株価
オービックとは

オービックは、独立系システムインテグレーターとして日本の業務系IT市場で非常に強い存在感を持つ企業である。1968年創業、東京証券取引所プライム市場に上場しており、ERP(統合業務ソフト)分野では中小・中堅企業向けで首位、大企業向けでも導入を着実に拡大している。主力製品は会計、人事、給与、販売、生産、管理など企業の基幹業務を横断的にカバーする統合業務ソフトウェア「OBIC7」シリーズで、累計導入社数は2万社を超え、長年にわたりERP分野でトップクラスの実績を維持している。
オービックの事業モデルの最大の特徴は、単なるソフトウェアベンダーではなく、コンサルティングからシステム企画、設計・開発、ハードウェアやネットワークの選定、導入時の教育、稼働後の運用・保守、法改正対応、サプライ品の供給までを自社で一貫して行うワンストップ・ソリューション・サービスにある。顧客の業務そのものに深く入り込み、システム導入後も長期にわたって伴走するスタイルを取っており、結果として顧客との取引は10年単位に及ぶケースが多い。これにより、保守・運用を中心としたストック性の高い収益構造が形成されている。
対象とする業種は非常に幅広く、金融、製造、卸・物流、小売、サービス、不動産、建設など多様な業界に対応した業種別ソリューションを展開している。中小・中堅企業向けで培った標準化と柔軟なカスタマイズのノウハウを生かしつつ、大企業向けにはグループ全体最適や複雑な業務要件に対応するERP導入を進めている点が特徴である。近年は自社運営のクラウドセンターを活用したクラウド型ERPにも注力しており、短期導入や早期稼働といった利便性を高めながら、セキュリティや信頼性を重視する企業ニーズにも対応している。
営業面では直販体制を重視しており、代理店に依存せず自社営業で顧客を開拓している。これにより顧客の要望や課題を直接把握しやすく、製品改良やサービス品質向上に反映しやすい体制を構築している。外注に依存しない内製志向も強く、品質管理と収益性の両立につながっている。
財務面では、IT企業の中でも際立って高い営業利益率と自己資本比率を誇り、長年にわたり無借金経営を継続している点が大きな特徴である。安定した収益基盤と強固な財務体質を背景に、景気変動に対する耐性も高い。また、「奉行シリーズ」を展開するオービックビジネスコンサルタントは持分法適用関連会社であり、グループ全体として業務ソフト分野での影響力は非常に大きい。
総じてオービックは、ERPを核とした高付加価値な一貫サービス、長期顧客基盤、極めて高い収益性と財務健全性を武器に中小・中堅企業から大企業までを深くカバーする。日本を代表する独立系SIerの一社と評価できる企業である。
オービック 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 83,862 | 48,077 | 52,600 | 38,001 | 85.4 | 37 |
| 連22.3 | 89,476 | 54,135 | 60,174 | 43,500 | 98.0 | 43 |
| 連23.3 | 100,167 | 62,490 | 70,223 | 50,116 | 113.0 | 50 |
| 連24.3 | 111,590 | 70,910 | 81,151 | 58,007 | 130.9 | 60 |
| 連25.3 | 121,240 | 78,378 | 89,770 | 64,621 | 146.9 | 70 |
| 連26.3予 | 134,500 | 88,300 | 100,000 | 72,000 | 164.1 | 74〜80 |
| 連27.3予 | 147,000 | 97,000 | 108,000 | 77,800 | 177.3 | 80〜85 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 52,960 | 1,282 | -20,619 |
| 2024 | 55,831 | -2,206 | -39,702 |
| 2025 | 62,794 | -3,934 | -29,038 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 62.3% | 15.2% | 13.6% | – | – |
| 2024 | 63.5% | 14.5% | 12.5% | – | – |
| 2025 | 64.6% | 14.8% | 12.9% | 29.7〜38.7倍 | 4.46倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
オービックについて、提示されている数値だけを前提に投資判断を考える。まず業績規模を見ると、2024年3月期の売上高は約1115億、営業利益は約709億、経常利益は約811億、純利益は約580億という水準にあり、ソフトウェア企業としては国内でも突出した利益額を稼いでいる。2025年3月期には売上高が約1212億、営業利益が約783億、経常利益が約897億、純利益が約646億へと拡大し、さらに2026年3月期予想では売上高約1345億、営業利益約883億、経常利益約1000億、純利益約720億と、売上・利益ともに一段高い水準が見込まれている。成長率自体は急拡大というほどではないが、規模が大きい中で着実に積み上がっている点は評価できる。
特に際立っているのが収益性で、営業利益率は2023年から2025年にかけて62.3%、63.5%、64.6%と上昇基調で、3年連続60%超という極めて異例の水準にある。日本株全体で見てもここまで高い営業利益率を安定的に維持できている企業はほとんどなく、価格競争に巻き込まれにくい強固なビジネスモデルと、顧客との長期取引構造がそのまま数字に表れているといえる。ROEも15.2%、14.5%、14.8%と高水準で安定しており、ROAも13.6%、12.5%、12.9%と2桁を維持していることから、自己資本・総資産の両面で極めて効率よく利益を生み出していることが分かる。
