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ビジネスエンジニアリングとは

ビジネスエンジニアリングは東京都千代田区大手町に本社を置く、製造業向けITに特化したERP/SCM分野のシステムインテグレーター兼パッケージソフトメーカーである。2019年10月に旧社名の東洋ビジネスエンジニアリングから現社名へ変更しており、略称はB-EN-G(ビーエンジ)として知られている。2018年以降は図研が筆頭株主となり、製造業の設計・ものづくり領域との結び付きが一段と強まっている。
同社の事業の中核は「ものづくりのためのIT」を実現することにあり、単なるシステム導入にとどまらず、製造業の業務プロセスそのものを理解したうえでの業務改革支援を強みとしている。大手企業から中堅企業までを主要顧客とし、国内のみならず海外拠点を含めたグローバルERP/SCM導入案件にも多数の実績を持つ。
最大の特徴は、自社製ERP/SCMパッケージであるmcframe(mcフレーム)シリーズを長年育成してきた点にある。mcframeは製造業向けに特化したERPとして、調達、生産、在庫、販売、原価管理といった業務をカバーしており、日本の製造業の実務に即した設計が評価されている。近年ではmcframeを軸に、周辺ソリューションやクラウド対応を進めることで、プロダクト事業としての収益比重も高まりつつある。また、多言語・多通貨に対応したERPであるA.S.I.A.も展開しており、海外拠点を含む統合管理ニーズにも対応している。
一方で、ビジネスエンジニアリングは自社製品専業ではなく、SAPを中心とした海外大手ERPベンダー製品の導入にも強い。SAP製ERP/SCMをはじめ、ダッソー・システムズ製MES、オラクル製SCM/ERPなどの販売、構築、導入コンサルティングを行っており、特に製造業向けの大規模・複雑な案件で豊富な経験を有している。自社パッケージとSAPなど外部製品の両方を扱える点は、顧客に対して中立的な提案ができる強みとなっている。
事業は大きくソリューション事業、プロダクト事業、システムサポート事業の3つで構成されている。ソリューション事業では、ERPや基幹系システムを中心に、IT企画から導入、活用フェーズまでを一貫して支援する。プロジェクトマネジメント、システム構築、テンプレート提供、オフショア開発、海外導入サポートなどを通じて、製造業のDXや業務改革を実現している。
プロダクト事業では、mcframeシリーズをはじめ、GLASIAOUS、Business b-ridgeといった自社製品の開発・販売・導入を行う。製品開発だけでなく、販売・マーケティング、導入支援、トレーニング、運用・保守、SaaS/ASP提供まで含めたサービスを展開しており、フロー収益に加えてストック型収益の積み上げも進んでいる。
システムサポート事業では、基幹システム導入後の運用・保守を中心に、システムライフサイクル全体を長期的に支援している。アプリケーション運用保守、活用コンサルティング、追加機能設計開発、周辺システムや個別業務システムの設計・開発、ITアウトソーシング、海外現地サポートなどを提供し、顧客との継続的な関係構築につながっている。
総合すると、ビジネスエンジニアリングは、自社ERPであるmcframeを成長エンジンとしつつ、SAPをはじめとする外部ERP導入でも確固たる実績を持つ、製造業特化型のERP/SCM専門企業である。製造業のDX投資や基幹システム刷新需要が続く中で、安定性と専門性を武器に、中長期的な成長を目指す企業と位置づけられる。
ビジネスエンジニアリング 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 17,855 | 2,032 | 2,025 | 1,378 | 116.6 | 35 |
| 連22.3 | 17,760 | 2,412 | 2,443 | 1,643 | 137.5 | 42 |
| 連23.3 | 18,506 | 3,246 | 3,250 | 2,328 | 194.0 | 64 |
| 連24.3 | 19,493 | 3,885 | 3,877 | 2,625 | 219.1 | 78 |
| 連25.3 | 20,776 | 4,676 | 4,679 | 3,330 | 278.2 | 100 |
| 連26.3予 | 24,000 | 6,000 | 6,000 | 4,400 | 367.5 | 188 |
| 連27.3予 | 25,800 | 6,600 | 6,600 | 4,600 | 384.2 | 190〜200 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 3,278 | -696 | -549 |
| 2024 | 3,553 | -1,127 | -1,003 |
| 2025 | 3,522 | -1,476 | -1,065 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 17.5 | 25.0 | 17.3 | – | – |
| 2024 | 19.9 | 23.9 | 16.7 | – | – |
| 2025 | 22.5 | 24.8 | 18.0 |
高値平均 17.9 安値平均 11.5 |
6.61 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模を見る。24.3期の売上高は194億円、営業利益は38億円、経常利益は38億円、純利益は26億円である。25.3期には売上高207億円、営業利益46億円、経常利益46億円、純利益33億円へと拡大しており、増収増益が明確である。26.3期予想では売上高240億円、営業利益60億円、経常利益60億円、純利益44億円とされており、利益成長がさらに加速する前提となっている。売上の伸び以上に利益が伸びており、規模拡大と収益性向上が同時に進んでいる。
次に収益性と効率性を見る。営業利益率は2023年17.5%、2024年19.9%、2025年22.5%と大きく改善しており、ERP・SI企業としては非常に高い水準にある。ROEは25.0%、23.9%、24.8%と一貫して20%超を維持しており、自己資本効率は極めて高い。ROAも17.3%、16.7%、18.0%と高水準で、資産を効率良く利益に転換できている。
評価指標を見ると、2025年実績PERは高値平均17.9倍、安値平均11.5倍であり、高収益企業としては必ずしも過度に割高とは言えない。一方でPBRは6.6倍と高く、市場が同社の高い収益力と成長性を強く評価していることが分かる。PBRの高さはROEが20%超で安定していることを踏まえれば一定の合理性があるが、評価水準としてはすでに高い期待が織り込まれている。
以上を総合すると、ビジネスエンジニアリングは売上200億円規模から300億円規模へ向かう成長フェーズにあり、営業利益率20%超、ROE20%超というSI業界では例外的に高い収益性を持つ企業である。mcframeを中心とした自社ERPの伸長と、SAP案件を含む高付加価値型ビジネスが利益成長を強く後押ししている。
数値だけで判断するなら、同社は明確な高収益・高効率企業であり、事業の質は非常に高い。一方でPBRは6倍台と高く、今後も高い成長と高利益率の維持が続くことが前提となる評価水準である。投資判断としては、中長期成長を重視し高バリュエーションを許容できる投資家向けの銘柄であり、割安重視の投資には向きにくい、という結論になる。
配当目的とかどうなの?
