株価
フルキャストホールディングスとは

フルキャストホールディングス株式会社である。フルキャストホールディングスは、人材派遣会社フルキャストを中心とする人材サービスグループの持株会社であり、本社は東京都品川区西五反田に置いている。かつては日雇い派遣の代表的な企業として知られていたが、法規制の強化や社会的要請の変化を背景に、日雇い派遣からは撤退し、現在はアルバイト紹介や給与管理代行、業務請負を軸とした事業構造へと大きく舵を切っている。
同社のルーツは1989年に神奈川県川崎市で設立された神奈川進学研究会にあり、当初は家庭教師派遣を目的とした事業からスタートした。その後、家庭教師派遣にとどまらず、軽作業請負や短期人材サービスへと事業を拡大し、神奈川県内から全国へと展開エリアを広げてきた。短期就業ニーズに応えるビジネスモデルを確立する中で、フルキャストは短期派遣市場において高い知名度を持つ存在となった。
グループ内では派遣スタッフを「キャスト」と呼び、支店で勤務するアルバイトを「ナビゲーター」と呼ぶなど、独自の運営文化を持っている。かつては日払いを原則とする給与支払い形態を採用していた時期もあったが、現在では月払い振込へと完全に移行しており、雇用管理や給与管理の面でも制度的に安定した運営が行われている。一定期間以上継続して勤務するスタッフについては、社会保険や雇用保険への加入も行われている。
現在の中核事業は短期業務支援事業であり、製造、工場、物流、倉庫、小売、飲食、コールセンター、オフィス業務など幅広い分野に対して、人材派遣、アルバイト紹介、業務請負を提供している。中核会社であるフルキャストは、持株会社体制移行後もグループの中心として機能しており、短期から中長期まで柔軟な人材供給を担っている。東京都および神奈川県に特化した短期派遣を行うトップスポットや、単発求人サイトを運営するおてつだいネットワークスなど、就業形態や地域特性に応じた複数のサービスを展開している点も特徴である。
また、警備事業もグループの重要な事業の一つとなっている。フルキャストアドバンスを通じて、各種警備業務、イベント設営・撤去業務、イベントスタッフ派遣などを行っており、人材派遣と業務請負を組み合わせた形で収益を確保している。イベントや建設関連、施設警備など、比較的景気変動の影響を受けにくい需要もあり、グループ全体の収益安定化に一定の役割を果たしている。
さらに、特例子会社であるフルキャストビジネスサポートは、障害者雇用の促進を目的として設立され、グループ各社から集約された事務業務や定型業務を代行している。持分法適用関連会社であるエフプレインは、営業職のアウトソーシング、有料職業紹介、コールセンター事業などを展開しており、人材サービスの周辺領域まで事業範囲を広げている。
フルキャストグループの最大の強みは、全国規模の人材データベースと拠点網にある。登録スタッフ数は全国で約906万人に達しており、毎月4万人から5万人規模のスタッフが仕事を探して新たに登録している。全国269拠点を通じて全都道府県でサービス提供が可能であり、最短で前日、1日単位の人材手配にも対応できる体制を構築している。急な人手不足に直面する企業に対して、スピード感を持って人材を供給できる点は、同社の競争力の源泉となっている。
総合すると、フルキャストホールディングスは、日雇い派遣中心のビジネスモデルから脱却し、アルバイト紹介、給与管理代行、業務請負、警備業務などを組み合わせた総合人材サービス企業へと進化してきた企業である。短期人材ニーズに即応できる全国規模のネットワークと登録スタッフ基盤を背景に、労働市場の需給調整を担う存在として事業を展開しており、労働環境や法制度の変化に適応しながら、安定的な収益基盤の構築を目指している。
フルキャストホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.12 | 64,645 | 9,823 | 9,884 | 6,622 | 183.1 | 58 |
| 2023.12 | 68,974 | 8,658 | 8,686 | 5,889 | 164.9 | 61 |
| 2024.12 | 68,556 | 7,133 | 7,312 | 5,493 | 156.0 | 62 |
| 2025.12 予 | 73,000 | 8,320 | 8,520 | 5,480 | 156.9 | 63 |
| 2026.12 予 | 76,500 | 8,680 | 8,880 | 5,680 | 162.7 | 63~65 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 6,796 | -958 | -2,622 |
| 2023.12 | 5,163 | -6,366 | -4,954 |
| 2024.12 | 5,758 | 175 | -2,870 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 12.5% | 23.1% | 15.1% | ― | ― |
| 2024.12 | 10.4% | 19.1% | 13.2% | 9.3倍 ~ 15.8倍 | 1.96倍 |
| 2025.12 予 | 11.3% | 19.1% | 13.2% | 10.8倍 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を億円ベースで見ると、2023年12月期は営業利益86億円、経常利益86億円、純利益58億円である。2024年12月期は営業利益71億円、経常利益73億円、純利益54億円と一時的に減益となっているが、利益水準そのものは高い。2025年12月期予想では営業利益83億円、経常利益85億円、純利益54億円と回復基調に入り、2026年12月期予想では営業利益86億円、経常利益88億円、純利益56億円と、再び増益が見込まれている。全体として、短期的なブレはあるものの、利益規模は安定して高水準を維持している。
収益性を見ると、営業利益率は2023年12月期12.5%、2024年12月期10.4%、2025年12月期11.3%と、10%超を安定して確保している。人材サービス業界の中では明確に高い水準であり、日雇い派遣から撤退後も、収益性を維持できている点は評価できる。
資本効率の面では、ROEが23.1%、19.1%、19.1%、ROAが15.1%、13.2%、13.2%と、いずれも非常に高い。特にROEは直近でも約20%前後を維持しており、資本を使って効率良く利益を生み出せている企業といえる。ROAも2桁台を維持しており、事業モデルの効率性が数値に表れている。
次にバリュエーションを見ると、2024年実績PERは安値平均9.3倍、高値平均15.8倍であり、レンジとしては10倍前後から15倍台が市場の評価ゾーンと読み取れる。2025年12月期予想PERは10.8倍で、利益水準と資本効率を考えると割高感は小さい。実績PBRは1.9倍であり、ROEが20%前後あることを踏まえると、過度に高い評価とは言えず、妥当からやや控えめな水準といえる。
これらを総合すると、フルキャストホールディングスは、高い営業利益率とROE・ROAを安定的に維持しつつ、PERは10倍前後、PBRも2倍未満という水準にとどまっており、収益力に対して評価は比較的抑えられている。利益の大幅な成長を期待するタイプの銘柄ではないが、業績の安定性と資本効率の高さが株価の下支えとなりやすい構造である。
投資判断としては、「高収益・高効率だが、評価は過熱していない堅実型銘柄」。景気変動や人材需給の影響は受けるものの、現時点の数値だけで見れば、下値リスクは相対的に小さく、配当を含めた中長期保有に向いた水準と判断される。急激な株価上昇よりも、安定的なリターンを狙う投資スタンスに適した銘柄である。
配当目的とかどうなの?
