株価
大日本塗料とは

大日本塗料は、関西ペイント、日本ペイントに次ぐ国内有力塗料メーカーの一角を占める総合塗料会社で、特に重防食分野と住宅・建材向け塗料に強い競争力を持つ企業である。業界内では「DNT」の略称で広く知られており、三菱グループに属する企業として三菱広報委員会にも参加しているなど、資本・企業文化の面で三菱色が比較的濃い点が特徴となっている。
同社の最大の強みは、橋梁、港湾設備、鉄塔、プラント、鉄道関連設備などに使用される重防食塗料で、国内トップクラスのシェアを持つ。この分野は新設需要よりも維持補修・更新需要が中心であり、インフラ老朽化対策という長期的テーマに支えられているため、景気変動の影響を比較的受けにくい。結果として、大日本塗料は塗料メーカーの中でも公共投資や社会インフラと結びついた、安定性の高い収益構造を持つ企業といえる。
住宅・建材用塗料も同社の重要な事業領域であり、住宅外装、内装、建築資材向けなど幅広い製品群を展開している。新築住宅市場の伸びは限定的である一方、リフォームや修繕需要は底堅く、公共施設や商業施設向けの建材用塗料も含め、安定的な需要を確保している。建築分野では環境対応や耐久性、施工性といった付加価値が重視される傾向が強く、同社はこうしたニーズに対応した製品開発を進めてきた。
2001年には田辺化学工業との合併を行い、自動車用やプラスチック用など工業用塗料分野の強化を図った。現在では、重防食、建築用、工業用といった複数の塗料分野をバランスよく持つ事業構成となっており、特定分野への依存度が過度に高くならない体制を築いている。塗料の製造・販売に加えて、塗装機器や塗装設備の販売、さらには塗装工事の請負まで手掛けており、製品とサービスを組み合わせた事業展開が可能な点も特徴である。
グループ全体で見ると、塗料専業にとどまらない多角的な事業構成を持っている。神東塗料やサンデーペイントといった塗料関連会社を傘下に抱えるほか、DNライティングを通じた照明機器事業、蛍光色材や機能性材料を扱う関連会社なども展開している。これにより、建築・インフラ分野との親和性が高い周辺事業を取り込み、グループとしての事業基盤を補強している。
生産拠点は国内に小牧工場や那須工場を持ち、安定した供給体制を構築している。海外展開については、中国や東南アジア諸国、メキシコなどに進出しており、グローバル大手塗料メーカーと比べれば規模は限定的だが、日系企業の海外拠点向け需要や現地インフラ向けを中心に着実な事業展開を行っている。無理な海外拡張を避け、収益性とリスク管理を重視する姿勢がうかがえる。
全体として、大日本塗料は急成長や派手な拡大を狙うタイプの企業ではなく、社会インフラや建築分野を下支えする実務型の塗料メーカーという性格が強い。重防食分野での高い技術力と、三菱グループの一員としての安定した立ち位置を背景に、堅実な事業運営を続けてきた企業であり、成長性よりも安定性や持続性を重視する企業像として位置づけられる。
大日本塗料 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 62,475 | 2,828 | 3,268 | 1,968 | 69.6 | 25 |
| 連22.3 | 66,948 | 3,183 | 3,465 | 2,031 | 71.7 | 25 |
| 連23.3 | 72,849 | 3,946 | 4,316 | 3,458 | 121.8 | 25 |
| 連24.3 | 71,940 | 4,901 | 5,336 | 4,600 | 161.7 | 35 |
| 連25.3 | 72,511 | 4,716 | 5,199 | 9,437 | 331.4 | 49 |
| 連26.3予 | 92,000 | 4,100 | 4,300 | 2,900 | 101.6 | 58 |
| 連27.3予 | 94,000 | 4,800 | 5,100 | 3,300 | 115.6 | 59 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 1,282 | -1,449 | -473 |
| 2024.3 | 3,463 | -772 | -1,657 |
| 2025.3 | 3,570 | -364 | -75 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 5.4 | 6.6 | 3.7 | – | – |
| 2024.3 | 6.8 | 7.7 | 4.5 | – | – |
| 2025.3 | 6.5 | 14.5 | 7.0 | 高値平均 7.4 安値平均 5.4 |
0.59 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模を見ると、売上高は2024年3月期が約719億円、2025年3月期が約725億円、2026年3月期予想が約920億円と、26年は一段と増収計画になっている。一方、営業利益は24年が約49億円、25年が約47億円、26年予想が約41億円と、売上拡大に対して利益はやや伸び悩み、26年は減益見通しとなっている。経常利益も同様に、24年約53億円、25年約51億円、26年予想約43億円と緩やかな低下を想定している。
純利益は24年約46億円から25年約94億円へ急増しているが、これは一時的な要因が強く、26年予想では約29億円まで減少する見通しで、利益水準の持続性には注意が必要となる。これを反映して、収益力を示す指標を見ると、営業利益率は23年5.4%、24年6.8%、25年6.5%と6%台前半で安定しており、塗料メーカーとしては堅実だが、高収益企業とまでは言えない水準にとどまっている。
ROEは23年6.6%、24年7.7%、25年14.5%と25年に大きく上昇しているが、これは純利益の一時的な増加の影響が大きく、恒常的に14%台を維持できるかは不透明である。ROAも23年3.7%、24年4.5%、25年7.0%と改善しているものの、こちらも同様にピークアウトの可能性を織り込む必要がある。