ビジネスエンジニアリングを配当目的という観点で見ると、結論は「主目的にはやや弱く、成長配当としては評価できる」という位置づけになる。予想配当利回りは26.3期で2.27%、27.3期で2.29%と東証全体の平均水準と比べるとやや低めであり、高配当株と呼べる水準ではない。配当を最優先に考える投資、たとえば利回り3.5%以上を狙うスタイルには適さない。
一方で、配当の質と持続性という点では評価できる。営業利益は38億円から46億円、さらに60億円へと拡大が続く前提で営業利益率も20%超まで上昇している。営業キャッシュフローも安定して大きく、無理に配当を出している構造ではない。利益成長に合わせて配当水準も引き上げられており、減配リスクは低い。
また、ROEが20%超と高水準であることから、本来は内部成長投資の効率が非常に高い企業である。そのため、配当性向を急激に引き上げるよりも成長投資と増配を並行させる方針が合理的であり、実際にそのような資本配分が行われていると見られる。結果として、配当利回りは高くないが、増配余地は中長期的に残されている。
総合すると、ビジネスエンジニアリングは「今すぐ高い配当収入を得たい」銘柄ではないが、「高収益企業の成長に乗りつつ、年々増える配当も受け取りたい」投資には向いている。配当を主目的に据えるなら物足りないが、成長株寄りの配当補完型銘柄としては十分に魅力がある、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ビジネスエンジニアリングの現在値は8,280円である。製造業向けERPというニッチだが参入障壁の高い分野で自社製ERPのmcframeを育成しつつ、SAP導入でも豊富な実績を持つ点が同社の最大の強みである。営業利益率は20%を超え、ROEも20%超で安定しておりSI業界の中では明確に高収益・高効率企業に分類される。一方でPBRは6倍台と高く、市場はすでに同社の成長性と収益性を強く評価している段階にある。したがって今後の株価は、業績そのものよりも「成長の持続性」と「高収益がどこまで続くか」に左右されやすい局面にある。現在の価格から今後5年間の動きを良い場合、中間、悪い場合で考えて行きます。
良い場合のシナリオでは、mcframeが製造業向けERPとしてさらに浸透し、既存顧客への深掘りに加えて新規導入が堅調に進む展開を想定する。加えて、SAP S/4HANAへの移行需要や海外展開案件を着実に取り込み、売上は年率8〜10%前後で成長する。自社プロダクト比率の上昇により高い利益率が維持され、営業利益率は20%台前半から中盤、ROEも20%超を継続する。この場合、市場は同社を単なるSI企業ではなく「ERPプロダクト企業」に近い存在として評価し、PERは18〜20倍程度を許容したまま利益成長を織り込む可能性がある。5年後の株価は12,000円〜15,000円程度まで上昇する余地があり、現在値から見れば中長期で大きなリターンが期待できる。
中間のシナリオでは、mcframeとSAP案件は安定的に推移するものの成長率は徐々に落ち着き、売上成長は年率5〜7%程度にとどまる状況を想定する。営業利益率は20%前後で安定し、ROEも20%前後を維持するがこれ以上の評価拡張は起きにくい。この場合、市場評価は落ち着き、PERは15〜17倍程度に収れんする。株価は業績の伸びに沿って緩やかに上昇し、5年後の株価レンジは9,000円〜11,000円前後が中心になる可能性が高い。値動きとしては上下を繰り返しながらも、長期ではプラスを維持する展開となる。
悪い場合のシナリオでは、製造業のERP投資が一巡し、大型案件の谷間が生じることで成長が鈍化する状況を想定する。売上は横ばいから低成長にとどまり、自社プロダクト比率の伸びも一服する。営業利益率は18%前後まで低下し、ROEも20%をやや下回る水準に落ち着く。この場合、高いPBRを正当化しにくくなり評価倍率が調整され、PERは12〜14倍程度まで低下する可能性がある。業績が大きく崩れるリスクは小さいものの、株価は評価調整の影響を受けやすく、5年後の水準は6,500円〜7,500円程度にとどまる展開も想定される。
総合すると、ビジネスエンジニアリングは「業績の質が非常に高い成長企業」であり、5年間という中期スパンでは業績そのものが株価の下支えとなる。一方で、現在の株価水準はすでに高い期待を織り込んでいるため、将来リターンは業績成長の持続性次第で大きく振れる。良い場合には1万2,000円超から1万5,000円、中間では9,000円台から1万1,000円台、悪い場合でも6,000円台後半から7,000円台程度というレンジが想定される。配当利回りは2%台と控えめであり、5年間の投資リターンは配当よりも株価上昇が中心となる銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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