株価
あすか製薬ホールディングスとは

あすか製薬ホールディングス株式会社である。グループの中核事業会社はあすか製薬株式会社で、日本の中堅医薬品メーカーとして長い歴史を持つ。婦人科領域や甲状腺領域に強みを持つ点が最大の特徴で、ホルモン関連薬を中心に医療現場で一定の存在感を築いてきた。武田薬品工業と親密な関係にあり、製品供給や事業連携を通じて安定した事業基盤を形成してきたことも、同社の信頼性を支える要素となっている。
あすか製薬は2005年に帝国臓器製薬とグレラン製薬が合併して誕生した企業で、合併以前から積み上げてきたホルモン剤や内科系医薬品のノウハウを引き継いでいる。事業の中心は医療用医薬品であり、婦人科、内科、泌尿器科を主要な診療科領域としている。特に甲状腺ホルモン製剤のチラーヂンは同社の看板製品で、甲状腺疾患治療において国内で高いシェアと認知度を持つ製品である。その他にも、消化性潰瘍治療薬のアルタット、胃防御因子製剤のイサロン、高脂血症治療薬のリピディルなど、長年にわたり医療現場で使われてきた製品群を多数有している。
事業構造としては、これまで後発医薬品を軸に安定収益を確保してきたが、薬価改定による収益圧迫や競争激化を背景に、近年は先発医薬品の比率引き上げに注力している。自社創製品や付加価値の高い医薬品を増やすことで、収益性の改善と中長期的な成長を目指す戦略を明確にしている点が特徴である。一方で、自社製品だけでなく、他社医薬品のOEM受託製造や後発医薬品の委託製造も行っており、製造インフラを活かした安定収益源を確保している。これにより、医薬品の安定供給という社会的役割と、事業としての収益性の両立を図っている。
2021年には経営の透明性向上と事業ポートフォリオの柔軟な運営を目的として持株会社体制へ移行し、あすか製薬ホールディングス株式会社が設立された。これにより、旧あすか製薬株式会社は上場廃止となり、ホールディングス会社が上場主体となった。持株会社化以降は、研究開発投資の配分最適化、グループ会社の役割分担の明確化、ガバナンス体制の強化などを進めている。中核の医薬品事業を中心に据えつつ、将来的な新領域への展開余地も確保する体制となっている。
研究開発面では、婦人科領域や内分泌系疾患を中心に、医療ニーズの高い分野への新製品投入を目指している。派手な創薬型バイオベンチャーとは異なり、既存の診療領域に根差した現実的な製品開発を行う点が同社のスタイルであり、リスクを抑えつつ着実に製品ラインナップを拡充する姿勢が見られる。グループ会社であるあすか製薬メディカルは、臨床検査や治験支援、医療機器販売などを手掛け、医薬品事業を周辺領域から支えている。
総合すると、あすか製薬グループは、婦人科・甲状腺領域に特化した強みを持ち、後発医薬品で培った安定基盤を活かしながら、先発品比率を高めて収益性の改善を図る堅実型の医薬品企業である。成長スピードは緩やかだが、医療用医薬品というディフェンシブな分野で、安定供給と着実な事業運営を重視する企業体質が特徴といえる。
あすか製薬ホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.3 | 56,607 | 4,795 | 4,880 | 4,290 | 151.2 | 15 |
| 2023.3 | 60,461 | 5,108 | 5,232 | 4,238 | 150.1 | 16 |
| 2024.3 | 62,843 | 6,500 | 6,522 | 7,545 | 266.5 | 40 |
| 2025.3 | 64,139 | 5,331 | 5,107 | 5,101 | 180.0 | 55 |
| 2026.3 予 | 71,000 | 6,000 | 6,000 | 5,000 | 176.1 | 55 |
| 2027.3 予 | 74,000 | 6,400 | 6,400 | 4,500 | 158.5 | 55 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 3,351 | -1,126 | -1,820 |
| 2024.3 | 1,486 | 1,706 | -3,943 |
| 2025.3 | 2,485 | -6,124 | -2,956 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 8.4% | 7.7% | 4.8% | ― | ― |
| 2024.3 | 10.3% | 12.1% | 8.3% | ― | ― |
| 2025.3 | 8.3% | 7.8% | 5.0% | 8.3倍~12.1倍 | 0.87倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を億円ベースで見ると、2024年3月期は営業利益65億円、経常利益65億円、純利益75億円と高水準であった。2025年3月期は営業利益53億円、経常利益51億円、純利益51億円と減益となっているが、依然として50億円規模の利益を確保している。2026年3月期予想では営業利益60億円、経常利益60億円、純利益50億円と、営業面では回復を見込む一方、純利益はやや抑えめの前提となっている。全体として、利益は年による変動はあるものの、安定した黒字水準を維持している。
収益性を見ると、営業利益率は2023年3月期8.4%、2024年3月期10.3%、2025年3月期8.3%と、10%前後で安定して推移している。医薬品メーカーとしては標準的からやや良好な水準であり、極端な高収益ではないが、安定した事業構造がうかがえる。
資本効率の面では、ROEは7.7%、12.1%、7.8%と、2024年に一時的に改善した後、2025年はやや低下している。ROAも4.8%、8.3%、5.0%と同様の動きを示しており、資本効率は高成長企業と比べると控えめだが、医薬品業界としては許容範囲内の水準である。急成長よりも安定性を重視する企業体質が数値に表れている。
バリュエーションを見ると、2025年実績PERは安値平均8.3倍、高値平均12.1倍と低めのレンジにあり、市場評価は比較的慎重である。実績PBRは0.8倍と1倍を下回っており、資産価値に対して株価は割安圏にあるといえる。収益性が極端に悪化しているわけではない中でPBR1倍割れとなっている点は、ディフェンシブ銘柄としての評価が強く、成長期待が高く織り込まれていないことを示している。
以上を総合すると、あすか製薬ホールディングスは、営業利益率・利益規模ともに安定した医薬品メーカーであり、急成長は見込みにくいものの、業績のブレは比較的小さい。PERは一桁台から低十倍台、PBRは1倍割れと、評価面では割安感がある。一方でROE・ROAは一桁台後半が中心で、資本効率の高さを評価する銘柄ではない。
投資判断としては、「高成長期待は低いが、業績安定性と割安評価を重視する中長期向けの堅実銘柄」と位置付けられる。値上がり益よりも、業績の安定と今後の配当を含めたインカム要素を重視する投資スタンスと相性が良い一方、短期的な株価急騰を狙う投資には向きにくい銘柄である。
配当目的とかどうなの?