一方で評価面を見ると、2025年実績ベースのPERは高値平均38.7倍、安値平均29.7倍で、概ね30倍台半ばの水準にある。PBRも4.4倍と高く、明確な割安感があるとは言いにくい。これだけ高い営業利益率と安定性を考えれば、プレミアムが付くのは自然だが、同時に市場はすでにオービックの強さを十分に織り込んでいるとも言える。今後も業績が堅調に伸びる前提であれば評価は維持されやすいが、成長が鈍化した場合には株価の上値は重くなりやすい水準でもある。
総合すると、営業利益率60%超、ROE・ROAともに高位安定、売上・利益ともに確実に積み上がる構造は、日本株の中でも別格の品質であり、事業リスクや業績ブレの小ささという点では非常に魅力的である。一方で、PER30倍台、PBR4倍超という評価水準を考えると、短期的な割安狙いや急激な株価上昇を期待する投資には向きにくい。この数値だけで判断すれば、オービックは高収益・超安定だが高評価の優等生銘柄であり、値幅を狙うよりも、長期で安心して保有することで安定的なリターンを積み上げていくタイプの投資に適した銘柄、という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
オービックを配当目的で見ると、結論から言えば「主目的にするにはやや弱いが、安心感は非常に高い配当銘柄」という位置づけになる。提示されている予想配当利回りは2026年3月期で約1.49%、2027年3月期で約1.61%と、一般的な高配当株と比べると明確に低い水準であり、インカム重視で利回り3%以上を狙う投資スタイルには合わない。
一方で、オービックの配当の特徴は「利回りの高さ」ではなく「確実性」にある。営業利益率が60%超と極めて高く、営業キャッシュフローも毎年安定して積み上がっている中で、配当金は利益とキャッシュフローのごく一部を使って支払われているに過ぎない。財務面でも無借金かつ自己資本比率が極めて高く、景気後退や一時的な業績調整局面があっても、配当が簡単に削られるリスクはかなり小さいと考えられる。
また、過去の推移を見ても、オービックは減配よりも増配を重ねてきた企業であり、急激な配当引き上げはないものの、着実に配当水準を切り上げていく傾向が強い。利回りは低くても、長期保有によって取得単価に対する配当利回りが徐々に高まっていく、いわゆる「配当成長型」に近い性格を持っている。
このため、配当を投資の主目的に据える場合には物足りなさは否めないが、「業績が安定した企業に長期で資金を置き、配当はおまけとして確実に受け取りたい」「値下がりリスクを極力抑えつつ、株主還元も継続的に受けたい」という考え方には非常に相性が良い。高配当株のように利回りで魅力を出す銘柄ではなく、超高収益・超安定企業の株主として、低めだが確実な配当を長く受け取り続けるタイプの銘柄、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
オービックについて、現在株価4,944円前後を基準に見ると、創薬バイオや新興ITのように技術トレンドや投資成否で業績が大きく振れる企業とは性格が大きく異なり、ERP(統合基幹業務ソフト)を中核とした超安定・高収益型のソフトウェア企業と位置づけられる。会計、人事、給与、販売、生産といった企業の中枢業務に深く入り込む「OBIC7」を軸に、顧客企業と長期の取引関係を築くビジネスモデルであり、一度導入されると切り替えが起こりにくい強固なストック型収益構造を持っている。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、国内企業の基幹システム刷新需要が底堅く推移し、OBIC7の導入およびクラウド型ERPの採用が継続的に進む。既存顧客からの追加受注やグループ展開も堅調で、売上・利益ともに安定成長を維持する。営業利益率は60%台半ば、ROEも15%前後を継続し、市場からは「日本株屈指の高収益ソフトウェア企業」としての評価がさらに定着する。この場合、PERは35〜40倍程度で維持・やや上振れし、株価は緩やかな上昇を続け、5年後には6,500円から7,500円程度を目指す展開が想定される。値幅は大きくないが、極めて安定した右肩上がりのシナリオである。
中間のシナリオでは、業績は会社想定に近いペースで推移し、営業利益率は60%前後、ROEは14〜15%程度で安定する。成長は続くもののサプライズは少なく、評価面ではPER25〜30倍程度に落ち着く。この場合、株価は大きなトレンドを描かず、配当を受け取りながら緩やかに水準を切り上げ、5年後の株価は5,500円から6,000円程度に収れんする中立的なシナリオとなる。高収益・高安定企業としての評価は維持されるが、株価上昇は時間を要する。
悪い場合のシナリオでは、景気減速や企業のIT投資抑制により、新規ERP導入が一時的に鈍化する。業績そのものは大きく崩れないものの、成長率が低下し、市場が評価を見直すことでPERは20倍台前半まで低下する可能性がある。この場合でも営業利益率は依然として高水準を保つが、評価調整が先行し、株価は4,000円から4,500円程度にとどまる、もしくは一時的に4,000円近辺を試す弱気シナリオとなる。ただし、財務体質とキャッシュフローの強さから下値は比較的堅いと考えられる。
総合すると、現在株価4,944円前後を起点としたオービックの5年間の値動きは、良い場合で6,500円から7,500円程度、中間で5,500円から6,000円、悪い場合でも4,000円から4,500円程度というレンジが想定される。急成長や株価倍増を狙う銘柄ではないが、営業利益率60%超、安定したROE、盤石な財務を背景に、値下がりリスクを抑えつつ中長期で着実なリターンを積み上げていく投資と非常に相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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