株価
日本ペイントホールディングスとは

日本ペイントホールディングスは、自動車用、汎用、工業用など幅広い分野を手掛ける総合塗料メーカーで、世界では第4位クラスの規模を持つグローバル企業である。本社は大阪府大阪市北区および東京都港区港南(品川駅前)に置き、持株会社として国内外の塗料・コーティング関連事業を統括している。
1881年に前身となる光明社として創業し、日本における塗料産業の草分け的存在として発展してきた。1962年にはシンガポールの塗料大手WUTHELAM(ウットラム)と提携し、早くから海外展開の基盤を築いた。2014年の組織再編により現在の日本ペイントホールディングス体制へ移行し、グローバル経営を本格化させている。現在はWUTHELAM傘下のNipsea International Limitedが約55%を保有する体制となっており、経営の中核には海外資本とグローバル視点が強く反映されている。
事業の中心は塗料・コーティング事業で、住宅やビル向けの汎用塗料、自動車メーカー向けの自動車用塗料、家電・IT機器・金属製品向けの工業用塗料などを幅広く展開している。特に自動車用塗料と建築・汎用塗料は世界的にも高い競争力を持ち、国内のみならず海外売上比率が高い点が特徴である。海外では中国を最大市場として、アジア全域に加え、欧州、北米、オーストラリアにも事業を展開しており、グローバルで分散した収益基盤を構築している。
国内では、日本ペイント、日本ペイント・オートモーティブコーティングス、日本ペイント・インダストリアルコーティングス、日本ペイント・サーフケミカルズなどの主要事業会社を傘下に持ち、それぞれが専門分野に特化した形で事業を展開している。自動車用塗料については栃木、埼玉、愛知などに工場を持ち、自動車メーカーの生産拠点と密接に連携した供給体制を構築している。
経営面では「株主価値最大化(MSV)」を唯一のミッションとして掲げている点が大きな特徴である。ステークホルダーへの責務を果たしたうえで、残存する株主価値を最大化することを明確に経営の中心に据えており、その実現手段として「アセット・アセンブラー」と呼ばれる経営モデルを採用している。これは、既存事業の成長(オーガニック成長)とM&Aによる事業拡張(インオーガニック成長)の両輪でEPSを積み上げていく考え方であり、自律・分散型経営と小さな本社機能を組み合わせることで、スピード感のある意思決定と高い資本効率を実現している。
また、塗料にとどまらず、接着剤や断熱材などの周辺分野にも事業領域を広げており、中長期的にはコーティング技術を核とした事業ポートフォリオの拡張を進めている。成熟産業である塗料業界に属しながらも、海外成長市場への依存度の高さと積極的なM&A戦略により、世界市場での存在感を維持・拡大している点が、日本ペイントホールディングスの大きな特徴と言える。
日本ペイントホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 税前利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ◇22.12 | 1,309,021 | 111,882 | 104,495 | 79,418 | 33.8 | 11 |
| ◇23.12 | 1,442,574 | 168,745 | 161,500 | 118,476 | 50.5 | 14 |
| ◇24.12 | 1,638,720 | 187,647 | 181,522 | 127,337 | 54.2 | 15 |
| ◇25.12予 | 1,780,000 | 244,000 | 226,000 | 162,000 | 69.2 | 16 |
| ◇26.12予 | 1,810,000 | 260,000 | 240,000 | 175,000 | 74.7 | 17〜18 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 112,351 | -165,107 | 145,767 |
| 2023.12 | 189,755 | -115,975 | -38,664 |
| 2024.12 | 167,401 | -148,106 | -37,377 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 11.6 | 8.7 | 4.3 | – | – |
| 2024.12 | 11.4 | 8.0 | 4.1 | 19.6~29.4 | 1.51 |
| 2025.12 | 13.7 | 10.1 | 5.2 | 15.2 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず規模感を見ると、売上高は2023年に約1兆4,425億円、2024年に約1兆6,387億円、2025年予想で約1兆7,800億円と、世界有数の総合塗料メーカーらしい巨大な事業規模を持つ。営業利益は2023年が約1,687億円、2024年が約1,876億円、2025年予想で約2,440億円と拡大基調にあり、税前利益および純利益も同様に増加している。純利益は2023年で約1,184億円、2024年で約1,273億円、2025年予想では約1,620億円と、利益の絶対額は非常に大きい。
収益性を見ると、営業利益率は2023年11.6%、2024年11.4%、2025年予想で13.7%と、世界展開する素材・化学系企業としては高水準であり、かつ改善傾向にある点は強みである。ROEは2023年8.7%、2024年8.0%、2025年予想10.1%と、まだ突出した水準ではないが、二桁回復が見込まれている。ROAも4.3%から5.2%へと改善しており、総資産規模の大きさを考慮すれば堅実な水準といえる。
一方、バリュエーション面では、2024年実績PERは安値平均で19.6倍、高値平均で29.4倍と、成熟産業に属する塗料メーカーとしてはかなり高い評価が付いていた。2025年予想PERは15.1倍程度まで低下する見込みで、利益成長により割高感は徐々に解消されつつあるが、依然として成長期待を織り込んだ水準である。PBRは2024年実績で1.51倍と、資産価値に対しても明確なプレミアムが付いており、典型的な割安株とは言えない。
