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SBIグローバルアセットマネジメントとは

SBIグローバルアセットマネジメントは金融機関向けの有価証券運用受託を事業の中核に据え、投資信託データの販売、金融情報提供、各種セミナー運営、指数連動型投資信託を含む資産運用ビジネスを展開する、SBIグループ傘下の金融サービス企業である。本社は東京都港区六本木に置き、東証プライム市場に上場している。
同社のルーツは1998年にさかのぼり、米国の大手投資調査会社であるMorningstar, Inc.と日本の初代ソフトバンクによる合弁会社として設立された。当初から投資信託の評価や格付け、金融商品の分析といった分野に強みを持ち日本における投信評価ビジネスの草分け的存在として認知を広げてきた。2004年にはSBIグループの傘下に入り、その後はSBIの金融ネットワークを活用しながら情報サービスと資産運用の両面で事業を拡大してきた。2008年には株式新聞社を吸収し株式新聞の発行やWeb配信を通じて、株式・企業情報分野にも事業領域を広げている。
長年にわたり「モーニングスター」ブランドを用いて投資信託評価や金融情報提供を行ってきたが、2023年には同ブランドをMorningstar, Inc.へ返還し現在はSBIグループのブランド戦略のもとで事業を展開している。これにより、海外ブランド依存から脱却し、国内金融機関や個人投資家向けサービスによりフォーカスした体制へ移行したと位置づけられる。
事業構成は大きく、ファイナンシャル・サービス事業とアセットマネジメント事業の二本柱となっている。ファイナンシャル・サービス事業では投資信託やファンドに関するデータベース提供、ファンドレポートの作成・配信、株式新聞Web版を中心とした株価・企業情報の発信などを行っている。これらのサービスは個人投資家向けに提供される一方、証券会社や銀行、運用会社といった金融機関にとっては顧客向け説明資料や販売支援ツールとして利用されており、ストック型の収益源となっている。
また、ウェブ広告、資産運用セミナー、IR支援、ライフプラン関連セミナーなども手がけており、金融情報を起点とした周辺ビジネスを幅広く展開している。特に金融機関向けには有価証券運用に関する投資助言やコンサルティングを提供しており、預かり資産の運用を受託する形で安定的な収益を確保している点が特徴となっている。
アセットマネジメント事業では公募投資信託や私募ファンドの運用をはじめ、適格投資家向け運用商品、オルタナティブ投資など、多様な資産クラスを対象とした運用サービスを展開している。指数連動型投資信託を含むパッシブ運用から、アクティブ運用、オルタナティブ投資まで商品ラインナップは幅広く、SBIグループの証券・銀行チャネルを通じた資金流入が強みとなっている。
グループ体制としては金融情報発信や投資助言を担うウエルスアドバイザー、公募・私募ファンド運用を中核とするSBIアセットマネジメント、オルタナティブ投資を手がける関連会社、岡三証券グループと共同で運営する運用会社などを傘下に持ち、情報提供から運用実務までを一貫してカバーする体制を構築している。これにより、金融商品に関する分析・評価と実際の運用ノウハウを相互に活用できる点が同社グループの競争力の源泉となっている。
全体として、SBIグローバルアセットマネジメントは金融機関向け運用受託という安定的な収益基盤を軸に、投信データ販売や金融情報サービス、資産運用事業を組み合わせたビジネスモデルを持つ企業であり、個人投資の拡大や資産運用の高度化が進む国内市場において堅実かつ継続性の高い事業展開を行う金融サービスグループとして位置づけられる。
SBIグローバルアセットマネジメント 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20.3期 | 6,814 | 1,541 | 1,858 | 1,230 | 14.9 | 15 |
