株価
栄研化学とは

栄研化学株式会社は、臨床検査薬を主力とする国内有数の検査薬メーカーであり、便潜血検査、尿検査、免疫・微生物検査、遺伝子検査まで幅広い分野をカバーする臨床検査薬の総合メーカーである。本社は東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地に所在し、医療機関や検査センター向けに臨床検査薬の製造・販売を行うとともに、検査装置や関連機器の開発・販売も手掛けている。
同社の事業の中核は、大腸がんスクリーニングに用いられる便潜血検査試薬である。主力のOCシリーズは免疫学的便潜血検査(FIT)分野において国内シェア約6〜7割を占める圧倒的な存在であり、栄研化学の安定収益の基盤となっている。便潜血検査は自治体健診や企業健診でも広く採用されており、景気変動の影響を受けにくい検査分野であることから、同社の事業はディフェンシブ性が高いという特徴を持つ。また、この検査試薬は日本国内にとどまらず、欧米やアジアを中心とした海外市場にも展開されており、グローバルでも評価の高い製品群となっている。
便潜血検査に加え、尿検査分野も同社の重要な事業領域である。尿定性検査用試薬のウロペーパーをはじめ、尿検査装置などを展開しており、健診施設や診療所で幅広く使用されている。尿検査は健診や初期診療で欠かせない検査であるため、便潜血検査と同様に安定した需要が見込める分野である。
免疫血清検査および微生物検査の分野では、各種免疫測定用試薬や微生物培地、迅速診断関連製品を展開している。病院検査室や外注検査センター向けに幅広いラインアップを揃えており、感染症診断や日常検査を支える基礎的な製品群として位置付けられている。これらの分野は大きな成長は見込みにくいものの、医療現場に不可欠な検査であることから、安定収益を生み出す事業となっている。
同社の成長分野として位置付けられているのが遺伝子検査事業である。栄研化学は独自の遺伝子増幅技術であるLAMP法を開発した企業として知られている。LAMP法はDNAやRNAを短時間かつ簡便に増幅できる技術であり、PCR法と比べて装置や操作が簡素である点が特徴である。この技術を活用したLoopampシリーズは感染症検査を中心に展開されており、新興国を含む海外市場でも需要の拡大が期待されている。遺伝子検査分野は競争が激しい一方で成長余地が大きく、同社としては便潜血検査に次ぐ新たな柱として育成を進めている。
生産体制としては、栃木県の野木事業所および那須事業所を主な生産拠点とし、検査薬の安定供給体制を構築している。臨床検査薬は品質管理が極めて重要であるため、長年にわたり培ってきた製造ノウハウと品質管理体制は同社の大きな強みである。検査薬だけでなく、検査装置や関連機器、食品・環境微生物検査用試薬、検査用器具・機材なども手掛けており、検査分野全体を支える総合力を持っている点も特徴である。
総合すると、栄研化学は便潜血検査という国内トップクラスの強固な収益基盤を持つ一方で、尿検査や免疫・微生物検査といった安定分野で事業の下支えを行い、遺伝子検査分野を将来成長のドライバーとして育成している企業である。高成長企業ではないものの、医療インフラを支える検査薬メーカーとしての安定性と、独自技術を活かした中長期的な成長余地を併せ持つ臨床検査薬大手と位置付けられる。
栄研化学 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
EPS (円) |
DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 38,667 | 6,612 | 6,808 | 5,044 | 136.7 | 41 |
| 連22.3 | 42,996 | 8,387 | 8,508 | 6,218 | 168.3 | 51 |
| 連23.3 | 43,271 | 7,457 | 7,568 | 5,736 | 155.2 | 51 |
| 連24.3 | 40,052 | 3,377 | 3,568 | 2,634 | 71.7 | 51 |
| 連25.3 | 40,539 | 2,999 | 3,198 | 2,228 | 64.8 | 53 |
| 連26.3予 | 42,200 | 3,300 | 3,100 | 3,800 | 115.3 | 58 |
| 連27.3予 | 44,000 | 3,500 | 3,500 | 2,600 | 78.9 | 58 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 (百万円) |
営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 7,575 | -316 | -2,095 |
| 2024 | 3,806 | -2,216 | -6,694 |
| 2025 | 6,033 | -4,499 | -4,857 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 17.2 | 8.6 | 11.6 | – | – |
| 2024 | 8.4 | 4.2 | 5.7 | – | – |
| 2025 | 7.3 | 3.5 | 5.1 |
高値平均 27.2 安値平均 19.0 |
1.82 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると、連24.3では営業利益33億、経常利益35億、純利益26億。連25.3では営業利益29億、経常利益31億、純利益22億と、すべての利益段階で減益になっている。連26.3予では営業利益33億まで戻す予想だが、経常利益は31億と横ばいで、純利益だけが38億と大きく増える見込みになっている。この純利益の急回復は本業の改善というより、税金や一時的な要因の影響が強いと考えるのが自然で、利益構造そのものが強くなったとは言い切れない。