バリュエーション面では、25年実績PERは高値平均7.4倍、安値平均5.4倍とかなり低水準で、PBRも0.59倍と明確な割安圏にある。市場は収益の持続性や成長性に慎重な見方をしている一方で、資産価値や安定事業を考慮すると下値余地は限定的と評価されている状況と言える。
総合すると、大日本塗料は営業利益率6%前後の安定した事業基盤を持ち、財務効率も改善傾向にある一方、利益成長力は限定的で、25年の高収益は一時要因の色が濃い。PER・PBRは明確に割安であり、成長株というよりは、業績の安定性と低バリュエーションを評価するバリュー・安定型の投資対象という位置づけになる。大きな成長や株価の急騰を狙う投資には向きにくいが、業績悪化リスクが限定的で、評価修正による緩やかな上昇を期待する投資とは相性が良い、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的で見ると、大日本塗料はかなり分かりやすく「配当向き寄り」の銘柄と言える。まず数字面だけを見ると、26年3月期・27年3月期ともに予想配当利回りは4.3%台と、東証プライム全体で見ても高水準に入る。しかもこれは一時的な特別配当ではなく、直近の流れを見る限り、配当水準を引き上げたうえで維持しようとしている姿勢が読み取れる点は評価できる。
事業の性格も配当投資と相性が良い。重防食塗料や建材向け塗料はインフラ更新や補修需要に支えられ、景気の波は受けるものの、需要がゼロになることは考えにくい。営業利益率は6%前後と高くはないが安定しており、キャッシュフローも営業CFがプラスで推移しているため、配当原資の裏付けは比較的しっかりしている。
一方で注意点もある。25年の純利益は一時要因で大きく膨らんでおり、26年以降は利益水準が落ち着く見通しになっている。そのため、今後さらに大きく配当を増やしていくというよりは、「今の水準を維持する」ことが主眼になる可能性が高い。成長による増配を強く期待するタイプの配当株ではない。
総合すると、大日本塗料は「高成長+連続増配」を狙う銘柄ではなく、利回り4%台を安定して受け取りながら、中長期で保有するインカム目的の銘柄としては十分に魅力がある。株価の大幅な上昇よりも、配当を受け取りつつ評価修正があればラッキー、というスタンスでの保有と相性が良い。配当目的という観点では、無理なくポートフォリオに組み込みやすい銘柄、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
大日本塗料について、現在株価1,329円前後を基準に見ると、安定配当を前面に押し出した高配当株という側面を持ちながらも、成長性という点では成熟段階にあるインフラ・建材関連の内需型企業と位置づけられる。重防食塗料や住宅・建材用塗料を主力とし、橋梁やプラント、建築物の維持更新需要に支えられた安定した事業基盤を持つ一方、売上成長率は緩やかで、業績は景気や公共投資動向の影響を受けやすい構造にある。
直近では営業利益率は6%前後で安定しており、ROEやROAも改善傾向にあるが、突出した高収益企業という水準には至っておらず、稼ぐ力は堅実だが地味という評価になりやすい。配当は増配基調で、利回りは4%台と市場でも比較的高く、投資リターンは値上がり益よりも配当収入の比重が大きい銘柄といえる。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、国内インフラの老朽化対策や防災関連投資が継続し、重防食塗料の需要が安定的に拡大する展開を想定する。原材料価格の落ち着きやコスト管理の進展により営業利益率が6%台後半から7%前後まで改善し、ROEやROAも着実に上向く。この場合、低評価にとどまっていた株価指標が見直され、PERは7倍前後から10倍程度、PBRも0.8倍前後まで評価修正が進む可能性がある。高い配当利回りを維持しながら評価改善が進めば、株価は段階的に切り上がり、5年後には2,000円から2,400円程度を目指す展開が考えられる。これは内需安定と株主還元評価の高まりが同時に進んだ場合の強気寄りのシナリオである。
中間のシナリオでは、インフラ・建材向け需要は底堅く推移するものの、大きな成長ドライバーには欠け、利益率も現状水準で安定するケースを想定する。営業利益率は6%前後、ROE・ROAも緩やかな改善にとどまり、市場評価は現状と大きく変わらない。この場合、PERは5〜7倍、PBRは0.6〜0.7倍程度で推移しやすく、配当利回りの高さが株価の下支えとなる。株価は1,300円前後を中心に上下を繰り返しながらも大きなトレンドは出にくく、5年後の水準は1,400円から1,700円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、公共投資や建設需要の減速、原材料コストの再上昇などが重なり、売上は維持できても利益率が圧迫される展開を想定する。営業利益率は5%を下回り、ROE・ROAも低下し、企業の収益性に対する市場評価は一段と厳しくなる。この場合、PERは5倍以下、PBRも0.5倍前後まで切り下げられる可能性があり、配当利回りは高く見えても株価下落が先行する展開となりやすい。株価は評価調整を受け、5年後には900円から1,100円程度にとどまる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,329円を起点とした大日本塗料の5年間の値動きは、良い場合で2,000円から2,400円前後、中間で1,400円から1,700円、悪い場合で900円から1,100円といったレンジが想定される。配当利回りは高水準で安定しており、投資妙味はインカム収入を重視する投資にある。一方で、株価の大幅な成長は評価改善や利益率の底上げが前提となるため、高成長株というよりは、高配当を享受しながら緩やかな評価変化を待つ中長期向けの銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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