1,000円から1,300円程度にとどまる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,644円を起点としたペプチドリームの5年間の値動きは、良い場合で2,500円から3,200円前後、中間で1,800円から2,200円、悪い場合で1,000円から1,300円といったレンジが想定される。配当はなく、安定収益を期待する投資には向かないが、創薬成果や大型提携による評価ジャンプを信じて中長期で値上がりを狙う投資とは相性が良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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