次に収益性を見ると、営業利益率は2023年17.2%から2024年8.4%、2025年7.3%へと急低下している。2年でほぼ半分以下になっており、本業の稼ぐ力が大きく落ちていることがはっきり分かる。ROEも11.6%から5.7%、5.1%へ、ROAも8.6%から4.2%、3.5%へと同じように悪化しており、株主資本や総資産を使って利益を生み出す効率が大きく低下している。
こうした収益性と効率性の水準を前提にすると、2025年時点のバリュエーションは厳しく見える。ROEが5%台、営業利益率が7%台の企業に対して、PERは高値平均27.2倍、安値平均でも19.0倍、PBRは1.8倍となっている。これは現在の稼ぐ力に比べて株価がかなり高い水準にあることを示している。少なくとも今の利益率とROE水準では、PERは10倍台前半、PBRは1倍前後が妥当と考えるのが自然で、現状の評価は過去の高収益期のイメージを織り込んだままになっている印象が強い。
総合すると、利益は減少傾向、収益性と資本効率は明確な悪化トレンド、そして株価評価はその実力以上に高い。営業利益率が再び10%台に戻る、もしくはROEが8~10%程度まで回復するなど、数字で確認できる改善が出てこない限り、積極的に投資する局面ではない。現時点では見送り、もしくはやや弱気と判断するのが、この数値だけから導ける結論になる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは連26.3、連27.3ともに2.39%。水準としては低くはないが、いわゆる高配当と呼べるほどでもなく、インカム狙いの投資家を強く引きつける数字ではない。これを利益水準と効率性と合わせて考えると、やや気になる点が出てくる。営業利益率は2023年17.2%から2025年7.3%まで低下し、ROEも5%台まで落ちている。つまり、企業の稼ぐ力や資本効率は弱くなっている局面にある。その一方で配当は維持・微増の流れにあり、結果として配当利回りが2.39%で安定して見えている。
この状態は、利益成長によって配当余力が広がっているというより、配当性向を高めて下支えしている可能性を示唆する。もし収益性の低下がこのまま続けば、将来的に増配余地は小さく、業績次第では配当維持が重荷になるリスクもある。
また、PERは19~27倍、PBRは1.8倍と、株価は割高気味だ。その結果、株価が高いままなので配当利回りは2%台にとどまっているとも言える。仮に株価調整が入れば利回りは上がるが、その場合は含み損リスクと表裏一体になる。
結論として、栄研化学は配当目的で積極的に買う銘柄ではない。利回りは平凡、業績は減益基調、収益性とROEも低下中で、増配期待も大きくない。配当を主目的にするなら、より高い利回りと安定した収益性を持つ銘柄を選ぶ方が合理的で、この銘柄は業績回復が数字で確認できてから再検討する位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
栄研化学について、現在株価2,421円前後を基準に見ると、安定配当を前面に押し出した高配当株というよりは、便潜血検査薬を中心とする検査薬の高い国内シェアを基盤にしつつも、直近では収益性が調整局面に入っている成熟寄りの医療関連企業と位置づけられる。便潜血検査薬では国内で非常に強い地位を持ち、海外展開や遺伝子検査関連の育成も進めている一方、営業利益率やROE、ROAはここ数年で大きく低下しており、稼ぐ力という点ではピークアウト感が否めない。配当は一定水準を維持しているものの、利回りは2%台にとどまり、投資リターンは配当よりも株価水準の変化に左右されやすい構造になっている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、便潜血検査薬の安定需要に加え、海外市場や遺伝子検査分野が徐々に収益貢献を高め、売上成長が持続する展開を想定する。コスト構造の見直しが進み、営業利益率が7%台から再び10%前後まで回復し、ROEやROAも改善基調に転じる。この場合、成熟企業としては一定の成長性が再評価され、PERは15倍前後、PBRも1.5倍程度が許容されやすくなる。業績の底打ちと評価の見直しが同時に進めば、株価は段階的に切り上がり、5年後には3,500円から4,000円程度を目指す展開が考えられる。これは事業の立て直しが順調に進んだ場合の強気寄りのシナリオになる。
中間のシナリオでは、便潜血検査薬の需要は底堅いものの、新規分野の成長は限定的で、利益率の改善も緩やかにとどまるケースを想定する。営業利益率は7〜8%前後、ROEやROAも5%前後で安定し、大きな悪化は避けられるが、かつての高収益水準には戻らない。この場合、市場評価は現状水準を大きく変えず、PERは18〜20倍、PBRは1.5〜1.8倍程度で推移しやすい。株価は上下を繰り返しながらも大きなトレンドは出にくく、5年後の水準は2,500円から3,000円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、国内検査薬市場の伸び悩みや海外展開の停滞、コスト増などが重なり、売上は維持できても利益が伴わない状況が続くケースを想定する。営業利益率は7%を下回り、ROE・ROAも低迷したままとなり、企業の稼ぐ力に対する市場の評価はさらに厳しくなる。この場合、PERは10〜12倍程度まで切り下げられ、PBRも1倍前後まで低下する可能性がある。株価は評価調整を受け、5年後には1,800円から2,200円程度にとどまる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価2,421円を起点とした栄研化学の5年間の値動きは、良い場合で3,500円から4,000円前後、中間で2,500円から3,000円、悪い場合で1,800円から2,200円といったレンジが想定される。配当利回りは安定しているものの高水準とは言えず、投資妙味はインカムよりも業績と収益性の回復による評価変化に依存する。安定志向の配当株というより、収益性の底打ちと再成長を信じて中長期で値上がりを狙う投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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