フルキャストホールディングスの予想配当利回りは、2025年12月期が3.74%、2026年12月期も3.74%とされている。この水準は日本株全体で見れば十分に高配当ゾーンに入り、配当目的の投資対象として一定の魅力がある。
配当の裏付けとなる利益水準を見ると2023年12月期の純利益は58億円、2024年12月期は54億円、2025年12月期予想でも54億円と利益は高水準かつ安定している。営業利益も70~80億円台で推移しており、営業利益率は直近3年で12.5%、10.4%、11.3%と一貫して2桁を維持している。人材サービス業界の中では収益性が高く、配当原資という観点では安心感がある。
資本効率の面でもROEは23.1%、19.1%、19.1%、ROAは15.1%、13.2%、13.2%と非常に高い水準にある。これは、過度な財務レバレッジに頼らず事業そのものが効率的に利益を生み出していることを示しており、「無理をして配当を出している」企業ではないと判断できる。
一方で、バリュエーション面を見ると2025年予想PERは10.8倍、PBRは直近実績で1.9倍であり、極端な割安感はないものの、ROE水準を考慮すれば妥当からやや保守的な評価にとどまっている。高配当株によく見られるPBR1倍割れではないが、収益力を伴った評価水準である点はポジティブである。
以上を総合するとフルキャストホールディングスは「配当目的として十分に成立する銘柄」と評価できる。利回りは約3.7%と実用的で利益水準・営業利益率・ROEのいずれも高く、配当の持続性に対する信頼度は高い。急激な増配を期待するタイプではないが、業績に大きなブレが出にくい前提に立てば、安定配当を受け取りながら中長期で保有する投資スタンスに適した銘柄と判断される。
今後の値動き予想!!(5年間)
フルキャストホールディングスの現在値は1,684.0円である。同社は日雇い派遣から撤退しアルバイト紹介、給与管理代行、業務請負、警備業務を主軸とする人材サービス企業として事業構造の転換を進めてきた。営業利益率は10%超、ROEも20%前後と人材業界の中では収益性・資本効率ともに高水準で安定しており、PERは10倍前後と評価は落ち着いている。こうした前提を踏まえ、現在の株価を起点に今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、人手不足を背景にアルバイト紹介や業務請負の需要が安定的に拡大し、警備事業も含めた非日雇い型ビジネスが順調に成長する展開を想定する。売上は年率5%前後で拡大し営業利益率は11~12%台を維持、ROEも20%前後で安定する。この場合、市場は同社を「高収益・安定キャッシュ創出型の人材サービス企業」として評価し、PERは12~15倍程度まで許容される可能性がある。利益成長と評価の見直しが同時に進めば、5年後の株価は2,200円~2,700円程度まで上昇する余地があり配当を含めたトータルリターンは比較的高いものとなる。
中間のシナリオでは、人材需給は底堅いものの成長率は緩やかにとどまり、業績は横ばいから緩やかな増益に収れんする。営業利益率は10~11%程度、ROEも15~20%の範囲で推移し、収益性は維持されるが大きな成長ストーリーは描きにくい。この場合、市場評価は現在と大きく変わらず、PERは10~12倍程度で安定する。株価は業績と配当を反映しつつ1,500円~2,000円程度のレンジで推移し、5年間を通して見ると配当を受け取りながら緩やかな上昇、もしくは横ばい圏での推移となる可能性が高い。
悪い場合のシナリオでは、景気減速や企業の採用抑制により人材需要が一時的に落ち込み、アルバイト紹介や業務請負の稼働率が低下する展開を想定する。営業利益率は9%前後まで低下し、ROEも10%台前半に落ち着くことで市場の評価は保守的になる。この場合、PERは8~9倍程度まで切り下がり、株価は業績悪化と評価調整の影響を受けやすくなる。5年後の株価水準は1,100円~1,400円程度にとどまる可能性があり、高配当ではあるものの値下がりリスクを意識した展開となる。
総合すると、フルキャストホールディングスは高収益・高効率な事業構造を持ち、配当利回りも約4%弱と実用的であるため5年間という中期スパンでは業績が株価の下支えとなりやすい。一方で急成長企業ではないため、将来の株価は成長率よりも「収益性の維持」と「評価倍率がどの水準で落ち着くか」に左右される。良い場合は2,200円~2,700円、中間では1,500円~2,000円、悪い場合は1,100円~1,400円というレンジが想定され、配当を軸にしつつ値動きを見極める投資スタンスが適した銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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