株価
エンとは

エン・ジャパン株式会社である。エン・ジャパンは求人情報サイト大手として知られる人材サービス企業であり、インターネットを活用した求人・求職メディア運営を中核に、人材紹介、HR Techプロダクト、採用支援サービス、入社後の活躍・定着支援までを幅広く手掛けている。本社および東京オフィスは東京都新宿区西新宿に所在し、オンラインを主軸とした人材ビジネスを展開している。
同社の最大の特徴は、「入社後活躍」を重視した独自の価値観にある。単に採用人数を増やすことや応募数を集めることを目的とするのではなく、企業と人材が長期的に活躍できる関係を築くことを重視しており、この思想が事業全体に一貫して反映されている。求人広告の制作においても、企業の魅力だけでなく、仕事の厳しさや実態、求める人物像を丁寧に伝えることで、ミスマッチの少ない採用を目指している。
主力サービスである求人/求職メディアでは、「エン転職」を中心に事業を展開している。エン転職は、求人情報の量よりも質を重視し、独自取材による詳細な求人原稿を特徴としている。企業文化や職場の雰囲気、仕事内容の具体像を分かりやすく伝えることで、求職者が納得感を持って応募できる設計となっており、結果として早期離職の抑制や定着率向上につながる点が評価されている。この編集力と取材力は、同社の競争優位性の一つとなっている。
人材紹介事業も同社の重要な柱である。従来の転職支援に加え、近年は若手ハイクラス層の転職支援を成長分野として育成している。ポテンシャルと将来性を重視したマッチングを行い、単なる条件面の一致ではなく、キャリア形成の観点からの提案を行う点が特徴である。成果報酬型モデルであるため、市況や採用ニーズの変化に応じて収益が変動しやすい一方、求人広告事業とは異なる収益構造を持つことで、事業全体のバランスを取っている。
また、採用サイト作成支援や採用ブランディング支援にも注力している。企業が自社専用の採用サイトを持ち、継続的に情報発信できる環境を整えることで、短期的な求人広告に依存しない採用活動を支援している。これにより、企業側は自社の価値観やビジョンを深く伝えることができ、求職者側も企業理解を深めた上で応募することが可能となる。
HR Techプロダクトの分野では、採用活動の効率化や、入社後の活躍・定着を支援するサービスを提供している。データやテクノロジーを活用して、採用プロセスの可視化、選考の最適化、従業員のエンゲージメント向上などを支援しており、「採用して終わり」ではなく、その後の定着や活躍までを含めた支援を行う点が特徴である。これは、少子高齢化や人材不足が進む中で、企業が人材を長く活かす必要性が高まっていることを背景にした戦略といえる。
総合すると、エン・ジャパンは求人情報サイトを中核に、人材紹介、HR Tech、採用サイト作成支援、若手ハイクラス転職支援、活躍・定着支援までを一体的に展開する総合人材サービス企業である。インターネットを活用したサービスを基盤としながら、単なるマッチングビジネスにとどまらず、企業と人材の長期的な関係構築を支援する点に同社の事業の本質と強みがある。
エン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021.3 | 42,725 | 7,771 | 7,939 | 3,502 | 78.2 | 37.1 |
| 2022.3 | 54,544 | 9,633 | 10,138 | 6,628 | 147.7 | 70.1 |
| 2023.3 | 67,716 | 4,249 | 4,072 | 2,695 | 61.0 | 70.1 |
| 2024.3 | 67,661 | 5,161 | 5,369 | 4,196 | 102.4 | 70.1 |
| 2025.3 | 65,678 | 5,892 | 5,943 | 7,628 | 186.8 | 70.1 |
| 2026.3 予 | 62,200 | 3,400 | 3,600 | 2,500 | 64.6 | 24~32 |
| 2027.3 予 | 63,500 | 3,500 | 3,700 | 2,570 | 66.4 | 24~33 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 4,447 | -4,220 | -9,246 |
| 2024.3 | 6,430 | -4,060 | -7,855 |
| 2025.3 | 8,062 | -843 | -3,021 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 6.2% | 7.7% | 5.1% | ― | ― |
| 2024.3 | 7.6% | 13.2% | 8.5% | ― | ― |
| 2025.3 | 8.9% | 20.6% | 13.3% | 23.2倍~41.1倍 | 1.87倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を億円ベースで見ると2024年3月期は営業利益51億円、経常利益53億円、純利益41億円である。2025年3月期は営業利益58億円、経常利益59億円、純利益76億円と大幅な増益となっており、利益水準が一段引き上げられている。一方で2026年3月期予想では営業利益34億円、経常利益36億円、純利益25億円と減益が見込まれており、業績はピークアウトを想定した前提になっている。
収益性を見ると営業利益率は2023年3月期6.2%、2024年3月期7.6%、2025年3月期8.9%と着実に改善している。求人情報・人材サービスという競争の激しい業界の中で、利益率が年々上昇している点は評価でき事業効率が改善していることを示している。
資本効率の面ではROEが7.7%、13.2%、20.6%と大きく上昇しており、2025年3月期には20%を超える水準に達している。ROAも5.1%、8.5%、13.3%と明確な改善傾向にあり、利益成長とともに資産効率も高まっている。特に2025年は、収益性・資本効率の両面で質の高い決算であったといえる。
一方、バリュエーションを見ると2025年実績PERは安値平均23.2倍、高値平均41.1倍とレンジが非常に高い。収益性やROEの改善を考慮しても、PER水準は市場がかなり強気の成長期待を織り込んでいる状態である。実績PBRは1.8倍で、ROE20.6%という水準を踏まえれば極端に割高とは言えないがPERとの組み合わせを見ると評価は先行している印象が強い。
これらを総合するとエン・ジャパンは営業利益率、ROE、ROAが3年連続で改善し、2025年3月期は収益性・資本効率ともに非常に良好な状態にある。一方で、2026年3月期は利益減少が見込まれており、業績面では調整局面に入る前提となっている。その中でPERは20倍台後半から40倍台という高水準にあり、業績の伸びが一服した場合には評価調整が起こりやすい。
投資判断としては、「業績の質は改善しているが、評価はすでに高水準にある成長期待先行型銘柄」と位置付けられる。業績が再び成長軌道に乗れば評価の正当化は可能だが、数値だけを見る限りでは現時点での新規投資はやや慎重姿勢が妥当であり、割安さよりも成長の持続性を重視する投資家向けの局面と判断される。
配当目的とかどうなの?
