株価
大塚商会とは

大塚商会は、システムインテグレーションから保守・運用、さらにはオフィス用品通販までを一体で手がける、日本を代表する情報サービス企業である。中堅・中小企業を主要な顧客層とし、ITの導入から日常運用までを丸ごと任せられる体制を強みとしている。全国に広がる営業網とサポート拠点を背景に、地域密着型で顧客基盤を拡大してきた点が特徴であり、JPX日経インデックス400の構成銘柄にも選ばれている。
同社は1961年に大塚実によって創業され、当初は複写機や感光紙を扱う事務機器商社としてスタートした。その後、オフィスコンピュータやFAX、パソコンといったOA機器の普及を追い風に急成長し、企業ネットワークの拡大とともに、単なる物販からITソリューション提供へと事業の軸足を移していった。現在では、企業の業務効率化やDX推進を支援するソリューションプロバイダとしての位置づけが明確になっている。
事業の柱の一つが、コンピュータやネットワーク関連のシステムインテグレーション事業である。サーバーやパソコン、複合機、ネットワーク機器といったハードウェアの販売に加え、業務ソフトウェア、クラウド環境、セキュリティ対策までを含めた総合的なIT提案を行っている。中堅・中小企業向けに分かりやすく、導入しやすい形でIT環境を構築する提案力が評価され、長年にわたり安定した受注を確保してきた。
もう一つの重要な事業が、導入後の保守・運用を担うサービス&サポート事業である。機器の保守、ヘルプデスク、アウトソーシング、通信回線やクラウド利用、セキュリティサービスなどを月額課金型で提供する「たよれーる」は、同社のストック型収益の中核を担っている。この継続収入が、景気変動の影響を受けにくい安定した収益構造を支えている。
加えて、オフィス用品通販サービス「たのめーる」も大塚商会の特徴的な事業である。事務用品、オフィス機器、LED照明、オフィス雑貨などをカタログやWebで提供し、ITサービスと組み合わせた提案が可能となっている。既存顧客に対してITと消耗品の両面から取引を広げられる点が、同社ならではの強みとなっている。
同社はまた、社会的な取り組みとして障害者雇用にも積極的で、2000年以降、ダイレクトメール発送業務などを通じて、働きやすい職場環境づくりを進めてきた企業としても知られている。なお、社名が共通する大塚製薬や大塚化学などを傘下に持つ大塚ホールディングスや、大塚家具とは資本・事業面での直接的な関係はない。
主要取引先には、リコー、日本電気、IBM、日本ヒューレット・パッカード、キヤノンシステムアンドサポートなど国内外の大手ITベンダーが名を連ねており、連結子会社としてOSK、ネットプラン、アルファシステムなどを擁している。グループ全体として、IT導入から運用、周辺サービスまでを網羅する体制を築いている点が、大塚商会の競争力の源泉となっている。
大塚商会 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 22.12期 | 861,022 | 54,768 | 56,639 | 40,022 | 105.5 | 62.5 |
| 23.12期 | 977,370 | 62,959 | 64,517 | 47,448 | 125.1 | 67.5 |
| 24.12期 | 1,107,668 | 74,360 | 75,931 | 53,481 | 141.0 | 80 |
| 25.12期予 | 1,285,000 | 88,000 | 89,500 | 60,600 | 159.8 | 85〜90 |
| 26.12期予 | 1,250,000 | 85,000 | 86,500 | 58,500 | 154.3 | 90〜95 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 22.12期 | 29,196 | -8,355 | -23,307 |
| 23.12期 | 71,649 | -21,473 | -23,839 |
| 24.12期 | 37,711 | -11,949 | -25,891 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.12期 | 6.4 | 8.4 | 13.8 | — | — |
| 24.12期 | 6.7 | 7.9 | 14.4 | 17.9~26.6 | 3.34 |
| 25.12期予 | 6.8 | 8.9 | 16.3 | 20.5 | — |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益規模の推移を見る。営業利益は22.12期が約547億円、23.12期が約629億円、24.12期が約743億円と着実に拡大している。25.12期予想では約880億円、26.12期予想でも約850億円と高水準を維持する計画であり売上規模1兆円超企業としては安定感のある利益成長といえる。経常利益・純利益も同様に右肩上がりで純利益は22.12期約400億円から24.12期約534億円まで増加し、25.12期は約606億円が見込まれている。26.12期はやや減益予想だが水準自体は高く、調整局面と捉えられる範囲に収まっている。
次に収益性を見る。営業利益率は23.12期6.4%、24.12期6.7%、25.12期6.8%と緩やかに改善している。ITサービス・SI業界では高水準とは言えないが、売上規模が大きい中で安定的に改善している点は評価できる。薄利多売型ではあるがスケールメリットと継続課金型ビジネスにより着実に利益を積み上げる構造が確認できる。
資本効率の面ではROEが13.8%→14.4%→16.3%と明確な上昇トレンドにあり、ROAも8.4%→7.9%→8.9%と安定している。過度な財務レバレッジに頼らず自己資本を活かして利益を伸ばしている点は成熟企業としては健全である。ROE16%台は大型株として十分に高く、資本効率は改善局面にあると判断できる。
一方で市場評価を見ると、24.12期の実績PERは17.9倍から26.6倍のレンジ、PBRは3.3倍と高めである。25.12期予想PERは約20.5倍となっており、成長率を考慮すると「割安」と言える水準ではない。ROE16%水準に対してPBR3倍超は、安定成長・高品質企業としてのプレミアムを織り込んだ評価といえる。
以上を総合すると、大塚商会は売上・利益ともに安定的に拡大し、営業利益率の改善とROE上昇が同時に進んでいる、極めて完成度の高いビジネスモデルを持つ企業である。一方で、PER・PBRはすでに高水準であり、数値面から見て割安感は乏しい。投資判断としては業績の安定性と資本効率の改善を評価した長期・コア保有向け銘柄であり、短期的な値上がり余地よりも安定成長と株主還元を重視する投資に向いている。新規投資は押し目を待つスタンスが妥当で強気に追いかける局面ではないが、質の高い大型ITサービス株としての評価は揺らぎにくい。
配当目的とかどうなの?
