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JCRファーマ(4552)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

JCRファーマとは

JCRファーマ株式会社は、兵庫県芦屋市に本社を置く医薬品メーカーで、東証プライム市場に上場している。1975年創業の研究開発型企業であり、ヒト成長ホルモン製剤を主力としつつ、バイオ後続品(バイオシミラー)や希少疾病を対象としたバイオ新薬、再生医療等製品の開発・製造・販売を行っている。

同社の事業の柱は、成長ホルモン製剤、希少疾病向けバイオ医薬品、再生医療等製品、そしてバイオ後続品である。中でもヒト成長ホルモン製剤は長年にわたり安定した収益源となっており、成長ホルモン分泌不全や低身長治療といった小児・成人医療の分野で高いシェアと実績を持つ。代表的な製品であるグロウジェクトは、同社の基盤事業を支える中核製品となっている。

一方で、希少疾病領域にも積極的に取り組んでおり、ムコ多糖症II型治療薬イズカーゴや、ファブリー病治療薬としてアガルシダーゼ ベータのバイオ後続品を展開している。これらの疾患はいずれも患者数が少ない一方で医療ニーズが非常に高く、専門性の高い研究開発力と製造技術が求められる分野である。JCRファーマはこの希少疾病領域を成長分野と位置付け、国内のみならず海外市場も視野に入れた開発を進めている。

再生医療等製品では、急性移植片対宿主病を対象としたテムセルHS注を有しており、日本国内でいち早く再生医療等製品を実用化した企業の一つでもある。細胞医薬品の製造・品質管理に関するノウハウを蓄積しており、次世代医療への対応力も同社の強みとなっている。

また、腎性貧血治療薬として、エポエチンアルファおよびダルベポエチンアルファのバイオ後続品を展開しており、医療費抑制という社会的要請を背景に、バイオシミラー分野でも存在感を高めている。オリジナル医薬品とバイオ後続品の両立により、研究開発型でありながら収益の安定化を図っている点が特徴である。

事業拠点は、本社を兵庫県芦屋市春日町3番19号に置き、阪神本線打出駅周辺に複数の事務所を分散配置している。加えて、東京都港区西新橋に東京事務所を構え、中央官庁や医療業界、製薬企業との連携拠点として活用している。研究開発拠点としては、神戸市西区室谷に研究所およびバイオリサーチセンターを有し、基礎研究から製品開発、製造技術の高度化までを一体的に行える体制を構築している。

事業内容は、医療用医薬品、再生医療等製品、医薬品原料の製造・仕入・販売に加え、医療機器の販売まで幅広く、研究開発から製造、販売までを自社で担う垂直統合型のビジネスモデルを採用している。品質管理や安定供給への評価も高く、長期的な取引関係を重視した事業運営を行っている。

全体としてJCRファーマは、成長ホルモン製剤という安定収益源を基盤に、バイオ後続品による事業拡張と、希少疾病および再生医療分野への研究開発投資を通じて、中長期的な成長を目指す医薬品メーカーである。短期的には研究開発費の影響を受けやすいものの、独自技術と専門領域に特化した戦略により、持続的な競争力の確立を志向している。

JCRファーマ 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益EPS(円) 一株配当(円)
連21.3 30,085 8,269 8,488 6,892 55.8 12
連22.3 51,082 19,933 20,512 14,507 117.3 22
連23.3 34,343 4,975 5,418 3,772 30.4 20
連24.3 42,871 7,531 7,264 5,507 44.1 20
連25.3 33,072 -6,650 -7,477 -4,759 -38.4 20
連26.3予 37,800 2,600 2,400 3,000 24.6 20
連27.3予 36,000 2,000 1,800 1,200 9.8 20

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期(百万円) 営業キャッシュフロー 投資キャッシュフロー 財務キャッシュフロー
2023年3月期 -5,500 -15,002 1,948
2024年3月期 9,312 -2,690 -2,031
2025年3月期 -5,486 -9,874 9,736

