株価
ビー・エム・エルとは

ビー・エム・エルは日本を代表する臨床検査事業者の一社であり、資本力や設備規模の面からも大手ラボに分類される企業である。臨床検査分野では首位級のポジションにあり、特に生化学的検査に強みを持つ。全国に検査ラボと検体集配ネットワークを構築し、病院や診療所から委託を受けて各種検体検査を行うことで、日本の医療インフラを支えている。
同社は1955年に「相互ブラッド・バンク」として設立され、その後、事業領域の拡大に伴い1976年に「相互生物医学研究所」へ社名を変更した。英文表記であるBIO MEDICAL LABORATORIESの頭文字であるBMLが広く定着したことを背景に、1989年には正式に社名を「ビー・エム・エル」としている。長い歴史の中で検査技術と設備投資を積み重ね、臨床検査専業としての地位を確立してきた。
事業内容は、臨床検査の受託業務が中核であり、内分泌、血漿蛋白、生化学、ウイルス、免疫血清、血液、細胞性免疫、細菌、病理組織など、幅広い検査項目を取り扱っている。高度に自動化された検査設備と専門性の高い検査技術を活かし、大量検体を効率的かつ高精度に処理できる体制を整えている点が特徴である。全国の医療機関と継続的な取引関係を持つストック性の高いビジネスモデルであり、景気変動の影響を受けにくい。
また近年は、臨床検査にとどまらず、医療情報システム分野の育成にも注力している。2000年以降、「Medical Station」のブランドで診療所向け電子カルテの販売を展開し、レセプトコンピュータ一体型という利便性を強みに導入実績を積み重ねてきた。さらに2012年にはEMシステムズと共同で株式会社メディファクトを設立し、無床診療所向け電子カルテを新ブランド「QUALIS」として展開するなど、検査データと医療ITを組み合わせたサービス拡張を進めている。一方で、調剤薬局事業からは撤退し、事業領域を医療検査と医療情報に集中させている。
主要拠点としては、東京都渋谷区に本社を置き、埼玉県川越市にはBML総合研究所を構えるほか、札幌をはじめ全国各地に営業所・検査ラボを展開している。連結子会社には第一岸本臨床検査センター、オー・ピー・エル、松戸メディカルラボラトリー、日研医学などがあり、地域密着型の検査体制も補完している。
総合すると、ビー・エム・エルは臨床検査という医療現場に不可欠な分野で全国規模の体制と高い専門性を持つディフェンシブな企業である。急成長を狙う企業ではないが安定した医療需要を背景に堅実な収益基盤を持ち、検査事業を軸に医療情報システムへと裾野を広げることで、中長期的な事業の持続性を高めている企業といえる。
ビー・エム・エル 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 138,571 | 19,936 | 20,803 | 13,711 | 337.4 | 70 |
| 連22.3 | 186,067 | 48,889 | 51,077 | 33,741 | 833.2 | 120(特) |
| 連23.3 | 159,462 | 23,936 | 24,182 | 15,578 | 395.8 | 100(特) |
| 連24.3 | 137,964 | 9,167 | 9,605 | 6,034 | 154.8 | 80 |
| 連25.3 | 143,191 | 9,364 | 9,970 | 6,263 | 160.6 | 120(記) |
| 連26.3予 | 148,000 | 9,000 | 9,600 | 6,000 | 160.1 | 120 |
| 連27.3予 | 153,000 | 9,300 | 9,700 | 6,100 | 162.7 | 120 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 11,742 | -7,627 | -9,715 |
| 2024.3 | 14,446 | -21,137 | -5,733 |
| 2025.3 | 15,809 | -16,793 | -5,426 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 15.0 | 12.7 | 9.2 | – | – |
| 2024.3 | 6.6 | 4.7 | 3.5 | – | – |
| 2025.3 | 6.5 | 4.8 | 3.5 | 13.5〜16.9 | 1.16 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ビー・エム・エルを直近の利益水準と収益性指標から見ると、コロナ特需の反動を受けた後の低収益フェーズに入っている企業と評価できる。まず利益の水準を見ると、営業利益は連24.3期が91億円、連25.3期が93億円、連26.3期予想では90億円と、ほぼ横ばいで推移している。経常利益も96億円、99億円、96億円、純利益は60億円、62億円、60億円と、利益規模自体は維持されているが、成長局面にあるとは言いにくい。売上は緩やかに増えているものの、利益が伸びていない点から収益構造の重さがうかがえる。
収益性の面では、営業利益率が2023年の15.0%から2024年に6.6%、2025年に6.5%へと大きく低下している。これは明確な水準訂正であり、コロナ関連検査による高収益期が終了し、通常時の収益力に戻ったことを示している。6%台という利益率は、臨床検査業界としては決して低すぎる水準ではないが過去との落差は大きい。
資本効率を見ると、ROEは12.7%から4.7%、4.8%へ、ROAも9.2%から3.5%、3.5%へと低下している。いずれも水準としては低めで、資本を効率よく使えている状態とは言いにくい。特需期に積み上がった資産を十分に活かし切れていない状況が、数字に表れている。
バリュエーション面では、2025年実績ベースのPERは13.5倍から16.9倍、PBRは1.2倍となっている。ROEが5%前後まで低下していることを踏まえると、PBR1倍台前半は割安とまでは言えずむしろ現状の収益力をほぼそのまま反映した妥当水準といえる。PERについても、利益成長が乏しい中では、レンジ上限の評価を正当化する材料は多くない。
以上を踏まえた投資判断としては、ビー・エム・エルは業績の安定性は高いものの、収益性と資本効率は特需期から明確に低下しており、成長性は限定的な局面にある。利益水準は底堅く、急激に崩れるリスクは小さいが、利益拡大による株価上昇を期待するフェーズではない。そのため、成長株として積極的に買いに行く銘柄ではなく、業績の下振れが起きにくいディフェンシブ銘柄として、評価が下がり過ぎた局面で検討する対象という位置づけになる。配当や安定性を評価する中長期保有は成立する一方で、収益性の回復が見えない限り、大きなリターンを狙う投資には向かないという判断が妥当である。
配当目的とかどうなの?
