株価
アルプス技研とは

アルプス技研は、正社員として雇用した技術者を企業へ派遣する技術者派遣事業を中核とする人材サービス企業で、日本の製造業を中心に研究開発や設計現場を長年支えてきた。一般的な登録型派遣とは異なり、技術者を正社員として採用・育成したうえで派遣する「正社員技術者派遣」を基本モデルとしている点が最大の特徴であり、技術者の定着率の高さと、顧客企業に対する安定的な技術力提供を強みとしている。
事業領域は、自動車、電機、電子分野を中心に、機械設計、電気・電子設計、ソフトウェア開発など幅広い。特に自動車や電機・電子分野では、製品開発の上流工程である開発、設計、試作、評価といった工程に強みを持ち、単なる人員補完ではなく、開発現場の中核を担う技術者を供給している点が同社のポジションを特徴づけている。
技術者派遣事業に加え、技術プロジェクトの受託事業も展開しており、開発、設計、試作、製造、評価までを一括して請け負う体制を持つ。これにより、派遣に比べて付加価値の高い収益機会を確保すると同時に、顧客との関係をより深める役割を果たしている。また、職業紹介事業も行っており、派遣だけでなく直接雇用を求める企業ニーズにも対応している。
人材育成面では、自社での教育・研修体制を重視しており、新卒・中途採用した技術者に対して基礎教育から専門分野の研修までを体系的に実施している。これにより、技術力の底上げと派遣単価の維持・向上を図るとともに、長期雇用を前提としたキャリア形成を支援している。こうした育成型モデルは短期的にはコスト要因となるが、中長期的には競争力の源泉となっている。
本社は神奈川県横浜市西区に所在し、連結子会社としてアルプスビジネスサービス、パナR&D、アルプスアグリキャリア、アルプスリージョナルパートナーズ、デジタル・スパイスなどを擁する。これらの子会社を通じて、技術者派遣に加え、地域人材支援、農業分野への人材供給、デジタル分野やIT関連分野への展開など、事業領域の多角化も進めている。
業績面では、製造業の設備投資動向や景気循環の影響を受ける側面はあるものの、派遣契約の多くが中長期にわたるため、急激な業績悪化が起こりにくい構造となっている。日本の製造業では慢性的な技術者不足が続いており、特に経験を持つエンジニアへの需要は根強い。この構造的背景が、同社の事業を中長期的に下支えしている。
全体としてアルプス技研は、ハイリスク・ハイリターン型の成長企業ではなく、正社員技術者派遣という安定性の高いビジネスモデルを軸に、受託事業や職業紹介を組み合わせながら、着実に利益と配当を積み上げていく堅実型の人材サービス企業と位置づけられる。製造業の技術者不足が続く限り、派手さはないものの、安定した需要を背景に中長期で存在感を発揮し続ける企業といえる。
アルプス技研 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 43,647 | 4,649 | 4,560 | 3,416 | 169.5 | 85 |
| 連23.12 | 46,216 | 4,982 | 5,053 | 3,696 | 185.2 | 103(記) |
| 連24.12 | 49,858 | 5,159 | 5,313 | 3,677 | 185.0 | 93 |
| 連25.12予 | 53,000 | 5,600 | 5,700 | 3,800 | 193.7 | 94〜97 |
| 連26.12予 | 55,500 | 5,800 | 5,900 | 3,900 | 198.8 | 100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 3,663 | -125 | -2,881 |
| 2023年12月期 | 3,213 | 138 | -2,684 |
| 2024年12月期 | 4,584 | -366 | -2,485 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROA(%) | ROE(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年12月期 | 10.7 | 14.7 | 21.9 | – | – |
| 2024年12月期 | 10.3 | 13.0 | 19.6 | 15.4(高)/10.8(安) | 2.85 |
| 2025年12月期(予) | 10.5 | 13.5 | 20.3 | 15.07 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、売上高は2023年12月期が462億円、2024年12月期が498億円、2025年12月期予想が530億円、2026年12月期予想が555億円と、毎年着実に拡大している。人材派遣事業という性格上、急成長はしないものの、顧客基盤と技術者数の積み上げによって安定的に規模が拡大していることが分かる。
利益面では、営業利益が2023年49億円、2024年51億円、2025年予想56億円、2026年予想58億円と緩やかな増加基調にある。経常利益も2023年50億円、2024年53億円、2025年予想57億円、2026年予想59億円と同様の動きで、収益構造に大きなブレはない。純利益は2023年36億円、2024年36億円と横ばいだが、2025年予想38億円、2026年予想39億円と再び増益が見込まれており、全体として高水準を安定して維持している。
収益性を見ると、営業利益率は2023年10.7%、2024年10.3%、2025年予想10.5%と、一貫して2桁を維持している。派遣ビジネスとしては非常に高い水準であり、稼働率の高さと単価の安定がうかがえる。ROEは2023年21.9%、2024年19.6%、2025年予想20.3%と20%前後を維持しており、資本効率は極めて高い。ROAも2023年14.7%、2024年13.0%、2025年予想13.5%と高水準で、資産を効率的に使えている企業であることが分かる。
