株ウォッチング

すべての株の情報を表示し管理人のアドバイスも一言


大幸薬品(4574)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

,

株価

大幸薬品とは

大幸薬品は、止瀉薬「正露丸」で広く知られる大衆薬中心の中堅製薬会社であり、医療用医薬品には参入せず、一般用医薬品と衛生関連製品に特化した事業展開を行っている。大阪府吹田市に登記上の本店と工場を置き、大阪市西区に本社事務所を構える企業で、オーナー経営色が比較的強い点も特徴とされる。JPX日経中小型株指数の構成銘柄の一つでもあり、長年にわたり国内OTC市場で一定の存在感を維持してきた。

同社の中核事業は、100年以上の歴史を持つ止瀉薬「正露丸」ブランドである。ラッパのマークで知られる正露丸は、木クレオソートを主成分とした独自性の高い処方と高い知名度を背景に、家庭の常備薬として定着しており、同社の収益基盤を長年支えてきた。派生製品として、においを抑えた「セイロガン糖衣A」、カプセルタイプの「正露丸クイックC」、ロペラミド塩酸塩を用いた「ピシャット下痢止めOD錠」などを展開し、止瀉薬分野でのラインアップ拡充を図っている。また、整腸薬や入浴剤などの医薬部外品も取り扱っており、日常生活に密着した製品群が中心である。

一方で、2000年代以降は二酸化塩素を用いた衛生・感染管理分野にも進出し、「クレベリン」ブランドを展開してきた。クレベリンは一時的に社会的注目を集め、事業拡大の原動力となったものの、販売不振や規制・評価を巡る問題もあり、近年は業績の重荷となった。このため同社はクレベリン事業の再構築を進めており、家庭内や身の回り用途に特化した「クレベ&アンド」など、より限定的で現実的な市場へのシフトを模索している。

沿革を見ると、1940年に柴田製薬所として創業し、1946年に大幸薬品株式会社を設立、正露丸の販売を本格化させた。長らく非上場であったが、2009年に東証二部へ上場、翌年には東証一部に指定替えされ、知名度と企業規模を拡大した。2016年にはアース製薬と資本業務提携を結び、衛生分野での協業体制を構築したが、その後はクレベリン事業の失速により業績が悪化し、2022年には希望退職を募るなど構造改革にも踏み込んでいる。

事業拠点としては、吹田市の大阪工場に加え、京都府精華町に研究開発センターを兼ねた京都工場、山形県小国町の小国工場、東京オフィスなどを有し、製造から開発、販売までを自社グループ内で完結できる体制を整えている。総じて大幸薬品は、正露丸という極めて強力な単一ブランドを核に安定収益を確保してきた一方で、感染管理事業の拡大と失速を経験した企業である。現在は、正露丸を中心とした大衆薬事業の安定性を軸にしつつ、クレベリン事業の再定義と事業構造の立て直しを進める転換期にある会社と位置づけられる。

大幸薬品 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(円) 一株当り配当(円)
連22.12 5,040 -3,079 -3,352 -4,895 -112.3 0
連23.12 6,120 -1,005 -1,248 -3,611 -76.3 0
連24.12 6,292 629 688 898 17.9 0
連25.12予 6,300 300 300 580 11.5 0
連26.12予 7,000 600 600 430 8.6 3〜5

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2022.12 -1,994 190 -997
2023.12 -307 1,166 1,539
2024.12 362 -5 -1,181

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

決算期 営業利益率 ROE ROA PER PBR
2023.12 -16.5% -53.6% -27.4%
2024.12 9.9% 11.2% 6.9% 1.78
2025.12予 4.7% 7.2% 4.4% 25.47

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の推移を億円ベースで整理すると、2023年は売上61億円に対して営業損失10億円、経常損失12億円、純損失36億円と大幅な赤字で、営業利益率は-16.5%、ROEは-53.6%、ROAは-27.4%と、事業収益力・資本効率ともに極めて悪い状態だった。ここは完全に業績悪化の底にあたる局面といえる。

2024年になると売上は62億円とほぼ横ばいだが、営業利益は6億円、経常利益は6.8億円、純利益は8.9億円まで回復し、明確な黒字転換を果たしている。営業利益率は9.9%まで改善し、ROEは11.2%、ROAは6.9%と、数値上は一気に正常水準へ戻った。この段階ではPERは算出不可だが、PBRは1.8倍程度と、赤字からの急回復を一定程度評価された水準と考えられる。

一方、2025年予想を見ると売上は63億円と伸びが乏しい中で、営業利益は3億円、経常利益も3億円、純利益は5.8億円と減益が見込まれている。営業利益率は4.7%まで低下し、ROEは7.2%、ROAは4.4%と、2024年の水準から明確に後退する。この利益水準に対して予想PERは25.5倍とされており、利益回復がまだ不安定な段階としてはかなり高い評価水準にある。

2026年予想では売上70億円、営業利益6億円、経常利益6億円、純利益4億円と、売上と営業利益は回復基調に戻るものの、純利益は2024年の水準を下回る。営業利益率は8.6%まで改善する見込みだが、利益規模自体は依然として小さく、安定成長企業と呼べる段階にはない。

以上を総合すると、大幸薬品は2024年に急回復を示したものの、その後の利益は横ばいから振れやすい構造にあり、収益力が完全に定着したとは判断しにくい。ROEやROAは黒字化により改善しているが、利益規模が小さいため変動が大きく、評価の土台としては弱い。一方で2025年予想PERは25倍超と高く、将来の安定成長をかなり先取りした評価になっている。

このため、現時点では割安株や安定収益株としての投資対象とは言い難く、配当も期待できないことからインカム目的にも不向きである。投資判断としては、業績回復が一過性に終わらず、利益水準が安定して積み上がることを確認するまで様子見が妥当で、積極的に評価できるのは明確な増益基調が定着してからになる、という結論になる。

配当目的とかどうなの?

