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セルソースとは

セルソース株式会社である。セルソースは東京都渋谷区に本社を置くバイオスタートアップで、脂肪や血液由来の細胞加工受託を中核とした再生医療関連事業を展開している。再生医療を実施する医療機関に対し、細胞の抽出・培養・加工といった技術的な部分だけでなく、法規制対応や運営面まで含めた包括的な支援を行う点に特徴がある。
同社のビジネスモデルは、再生医療を「自ら治療として提供する」のではなく、「医療機関が再生医療を提供するためのインフラを支える」BtoB型モデルである。医療機関から委託を受け、脂肪由来幹細胞、滑膜由来幹細胞、血液由来成分などを加工し、安全性を確保した形で提供することで、医師や医療機関が再生医療に専念できる環境を整えている。加えて、再生医療等の安全性の確保等に関する法律への対応支援や、再生医療導入に伴う事務・経営管理のコンサルティングも行っており、単なる加工受託にとどまらない総合支援型の事業構造となっている。
主力の事業領域は整形外科であり、特に変形性膝関節症やスポーツ障害向けの再生医療を軸としている。高齢化の進展やスポーツ人口の増加を背景に、手術に頼らない治療選択肢へのニーズが高まる中で、同社のサービスは医療現場に浸透してきた。2020年以降はプロスポーツチームや大学スポーツチームとのメディカルバックアップ提携を積極的に進めており、Jリーグ、Bリーグ、大学駅伝チームなど幅広い分野で実績を積み上げている。これにより、臨床実績とブランド認知の両面を強化している。
整形外科に加えて、形成外科や産科・婦人科へも事業領域を拡大している。形成外科では乳房再建などの分野で再生医療支援を行い、産科・婦人科では不妊治療向けのサービスを提供している。2024年には卵子凍結保管受託サービスを開始し、個人利用だけでなく企業の福利厚生としての導入も進んでいる。この分野は女性のキャリア形成やライフプラン支援といった社会的課題とも結びついており、中長期的な成長余地が大きい領域と位置付けられている。
研究開発面では、エクソソームの臨床応用をはじめとする次世代技術にも取り組んでおり、大学や研究機関との共同研究を積極的に進めている。大阪大学や順天堂大学などとの連携を通じて、再生医療の基盤技術の高度化や新たな治療法の確立を目指している。また、研究用途として脂肪由来幹細胞を国内外の研究機関や企業に提供する事業も行っており、臨床以外の分野にも技術を展開している。
事業提携にも積極的で、医療機器、製薬、ヘルスケア、保険といった周辺分野の企業と連携することで、再生医療を取り巻くエコシステムの構築を進めている。動物医療分野への展開や、再生医療に対応した保険商品の共同開発など、治療技術そのものにとどまらず、周辺サービスまで含めた事業拡張を図っている点も特徴である。
さらに、再生医療で培った細胞培養や成分抽出の技術を応用し、スキンケア化粧品や化粧品原料の開発にも取り組んでいる。医療分野で得られた研究成果を一般消費者向け製品へ展開することで、技術の多面的な活用を進めている。
セルソースは創業から比較的短期間で上場を果たし、その後東証プライム市場へと市場区分を変更している。バイオベンチャーとしては珍しく黒字経営を継続しており、外部からの資金調達に過度に依存せず、利益を原資として研究開発や事業拡大に投資する経営姿勢を取っている。シーズ主導ではなく、医療現場や市場ニーズを起点とした事業設計を行っている点も特徴であり、再生医療の社会実装を現実的に進める企業として位置付けられる。
セルソース 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.10 | 4,273 | 1,571 | 1,583 | 1,017 | 54.5 | 0 |
| 2023.10 | 4,510 | 1,221 | 1,194 | 923 | 48.9 | 20(記) |
| 2024.10 | 4,355 | 129 | 236 | 237 | 12.0 | 5 |
| 2025.10 予 | 3,770 | 200 | 200 | 110 | 5.6 | 5 |
| 2026.10 予 | 3,700 | 100 | 100 | 60 | 3.0 | 5 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.10 | 846 | -624 | 1,449 |
| 2024.10 | 591 | -614 | -437 |
| 2025.10 | 333 | -3 | 61 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.10 | 27.0% | 15.0% | 13.4% | ― | ― |
| 2024.10 | 2.9% | 3.9% | 3.3% | ― | ― |
| 2025.10 | 4.4% | 0.1% | 0.1% | 39.7倍~128.3倍 | 1.32倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を億円ベースで整理すると、2023年10月期は営業利益12.2億円、経常利益11.9億円、純利益9.2億円と非常に高い収益水準であった。これに対し、2024年10月期は営業利益1.2億円、経常利益2.3億円、純利益2.3億円と急激な減益となっている。2025年10月期予想では営業利益2.0億円、経常利益2.0億円、純利益1.1億円と小幅な回復にとどまり、2026年10月期予想では営業利益1.0億円、経常利益1.0億円、純利益0.6億円と、利益規模はさらに縮小する前提である。全体として、2023年をピークに利益水準は大きく低下しており、安定した利益成長の軌道には乗っていない。
収益性を見ると、営業利益率は2023年10月期27.0%と極めて高水準であったが、2024年10月期は2.9%、2025年10月期は4.4%まで低下している。高収益だった2023年が例外的な年であり、直近および予想では低い利益率が常態化する前提となっていることが読み取れる。
資本効率の面でも同様である。ROEは2023年10月期15.0%から2024年10月期3.9%、2025年10月期0.1%へと急低下している。ROAも13.4%から3.3%、0.1%へと大きく悪化しており、直近および予想ベースでは資本や資産をほとんど有効に活用できていない状態に近い。
一方、バリュエーションを見ると、2025年実績PERは安値平均39.7倍、高値平均128.3倍と極めて高い水準である。現在の利益水準を基準にすると、将来の大幅な業績回復や成長を強く織り込んだ評価といえる。実績PBRは1.3倍で、資産価値から見れば極端な割高感はないものの、ROEが0.1%程度まで低下している状況では、このPBR水準を正当化するには明確な成長シナリオが必要となる。
これらを総合すると、セルソースは2023年に非常に高い収益性を示したが、その後は利益・収益性・資本効率が急激に悪化しており、足元および予想ベースでは安定した高収益企業とは言い難い。一方でPERは40倍超から100倍超という水準にあり、市場は業績のV字回復や再生医療分野の長期成長性を強く先取りしている。
投資判断としては、「業績の実態に対して評価が大きく先行している高期待・高リスク銘柄」と位置付けられる。現時点の数値だけで見る限り、割安性や安定収益を重視する投資には適さず、将来の事業拡大や収益回復が実現するかどうかに賭ける成長期待型の投資対象である。業績回復が想定通り進まなかった場合の下振れリスクは大きく、投資スタンスとしては慎重姿勢が妥当と判断される。
配当目的とかどうなの?
セルソースの予想配当利回りは2026年10月期が0.00%、2027年10月期も0.00%とされている。この時点で、配当目的の投資には適さないことは明確である。
利益面を見ると2023年10月期には純利益9.2億円を計上していたものの、2024年10月期は2.3億円へ急減し2025年10月期予想では1.1億円、2026年10月期予想では0.6億円と利益水準は縮小傾向にある。営業利益率も27.0%から2.9%、4.4%へと大きく低下しており、収益の安定性は乏しい。ROEやROAも直近および予想では0%台まで落ち込んでおり、資本効率という観点でも配当を安定的に出せる状況にはない。
こうした中で無配が続くのは業績悪化による消極的な理由だけでなく、再生医療分野という成長途上の事業に資金を優先的に投下している経営方針の表れともいえる。現状では、株主還元よりも研究開発や事業基盤の再構築を優先するフェーズにある企業である。
以上を総合すると、セルソースは配当目的では完全に対象外の銘柄と判断される。配当利回りはゼロであり、今後数年にわたってもインカムゲインは期待できない。投資対象として成立するのは配当ではなく、将来的な業績回復や再生医療市場の拡大による株価上昇を狙う成長期待型の投資に限られる。安定配当や高配当を目的とする投資スタンスには全く合致しない銘柄である。
今後の値動き予想!!(5年間)
セルソースの現在値は396.0円である。同社は再生医療領域に特化したバイオベンチャーであり、脂肪由来幹細胞や血液由来の細胞加工受託サービスを医療機関向けに提供するビジネスを展開している。再生医療法への対応支援や医療機関の経営管理支援を含めた総合支援型モデルを採用し、整形外科を中心に形成外科や産科・婦人科の領域まで対象を広げている。
一方、直近の業績を見ると2023年の高収益期に対して、その後は利益水準・収益性ともに大きく低下しており2025年予想までの利益水準は低位で推移する前提となっている。PERは高水準の評価倍率が付く場面もあるものの、業績回復が前提となっている評価でありキャッシュフローは営業CFの減少が見られる。こうした前提を踏まえ、現在値396円を起点に今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、同社が進める再生医療領域、とりわけ整形外科や不妊治療領域、不安定な利益構造の改善に成功し臨床導入実績が着実に増加する展開を想定する。エクソソームなど次世代技術の実用化研究が進み、提携医療機関数がさらに拡大することで加工受託の需要が強く伸びる。また既存の受託モデルが広く普及し、利益率の改善が進展することを前提とする。この場合、営業利益率は一桁後半〜二桁に向上しROE・ROAも改善、将来的な利益回復が見込まれるとして市場評価が改善される可能性がある。PERが市場期待を維持・高水準で推移するか、改善される前提が成立すれば5年後の株価は800円〜1,200円程度まで上昇する余地があると考えられる。
中間のシナリオでは、再生医療領域での需要は堅実に維持されるものの、利益改善は緩やかで一貫した上昇トレンドに乗らない状況を想定する。この場合、2025〜2026年の利益水準は低位から横ばいで推移し、営業利益率・ROE・ROAも低位での推移が続く。評価倍率はPERが中程度に収れんし、市場評価は利益トレンドに沿った形で推移する。株価は業績を反映しつつ、500円前後を中心としたレンジで推移し5年間を通じて大きなトレンド形成には至らない可能性が高い。このシナリオでは、396円前後での横ばい〜緩やかな上昇・下落を繰り返すレンジ相場が想定される。
悪い場合のシナリオでは、再生医療関連市場の成長が期待ほど進まない、あるいは規制・支援環境の厳格化や競合要因の強まりなどにより同社の加工受託需要が伸び悩む展開を想定する。また、利益回復が進まず、営業利益率・ROE・ROAの低位推移が続く中でPERが評価倍率の縮小方向に向かう可能性がある。この場合、株価は利益悪化や評価倍率低下を織り込みやすく、5年後の水準は200円〜300円程度まで下落する可能性がある。配当はないため、株価下落のみがパフォーマンスに影響する局面となる。
総合すると、セルソースは再生医療という成長領域に位置しつつも、直近の利益水準の低迷や収益性の不透明さが評価を難しくしている。良い場合には800円〜1,200円程度の上昇が想定される一方、中間では396円前後のレンジ推移、悪い場合は200円〜300円程度の水準まで下押しされる可能性がある。業績の改善や次世代技術の実用化進展が鍵となる銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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