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率(%) ROA(%) ROE(%) PER(倍) PBR(倍)
2023年3月期 14.4 3.9 7.3
2024年3月期 17.5 5.3 9.9
2025年3月期 -20.2 -4.6 -10.2 63.0(高値平均)
32.7(安値平均)
1.85

出典元:四季報オンライン

投資判断

2024年3月期は売上高428億円、営業利益75億円、経常利益72億円、純利益55億円と非常に好調で、営業利益率14.4%、ROE7.3%、ROA3.9%と、研究開発型バイオ企業としては比較的安定した収益性と資本効率を確保していた。特に本業である営業利益がしっかり出ており、この年の業績だけを見ると成熟度の高い医薬品企業に近い姿だったと言える。

一方、2025年3月期は売上高330億円へ減少し、営業利益-66億円、経常利益-74億円、純利益-47億円と一気に赤字へ転落した。営業利益率は-20.2%、ROE-10.2%、ROA-4.6%まで急低下しており、本業の収益力、資本効率ともに大きく崩れている。2023年から2024年にかけて営業利益率14.4%から17.5%、ROE7.3%から9.9%、ROA3.9%から5.3%へと改善していただけに、この反転は単なる一時的な調整ではなく、業績の振れ幅が非常に大きい企業体質を示している。

2026年3月期予想では売上高378億円、営業利益26億円、経常利益24億円、純利益30億円と黒字回復を見込んでいる。ただし利益水準は2024年の75億円、55億円と比べると大きく見劣りし、完全回復というよりは「赤字からの持ち直し」にとどまる水準である。営業利益率も24年の水準には届かず、収益性の戻りは限定的と考えられる。

バリュエーション面では、2025年の実績PERが高値平均63.0倍、安値平均32.7倍と極めて高い水準にあり、利益が出ていない局面でも将来回復を前提に株価が形成されていることが分かる。PBRも1.85倍と、赤字期にもかかわらず純資産に対して割高感は残っており、安全余地が大きいとは言えない。

以上を総合すると、JCRファーマは2024年には高い収益性を示したものの、2025年に急激な業績悪化を経験し、2026年も回復途上にとどまる見通しである。一方で株価評価はPER30〜60倍、PBR約2倍と回復期待を強く織り込んでいる。このため、現時点では割安と判断できる材料は乏しく、安定収益や配当を目的とした投資には不向きで、業績回復が実績として確認できるまで待つか、高いリスクを許容して将来成長に賭ける投資向けの銘柄と位置づけるのが妥当である。

配当目的とかどうなの?

予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに2.73%と、表面上は極端に低い水準ではなく、一般的な中堅株として見れば「そこそこ」の利回りに見える。しかし、この利回りをそのまま配当目的に適していると評価するのは難しい。

まず業績面を見ると、2025年3月期は営業利益-66億円、純利益-47億円と大幅赤字であり、営業利益率-20.2%、ROE-10.2%、ROA-4.6%と、収益力・資本効率ともに明確に崩れている。つまり直近は配当の原資となる利益を自力で十分に稼げていない状態である。2026年3月期は営業利益26億円、純利益30億円と黒字回復予想ではあるが、2024年の営業利益75億円、純利益55億円と比べると水準はかなり低く、配当余力が十分に回復したとは言い難い。

次に安定性の観点では、2023年から2024年にかけては利益率やROEが改善した一方、2025年に一気に赤字へ転落しており、利益の振れ幅が非常に大きい。配当目的の投資では「毎年安定して払えるか」が重要だが、この数値推移を見る限り、景気や開発進捗によって業績が大きく左右されやすく、減配や据え置きのリスクは常に高い。

さらにバリュエーション面では、2025年実績PERが32.7〜63.0倍、PBRが1.85倍と、配当利回り2.73%に対して株価評価はかなり高い。インカム目的であれば、同程度の利回りでも、より利益が安定し、PERやPBRが低い銘柄を選択できる余地は大きい。