| 21.3期 | 7,485 | 1,765 | 2,155 | 1,318 | 15.3 | 16 |
| 22.3期 | 8,123 | 2,129 | 2,403 | 1,454 | 16.2 | 17 |
| 23.3期 | 8,747 | 1,831 | 2,458 | 5,443 | 60.7 | 21 |
| 24.3期 | 10,137 | 2,111 | 2,510 | 1,589 | 17.7 | 21.5 |
| 25.3期 | 11,568 | 2,269 | 2,565 | 1,646 | 18.4 | 22 |
| 26.3期予 | 24,500 | 4,300 | 4,600 | 2,600 | 18.8 | 22.5〜23 |
| 27.3期予 | 38,000 | 6,400 | 6,700 | 3,200 | 23.2 | 23〜23.5 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3期 | 2,608 | -3,471 | -1,889 |
| 24.3期 | 8,762 | -5,492 | -2,148 |
| 25.3期 | 2,007 | 359 | -2,013 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3期 | 20.9 | 25.4 | 33.0 | — | — |
| 24.3期 | 20.8 | 8.5 | 9.9 | — | — |
| 25.3期 | 19.6 | 9.0 | 10.7 | 27.8~42.7 | 2.65 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益規模の推移を見ると営業利益は24.3期が約21億円、25.3期が約22億円と着実に増加しており、26.3期予想では43億円と大きく伸びる計画になっている。経常利益も25億円から26億円、さらに46億円へと拡大見通しで、純利益も15億円から16億円、26億円へと増加する想定である。26.3期は売上・利益ともにほぼ倍増に近い成長を見込んでおり、業績面では明確な拡大局面に入る前提が置かれている。
収益性の面では営業利益率は23.3期20.9%、24.3期20.8%、25.3期19.6%とわずかに低下しているものの依然として20%前後という非常に高い水準を維持している。資産運用・金融情報ビジネスとしては収益力が際立っており、規模拡大後も高い利益率を保てている点は強みといえる。
一方、資本効率を見るとROEは23.3期33.0%から24.3期9.9%、25.3期10.7%へと大きく低下している。ROAも25.4%から8.5%、9.0%へと同様に下がっており、これは23.3期に一時的な利益要因があった反動と自己資本や資産の増加による希薄化の影響が出ていると読み取れる。水準自体は10%前後を確保しているものの、過去の高効率期と比べると見劣りする。
バリュエーション面では25.3期実績ベースのPERは27.8倍から42.7倍と高水準で、PBRも2.6倍となっている。営業利益率が20%前後と高いことを踏まえてもPER30倍超は成長期待をかなり織り込んだ評価であり、割安感は乏しい。ROEが10%台前半に落ち着いている現状では、PBR2倍台後半もやや高めの水準といえる。
以上を総合すると、SBIグローバルアセットマネジメントは26.3期以降の業績拡大を前提とすれば、利益成長力と高い営業利益率を備えた企業である。一方で、ROE・ROAは過去ピークから低下しており、現在のPER・PBRはその回復や高成長を織り込んだ水準にある。投資判断としては、業績拡大が計画どおり進むことを前提に中長期で成長を評価する投資には合理性があるが、現時点の株価水準では割安とは言い難く、短期的には期待先行になりやすい。成長の実現を確認しながら押し目を待つスタンスもしくは高収益体質を評価した中長期の成長期待枠としての位置づけが妥当と考えられる。
配当目的とかどうなの?
