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サイボウズとは

サイボウズは、業務効率化を支援するクラウドサービスを主力とする日本のソフトウェア開発会社であり、国内クラウドグループウェア分野で高いシェアと知名度を持つ企業である。特に、ノーコード・ローコードで業務アプリを構築できる「kintone」を主力製品とし、企業のDX推進や現場主導の業務改善ニーズを捉えて成長してきた。JPX日経中小型株指数の構成銘柄でもある。
同社は1997年に愛媛県松山市で創業された。創業メンバーは青野慶久、高須賀宣、畑慎也の3名で、創業当初からWeb技術を活用して「企業の仕事をもっと簡単にする」ことを目指していた。最初の製品である「サイボウズ Office 1」は、営業拠点や販売代理店を持たず、インターネット上のみで販売するという当時としては先進的な手法を採用していた点が特徴である。
社名のサイボウズは、「電脳」を意味するcyberと、親しみを込めた呼称である坊主を組み合わせた造語で、「電脳社会の未来を担う者たち」という意味が込められている。創業初期は家賃の安い松山市内の住居を拠点に事業を行うなど、固定費を抑えた経営を徹底しながら、インターネット販売による事業拡大を図ってきた。
事業内容の中心は、企業内の情報共有や業務効率化を支援するクラウドサービスの開発・提供である。グループウェアを中核としたクラウド基盤を構築し、顧客は中小企業から大企業、自治体まで幅広い。月額・年額課金によるサブスクリプションモデルを採用しており、継続利用によるストック型収益が事業の基盤となっている。
主な製品としては、300人以下の中小企業向けに「かんたん」をコンセプトとしたグループウェア「サイボウズ Office」、300人以上の企業向けに高いカスタマイズ性と管理機能、拡張性を備えたエンタープライズ向け製品「Garoon」がある。これらに加え、業務アプリをノーコード・ローコードで作成できるクラウド基盤「kintone」は、IT部門に依存せず現場で業務改善を進められる点が高く評価され、同社の成長を牽引する主力サービスとなっている。
また、メール対応をチームで共有・管理できる「メールワイズ」など、業務コミュニケーションの効率化を目的とした周辺サービスも展開している。過去には個人・小規模グループ向けの無料クラウドサービス「サイボウズLive」を提供していたが、現在は法人向けクラウドサービスに経営資源を集中させている。
近年はコラボレーションツール事業に経営資源を集約し、国内市場での地位確立に加え、海外展開にも取り組んでいる。本社のほか大阪、松山にオフィスを構え、中国、ベトナム、米国に子会社を持つなど、グローバルでの事業基盤整備を進めている。全体としてサイボウズは、クラウド・サブスクリプション型の業務効率化サービスを軸に、安定した継続収益と成長性を併せ持つ企業であり、特にkintoneを中心としたノーコード分野での競争力を武器に、国内外での利用拡大を目指すソフトウェア企業と位置づけられる。
サイボウズ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 22.12期 | 22,067 | 611 | 987 | 66 | 1.5 | 13 |
| 23.12期 | 25,432 | 3,394 | 3,579 | 2,488 | 52.3 | 14 |
| 24.12期 | 29,675 | 4,892 | 5,335 | 3,555 | 75.0 | 30 |
| 25.12期予 | 37,200 | 9,100 | 9,050 | 6,300 | 136.2 | 40 |
| 26.12期予 | 41,000 | 10,500 | 10,500 | 7,300 | 157.9 | 40〜45 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 22.12期 | 1,328 | -3,121 | 1,929 |
| 23.12期 | 4,548 | -2,532 | -777 |
| 24.12期 | 5,601 | -3,089 | -3,599 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12期 | 13.3 | 12.9 | 22.1 | — | — |
| 2024.12期 | 16.4 | 16.8 | 30.5 | 24.3~51.2 | 8.27 |
| 2025.12期(予) | 24.4 | 29.8 | 54.1 | 24.4 | — |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益規模の推移を見る。23.12期の営業利益は約33億円、24.12期は約48億円と増加し、25.12期予想では約91億円、26.12期予想では約105億円まで拡大する見通しとなっている。経常利益・純利益も同様に急拡大しており、純利益は23.12期約24億円から25.12期予想で約63億円、26.12期予想で約73億円と、短期間で利益水準が数倍に成長する構図である。売上成長に対して利益の伸びが大きく、収益構造が大きく改善している点が際立つ。
次に収益性を見る。営業利益率は23.12期13.3%、24.12期16.4%、25.12期予想24.4%と急上昇しており、SaaS企業として高水準の収益性に到達している。ROEは22.1%から30.5%、さらに25.12期予想では54.1%と極めて高く、ROAも12.9%から29.8%へと大幅に改善している。これは一時的な要因ではなく、固定費を吸収しながら売上が伸びるサブスクリプションモデルの特性が強く出ている結果と判断できる。
一方で市場評価を見ると、24.12期の実績PERは24.3倍から51.2倍とレンジが広く、実績PBRは8.2倍と非常に高い水準にある。25.12期予想PERは約24.3倍まで低下する見込みだが、これは利益の急拡大によるものであり、依然として成長前提の高評価が続いている状態である。PBR8倍超という水準は、ROEの高さを考慮しても相応に強気な評価であり、業績が想定を下回った場合の調整余地は小さくない。
以上を総合すると、サイボウズは営業利益率・ROE・ROAのいずれもが急激に改善しており、数値面だけを見る限り「高成長SaaS企業の完成形」に近づきつつある。利益成長のスピードと質は非常に高く、本業の競争力は明確である。一方で、PBR8倍台、PER20倍台中盤という評価は、すでに成長を強く織り込んだ水準であり、割安感はない。
投資判断としては、業績の勢いと収益性を重視する成長志向の投資には非常に魅力的だが、評価倍率の高さを考えると短期的には値動きが荒くなりやすい銘柄である。長期で見れば高成長が続く限り株価の上昇余地はあるが、新規投資ではタイミング選びが重要で、押し目や成長鈍化リスクを許容できる投資家向けの銘柄といえる。安定性や割安性を重視する投資には向かず、明確に成長を取りに行く判断が前提となる。
配当目的とかどうなの?