以上を踏まえると、JCRファーマは配当を完全に無視する銘柄ではないものの、配当を主目的としたインカム投資には向いていない。配当はあくまで「おまけ」に近く、投資の本質は業績回復や新薬開発の進展による株価上昇期待に置くべき銘柄である。安定した配当収入を狙うのであれば、現時点では他の選択肢を検討する方が合理的だと判断できる。

今後の値動き予想!!(5年間)

JCRファーマ株式会社について、現在株価730円前後を基準に見ると、安定配当を前面に押し出したインカム株というよりは、成長ホルモン製剤を基盤にしつつ、希少疾病向けバイオ医薬品や再生医療等製品の研究開発成果によって業績と株価が大きく左右される研究開発型の医薬品企業と位置づけられる。

成長ホルモン製剤という比較的安定した収益源を持っている一方で、直近では研究開発費の増加や製品構成の変化により収益性が大きく悪化している。2024年3月期には営業利益率14.4%、ROE7.3%、ROA3.9%と、研究開発型企業としては悪くない水準だったが、2025年3月期には営業利益率-20.2%、ROE-10.2%、ROA-4.6%と急激に赤字へ転落しており、業績の振れ幅が非常に大きいことが最大の特徴である。配当は一定水準を維持しており、予想配当利回りも2.7%前後と極端に低いわけではないが、配当の安定性よりも業績回復の有無が株価に与える影響の方が圧倒的に大きい構造になっている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、2026年以降に業績回復が進み、成長ホルモン製剤の安定収益に加えて、希少疾病向けバイオ医薬品や再生医療等製品が徐々に収益貢献を高める展開を想定する。営業利益率は再び10%前後まで回復し、ROEやROAもプラス圏で安定する。研究開発型バイオ企業としての将来性が再評価され、市場が成長回復シナリオを織り込みやすくなると、PERは20〜30倍程度、PBRも2倍前後が許容される可能性がある。この場合、現在の低迷水準から評価の切り上げが進み、株価は段階的に上昇し、5年後には1,400円から1,800円程度を目指す展開が考えられる。業績の底打ちと将来期待がうまく噛み合った場合の強気寄りのシナリオである。

中間のシナリオでは、2026年に黒字回復はするものの、その後の利益成長は緩やかで、研究開発投資と収益のバランスが拮抗する状態が続くケースを想定する。営業利益率は5〜8%程度、ROEやROAも低いながらプラス圏で推移し、過去の高収益水準には戻らない。この場合、市場評価は大きく変わらず、PERは15〜20倍、PBRは1.5〜2.0倍程度で落ち着きやすい。株価は上下を繰り返しながらも大きなトレンドは出にくく、5年後の水準は800円から1,100円程度と、現在値からは緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。

悪い場合のシナリオでは、業績回復が想定より遅れ、希少疾病向け新薬や再生医療分野の成果が十分に出ず、研究開発費負担が重くのしかかる展開を想定する。営業利益率は低迷したまま、ROE・ROAも改善せず、稼ぐ力に対する市場評価はさらに厳しくなる。この場合、PERは10〜15倍程度まで切り下げられ、PBRも1倍前後まで低下する可能性がある。株価は回復期待の剥落とともに調整を受け、5年後には450円から650円程度にとどまる弱気シナリオとなる。

総合すると、現在株価730円を起点としたJCRファーマの5年間の値動きは、良い場合で1,400円から1,800円前後、中間で800円から1,100円、悪い場合で450円から650円といったレンジが想定される。配当は一定水準を維持しているものの、配当目的の安定株とは言い難く、投資妙味はインカムよりも業績回復や研究開発の進展による評価変化に強く依存する。安定配当を狙う投資よりも、リスクを許容した上で中長期の回復や成長を期待する投資と相性の良い銘柄、という評価になる。

この記事の最終更新日:2025年12月25日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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