大幸薬品について、配当目的という観点だけで判断すると、現時点では向いていないという結論になる。まず、2025年12月期の予想配当利回りは0.00%で、実質的に無配が続く前提になっている。2026年12月期についても予想配当利回りは1.02%とされているが、水準としてはかなり低く、インカム目的で評価できる水準ではない。仮に配当が実施されたとしても、業績の安定性や継続性を考えると、将来的に増配を期待できる段階とは言いにくい。

業績面を見ると、2024年に黒字転換したものの、2025年は減益予想で、利益水準もまだ小さい。2026年にかけて営業利益は回復する見通しではあるが、純利益は伸び悩んでおり、配当原資に十分な余裕がある状況とは言えない。会社としても、まずは事業再建と収益基盤の安定を優先する局面で、配当は二の次にならざるを得ないと考えられる。

このため、大幸薬品は高配当株や安定配当株として保有する銘柄ではなく、配当を主目的とした投資とは相性が悪い。投資リターンを期待するのであれば、配当ではなく、業績回復が定着した場合の株価水準の変化、つまりキャピタルゲイン狙いに限定される銘柄と位置づけるのが妥当である。配当重視の投資家にとっては、他に優先すべき選択肢が多い、という評価になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

大幸薬品について、現在株価293円前後を基準に見ると、安定配当を前面に押し出したインカム株というよりは、正露丸という強力な大衆薬ブランドを基盤にしつつ、業績回復の定着が問われている再建途上のヘルスケア関連企業と位置づけられる。止瀉薬「正露丸」は依然として高い知名度と一定の需要を持ち、売上の下支えとなっている一方で、感染管理事業「クレベリン」は再構築段階にあり、過去の拡大局面の反動から収益構造はまだ安定していない。

直近では赤字から黒字への転換を果たしたものの、営業利益率やROE、ROAは年による振れが大きく、稼ぐ力が完全に定着したとは言い切れない。配当は長らく無配が続き、予想利回りも低水準にとどまるため、投資リターンは配当よりも株価水準の変化に強く依存する構造になっている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、正露丸を中核とした大衆薬事業が安定的に利益を生み、クレベリン関連事業の整理とコスト削減が進むことで、収益構造が軽量化する展開を想定する。売上規模は大きく伸びなくても、営業利益率が8〜10%前後で安定し、ROEやROAも中期的に改善基調を維持できれば、市場からは再建完了企業としての評価が進みやすくなる。この場合、PERは15倍前後、PBRも1.2〜1.5倍程度が許容され、株価は段階的に見直される。業績の安定と評価改善が同時に進めば、5年後には500円から650円程度を目指す展開が考えられる。これは事業再建が順調に定着した場合の強気寄りシナリオになる。

中間のシナリオでは、正露丸事業は底堅く推移するものの、新規事業の収益貢献は限定的で、利益水準は出たり減ったりを繰り返すケースを想定する。営業利益率は5%前後にとどまり、ROEやROAも中低水準で安定するが、大きな成長ストーリーは描きにくい。この場合、市場評価は慎重なままで、PERは20倍前後、PBRは1倍前後で推移しやすい。株価は材料次第で上下しつつも明確な上昇トレンドは出にくく、5年後の水準は300円から400円程度と、現在値から小幅な上昇か横ばいに近い中立的なシナリオとなる。

悪い場合のシナリオでは、大衆薬事業が横ばいにとどまる一方で、コスト削減や事業再構築が十分に進まず、利益が再び不安定化するケースを想定する。営業利益率は5%を下回り、ROE・ROAも低迷したままとなり、再建途上企業としての評価が剥落する。この場合、PERは算定困難または10倍前後まで切り下げられ、PBRも0.7〜0.8倍程度まで低下する可能性がある。株価は評価調整を受け、5年後には150円から220円程度にとどまる弱気シナリオとなる。

総合すると、現在株価293円を起点とした大幸薬品の5年間の値動きは、良い場合で500円から650円前後、中間で300円から400円、悪い場合で150円から220円といったレンジが想定される。配当利回りは低水準で安定配当株とは言えず、投資妙味はインカムではなく、業績回復がどこまで定着し、市場評価がどの水準に落ち着くかによる株価の変化に依存する。高配当や安定成長を求める投資よりも、再建の進捗を見極めながら中長期で値上がり余地を狙う投資と相性の良い銘柄、という評価になる。

この記事の最終更新日:2025年12月25日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP