株価
サワイグループホールディングスとは

サワイグループホールディングス株式会社である。サワイグループホールディングスは大阪市淀川区宮原に本社を置く持株会社で、2021年に設立された。中核子会社である沢井製薬を中心に、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の製造・販売を主力事業とする医薬品グループであり、日本国内におけるジェネリック医薬品の大手メーカーとして確固たる地位を築いている。
同社はもともと沢井製薬として事業を展開してきたが、医薬品業界を取り巻く環境変化、すなわち薬価制度の継続的な引き下げ、品質・安定供給に関する規制強化、競争激化といった構造的な課題に対応するため、2021年4月1日に持株会社体制へ移行した。持株会社化の目的は、ジェネリック医薬品事業の一層の強化、ガバナンス体制の強化と迅速かつ効率的な意思決定の実現、そして将来を見据えた新規事業の育成および経営人材の育成にある。
中核事業であるジェネリック医薬品事業は、子会社の沢井製薬株式会社が担っており、錠剤、カプセル、散剤、注射剤など多様な剤形の医療用医薬品を日本国内で製造・販売している。患者の自己負担軽減と医療費抑制という社会的要請を背景に、医療機関・薬局向けに幅広い製品ラインナップを提供し、国内ジェネリック市場のリーディングカンパニーとしての地位を確立している。
国内グループには、沢井製薬のほか、ジェネリック医薬品を中心とした医薬品売買を行うメディサ新薬、医療用医薬品の製造・販売を行う化研生薬、医療用医薬品の製造を担うトラストファーマテックなどがあり、生産・流通の両面からグループ全体の供給体制を支えている。特にトラストファーマテックは、他社から事業を譲受する形で製造機能を拡充しており、安定供給力の強化につながっている。
また、サワイグループは大型買収を通じて米国市場へ本格的に進出している。米国ではSawai America Holdings Inc.を持株会社とし、その傘下で事業管理を行う体制を構築しており、北米市場におけるジェネリック医薬品事業の拡大を成長戦略の柱の一つとして位置付けている。日本市場が薬価改定の影響で成長しにくい中、海外展開による成長余地を取り込もうとする戦略である。
さらに同社は、ジェネリック医薬品事業を中核としながらも、長期ビジョンとして「Sawai Group Vision2030」を掲げ、事業領域の拡張を進めている。具体的には、疾患予防分野における健康食品事業、診断・治療分野におけるデジタル・医療機器事業、さらには希少疾患を対象とした新薬開発など、ジェネリックにとどまらないヘルスケア事業への展開を目指している。デジタル・医療機器分野では、沢井製薬とFrontActが連携し、新たな医療ソリューションの創出に取り組んでいる。
企業理念は「なによりも健やかな暮らしのために」であり、ジェネリック医薬品を通じた医療費負担の軽減と医療アクセスの向上を社会的使命として掲げている。総じてサワイグループホールディングスは、日本国内で確立したジェネリック医薬品事業を基盤に、持株会社体制による経営の高度化と、米国展開や新規事業への挑戦を通じて、持続的な成長を目指す医薬品グループである。
サワイグループホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.3 | 193,816 | -35,888 | -36,214 | -28,269 | -215.2 | 43.3 |
| 2023.3 | 200,344 | 16,984 | 16,789 | 12,667 | 96.4 | 43.3 |
| 2024.3 | 176,862 | 18,620 | 18,262 | 13,695 | 104.2 | 43.3 |
| 2025.3 | 189,024 | 4,050 | 3,161 | 11,969 | 96.5 | 53 |
| 2026.3 予 | 202,500 | 20,900 | 19,800 | 14,000 | 121.2 | 55 |
| 2027.3 予 | 210,000 | 26,500 | 25,400 | 18,000 | 155.9 | 55〜60 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 13,026 | -27,134 | -1,267 |
| 2024.3 | 23,149 | -23,112 | 2,363 |
| 2025.3 | 27,851 | 6,480 | -32,704 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 8.4% | 6.2% | 3.4% | ― | ― |
| 2024.3 | 10.5% | 6.4% | 3.5% | ― | ― |
| 2025.3 | 2.1% | 6.8% | 3.3% | 11.4倍~18.3倍 | 1.58倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を億円ベースで見ると、2024年3月期は営業利益186億円、経常利益182億円、純利益136億円と高い利益水準を確保している。2025年3月期は営業利益40億円、経常利益31億円と大きく減少している一方、純利益は119億円と比較的高水準を維持しており、損益構造に一時的な歪みが生じていることが読み取れる。2026年3月期予想では営業利益209億円、経常利益198億円、純利益140億円と再び大幅な回復が見込まれており、利益の振れは大きいものの、中期的には高い利益水準を維持する前提となっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年3月期8.4%、2024年3月期10.5%と二桁水準まで改善した後、2025年3月期は2.1%まで急低下している。これは一過性要因による影響が大きいと考えられるが、ジェネリック医薬品事業が本来持つ薬価引き下げリスクやコスト変動の影響を強く受けやすい事業構造も反映している。
資本効率の面では、ROEは6.2%、6.4%、6.8%と緩やかに改善しており、ROAも3.4%、3.5%、3.3%と大きな悪化は見られない。急成長企業と比べると数値は低めだが、巨額の資産と売上を抱えるジェネリック医薬品大手としては、一定の効率性を維持している水準といえる。
バリュエーションを見ると、2025年実績PERは安値平均11.4倍、高値平均18.3倍と、市場評価は比較的妥当なレンジに収まっている。実績PBRは1.5倍であり、資産価値に対してはややプレミアムが付いているものの、業界内での地位や規模を考慮すれば極端な割高感はない。
以上を総合すると、サワイグループホールディングスは、利益の年次変動は大きいものの、売上規模・利益規模ともに国内ジェネリック医薬品大手としての体力を備えた企業である。営業利益率は構造的に高くはなく、安定性よりもボリュームと規模で稼ぐモデルであることが数値に表れている。一方で、PERは二桁前半から後半、PBRは1倍台と、評価は過度に楽観的ではない。
投資判断としては、「高成長株ではないが、規模と市場地位を背景に中期的な業績回復を見込む現実的評価の銘柄」と位置付けられる。値上がり益を狙う場合は業績回復局面を見極める必要があり、安定性と一定のリターンをバランスよく求める投資スタンス向きの銘柄と判断される。
配当目的とかどうなの?