あすか製薬ホールディングスの予想配当利回りは2026年3月期が2.65%、2027年3月期も2.65%とされている。日本株全体で見ると高配当とは言えないものの、医薬品セクターの中では標準的な水準であり極端に低い利回りでもない。
利益水準を見ると直近実績・予想ともに純利益は50億円前後を安定して確保しており、営業利益率も8%前後で推移している。ROEは7~8%台、ROAは5%前後と資本効率は高くないが、急激な悪化は見られず事業の安定性は比較的高い。こうした数値からは無理に配当を削っている状況ではなく、利益水準に見合った配当を継続していると読み取れる。
また、PERは8倍~12倍程度、PBRは0.87倍と株価評価は控えめであり、配当利回り2.65%は株価が過度に割高でないことを前提とした現実的な水準といえる。成長投資を優先する企業ではなく、一定の利益を安定的に株主へ還元する姿勢が数値からうかがえる。
以上を踏まえると、あすか製薬ホールディングスは高配当株ではないが安定配当を目的とした投資には一定程度向いている銘柄と判断される。利回りの高さを最優先する投資家には物足りない一方、業績の安定性とディフェンシブ性を重視しつつ2%台後半の配当を継続的に受け取りたい投資スタンスには適合しやすい。配当目的としては「可もなく不可もなく、安定重視型」の位置付けである。
今後の値動き予想!!(5年間)
あすか製薬ホールディングスの現在値は2,070.0円である。同社は婦人科領域や甲状腺領域に強みを持つ医薬品メーカーとして安定的な収益基盤を確立しており、営業利益率や純利益水準も概ね堅調である。直近3期の営業利益率は8〜10%台、ROE・ROAは単年度での変動はあるものの概ねプラス圏で推移している。PERは8倍〜12倍程度、PBRは1倍弱と株価評価は収益性を大きく上回るような過熱感はなく、資産・利益水準に対して控えめな買い評価が付されている。配当利回りは2.65%と中間配当株として受け取りやすい水準である。こうした前提を踏まえ、現在の株価を起点に今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、医薬品市場が底堅く推移する中で婦人科領域や甲状腺領域といった同社の主力領域の需要が安定的に伸び、また先発品比率の引き上げが収益性改善に寄与する展開を想定する。特定製品の薬価改善や新製品の投入が実績として形になり営業利益率が10%台後半に改善、ROEも10%台に乗せることで市場評価が高まる可能性がある。この場合、PERが同業他社並みの13〜15倍程度まで許容され利益成長が株価に織り込まれることで、5年後の株価は3,000円〜3,500円程度のレンジになる可能性がある。配当利回りも約2.5%台を維持し、配当収入と値上がり益の両面を得られる展開が期待できる。
中間のシナリオでは、事業環境は概ね横ばいで推移し、営業利益率・ROE・ROAは現状水準を維持するものの劇的な改善は見られない状況を想定する。市場評価は過度に拡大せず、PERは10倍台前半〜中盤にとどまると考えられる。株価は業績の横ばいを反映し、2,000円前後を中心としたレンジで推移する可能性が高い。このシナリオでは配当利回りも2%台前半を維持するため、配当収入を享受しつつ、値動きは比較的穏やかに推移する。
悪い場合のシナリオでは、薬価改定や競合製品の増加、特許失効による主要品目の収益低下などが重なり、営業利益率やROEが低下する展開を想定する。利益縮小や資本効率低下が進むとPERは市場平均より低位に位置する8倍程度まで縮小しやすく、株価は評価倍率の低下と利益水準の減少を同時に織り込む可能性がある。この場合、5年後の株価は1,500円〜1,800円のレンジにとどまることがあり、配当利回りは相対的に高く見えるものの総合リターンは重視されにくい。
総合すると、あすか製薬ホールディングスは安定した医薬品事業基盤を持つものの、成長性よりも安定性と配当性向が評価されやすい銘柄である。良い場合は3,000円超の上昇余地、中間では2,000円前後の推移、悪い場合でも1,500円台半ばまでの下振れリスクが想定される。配当収入を重視しつつ、5年スパンでの値動きをフォローする投資スタンスが適した銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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