株価
H.U.グループホールディングスとは

H.U.グループホールディングスは、臨床検査と検査試薬を中核とする日本有数の医療インフラ型企業グループであり、東京都港区赤坂に本社を置く。もともとは「みらかホールディングス」という社名で、受託臨床検査事業を中心に発展してきたが、2020年7月に社名をH.U.グループホールディングスへ変更した。社名の「H.U.」には「Healthcare for You」という意味が込められており、従来の検査中心の立ち位置から、より個々の患者や医療現場に寄り添うヘルスケア企業へ進化する意志が示されている。
事業の最大の特徴は、臨床検査受託と臨床検査薬という二つの中核領域を併せ持つ点にある。受託臨床検査分野では、子会社のエスアールエルが国内トップクラスの規模を誇り、病院や診療所から血液、尿、組織などの検体を受託し、中央ラボで分析・結果報告を行っている。エスアールエルはビー・エム・エルやLSIメディエンスと並ぶ業界大手の一角であり、検査件数・対応領域ともに国内最高水準にある。
一方、臨床検査薬分野では富士レビオを中核とし、感染症、がん、免疫関連などの体外診断用医薬品を国内外で展開している。富士レビオは検査薬メーカーとして高い技術力とブランド力を持ち、検査現場で使われる試薬や診断キットを幅広く供給している。さらに、検査薬の原材料供給やライセンス事業、OEM・CDMOといった製造受託ビジネスにも取り組んでおり、検査薬事業の裾野は広い。
この二つの柱に加えて、ヘルスケア関連サービス事業も展開している。福祉用具の販売や在宅医療・訪問看護サービスを行う企業群を抱え、地域医療や高齢者ケアの分野にも関与している。また、日本ステリによる医療器材の滅菌・物流サービスは、病院運営を裏側から支える重要なインフラ事業であり、同社グループの安定収益源となっている。
過去には治験関連事業も手掛けていたが、現在は撤退しており、収益性や事業の持続性を重視した選択と集中が進められている。新薬開発のような高リスク事業には踏み込まず、医療需要に連動する検査・サービス分野に経営資源を集中している点が、同社のビジネスモデルの特徴である。
研究開発については、グループ中央研究所を設け、ライフサイエンス分野の基礎研究や新技術の探索を行っているほか、ベンチャー投資を通じて外部技術の取り込みも進めている。検査データや診断技術を活かした新たな医療価値の創出を中長期的なテーマとしている。
総合すると、H.U.グループホールディングスは、臨床検査受託首位のSRLと検査薬大手の富士レビオを両輪に、検査・診断・医療支援サービスを幅広く展開する医療インフラ型企業である。景気変動の影響を受けにくく、医療需要に支えられた安定的な事業構造を持ち、日本の医療を裏側から支える存在として長期的な役割を担う企業と位置付けられる。
H.U.グループホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 223,016 | 25,392 | 25,458 | 17,468 | 306.4 | 144 |
| 連22.3 | 272,944 | 50,490 | 47,422 | 29,599 | 519.6 | 125 |
| 連23.3 | 260,908 | 23,381 | 22,010 | 15,676 | 275.5 | 125 |
| 連24.3 | 236,950 | -4,043 | -7,241 | -7,553 | -132.8 | 125 |
| 連25.3 | 243,025 | 2,640 | 4,742 | 2,761 | 48.6 | 125 |
| 連26.3予 | 250,000 | 8,000 | 6,000 | 7,000 | 126.2 | 125 |
| 連27.3予 | 260,000 | 14,000 | 12,000 | 8,500 | 153.2 | 125 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 32,535 | -29,583 | -5,757 |
| 2024.3 | 16,551 | -16,050 | -5,782 |
| 2025.3 | 21,964 | -15,958 | -5,298 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 8.9% | 10.4% | 5.2% | — | — |
| 2024.3 | -1.8% | -5.4% | -2.6% | — | — |
| 2025.3 | 1.0% | 2.0% | 0.9% | 27.0~35.2倍 | 1.42倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
売上高は2024年3月期で2,369億円、2025年3月期で2,430億円、2026年3月期予想で2,500億円と、緩やかながら増加基調にある。トップラインは大きな成長ではないが、減少局面ではなく、事業規模そのものは安定して推移している。
一方で利益面の変動は大きい。営業利益は2024年に-40億円と赤字に転落したが、2025年には26億円の黒字に回復し、2026年予想では80億円まで改善する見通しである。経常利益も2024年-72億円から2025年47億円へ回復し、2026年予想では60億円と持ち直しが続く。純利益は2024年-75億円の大幅赤字から、2025年27億円の黒字転換、2026年予想では70億円と改善が進んでいる。ただし、売上規模に対する利益水準は依然として低く、回復途上の段階といえる。
次に収益性と効率性を見る。営業利益率は2023年8.9%から2024年-1.8%へ急低下し、2025年は1.0%まで戻したものの、依然として低水準にとどまっている。ROEは2023年10.4%から2024年-5.4%へ悪化し、2025年は2.0%まで回復しているが、資本効率が高いとは言えない。ROAも2023年5.2%から2024年-2.6%へ低下し、2025年は0.9%と低水準で推移している。いずれも底打ち感はあるが、評価を引き上げるには力不足である。
株価評価を見ると、2025年実績PERは高値平均35.2倍、安値平均27.0倍とかなり高い水準にある。利益水準がまだ低く、回復途上であることを考えると、将来の改善を強く織り込んだ評価といえる。一方、実績PBRは1.4倍と極端な割高ではないが、ROEが低水準である点を踏まえると割安感があるとも言い難い。
以上を総合すると、2024年に大きく落ち込んだ業績は2025年に黒字回復し、2026年にかけて改善が進む見通しではある。しかし、営業利益率、ROE、ROAはいずれも低位にとどまり、収益構造が十分に立て直されたとは判断しにくい。一方でPERは高く、株価は回復期待を先取りしている状態にある。
投資判断としては、現時点では回復期待先行の局面にあり、安定性や割安さを重視する投資には向きにくい。今後、営業利益率の持続的な改善とROEの明確な上昇が確認できれば再評価の余地は出てくるが、現状の数値だけを見る限りでは慎重姿勢が妥当であり、業績回復の実効性を見極める段階と判断できる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに3.70%と、数値だけを見れば水準自体は決して低くなく、インカム投資の目安とされる3%前後は十分に満たしている。ただし注意点も多い。H.U.グループホールディングスは直近の2024年に営業赤字、最終赤字に陥っており、2025年も利益水準はまだ小さい。2026年以降は黒字定着が見込まれているものの、営業利益率は1%前後、ROEやROAも低水準で、企業としての稼ぐ力が十分に回復したとは言い難い。
こうした状況下での配当利回り3.7%は、安定した収益力に裏付けられたものというより、配当維持を優先した結果としての利回りと見るのが妥当である。
また、PERは高水準にあり、利益回復期待が株価に先行して織り込まれている一方で、配当の持続性は今後の業績回復の実効性に強く依存する。仮に利益改善が想定より鈍化すれば、将来的に配当水準が見直される可能性も否定できない。
結論として、H.U.グループホールディングスは、安定した配当収入を主目的とするインカム株として安心して長期保有するタイプの銘柄ではない。配当利回り3.7%自体は魅力的だが、業績が回復途上である点を踏まえると、配当目的での主力投資にはやや不安が残る。配当を受け取りつつ業績回復を見守る補助的な位置付け、あるいは中期的な業績改善を確認しながらの限定的な配当狙い向きの銘柄、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
H.U.グループホールディングスは、現在株価3,376.0円を基準に見ると、安定配当を主目的とするインカム株というよりも、臨床検査・検査薬事業の立て直しと収益回復を前提に評価が変動する回復途上型の企業と位置づけられる。直近では赤字から黒字への転換局面にあり、業績の振れ幅が大きいことが株価の不安定さにつながっている。この前提を踏まえて、現在の価格(3,376.0円)から今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、臨床検査事業の収益性が着実に改善し、営業利益率が安定して数%台まで回復する展開を想定する。検査需要の底堅さに加え、コスト構造の見直しが進み、ROEも一桁後半まで改善することで、市場の見方が「不安定な回復企業」から「安定したヘルスケアインフラ企業」へと変化する。この場合、PERは20倍前後まで切り下がりつつも、利益水準の拡大によって株価は評価を保つ形となり、5年後の株価水準は4,200円から4,800円程度が目安となる。現在値からは緩やかながらも着実な上昇が見込める強気寄りのシナリオである。
中間のシナリオでは、売上は横ばいから微増にとどまり、黒字は維持するものの、営業利益率は1〜2%程度で頭打ちとなるケースを想定する。業績の不安定さは徐々に解消されるが、成長性は乏しく、市場評価も慎重なままとなる。この場合、PERは25倍前後、PBRも1倍前後で推移し、株価は大きく上にも下にも動きにくい。5年後の株価は3,200円から3,600円程度と、現在値近辺での横ばい推移が中心となる中立的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、検査単価の下落やコスト増が再び利益を圧迫し、黒字が不安定な状態に逆戻りする展開を想定する。営業利益率は再びゼロ近辺に低迷し、ROEも低水準にとどまる。この場合、市場の回復期待は後退し、PERは利益不安定を理由に評価されにくくなり、PBRベースでの評価に近づく可能性がある。5年後の株価水準は2,200円から2,600円程度にとどまり、現在値を大きく下回る弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価3,376.0円を起点としたH.U.グループホールディングスの5年間の値動きは、良い場合で4,200円から4,800円程度、中間で3,200円から3,600円程度、悪い場合で2,200円から2,600円程度といったレンジが想定される。配当利回りは一定水準あるものの、値動きは業績回復の確度と持続性に大きく左右されるため、安定志向よりも回復シナリオを見極めながら中期目線で向き合う投資と相性の良い銘柄と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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