SBIグローバルアセットマネジメントについて、配当目的に向いているかを、提示された数値だけを前提に整理する。まず配当利回りを見ると、26.3期予想で3.7%、27.3期予想で3.7%台後半と、東証プライム全体の平均と比べるとやや高めの水準に位置している。いわゆる高配当株とまでは言えないものの、金融・資産運用関連銘柄としては十分にインカムを意識できる利回りであり、配当目的の投資対象として最低限の条件は満たしている。
業績とのバランスを見ると、営業利益は24.3期約21億円、25.3期約22億円から、26.3期予想では約43億円と大きく伸びる計画となっている。純利益も15億円台から26億円規模へ拡大する想定であり、利益成長を前提とすれば配当の維持・増加余地は十分にある。実際に配当額も段階的に引き上げられており、利益連動型で配当を積み上げていく姿勢は確認できる。
一方で注意点として、ROEは23.3期の33.0%から24.3期9.9%、25.3期10.7%へと大きく低下しており、資本効率は以前ほど高くない。営業利益率は20%前後と非常に高水準を維持しているものの、自己資本や資産の増加により、配当余力が急激に拡大する構造ではない。配当を最優先に資金を回すタイプではなく、成長投資と株主還元を並行させる企業といえる。
バリュエーション面では、25.3期実績ベースのPERが27.8倍から42.7倍、PBRが2.6倍台と高めであり、配当利回り3%台後半は株価水準に支えられた結果とも言える。株価が大きく上昇すれば利回りは低下しやすく、逆に株価が調整すれば利回りは上がるが、その場合は評価面の不安も同時に意識されやすい。
以上を踏まえると、SBIグローバルアセットマネジメントは、配当だけを目的に長期保有する銘柄というよりも、高い営業利益率と業績拡大を前提にしつつ、3%台後半の配当を受け取るタイプの銘柄と判断できる。インカム重視の高配当株投資にはやや物足りないが、成長性と配当を両立させたい投資家にとっては、配当が一定の下支えになる中期保有向けの銘柄という位置づけが妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
SBIグローバルアセットマネジメントについて現在値608円を基準に、今後5年間の株価推移を良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオに分けて考える。以下は、これまで提示されている業績規模、営業利益率、ROE・ROA、PER・PBR、配当利回りといった数値だけを前提にした想定であり、確定的な将来予測ではない。
まず良い場合を考える。金融機関向けの有価証券運用受託が計画どおり、あるいはそれ以上に拡大し指数連動型投資信託や投信データ販売への資金流入も継続的に増えるケースである。26.3期に予定されている売上・利益の大幅な拡大が一過性ではなく、その後も安定して積み上がると市場は同社を高収益かつ成長持続性のある資産運用会社として再評価しやすくなる。営業利益率が20%前後という高水準を維持しROE・ROAも10%前後で安定すれば、現在高めとされるPER水準に対する警戒感は薄れ評価が成長前提で固定される可能性がある。この場合、株価は段階的に水準を切り上げ、5年後には1,400円から1,800円前後まで上昇する展開が想定される。配当利回りも3%台後半を維持できれば、値上がり益と配当の両方を狙えるシナリオになる。
次に中間のシナリオでは、業績は計画どおり拡大するものの、市場の評価が慎重でPERの大きな上昇が起きないケースを想定する。営業利益率は20%前後を維持する一方、ROE・ROAは10%前後で横ばいとなり、資本効率の改善が目立たない状況が続く。この場合、株価は配当利回り3%台後半が下支えとなり、大きく崩れることはないが急騰もしにくい。5年後の株価水準としては900円から1,200円程度が現実的で、現在値からは緩やかな上昇にとどまる。投資スタンスとしては、配当を受け取りながら中長期で保有する形が中心になる。
最後に悪い場合を考える。資産運用業界全体の競争激化や市場環境の悪化により、運用残高の伸びが鈍化し利益成長が想定を下回るケースである。営業利益率が低下し、ROE・ROAの改善も進まない場合、市場は成長期待を引き下げPERはレンジ下限方向へ調整されやすくなる。配当が維持されていたとしても、評価低下が先行し株価は現在値を下回る水準で推移する可能性がある。このシナリオでは、5年後の株価は400円から500円程度まで下落するリスクがあり、配当によるインカムは確保できてもトータルリターンは伸び悩む。
総合すると、SBIグローバルアセットマネジメントの5年後の株価は事業成長の持続性と市場評価の方向性によって大きく分かれる。良い場合は1,400円から1,800円前後、中間では900円から1,200円程度、悪い場合は400円から500円程度という幅のあるレンジが想定される。高い営業利益率と安定した配当を背景に下値は比較的限定されやすい一方、株価の大幅な上昇には業績拡大が一過性でないことを示し続ける必要があり、成長の実現度合いが中長期の株価を左右するポイントになる。
この記事の最終更新日:2025年12月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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