株価
関西ペイントとは

関西ペイント株式会社は、日本ペイントと並ぶ国内総合塗料メーカーの双璧の一角を占める企業であり、とりわけ自動車用塗料分野では国内トップクラス、アジア全体でも首位級のポジションを築いている。1917年に玉水弘が尼崎で創業し、1918年に関西ペイントとして法人化された。創業者は東京帝国大学応用化学科出身の技術者で、日本ペイントなどでの経験を経て独立しており、創業当初から技術力を核にした事業展開が同社の基盤となっている。
設立初期は資本力に乏しく、岩井商店(現在の双日)の支援を受ける形で経営体制を整えたが、その後は独自技術による差別化で成長を遂げた。1920年代には業界に先駆けてラッカーの国産化に成功し、「他社にないものをつくる」という姿勢が現在まで受け継がれている。戦前は岩井系企業としての色合いが強かったが、戦後は三和グループとも関係を持ち、現在では特定の財閥色に強く依存しない独立性の高い経営体制をとっている。
事業内容は総合塗料メーカーらしく幅広く、自動車用塗料、建築用塗料、工業用塗料、防食・重防食塗料、さらには電子材料やバイオ関連製品まで展開している。この中でも最大の柱は自動車用塗料であり、完成車メーカー向けの新車用塗料で高いシェアを持つ。日本国内のみならず、中国、インド、東南アジアを含むアジア地域での存在感が非常に大きく、グローバルOEMとの長年の取引実績が競争優位性となっている。米国PPGインダストリーズとの提携関係もあり、技術面・顧客対応力の両面で国際競争力を高めている。
海外展開ではインドが特に重要な市場として位置づけられている。インドでは自動車需要に加え、住宅建設やインフラ投資の拡大を背景に建築用塗料の需要が急成長しており、関西ペイントは現地で高いブランド力と販売網を構築している。このインド事業が、国内市場の成熟を補う形で、同社全体の成長ドライバーとなっている点が大きな特徴である。アジア以外でも、中東、アフリカ、欧州などに事業基盤を持ち、地域分散型のグローバル経営を進めている。
組織面では近年、グローバル経営を意識した体制整備が進められている。大阪梅田にグローバル本社を置き、経営・戦略機能を集約する一方、新大阪には営業・フロント機能を担う拠点を設置し、意思決定と現場対応のスピード向上を図っている。研究開発拠点やIT関連部門も国内各地に配置され、環境対応型塗料や高機能塗料の開発にも注力している。環境規制の強化を背景に、水性塗料や低VOC製品の比重を高めている点も中長期的な競争力につながっている。
総合すると、関西ペイントは国内では自動車用塗料を中心に安定した事業基盤を持ちつつ、海外ではインドを軸に高成長市場を取り込むことで成長を続ける企業である。技術志向の企業文化、グローバルOEMとの強固な関係、成長市場への積極展開という三点が同社の本質であり、成熟産業に属しながらも中長期での成長余地を残した総合塗料メーカーと位置づけられる。
関西ペイント 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 364,620 | 31,228 | 35,880 | 20,027 | 77.9 | 30 |
| 連22.3 | 419,190 | 30,096 | 37,611 | 26,525 | 103.2 | 30 |
| 連23.3 | 509,070 | 32,077 | 40,216 | 25,195 | 104.6 | 30 |
| 連24.3 | 562,277 | 51,595 | 57,685 | 67,109 | 299.2 | 40 |
| 連25.3 | 588,825 | 52,050 | 49,103 | 38,306 | 202.0 | 50 |
| 連26.3予 | 585,000 | 50,000 | 54,500 | 33,800 | 192.0 | 110 |
| 連27.3予 | 600,000 | 55,000 | 59,000 | 36,500 | 207.3 | 110 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 50,231 | -10,643 | -18,296 |
| 2024 | 67,084 | -9,043 | -72,856 |
| 2025 | 34,966 | -39,200 | -8,006 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.3 | 8.6 | 3.7 | ― | ― |
| 2024 | 9.1 | 21.6 | 9.7 | ― | ― |
| 2025 | 8.8 | 14.2 | 5.1 | 12.1〜17.8 | 1.61 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず規模感として、売上高は2024年3月期で約5,622億円、2025年3月期で約5,888億円、2026年3月期予想でも約5,850億円と、高水準で安定している。一方、営業利益は2024年が約515億円、2025年が約520億円と高い水準を維持しているが、2026年予想では約500億円とやや減少が見込まれている。営業利益率は2023年6.3%から2024年9.1%へ大きく改善し、2025年も8.8%と高水準を維持しており、塗料メーカーとしては収益性はかなり良好な部類に入る。
利益の質を見ると、純利益は2024年に約671億円と突出して高く、ROEも21.6%と非常に高水準だった。ただし2025年は純利益が約383億円に減少し、ROEも14.2%まで低下している。2024年は一過性要因の影響が大きかったと考えられ、2025年以降はROE14%前後が実力値に近い水準と見た方が無難である。ROAも2024年の9.7%から2025年は5.1%へ低下しており、資産効率はピークアウト後の調整局面に入っている印象がある。
バリュエーション面では、2025年実績PERは安値平均12.1倍、高値平均17.8倍とレンジが広いが、成熟したグローバル製造業としては概ね妥当な水準にある。PBRは1.61倍で、ROE14%前後を維持できる企業としては極端な割高感はないが、強い割安とも言い切れない水準である。
総合すると、関西ペイントは売上規模、営業利益率、ROEのいずれも国内製造業の中では高水準で、事業基盤は非常に強い。一方で、2024年のような高収益は一過性の色合いが強く、2025年以降は利益率・資本効率ともに落ち着いた水準に収束している。高成長株というよりは、グローバル展開を背景にした安定成長・高収益体質の大型株と位置づけられる。
投資判断としては、ROE14%前後、営業利益率9%弱を安定的に維持できる点を評価するなら中長期で保有に向いた銘柄だが、PER・PBRを見る限り、現状株価はすでに一定の実力を織り込んでいる。大きな業績加速を前提とした強気投資よりも、安定収益と配当を含めた中立〜やや強気のスタンスでの投資が適している銘柄、という評価になる。
配当目的とかどうなの?