以上を踏まえると、日本ペイントホールディングスは、兆円規模の売上と高い営業利益率を安定的に維持し、税前利益・純利益ともに拡大が続くグローバル優良企業と位置づけられる。一方で、ROEは改善途上であり、PBR1.5倍前後、PER15倍超という評価水準から見て、株価はすでに一定の成長を織り込んだ段階にある。総合的には、世界展開による安定成長と収益力を重視する中長期投資には適した銘柄だが、明確な割安局面というよりは、今後も利益成長を継続できるかを見極めながら投資するタイプの銘柄、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
日本ペイントホールディングスについて、配当目的という観点で見ると、結論としては配当重視のインカム投資にはあまり向かない銘柄といえる。予想配当利回りは2025年12月期で1.54%、2026年12月期でも1.64%と、株式市場全体で見ても低い水準にとどまっている。事業規模は売上1兆円超、利益も安定して拡大しているものの、配当水準自体は控えめで、利回りの高さを狙う投資スタイルとは相性が良くない。
これは同社の経営スタンスが、配当利回りの最大化よりも、成長投資とEPS拡大を重視していることに起因していると考えられる。営業利益率は11%台から13%台へ改善し、税前利益や純利益も増加しているが、得られたキャッシュは高配当に振り向けるというより、M&Aや事業拡張、グローバル展開の強化に優先的に使われている。その結果、配当は緩やかに増えてはいるものの、株価水準に対しては低利回りにとどまっている。
また、ROEも8〜10%台と改善傾向ではあるものの、配当で株主に還元するというより、企業価値そのものを拡大して株価上昇で報いる色合いが強い。したがって、配当を安定収入として受け取りたい投資家にとっては、利回り面での魅力は乏しい。
総合すると、日本ペイントホールディングスは配当目的のインカム株というより、世界展開による利益成長とEPS拡大を通じた中長期の株価成長を狙う成長・クオリティ株に近い位置づけになる。配当はあくまで補助的な要素であり、配当利回りを重視する投資で選ぶ銘柄ではない、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本ペイントホールディングスについて、現在株価1,035円前後を基準に見ると、安定配当を前面に押し出した高配当株というよりは、世界有数の総合塗料メーカーとしての規模と収益基盤を背景に、海外成長と資本効率の積み上げによる中長期的な企業価値向上を狙うグローバル企業と位置づけられる。自動車用、建築用、工業用と幅広い塗料分野を展開し、とくに中国を中心としたアジア市場での存在感が大きい一方、M&Aを通じた事業拡大と「株主価値最大化(MSV)」を軸とした経営方針が特徴となっている。
営業利益率は10%台前半と国内製造業としては比較的高水準を維持し、ROEやROAも緩やかな改善基調にあるが、配当利回りは1%台半ばにとどまり、投資リターンは配当よりも業績成長と評価倍率の変化に左右されやすい構造になっている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、アジアを中心とした建築・インフラ需要や自動車生産の回復が追い風となり、売上成長が持続する展開を想定する。原材料価格の安定や価格転嫁が進むことで営業利益率は13%台から15%前後まで改善し、ROEやROAも一段と上向く。MSVを軸とした経営とM&AによるEPS成長が市場に評価され、PERは現状の15倍前後から20倍近くまで切り上がり、PBRも1.5倍台から2倍前後が許容されやすくなる。この場合、グローバル安定成長株としての評価が高まり、株価は段階的に上昇し、5年後には2,000円から2,400円程度を目指す展開が考えられる。これは事業拡大と資本効率改善が順調に進んだ場合の強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、海外需要は底堅いものの、景気循環や競争激化の影響で成長は緩やかにとどまるケースを想定する。営業利益率は12〜13%前後、ROEやROAも現状水準を維持し、大きな改善も悪化もない状態が続く。この場合、市場評価は大きく変わらず、PERは15倍前後、PBRは1.4〜1.6倍程度で推移しやすい。株価はEPS成長に沿って緩やかに推移し、5年後の水準は1,300円から1,700円程度と、現在値からの上昇は限定的な中立シナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、中国市場の減速長期化や原材料価格の上昇、競争激化による利益率低下が重なり、売上は伸びても収益性が低下する展開を想定する。営業利益率は10%前後まで低下し、ROEやROAも伸び悩むことで、企業の稼ぐ力に対する市場評価が慎重になる。この場合、PERは10〜12倍程度まで切り下げられ、PBRも1倍前後に低下する可能性がある。株価は評価調整を受け、5年後には700円から900円程度にとどまる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,035円前後を起点とした日本ペイントホールディングスの5年間の値動きは、良い場合で2,000円から2,400円前後、中間で1,300円から1,700円、悪い場合で700円から900円といったレンジが想定される。配当利回りは安定しているものの高水準とは言えず、投資妙味はインカムよりも、海外成長と資本効率改善による中長期的な企業価値の積み上げに依存する。高配当株というより、グローバル展開とM&Aを背景にした安定成長株として、中長期での値上がりを狙う投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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