配当目的で見ると、ビー・エム・エルは十分に成立する水準に入っている。連26.3期、連27.3期ともに予想配当利回りは3.08%で、日本株全体の平均と比べても明確に高く一般的に配当狙いとして意識される水準を超えている。高配当株の中でも上位というほどではないが、インカム目的としては実用的で数字だけ見れば配当目的に使える銘柄といえる。
この配当水準で評価すべき点は、無理な増配ではなく維持型の配当に位置づけられている点にある。営業利益は90億円前後、純利益は60億円前後で横ばいが続いており、成長性は乏しいものの医療インフラ関連という事業特性から利益が急減するリスクは小さい。配当の原資となる利益水準は安定しており、減配リスクは比較的低い。
一方で、今後の伸びには期待しすぎない方がいい。営業利益率は6%台、ROEは5%前後と収益性と資本効率は低下した状態で落ち着いている。このため、今後さらに利回りが大きく上がるような増配余地は限られており、配当は増やすものというより維持するものと考えるのが現実的である。
整理すると、ビー・エム・エルは高配当株として積極的に増配を狙う銘柄ではないが、3%前後の配当を安定して受け取りたい投資には向いている。値上がり益と配当の両立を狙う銘柄というより、業績の安定性を評価してインカムを取りに行くタイプであり配当を主目的に据えるなら相性の良い部類に入る。
今後の値動き予想!!(5年間)
ビー・エム・エルについて、現在株価3,895円前後を基準に見ると創薬バイオや新興ITのように研究開発の成否や技術トレンドで業績が大きく振れる企業とは性格が大きく異なり、臨床検査という医療インフラ分野を中核とした安定収益型の企業と位置づけられる。生化学検査を中心に全国規模の検査ラボと検体集配ネットワークを構築しており、病院や診療所と長期的な取引関係を持つビジネスモデルである。一度取引が始まると継続性が高く、医療需要に支えられたストック性の強い収益構造を持っている。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、検査需要が底堅く推移する中で高付加価値検査や特殊検査の比率が徐々に高まり、利益率が想定以上に改善する展開を想定する。加えて、電子カルテなど医療情報システムが補完的な収益源として定着し、検査事業とのシナジーが評価される。この場合、営業利益率は7%台後半まで回復しROEも一桁後半へと持ち直す。市場からは「低成長だが安定した高配当医療インフラ株」として再評価され、PERは16倍前後で維持される。株価は配当を受け取りながら緩やかに上昇し、5年後には5,000円から5,500円程度を目指す展開が想定される。派手さはないが安定した右肩上がりのシナリオである。
中間のシナリオでは、検査事業は安定的に推移するものの、利益率の改善は限定的にとどまり営業利益率は6%台前半、ROEは5%前後で落ち着く。業績は大きく崩れないが成長性も乏しく市場の評価は現在水準を大きく超えない。この場合、PERは13〜15倍程度に収れんし、株価は大きなトレンドを描かず配当を受け取りながらレンジ内で推移する。5年後の株価は4,300円から4,800円程度となる中立的なシナリオが現実的である。高安定だが評価の切り上がりには時間がかかる局面といえる。
悪い場合のシナリオでは、診療報酬改定やコスト上昇の影響により利益率がさらに圧迫される展開を想定する。検査需要自体は大きく減らないものの、営業利益率は5%台前半まで低下しROEも4%前後にとどまる。この場合、市場は成長性の乏しさを強く意識し、PERは11〜12倍程度まで切り下がる可能性がある。株価は評価調整が先行し5年後には3,000円から3,500円程度で推移する弱気シナリオとなる。ただし、医療インフラ企業としての安定性から、急落や長期低迷にはなりにくいと考えられる。
総合すると、現在株価3,895円前後を起点としたビー・エム・エルの5年間の値動きは、良い場合で5,000円から5,500円程度、中間で4,300円から4,800円、悪い場合でも3,000円から3,500円程度というレンジが想定される。急成長や株価倍増を狙う銘柄ではないが、医療インフラとしての安定性と3%前後の配当利回りを背景に、値下がりリスクを抑えながら中長期でインカムを積み上げていく投資と非常に相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月27日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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