株価
IDホールディングスとは

IDホールディングスは独立系のシステムインテグレーターとして、システムマネジメントを軸に幅広いITサービスを提供する中堅IT企業である。本社は東京都千代田区五番町に置きつつ、鳥取県に一部本部機能を持つ拠点体制を構築している点も特徴で首都圏と地方拠点を組み合わせた事業運営を行っている。
1969年の設立以来50年以上にわたり、大手金融機関や社会インフラ企業を中心に累計1,000社以上の企業のシステムを支えてきた実績を持つ。コンサルティングからITインフラ構築、アプリケーション開発、システムマネジメント、クラウド、サイバーセキュリティまでをワンストップで提供できる体制を整えており、顧客の多様な要望に対して最適な提案を行うことで高い評価を得ている。
同社の中核は国内最大級ともいえるシステムマネジメント体制にある。業務に精通した1,600名以上のシステムマネジメントエンジニアを擁し、アプリケーション開発やITインフラと連携したトータルサービスを提供することで安定したシステム運用と業務効率化を実現している。さらに、マルチクラウドソリューションサービスを展開し、近年加速する企業のクラウドシフトを強力に支援している。
アプリケーション開発においては、長年にわたり蓄積してきた顧客システムに関する業務知識とノウハウを強みとし金融機関やエネルギー分野など幅広い業界で実績を持つ。従来型の開発手法に加え顧客ニーズに応じてアジャイル開発も活用し柔軟かつスピーディに対応することでコスト効率と安定性を両立したシステム構築を行っている。
また、デジタルトランスフォーメーション分野への対応も重要なテーマとなっている。RPAやAIなどのデジタル技術を活用した業務変革ニーズの高まりを受け、先端技術の調査・研究を行う部門やDX推進の専門組織を設置し、顧客のビジネス変革に貢献する付加価値の高いサービス提供を進めている。
海外展開にも積極的で2004年に中国・武漢市に現地法人を設立して以降、東南アジア、北米、欧州へと拠点を拡大してきた。海外ネットワークを活用し、時差を利用した24時間365日体制でグローバルなシステムマネジメントや開発サービスを提供できる点は、国内専業SIerとの差別化要素となっている。
総合すると、IDはシステムマネジメントを中核に、開発、インフラ、クラウド、セキュリティ、DXまでを網羅する総合ITサービス企業であり、派手な成長を狙うタイプではないものの長期取引を前提とした安定収益型のビジネスモデルを持つ。社会インフラや金融分野を支える堅実なSIerとして、中長期での持続的な事業展開が期待される企業である。
IDホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 25,766 | 1,372 | 1,553 | 747 | 44.4 | 33.3 |
| 連22.3 | 27,805 | 1,869 | 1,922 | 1,046 | 61.6 | 40 |
| 連23.3 | 31,101 | 2,424 | 2,504 | 1,402 | 84.5 | 45 |
| 連24.3 | 32,680 | 2,769 | 2,860 | 1,777 | 106.4 | 50 |
| 連25.3 | 36,274 | 3,780 | 3,862 | 2,389 | 142.5 | 70(記) |
| 連26.3予 | 40,000 | 4,150 | 4,150 | 2,540 | 149.6 | 70〜75 |
| 連27.3予 | 43,000 | 4,450 | 4,460 | 2,680 | 157.9 | 75〜80 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 1,654 | -360 | -1,275 |
| 2024.3 | 1,422 | -233 | -432 |
| 2025.3 | 3,557 | -2,279 | -1,509 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 7.7 | 13.5 | 8.0 | – | – |
| 2024.3 | 8.4 | 14.8 | 8.8 | – | – |
| 2025.3 | 10.4 | 17.6 | 10.6 | 8.7〜14.3 | 2.60 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益の推移を見ると営業利益は連24.3期が27億円、連25.3期が37億円、連26.3期予想では41億円と2年連続で大きく伸びている。経常利益も28億円から38億円、41億円へ、純利益も17億円から23億円、25億円へと拡大しており、売上成長に加えて利益成長がしっかり伴っている点が特徴的である。規模はまだ中堅だが、利益の伸び方はかなり力強い。
収益性の面では営業利益率が2023年の7.7%から2024年に8.4%、2025年には10.4%まで上昇している。SI企業で営業利益率が二桁に乗ってくるのは評価できる水準であり、システムマネジメントを軸としたストック性の高い収益構造が効いてきていることがうかがえる。資本効率も明確に改善している。ROEは13.5%から14.8%、17.6%へと上昇し、ROAも8.0%から8.8%、10.6%へと右肩上がりになっている。いずれも中堅SIとしては高水準で、利益成長が資本効率の改善につながっている好循環に入っているといえる。
バリュエーション面では、2025年実績ベースのPERは8.7倍から14.3倍、PBRは2.6倍となっている。ROEが17%台まで上昇していることを踏まえると、PBR2倍台後半は割高とは言い切れず、成長性を織り込んだ妥当な評価水準といえる。PERについてもレンジ下限では割安感があり、上限でも利益成長が続く前提であれば許容されやすい水準である。
以上を踏まえた投資判断としては、IDホールディングスは売上拡大とともに営業利益率、ROE、ROAが揃って改善しておりSI企業として一段上のフェーズに入りつつある。利益成長の勢いがあり、評価面も極端に割高ではないことから短期的な割安株というよりは成長を確認しながら中長期で評価が切り上がっていくタイプの銘柄と判断される。
高配当狙いの銘柄ではないが、業績成長と配当の増加が同時に進んでいる点を評価すれば、成長株としてポートフォリオに組み入れる意義は十分にある。今後も利益率と資本効率の改善が続くかどうかが、株価水準を判断する最大のポイントになる。
配当目的とかどうなの?