サワイグループホールディングスの予想配当利回りは2026年3月期が2.27%、2027年3月期も2.27%である。日本株全体で見ると中位水準であり、高配当株と呼べる水準ではないが、極端に低いわけでもない。
業績面を見ると営業利益率は2025年に2.1%まで低下しているものの、2026年予想では営業利益・経常利益・純利益が大きく回復する前提となっている。ROEは6%台後半、ROAは3%台と高効率ではないが、巨額の売上規模を持つジェネリック医薬品大手としては安定性を重視した水準で推移している。配当額も2025年の53円から2026年以降は55円水準が想定されており、減配リスクは現時点の数値からは大きく見えない。
バリュエーション面ではPERが11倍〜18倍、PBRが1.58倍と、過度な割高感はなく、配当利回り2.27%は株価が過熱していない前提で成立している利回りといえる。営業キャッシュフローも直近では大きく積み上がっており、配当原資の面でも一定の余裕がある。
以上を総合すると、サワイグループホールディングスは高配当を狙う銘柄ではないが、業績回復を前提にした安定配当目的には一定程度向いている銘柄と判断される。利回り重視で3〜4%以上を求める投資家には物足りない一方、ディフェンシブ性のある医薬品セクターで、2%台前半の配当を中長期で安定的に受け取りたい投資スタンスには適合しやすい。配当目的としては「中配当・安定型」の位置付けである。
今後の値動き予想!!(5年間)
サワイグループホールディングスの現在値は2,420.0円である。同社はジェネリック医薬品(後発薬)の大手メーカーとして日本国内に強固な基盤を持ち、持株会社体制の下でグループ運営と米国展開の強化を進めている。直近数値では営業利益率は一時的に低下したものの、ROE・ROAは安定圏にあり、PERは概ね11倍〜18倍、PBRは約1.5倍と評価は過度に高くない。配当利回りは2%台前半で安定配当株としての性格もある。こうした前提を踏まえ、現在株価を起点に今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、ジェネリック医薬品市場におけるシェア拡大や、長期ビジョンに基づく新規事業(デジタル・医療機器、健康食品、診断・治療関連)の芽が出てくる展開を想定する。国内では薬価制度の変動をうまく吸収しつつ、供給力・コスト競争力を背景に収益性が回復し営業利益率は再び10%台前半、ROEは8〜10%前後まで改善する可能性がある。加えて米国市場での事業推進が進み、海外売上が成長ドライバーとなることで市場評価が上振れしPERが高めのレンジ15倍〜18倍水準まで許容される場合、5年後の株価は3,200円〜3,800円程度まで上昇する余地がある。このシナリオでは、配当利回りも2%台を維持しながら、株価上昇と配当両面でのリターンが期待できる。
中間のシナリオでは、国内ジェネリック市場は堅調に推移するものの、構造変化や薬価改定の影響を受けつつも急激な改善は見られない状況を想定する。営業利益率・ROE・ROAは現状水準で推移し、収益は横ばいから緩やかな増益にとどまる。市場評価はPER10倍〜13倍程度にとどまり、株価は業績に連動して緩やかに上昇もしくはレンジ推移する可能性が高い。この場合、5年間の株価は2,400円〜2,800円程度の範囲で推移し、配当利回りを受け取りながら長期保有する投資スタンスが中心となる。
悪い場合のシナリオでは、薬価制度の影響が重くのしかかり、後発薬マージンの低下や競合増加によって収益性が悪化し営業利益率がさらに低下する展開を想定する。また、海外展開の進捗が想定より鈍化し、新規事業の収益化が遅れることで市場評価が低迷する可能性もある。このような状況ではPERが8倍程度まで低下するリスクがあり、業績悪化と評価倍率の両面で株価は重たくなる。5年後の株価は1,800円〜2,200円程度にとどまる可能性があり、値下がりリスクを意識した展開となる。配当利回りは相対的に高く見えるものの、株価下落のリスクをカバーするほどの水準には届かない可能性がある。
総合すると、サワイグループホールディングスは安定基盤を持つ医薬品メーカーとして収益性の改善や海外展開の進展を織り込んだ上昇シナリオでは3,000円台後半までの上値余地が見込まれる。中間では現状維持もしくは緩やかな上昇のレンジ推移が中心となる一方、薬価制度や競争環境の変化に押される悪いシナリオでは1,800円台前半〜2,000円台前半までの下押しリスクが意識される。配当は安定的に継続する可能性が高いものの、総合リターンは業績回復と評価倍率の動向次第となる。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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