バリュエーション面では、2024年実績PERが高値平均15.4倍、安値平均10.8倍、PBRは2.8倍となっている。2025年予想PERは15.0倍であり、高いROE・ROAを前提にすると、これらの水準は割高というよりも妥当な評価と見るのが自然である。むしろ、収益性の高さを考えれば、市場は一定のプレミアムを許容している状態といえる。
これらの数値だけで判断すると、アルプス技研は高成長株ではないが、営業利益率10%超、ROE20%前後という非常に優れた収益性を安定的に維持できている点が最大の強みである。売上や利益の伸びは緩やかだが、事業モデルが成熟しており、数値の振れが小さいため、業績の見通しが立てやすい。
結論として、アルプス技研は短期的な株価上昇を狙う銘柄というより、高い収益性と安定した業績を背景に、配当を受け取りながら中長期で保有することに向いた堅実な投資対象と判断できる。成長スピードよりも安定性と資本効率を重視する投資家にとっては、安心感のある銘柄である一方、急激な評価拡大を期待する場合にはやや物足りなさが残る、という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
まず配当水準を見ると、2025年12月期の予想配当利回りは3.40%、2026年12月期は3.62%と、東証全体や一般的な安定株と比べてもやや高めの水準にある。極端な高配当ではないが、「安定配当株」としては十分に魅力のある利回りと言える。
業績とのバランスを見ると、純利益は2023年が36億円、2024年も36億円と高水準を維持し、2025年予想で38億円、2026年予想で39億円と緩やかな増益が見込まれている。営業利益率は10%超、ROEは20%前後、ROAも13%台と非常に高く、収益力と資本効率の両面で余裕がある。これらの数字を見る限り、現在の配当水準が業績に対して無理をしている印象はなく、配当の持続性は高い。
また、営業CFが安定してプラスで推移しており、派遣ビジネスという性格上、大型設備投資が不要なため、利益がそのまま配当原資になりやすい構造になっている。この点は、配当目的で見るうえで大きな安心材料である。利益が大きく上下する企業と違い、景気後退局面でも急激に配当が削られにくい体質と言える。
一方で、注意点としては、すでにROEや営業利益率が高水準にあるため、今後の大幅な増配余地は限定的である可能性が高い。配当は今後も緩やかに増えるか、少なくとも維持される公算は大きいが、毎年大きく増配していくタイプの銘柄ではない。
以上を踏まえると、アルプス技研は配当目的として「かなり相性が良い」部類に入る。利回りは3%台半ばと実用的で、業績・キャッシュフロー・収益性の裏付けも強く、減配リスクは相対的に低い。一方で、配当成長スピードや爆発的な利回り上昇を期待する銘柄ではなく、安定した配当を中長期で受け取り続けたい投資家向けの銘柄と評価できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
アルプス技研について、現在株価2,760円前後を基準に見ると、創薬バイオや先端半導体のように研究開発投資の成否で業績が大きく振れる企業とは性格が異なり、正社員技術者派遣を中核とした安定収益型の人材サービス企業と位置づけられる。自動車、電機、電子分野を中心に、開発・設計・試作といった上流工程に強みを持ち、景気循環の影響は受けるものの、長期契約と高い稼働率を背景に、業績のブレが比較的小さい構造になっている。
直近の数値を見ると、売上高は年率数%ペースで着実に拡大し、営業利益・経常利益・純利益はいずれも高水準で安定している。営業利益率は2023年から2025年にかけて10%台を維持しており、派遣ビジネスとしては非常に高い収益性である。ROEは20%前後、ROAも13%台と、成熟企業としては際立って高い資本効率を誇る。一方で成長率自体は緩やかで、事業規模が急拡大するタイプではない。PERは15倍前後、PBRは3倍弱と、収益性の高さを素直に織り込んだ評価水準にある。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、製造業の研究開発投資が底堅く推移し、自動車・電機・電子分野を中心に技術者需要が安定する。稼働率と単価が高水準を維持し、営業利益率は10%台前半、ROEも20%前後を継続する。市場からは「高収益・安定配当の優良人材株」として評価が高まり、PERは16〜18倍程度まで切り上がる。この場合、配当を受け取りながら株価も緩やかに上昇し、5年後には3,700円から4,000円程度を目指す展開が想定される。大きな成長はないが、トータルリターンは堅実なシナリオである。
中間のシナリオでは、業績は会社想定に近いペースで推移し、営業利益率は10%前後、ROEは18〜20%程度で安定する。評価面ではPER14〜15倍に落ち着き、市場での位置づけは「高収益だが成熟した安定株」にとどまる。この場合、株価は大きな上昇トレンドは描かず、配当を受け取りながら緩やかに水準を切り上げ、5年後の株価は3,200円から3,400円程度に収れんする中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、製造業の開発投資が鈍化し、稼働率や単価にやや圧力がかかる。営業利益率は9%台まで低下し、ROEも18%前後で頭打ちとなる。この場合、市場は成長性を評価せず、PERは12〜13倍程度まで低下する。ただし配当利回りは相対的に高くなり、株価の下値は一定程度支えられる。この場合でも、5年後の株価は2,300円から2,500円程度にとどまる、もしくは一時的に2,300円近辺を試す弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価2,760円前後を起点としたアルプス技研の5年間の値動きは、良い場合で3,700円から4,000円前後、中間で3,200円から3,400円、悪い場合で2,300円から2,500円程度といったレンジが想定される。急成長や株価倍増を狙う銘柄ではないが、営業利益率10%超、ROE20%前後という高い収益性と、3%台の配当利回りを背景に、配当を受け取りながら中長期で安定したリターンを積み上げていく投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す