大塚商会について配当目的に向いているかをこれまで提示されている数値だけを前提に整理する。まず配当利回りを見ると25.12期予想で2.5%、26.12期予想で2.7%程度と数値としては市場平均並みからやや低めの水準にとどまっている。高配当株と呼べる水準ではなく、配当利回りそのものを主目的に投資する銘柄ではないことは明確である。
一方で、配当の安定性という観点では評価は高い。営業利益は22.12期約547億円から24.12期約743億円まで着実に拡大し、25.12期、26.12期も高水準を維持する見通しとなっている。純利益も安定しておりキャッシュフロー面でも営業CFが大きくプラスで推移していることから配当原資に不安は見当たらない。実際に一株配当は年々引き上げられており、減配リスクは低い企業と判断できる。
ただし、同社は配当性向を高めて利回りを押し上げるタイプではなく、成長投資と内部留保を重視しながら結果として配当を増やしていく方針が読み取れる。ROEは13%台から16%台へ改善しているが、PBRは3倍台と高く市場からは成長と安定性を評価されている分配当利回りは抑えられやすい構造にある。
そのため、大塚商会は「配当をたくさんもらう」ことを第一目的とする投資には向きにくい。一方で、業績の安定成長とともに配当が着実に増えていくことを期待し、長期保有の中でインカムを積み上げていく投資スタイルとは相性が良い。株価が大きく調整した局面では利回りが相対的に魅力的になる可能性はあるが、通常時は配当よりも企業の質と安定性を評価して持つ銘柄といえる。
総合すると、大塚商会は配当目的「だけ」で選ぶ銘柄ではないが、安定成長と増配を前提に長期で配当を受け取り続けるには非常に安心感のある企業である。インカム重視よりも、資産のコア部分に据える安定株としての位置づけが妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
大塚商会の現在値は3,280円である。中堅・中小企業向けITサービスという安定した需要を背景にシステムインテグレーションから保守・運用、オフィス通販までを一貫して手がけるビジネスモデルを持ち、売上・利益規模は長期的に拡大傾向にある。営業利益率は6%台後半と突出して高い水準ではないものの、規模の大きさと安定したストック型収益により着実に利益を積み上げてきた。一方でROEは改善傾向にあり成熟企業としては比較的高い資本効率を確保しているが、PBRは3倍台、PERも20倍前後と市場ではすでに「高品質・安定成長企業」としての評価が織り込まれている状況にある。この点を踏まえ、今後5年間の株価について良い場合・中間・悪い場合のレンジを想定する。
良い場合のシナリオでは、DX需要やクラウド・セキュリティ関連投資が想定以上に拡大し、中堅・中小企業向けIT投資が底堅く推移する展開を想定する。既存顧客へのクロスセルが順調に進みサービス&サポート事業のストック収益がさらに積み上がることで、売上・営業利益ともに予想を上回る成長が続く。この場合、営業利益率は6%台後半を維持しつつ利益規模が拡大し、ROEも15%台後半から17%程度まで上昇する可能性がある。市場からは安定成長と資本効率改善を両立する企業として再評価され、PERは20倍台後半まで許容される展開も考えられる。このシナリオでは、5年後の株価は4,500円〜6,000円程度まで上昇する余地がある。
中間のシナリオでは、IT投資需要は堅調に推移するものの、大きな加速は見られず業績は会社計画に沿った安定成長にとどまる展開を想定する。営業利益率は6%台半ばから後半で安定し、ROEも15%前後で推移するが成長性に対する市場評価は現状水準から大きく変わらない。この場合、PERは20倍前後に収れんし、株価は利益成長に応じて緩やかに上昇するにとどまる。5年後の株価レンジとしては3,500円〜4,200円前後が現実的で、配当を受け取りながらの中長期保有に適した値動きになると考えられる。
悪い場合のシナリオでは、国内IT投資の鈍化や価格競争の激化により、売上成長が想定を下回る展開を想定する。特にSI案件の単価下落やコスト増が重なると営業利益率が6%を下回り、ROEの改善も止まる可能性がある。この場合、市場評価は慎重になりPERは15倍前後まで低下し、PBRも2倍台前半へと調整されるリスクがある。こうした評価調整局面では、株価は現在値を下回り、5年後には2,000円〜2,500円程度まで下落する可能性がある。ただし、強固な顧客基盤と安定したキャッシュフローが下値を支えるため、業績が急激に悪化しない限り極端な下落にはなりにくい。
総合すると、大塚商会は5年間の中長期で見れば、安定した事業基盤と着実な利益成長が株価を支える一方、すでに高い評価を受けているため値動きは比較的穏やかになりやすい銘柄といえる。良い場合には4,500円〜6,000円程度までの上昇余地があり、中間シナリオでは3,500円〜4,200円前後、悪い場合でも2,000円台前半から中盤程度が一つの目安となる。配当利回りは2%台後半と高配当ではないため、主なリターン源は安定成長に伴う株価上昇であり長期で企業の質を評価する投資家向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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