関西ペイントについて、配当目的という観点だけで見ると、結論から言えば「十分にアリだが、純粋な高配当株というより安定インカム寄り」という評価になる。予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに4.41%と、東証プライム全体で見てもかなり高い水準に入る。しかもこの利回りは、無理に配当性向を引き上げた結果というより、直近までの高水準の利益と潤沢なキャッシュフローを背景にしたものだ。営業利益率は8~9%台、ROEも直近実績ベースで10%台半ばを維持しており、配当の原資となる稼ぐ力自体はしっかりしている。
一方で注意点もある。2024年3月期の純利益が突出して高く、2025年以降は利益水準がやや落ち着いているため、配当水準は「業績のピーク時を基準にした高配当」と見たほうがよい。つまり、減配リスクが直ちに高いわけではないが、今後も毎年増配を続けるような連続増配株とは性格が異なる。配当は維持されやすいが、成長性よりも安定性を重視した配当政策と考えるのが自然だ。
また、PBRが1.6倍程度あることから、典型的な割安高配当株というよりは、「収益力のある優良企業が株価調整局面に入り、結果として利回りが高く見えている状態」に近い。この点では、利回り4%台を享受しつつ、業績が大崩れしなければ株価の下値も比較的限定的、というバランス型のインカム投資向きと言える。
総合すると、関西ペイントは「配当だけを最大化したい人向けの超高配当株」ではないが、「業績の安定性を重視しながら4%台の利回りを狙う配当目的」にはかなり相性が良い銘柄だ。値上がり益を強く期待するというより、配当を受け取りながら中長期で落ち着いて保有するタイプのインカム投資としては、十分に選択肢に入る水準にある、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
関西ペイントについて、現在株価2,492円前後を基準に見ると、安定した配当利回りを持つ一方で、純粋な高配当株というよりは、自動車用塗料を中核に海外展開、とりわけインドを中心としたアジア成長を取り込みながら中期的な企業価値拡大を狙う成熟寄りのグローバル素材メーカーと位置づけられる。
国内では自動車用塗料でトップクラスのシェアを持ち、建築・工業用塗料も含めた総合力が強みである一方、直近数年は原材料価格の変動や海外事業のコスト増の影響を受け、営業利益率やROE、ROAは上下を繰り返しており、収益性はまだ安定局面とは言い切れない。配当は比較的厚く、利回りは4%台とインカム面の魅力はあるものの、投資リターンの主軸は配当と株価の両睨みという構造になっている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、自動車生産の回復とともに自動車用塗料の数量が伸び、インドを中心とした海外事業が引き続き高成長を維持する展開を想定する。高付加価値塗料や環境対応製品の比率が高まり、原材料価格の落ち着きとコスト管理の進展により営業利益率は9%台から10%前後まで改善する。ROEやROAも2桁近辺まで回復し、収益力の安定が市場に評価されることで、PERは15〜18倍程度、PBRも1.8倍前後が許容されやすくなる。この場合、配当利回りの下支えも効きながら評価が切り上がり、株価は段階的に上昇し、5年後には3,400円から4,000円程度を目指す展開が考えられる。海外成長と収益性改善が噛み合った場合の強気寄りのシナリオである。
中間のシナリオでは、国内事業は横ばい、海外は成長を続けるものの競争激化やコスト増もあり、利益率の改善は緩やかにとどまるケースを想定する。営業利益率は8〜9%前後、ROEは10%前後で推移し、大きな悪化はないが明確な収益ジャンプも起きにくい。この場合、市場評価は現状水準を大きく上回らず、PERは13〜15倍、PBRは1.4〜1.7倍程度に収れんしやすい。株価は配当利回りを意識した底堅さを保ちながらも、上値は限定的となり、5年後の水準は2,700円から3,200円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、世界景気の減速や自動車生産の停滞、原材料価格の再上昇などが重なり、売上は維持できても利益率が圧迫される展開を想定する。営業利益率は7%台前半まで低下し、ROE・ROAも一桁台にとどまることで、企業の稼ぐ力に対する市場評価は慎重になる。この場合、PERは10〜12倍程度まで切り下げられ、PBRも1倍前後に近づく可能性がある。配当は維持されるものの、株価の調整圧力が勝り、5年後には1,800円から2,200円程度にとどまる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価2,492円を起点とした関西ペイントの5年間の値動きは、良い場合で3,400円から4,000円前後、中間で2,700円から3,200円、悪い場合で1,800円から2,200円といったレンジが想定される。配当利回りは高めで下支え効果はあるものの、投資妙味の中心はインカム一辺倒ではなく、海外成長と収益性改善による評価変化にある。純粋な高配当株というよりは、安定配当を享受しつつ、中長期での企業価値の積み上がりを狙う投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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