配当目的でると、IDホールディングスは十分に成立する水準に入りつつあるという評価になる。予想配当利回りは連26.3期が3.18%、連27.3期が3.40%と、3%台を明確に超えてきている。日本株全体で見ても高めの水準であり、単なる成長株ではなく、インカム目的でも検討対象に入る数字になっている。
この配当で評価すべき点は、業績と歩調を合わせて配当が伸びていることにある。営業利益は40億円規模まで拡大し、営業利益率は10%台、ROEも17%台まで上昇している。利益成長に裏付けられた増配であり、無理をして配当を出している印象はない。配当性向を急激に引き上げているわけでもなく、持続性を意識した配当といえる。
一方で、配当特化銘柄かと言われると、そこまでではない。3%台前半から半ばという利回りは魅力的だが、商社やエネルギー、金融といった高配当セクターと比べれば主役級とは言いにくい。あくまで業績成長を前提とした配当であり、インカム一本で勝負する銘柄ではない。
整理すると、IDホールディングスは高配当株として最優先で選ぶ銘柄ではないが、成長を取りながら3%台の配当も受け取れるバランス型の投資に向いた銘柄といえる。値上がり益と配当の両取りを狙う中長期投資との相性は良く、業績拡大が続く限り配当目的としても十分に検討に値する水準にある。
今後の値動き予想!!(5年間)
IDホールディングスを現在株価2,200円前後を基準に見ると、創薬バイオや新興ITのように事業環境の変化で業績が急変する企業とは異なりシステムマネジメントを中核とした安定性の高い独立系SI企業と位置づけられる。近年は売上成長に加えて営業利益率、ROE、ROAが揃って改善しており、企業体質が一段階上のフェーズに入っている点が特徴である。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、システムマネジメント事業を軸に安定した受注拡大が続き、クラウド、DX、セキュリティ関連の需要取り込みが進む展開を想定する。営業利益率は10%台前半を維持し、ROEも15%後半から17%台で安定する。利益成長が続くことで市場の評価が切り上がり、PERは14倍前後まで許容される。この場合、株価は業績の積み上がりに沿って上昇し、5年後には3,200円から3,600円程度を目指す展開が想定される。成長と配当の両立が評価される、比較的素直な右肩上がりのシナリオである。
中間のシナリオでは、業績は会社想定に近いペースで推移し、売上と利益は堅調に伸びるもののサプライズは限定的となる。営業利益率は10%前後、ROEは15%前後で落ち着き、市場評価も現状水準を大きく超えない。この場合、PERは11〜13倍程度に収れんし、株価は配当を受け取りながら緩やかに水準を切り上げる動きとなる。5年後の株価は2,600円から3,000円程度が中心となる現実的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、IT投資の抑制や人件費上昇の影響で利益率の改善が止まり、成長期待が後退する展開を想定する。業績が大きく崩れるわけではないが、営業利益率は一桁後半にとどまりROEも低下する。この場合、市場の評価は慎重になり、PERは9〜10倍程度まで低下する可能性がある。株価は評価調整が先行し、5年後は1,800円から2,100円程度で推移する弱気シナリオとなる。ただし、ストック性の高い事業構造から下値は比較的堅いと考えられる。
総合すると、現在株価2,200円前後を起点としたIDホールディングスの5年間の値動きは良い場合で3,200円から3,600円程度、中間で2,600円から3,000円、悪い場合でも1,800円から2,100円程度というレンジが想定される。急成長や株価倍増を狙う銘柄ではないが、業績改善と3%台の配当を背景に値下がりリスクを抑えつつ中長期で着実なリターンを狙う投資と相性の良い銘柄という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月27日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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