サイボウズについて配当目的に向いているかを提示されている数値だけを前提に整理する。まず予想配当利回りを見ると、25.12期・26.12期ともに約1.3%台と低水準であり、一般的な高配当株やインカム目的銘柄と比べると明確に見劣りする。配当利回りそのものを主目的に投資する銘柄ではない、という点ははっきりしている。
一方で、配当の持続性という観点では不安は小さい。営業利益・純利益は急拡大局面にあり、営業CFも大きく伸びているため配当原資は十分に確保されている。配当額も増配基調にあり、業績連動で緩やかに引き上げていく姿勢が読み取れる。ただし、同社は配当性向を高めて利回りを引き上げる方針ではなく、利益の大半を成長投資や内部留保に回すスタンスが明確である。
ROEが50%超、営業利益率も20%超へ急上昇している状況を踏まえると、経営としては「配当で還元するより、再投資した方が株主価値が高まる」フェーズにある企業といえる。その結果として、株価評価は成長期待を強く織り込む形となり配当利回りは構造的に低く抑えられている。
総合すると、サイボウズは配当目的には基本的に向かない銘柄である。インカム狙いで保有する価値は小さく、主なリターン源は株価上昇によるキャピタルゲインである。高成長SaaSとしての事業拡大を信じ株価成長を取りに行く投資家向けの銘柄であり、配当を重視する投資とはスタンスが異なる。配当はあくまで「おまけ」と位置づけるのが妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
サイボウズの現在値は2,909円である。主力のkintoneを中心としたノーコード・クラウドサービスは、国内企業のDX需要や現場主導の業務改善ニーズを背景に高成長局面に入っており、直近数年で営業利益率・ROE・ROAが急速に改善している。特にサブスクリプション型モデルの特性が強く表れ売上拡大に対して利益が加速度的に伸びるフェーズにある。一方で、PBRは8倍台、PERも20倍台と株価はすでに高成長を前提とした水準まで評価されており、今後の株価は業績の「伸び率」と市場が許容する「評価倍率」の組み合わせによって大きく左右される局面にある。こうした前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、kintoneの国内浸透が想定以上に進み、既存顧客のユーザー数拡大やアドオン利用の増加によってARPUが上昇する展開を想定する。加えて、海外展開やパートナーエコシステムの拡充が順調に進み、成長の裾野が広がる。固定費を吸収しながら売上が伸びることで営業利益率は20%台後半を維持し、ROEも高水準を継続する。この場合、市場はサイボウズを国内有数の高成長SaaSとして評価し続け、PERは25倍前後を許容する可能性がある。利益成長と高評価が同時に進めば、5年後の株価は5,000円〜6,500円程度まで上昇する余地があり、現在値から見れば大きなリターンが期待できる。
中間のシナリオでは、kintoneの成長は続くものの、市場の成熟や競争環境の変化により成長率は徐々に平準化していく展開を想定する。営業利益率は20%前後で安定し、ROE・ROAも高水準を維持するがこれ以上の急激な改善は見られない。市場全体のリスク許容度が落ち着く中でPERは20倍前後に収れんし、評価倍率は横ばいとなる。この場合、株価は利益成長に沿って緩やかに上昇し、5年後のレンジは3,500円〜4,300円程度が現実的となる。値動きは上下を繰り返しつつも、長期ではプラスを維持する安定成長型の展開が想定される。
悪い場合のシナリオでは、ノーコード市場への参入企業増加や価格競争、顧客側のIT投資抑制などが重なり売上成長が想定を下回る展開を想定する。成長率の鈍化により営業利益率やROEの改善が止まり、高成長SaaSとしての評価が見直される。この場合、PERは15倍前後まで低下し、PBRも大きく圧縮される可能性がある。評価調整が進めば株価は現在値を下回り、5年後には1,800円〜2,400円程度まで下落するリスクがある。ただし、サブスクリプション型の安定収益と高い顧客定着率が下支えとなるため、事業そのものが大きく崩れない限り長期的な致命的下落にはなりにくい。
総合すると、サイボウズは高成長SaaSとしての収益構造が完成に近づいている一方、株価はすでに高い期待を織り込んでいる銘柄である。良い場合には5,000円超〜6,500円までの上昇余地があり、中間では3,500円〜4,300円、悪い場合でも1,800円〜2,400円程度が一つの目安となる。配当利回りは1%台と低く、リターンの中心は株価成長であるため値動きの振れを許容しつつ成長を取りに行く投資家向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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