エン・ジャパンの予想配当利回りは、2026年3月期が1.54%、2027年3月期も1.54%とされている。この水準は日本株全体で見ても低めであり、一般的な高配当投資やインカムゲイン重視の投資スタンスには合致しにくい。
利益面を見ると2025年3月期は純利益76億円と高水準で、ROEも20.6%まで上昇しており収益力そのものは非常に高い。一方で、2026年3月期予想では純利益25億円まで大きく減少する前提となっており、利益の振れ幅は大きい。こうした中で配当水準が抑えられているのは、業績変動への備えや成長投資・内部留保を優先している姿勢の表れといえる。
営業利益率は6.2%から8.9%へと改善し、ROE・ROAも大きく向上していることから、事業の質は明確に良くなっている。ただし、その成果は配当として株主に還元されるよりも、事業成長や将来への投資に回されている構造である。実績PERが23.2倍から41.1倍と高水準で推移している点も、同社が「配当銘柄」ではなく「成長期待銘柄」として市場に評価されていることを示している。
以上を総合すると、エン・ジャパンは配当目的には向かない銘柄と判断される。配当利回りは1.5%台にとどまり、安定したインカム収入を狙う投資には物足りない。一方で、利益成長やROE改善といった事業面の魅力は大きく、同社は配当を重視するよりも業績拡大や将来の企業価値向上による株価上昇を期待する投資スタンスに適した銘柄である。配当目的であれば他銘柄が有力だが成長重視であれば検討余地はある、という位置付けになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
エン・ジャパンの現在値は1,554.0円である。同社は求人情報サイト「エン転職」を中核に人材紹介、HR Techプロダクト、採用サイト作成支援、入社後の活躍・定着支援など幅広い人材サービスを提供する企業である。直近の数値を見ると営業利益率は年々改善し、ROE・ROAも高まっている一方で2026年3月期予想は利益減少が見込まれており、PERは比較的高く評価が先行している局面にある。こうした前提を踏まえ、現在の株価を起点に今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、求人市場全体が堅調に推移し特に採用ニーズが高まる局面が続く中でエン・ジャパンの主力サービスである求人情報メディアや人材紹介サービスの需要が拡大する展開を想定する。採用サイト作成支援やHR Techプロダクトの活用が企業側で広がり、エン・ジャパンの収益基盤は求人広告依存から脱却しつつあると評価される。これにより営業利益率は高水準を維持し、ROE・ROAも引き続き改善傾向を示す。PERが市場平均並みに再評価される場合、市場は同社を「安定成長企業」として評価し直し、PERがレンジ上限の30倍前後まで許容される可能性がある。この場合、5年後の株価は2,400円〜3,000円程度まで上昇する余地があり、成長期待と評価倍率の両面で投資リターンが期待できる。
中間のシナリオでは、求人情報サービスの基盤は堅実に維持されるものの、成長率は市場平均並みにとどまり利益拡大は緩やかである状況を想定する。営業利益率は7〜9%程度、ROEおよびROAは10〜15%程度で推移し、収益性は高いものの抜本的な改善トレンドは見られない。PERは20倍前後で推移し、株価は業績に沿った値動きを示す可能性が高い。この場合、5年間を通して株価は1,500円〜2,000円程度のレンジで推移し、配当と利益安定性を背景に中長期的な下支えはあるものの大きな上昇トレンドには乗りにくい。
悪い場合のシナリオでは、景気後退や企業の採用抑制が進行し、求人情報サービスや人材紹介事業の需要が鈍化する展開を想定する。この場合、採用支援関連の受注が減少し、営業利益率は6%台前半まで低下、ROE・ROAも低迷する可能性がある。また市場評価が慎重になり、PERが15倍前後に低下するという評価調整リスクも考えられる。このような環境では、株価は1,000円〜1,300円程度まで下押しされる可能性があり、配当利回りの高さを魅力とした投資でも値下がりリスクが意識される展開となる。
総合すると、エン・ジャパンは安定した事業基盤を持つ一方で、成長期待を株価に織り込んでいる段階にある。5年間の値動きは、求人市場の需給動向やHR Techプロダクトの導入拡大、そして評価倍率がどこまで維持されるかによって大きく振れるだろう。良い場合は2,400円〜3,000円、中間では1,500円〜2,000円、悪い場合は1,000円〜1,300円というレンジが想定され、配当を含めた中長期的な保有判断は景気動向や採用投資環境の変化を見る必要がある。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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